身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第87話

一時間ほどだろうか。次のお菓子があと五分で焼ける、という頃に二人はダイニングキッチンへと戻ってきた。何を話したのかは知らないが、二人は特に険悪でもないが和解したわけでもないような雰囲気で戻ってきた。つまり、先ほどと変わらぬということだ。ただ、一つ言えることがあるならば、ルーピン先生はすごく苦々しいというかまずいをものを食べてしまった顔でしきりに時計を確認していた。

 

「ジェフィフィーナ、9月1日の始業日が満月に当たる。今日から服用をさせている故、貴様はルーピンと9月1日に汽車に乗れ。恐らく一番副作用が出るのもその時だ」

 

何の薬かも、満月が何なのかも言わないがわかっているので頷いておく。なるほど、それでルーピン先生の顔と時計なわけだ。

甘いものを取ると効果が無くなるという部分の改良が進んでいないから、時間を確認して甘いもの摂取をしたいのね。

できればディメンターとこんにちはなので勘弁願いたいところだったが拒否をする理由もなければ言い訳もできそうにない。

 

「では、ルーピン先生が漏れ鍋へ迎えに来てくれるんですか?それともポッターさんと共に駅へ?」

 

「...私は一足先に汽車に乗るけど、アルレシアは九と四分の三番線には乗ったことがないってセブルスに聞いたから共にどうだい?」

 

(あれ、アルレシアは入学式とかはどうしたんだい?)

 

(言ってなかったっけ。

私は入学式は遅れて入ってるから教授の姿表し。その後は賢者の石だ何だってことで教授に漏れ鍋へ連れて行って貰ったの。で、二年次はホグワーツに満月草の栽培についての話し合いで一足先にロックハート先生と。

で、また漏れ鍋には教授って感じよ)

 

(へぇ...でも、どうして他の孤児院に入らないんだい?漏れ鍋よりもきっと良いだろうし、漏れ鍋もホグワーツもアルレシアにとっては帰る家じゃないだろう?)

 

(確かになんでだろ)

 

「アルレシア?」

 

「ジェフィフィーナ、嫌なら構わん。友人一人いない貴様に長旅は酷やもしれん。しかも、教員と二人のコンパートメントなど地獄だろうな」

 

「あ、え..はい?え、今の結構酷い言われようでしたよね?」

 

「一人くらいはいたか」

 

「あーえっと...居ないですかね。あ、でも最近はトムさんとよく話してますよ。仲良しです」

 

(今のトムさんは隠喩的な)

 

(僕のことトムさんなんて呼んでないだろ)

 

「漏れ鍋の亭主は雇い主ではないか」

 

「デスヨネ」

 

(トムさんトムさん、このホグワーツ特急乗るともれなくディメンターさんとこんにちはできるんだけどどう思いますぅ?)

 

(...アルレシア、君まだパトローナスを呼べないじゃないか。汽車に乗のはやめた方がいい。君の腹の中には幸福な記憶が無いんだから吸い取られたら乾涸びてカラカラのおばあちゃんになって魂まで無くなる)

 

(私が貶されたのとちょっと楽しんでるよね?)

 

(さあ、何のことかな)

 

「嫌なら構わん」

 

「でも、私と二人なのはハリー達が来るまでだよ。ハリー達は私と同じコンパートメントに来る予定だからね。そこからは少し狭いけど五人で座ることになるかな」

 

その言葉に、私はなるほど〜と頭の中で手を叩いた。そう、アズカバンの囚人編でポッター達はルーピン先生がいるコンパートメントしか空いてなかったのだ。

ピンポイントでそこだけ空いていたのは、ルーピン先生が何かあった時にポッターを守ることができる配置にしてあったということだ。

 

「...どうしましょう」

 

私はしばし悩みながらも教授達の前に紅茶を置いた。焼き上がったばかりのクッキーをお皿に並べて、すでにできていたカップケーキと出す。

 

「私は甘いものに目がなくてね」

 

「本当ですか。たくさん食べてくださいね!ホグワーツに行くとお料理の機会が減るので、ついたくさん作ってしまって...よければお土産にもどうぞ」

 

「ありがたくいただくよ」

 

私も席について紅茶を一口。まだお昼ご飯がお腹に残っているので正直お菓子はいらん。でも、ルーピン先生はパクパク食べているので、私は孤児院の頃にお菓子を作っていた時を思い出して懐かしくなった。

 

でも、最後にはやっぱり悲しい記憶がつきまとう。

 

