身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第84話

ことが済んでから、私たちは遅い遅い夕食の席で脱狼薬について話し合いを続けた。

大して、私は役に立ちませんけどねハイ。私はただ、教授の意見を客観的にいけるだいけないだ言うだけだ。

 

「校長から貴様の給料を出すように進言した」

 

「はい?」

 

話がひと段落してから、スープを飲みながらの教授は思い出したようにそんなことを言った。

 

「貴様には手作業でやらねばならん仕事をさせてやる」

 

「えっと...掛け持ちアルバイターということでしょうか」

 

「我輩は基本的に昼前から研究を行う。貴様は自分で...来れないのか」

 

「暖炉を使って行くとなると、教授のところに通っていることを知られてしまうかもしれないですね」

 

「ッチ」

 

いやいや、私悪くなくね!?アイスティーのおかわりをグラスに注いであげながら、私は申し訳ない顔で眉を下げる。

本当はポッターくんとお話ししたいのだが、教授を優先させた方がいいだろう。

 

「...姿表しを習得させるか」

 

「あれだいぶ厳しい訓練でしたよね?あと18歳からでは?そもそも私は魔法が校外では使えないので」

 

「...貴様は思ったより馬鹿だったのだな」

 

「....はい?」

 

「貴様は何歳だ?」

 

「えっと...17ですね」

 

「魔法界の成人が何歳か知っているのか」

 

「えっと...え?」

 

いやいや、流石に知らないぞ。何歳だ?20歳?18歳とか?

 

「未成年には魔法を使えば匂いがつく。

貴様は17、成人だ。もうホグワーツ外だろうと魔法を使っても構わん」

 

私はその言葉にハッとした。そういえばホグワーツの外で魔法使えんじゃん。忘れてたわ完全に。そういえば私は法律上魔法が使えるようになっている。

果たして、使っていいのかはわからないが。

 

「でも、ホグワーツの学年では3年生ですよ?」

 

「マグルの高等学校でも校則は、学校内でのタバコ、飲酒は禁ずるとあっても学校外は知らんとあるはずだ。成人済みの生徒は学校には関与しないということだ」

 

「ちょっと横暴だと思うんですけど」

 

「貴様をその歳まで発見できなかったホグワーツが悪いのだ、構わん。使え」

 

それならと、私は一応持っていた杖をいそいそと出した。いや、流石に持つよ?ここだってれっきとした危険度高々ワールド。危ないのでちゃんと杖くらいは持ち歩きますよ。

 

「じゃあ一発目なんの魔法にしましょうか」

 

「....貴様には一つ魔法を練習させる」

 

いきなりマジなトーンになってそんなことを言うので、なんだかんだと思いながら教授を見ると、苦虫を噛み潰したような顔なのだ。

 

「えっと...」

 

「凶悪犯が脱獄したな」

 

「えぇ、シリウス・ブラックですよね」

 

「ディメンターが校内に放たれる」

 

アー確かにそんなことあったあった。となると、勉強させられる呪文はただ一つのはずだ。

 

やらなきゃダメだよなぁ...と思いながらも、私は食べていた食器を片付けるべく立ち上がった。

 

「ディメンターということは、守護霊の魔法ですか」

 

「知っていたか」

 

「えぇまぁ」

 

「エクスペクトパトローナム、必要なのは幸福な記憶だ。幸せな気持ちで満たし、呪文を唱える。この脱狼薬の改良に比べれば造作もないだろうな。

もっとも...貴様が優れた魔法使いであれば、の話ですがな」

 

「食器を片付けたらご教授ください」

 

そう言うと、教授は杖を振ってさっさと食器を片付けてしまった。そして、リビングのものを隅に寄せると、やれと言わんばかりに鼻を鳴らす。

 

「もうちょっと教え方ってものが...」

 

「習うより慣れよ、という言葉通りだ。守護霊の呪文の成功には他者は介入できん」

 

確かに。杖の振り方だなんだって教わっても仕方ないのだ。結局、振り方は極めてできない人の初級版。できるようになれば、杖の振り方だなんだは必要はない。

 

「幸福な思い出...」

 

目を閉じて、ゆっくりと息を吐く。さて、私の幸福な記憶はなんだろう。

 