「ジェフィフィーナはパトローナスを習得したのか」

 

「あー...いえ、まだです」

 

「ディメンター対策かい?私でよければ教えるよ」

 

「我輩が既に指導した」

 

(あれは指導ではない。僕の方がよっぽど上手いね)

 

(習うより慣れよ精神かな。教授もトムもポテンシャル高いからいいけど、私は...ね、うん)

 

(アルレシアが練習するなら、また僕もしばらく休むよ。今は時々魔法を使う程度だからいいけど、君がホグワーツに行って魔力消費が大きくなるとあまり起きてはいられないかもしれないね)

 

(そっか、うーん...でも呼んだ時に来てくれると嬉しいけど)

 

トムは了承の返事だけをして、それ以上は何も言わなかった。恐らく休んでいるのだろう。

 

体の中でトムと会話をしていると、頭に響く声しかないのでいるかどうかはあまり定かではない。魔力の流れが少し変わるので気づくが、集中していれば声をかけられるまではトムの存在に気づくことはないだろう。

 

「教授に指導をしていただいたので、既に出せてはいるんです。でも、まだ形にもならないので。これからもう少し練習しますね。

ルーピン先生にはどうしても困ったらお願いすると思います」

 

「まぁ、高等魔法には変わりあるまい。貴様にはそこまで実技は期待しておらん。魔法薬学の才の方がよっぽどマシだろうな」

 

「セブルス、言い方ってものが」

 

「いいんです、事実ですし。

魔法薬学はまだマシと言っていただいたので、スネイプ教授が闇の魔術に対する防衛術へ転籍になった時に魔法薬学の席を狙っておきますね」

 

「フン...貴様は魔法薬学という綿密で繊細な科目をお料理かなにかと思っておいでですがな」

 

「私は魔法薬学が苦手だったからアルレシアはすごいよ」

 

なんというか温度差。

私はアハハーと笑みを浮かべて紅茶を喉に流し込んだ。一先ず何が言いたいかというと、汽車に乗りたくないでござるです。

でも、乗るしかないだろう。正直いい加減乗らないとなぁ..とは思っていた。

 

「...ひとまず、汽車には乗ろうと思います。せっかく教授がここまで薬の改良をしてきましたし..私もルーピン先生の副作用は心配ですから。

ディメンターでもシリウス・ブラックでも、ルーピン先生がどうにか対処してくれますよね?」

 

「勿論だよ。なら、9月1日に漏れ鍋へ迎えに行こう」

 

「ありがとうございます。でも、ポッターさんが居るのでなるべく早めか、中間地点があった方がいいかもしれません」

 

私の言葉に、確かにという顔をしてルーピン先生は少し悩むように首を傾げた。

 

「我輩同様、亭主に話を通しておけ。スタッフルームの方から迎えを寄越せばよかろう」

 

「あ、それがいいですね。ルーピン先生、漏れ鍋の裏口へお願いします」

 

「わかった。また時間はセブルス経由で送る」

 

私たちはようやく話を終えた。ルーピン先生はご帰宅とのことなので、お菓子を手渡してお帰りいただいた。これからもうホグワーツにいるそうだ。

 

お茶を片付け、余ったお菓子や料理を教授に説明して、さて私も帰りがだいぶ遅いけど帰りましょうかね。なんて思った時だった。

 

「アルレシア、我輩は一足先にホグワーツに行っている。足りないものは貴様に買わせる故、フクロウ便を確認しておけ」

 

「わかりました。

...ルーピン先生が来てから、ずっとファミリーネーム呼びでしたね」

 

「ルーピンは誰に対しても名前で呼ぶ。我輩は、公私混同をするつもりはない」

 

「...今のはブラックジョークですか」

 

公私混同しねぇ奴が研究終わったらベッドインとかしねぇだろうがぁぁあ!!というか何が公私混同だ。何もかも公私混同じゃねぇか。

いやでも確かに、ホグワーツで普通に勉強している間はエコ贔屓も何もされない。教授の自室、私の自室やこの家の中、二人の時だけでしか私は名前を呼ばれない。

 

ルーピン先生が来たら、途端に教員だった。

 

公私混同...してない...うーん。

 

「フッ...」

 

私が悩む顔を見たのか、教授は鼻を鳴らすように笑った。少しだけ肩の力を抜いたような、そんな笑いだ。対して表情筋は動いていないのに、教授の中で緊張していた気持ちが和らいだのを感じたのだ。

 

「教授、2ヶ月という長い時間。私の指導に研究に、授業準備とお疲れ様でした」

 

「...あぁ」

 

「本当に大変だったと思います。でも、きっと教授の肩の荷が...今年は特に重いんでしょうね」

 

「...シリウス・ブラックが、本当にポッターを裏切ったと思うか」

 

「それは私には分かりかねます」

 

「あの男がジェームズ・ポッターを裏切る..我輩にはあの男どもほど、一心同体のような人間を未だかつて見たことがない」

 

遠い目をして、教授はボソボソとそう言った。私にも縁のない言葉だった。私にも親友はいない。私の根底を知っているのは、生きている人間ではどこにも居ないのだ。

 

「...あいつはホグワーツにいる。

シリウス・ブラックがアズカバンで言っていた言葉だそうですね」

 

「あいつ...ポッター以外に誰がいる」

 

「そうですね。でも、教授はシリウス・ブラックが裏切ったことを訝しんでいるんですね」

 

「秘密の守り人はブラックだった。しかし、ヴォルデモートはポッター邸を襲った。

ブラックが裏切り、ペティグリューが死んだ」

 

私は、そのペティグリューが犯人とは言えずに口を閉じた。教授は下を向いたまま、静かに紅茶を飲んだ。

 

「...教授、今日は早めに休みましょう。ゆっくりお風呂に入って、時間を気にせずに寝たいだけ寝て...それからホグワーツへ行きましょう。私が朝食まで用意しておきますね」

 

私はそう言って、スネイプ教授の頭を撫でた。教授は、何すんだみたいな顔をしたけど、私は笑った。ポッターも頭を撫でられたがったけど、きっとみんな誰しもが誰かに褒められて認められたいんだと思う。

それは、私も同じと思う。

 

「教授はよく頑張りました。お疲れ様です」

 

「我輩は子供ではないのだぞ」

 

「...ならハグでもしましょうか。人はストレスの三分の一をハグで解消できるそうですよ」

 

私が腕を広げると、教授は少しだけ悩んだ末に、眉間の皺を緩めた。それでも線がくっきりと入っているのが教授らしい。

 

「貴様は策略家な割に能天気だな」

 

その言葉と共に、私のことを抱き寄せた。立ち上がり、自分の胸に沈めるように腕を回した。弱弱しい力で私を抱きしめ、教授は口を開いた。

 

「パトローナスが使えないのは、貴様に幸福な記憶が少ないからだ。

恋人でも作ったらどうだ」

 

私は教授の中でモゴモゴと口を開く。

幸福な記憶ならたくさんある。でも、私には幸福な記憶の後に悲しいことがある、それだけだ。

 

「私にお友達すらいないことはご存知ですよね。恋だの愛だのをできるような相手はおろか、恋バナすらできませんよ」

 

「それはそれは可哀想なことですな」

 

「教授が話相手になってくれてもいいんですよ」

 

「断る」

 

「...そもそも話すことがないですよ」

 

「さようで。

風呂に入る、ホグワーツに行っている間に貴様のシャンプー達が腐ってしまうことが我輩は気掛かりだ」

 

私はその言葉に、おっと...と頭を回す。これは遠回しのお誘いであると認識してもいいのか。恋人を作れというあたり、本当に利害の一致したビジネスパートナーという関係性である私たちは上手い誘い文句一つない。

教授も段々と、私に察しろと言わんばかりの言い回しになってきた。

 

もうとっくの昔というか前世に付き合い、別れた元彼よりもよっぽどマシだと私は口を開く。

 

「なら、教授も私のシャンプーで構いませんね。使い切りにご協力ください。

シャンプーもトリートメントも私がしてあげますよ。だから、私のシャンプーは任せましたよ」

 

「我輩が人にシャンプーなどできるわけがなかろう」

 

「孤児院で培った私のシャンプーパワーの秘訣を教えてあげますね」

 

「不必要」

 

私は笑って杖を振った。テーブルの紅茶も何もかもを片付ける。

そして、教授の胸から離れた。

 

「ストレスの軽減はされましたか?」

 

教授は鼻を鳴らすだけで、その言葉には答えなかった。どうせシャンプーもトリートメントも使い切れるわけがない。教授のもの同様に保存魔法をかければ済む。それでも、私はカマトトぶって教授の背中をついていった。

 

夏休み終了まであと一週間。

私は、ディメンターとのことを思うと胃が痛くてしょうがないのを笑って誤魔化すだけだった。

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