最初に思い出したのは、孤児院にいた頃の子供たちの笑みだった。でも、その笑みと一緒に思い出されるのは、他でもない自分への恨みのようなものが詰まった目。潰れた孤児院、移動先の孤児院で存在のなくなった私。

恨まれてる私。

 

この思い出は、幸福なばかりではない。

 

なら前世はどうだろうか。

大切な親友のこと、恋仲のような関係だった人。家族。

 

17年前のことを、明確に思い出せる人はどれだけいるだろうか。朧げすぎる記憶は幸福と呼ぶには些か無理がありそうだ。

 

「まだか」

 

「え...え、エクスペクトパトローナム」

 

思い出せないまま杖を振る。うんともすんとも言わない杖先。私は恐る恐る教授を見上げた。

 

「貴様が一発で出来ぬことなど想定済みだ。我輩は貴様にそれほど期待しておらん」

 

「あはは..がんばりまーす」

 

(守護霊の呪文か)

 

幸福、幸福と考えているところで、頭の中にトムの声がする。どうやら魔力量が活動できるところまで来たらしい。

 

(幸福な記憶か、僕も使えた魔法だよ。途中まではね)

 

(途中まで?)

 

(悪の魔法使いは使わないんだよ。使う必要がないものをわざわざ覚える必要もない)

 

(へぇ〜)

 

(アルレシアには幸福な記憶が無いのかい?)

 

(なくは無いと思うけど...)

 

「アルレシア、とりあえず数をこなせ。そのうちいい記憶が見つかるだろう」

 

私は頷いて、一先ずはマフラーをくれたマルフォイを思い出した。杖を振る。何も起きない。

次に思い出したのは、成績が一番だったことだ。杖を振り、呪文を唱えるが何も起きない。

 

「...教授、見本を見せてくださいよ」

 

「エクスペクトパトローナム」

 

振られた杖先から白い煙のようなものが舞う。そして、それは段々と形造りながら周囲を駆け回った。

 

「わぁ...すごいですね」

 

「...パトローナスは思い出深い動物になることが少なくない」

 

「思い出深い動物...」

 

(アルレシア、エイブリーはどう?)

 

あ、エイブリー先輩とときめき一瞬だけ楽しく恋愛ごっこがあった。あの頃は確かにハッピーライフしていた。

私はそのことを思い出して心を満たした。

エイブリーの中身となったトムも今は私の中にいる。いいんじゃないだろうか。

 

「エクスペクトパトローナム」

 

杖を振った時、今までとは違った感触があった。指先がじんわりと温まるような、奇妙な感覚だ。

 

「アルレシア、そのまま集中しろ」

 

(うん、いい感じだ。そのまま、次は幸福な記憶を纏めるように)

 

幸福な気持ちと共に、白い煙のようなものが段々と現れていく気がする。そして、ゆっくりとそれが量を増やそうとしたその時、そのままスッと消えてしまった。

 

(初日にしては上出来だね)

 

「出せただけマシだろうな」

 

そんなに高度なものを私に覚えさせようとすんのやめてもらっても?とは言えないので、もっとやれと言わんばかりに椅子に腰掛けた教授。杖を振って、羊皮紙を引き寄せるとどうやら脱狼薬の研究を続けるようだ。

 

(ほら、もう一回やるよ。天才だった僕のついてる君が不優秀なのは許せないし)

 

(いや、これは高度でハイレベルなトムとか教授みたいな人がやる呪文であって並みの私じゃ...)

 

(いいからやって)

 

「...エクスペクトパトローナム」

 

今度は続けてトムと多くのことを話した時を思い起こす。さっきよりもはっきりと、暖かさが私の頬を撫でる。

 

そして、白い煙がゆっくりと量を増やし漂い始める。

 

「ホォー、集中を切るな」

 

(アルレシアの守護霊はなんだろうね)

 

私は頑張って集中していくが、形作る前にフワッとまたそれは消えてしまった。

 

「あ、消えちゃいましたね」

 

「ふむ...動物は四足歩行か」

 

「え?」

 

「貴様の守護霊の足までは出来かけていた」

 

(確かに四足歩行ぽい何かではあったけど。この教授適当言ってないかい?)

 

(うーん、多分?というかちょとできてたんだね)

 

「一瞬だけ形ができていた。そのうち必ず、できるようになる」

 

「わかりました。でも、普段の生活をしていればディメンターに遭遇することは少ないのでは?」

 

「今年は貴様を汽車に乗せるかもしれん。残りのひと月程度で使いこなせるようにしておけ」

 

その言葉に、私はちょっとウッワって思った。ハリーくんが最初にディメンターに遭遇したのはどこだろうか。そう、汽車なんですね。

 

教授は、今日はもう終いだと言わんばかりに羊皮紙たちを杖を振って片付ける。そして、続け様にテーブルたちを元の位置に戻した。

 

「漏れ鍋には暖炉を使って帰れ。手伝いは追って連絡する」

 

私は頷くと、軽く挨拶をしてブルーパウダーを掴んだ。教授は特に別れを惜しむこともなく、おう、じゃあなみたいな顔だった、いや違うけど。特に何も思わないらしい。ですよねハイ。

 

「漏れ鍋」

 

炎の中にピョーンして、私は無事に漏れ鍋へと帰ったのだ。

夕食にしては少し遅い時間だったからか、お酒の席化した店内。お酒の匂いが充満するので、匂いだけでも少し酔いそうだった。

 

「アルレシアさん、おかえりなさい」

 

「トムさん!ただいま帰りました。明日の朝からまたお仕事に入りますね。また、急に抜けてしまうかもしれませんが...」

 

「いいんだよ。じゃあ、また明日。

おやすみアルレシアさん」

 

「おやすみなさい」

 

私は軽く挨拶をして自分の部屋へと向かった。そういえばポッターくんは大丈夫だろうか。ちょっと待っててがこんな時間だから、さぞ落胆したことだろう。

階段をギシギシと登っている途中で、トムがまた喋り出した。

 

(アルレシア、部屋でもパトローナスの練習をするのかい?)

 

(うーん、やってもいいけど上級魔法だから、うまく制御出来なくて)

 

(まぁ、ゆっくりやっていくしかないね。パトローナスも魔力の消費が他よりもあるからやるなら明日にしよう。僕の魔力供給が追いつかない)

 

(普通に生活してると実体化でもしない限りそこまで魔力が減ってる気がしないけど)

 

(魔力を少しずつ貯蓄してるんだよ。何かあった時に、実体化と姿くらましできるくらいの魔力が欲しいからね。

こうやって君の中にいるだけなら、概念に近い僕は君の魔力の残り滓で十分さ)

 

(へぇ...だったら私のふりして幽霊のトムがパトローナス出すのじゃダメなの?)

 

話しながら階段を登り切ると、ようやく私の部屋が見えて来た。泊まりに来るお客はあまり多くないのか、まだ寝るには少し早い時間にもかかわらず、廊下は静まりかえっていた。

 

(幽霊になると半実体化で相手にも見えるけど、アルレシアの体を借りれば僕も誰かに知られずに魔法が使えるかもね。でも、君経由で僕が魔法を使うより、自身で魔力を消費したほうが消費量は少ないよ。魔力同士の摩擦や移動、僕の魔力への変換もあるから)

 

あまりに難しいことを言ってる気がして、私はよくわかんねーと適当にうんうん頷いた。明日こそはポッターくんにごめんね昨日は!と謝らなきゃと部屋を通り過ぎる。

そして自分の部屋の扉を開けて、私はようやく自室へと戻って来たのだ。

 

(ねぇトム、トムはどんな幸福の記憶でパトローナスを呼んだ?)

 

私は寝る支度をしながら、のんびりとトムに話しかけた。

トムものんびりとした声で、得意げに私に話してくれる。私はそんな声を聞きながら、ベッドに潜り込んだ。

 

パトローナスを呼び出せるほどの魔法使いであるかはまだわからない。




闇の魔法使いはパトローナスを呼べないという解釈でしたが、ネットで調べてみると出せるけど必要ない説が多かったので、そっちにしました。死喰い人なるくらいので、ある程度は優秀な魔法使いばかりだと思いますし。


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