身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第89話

 

「アルレシアさん、おはよう」

 

私はそのノックで微睡から目を覚ましたのだ。そう、今日はホグワーツへ行く当日。9月1日。満月の日だ。

 

私は慌てて飛び起きて扉の方へ行く。そしてゆっくりと戸を開けると、トムさんが私に紅茶を差し出してくれた。

 

「おはようございますトムさん」

 

「お目覚めはいかがかな。忙しいだろうから、朝食も後で送ろう」

 

そう言って、トムさんは抜けた歯だらけの口を開けて笑った。私も同じように笑うのだ。私に対して冷たくも、はたまた過干渉なわけでもないところは有り難かった。

 

「...今年の夏休みはあまりここを手伝えなくてすみませんでした」

 

「いいんだよ。スネイプ教授のお手伝いだろう。アルレシアさんを迎えに来るたびにね、少し待つ間、スネイプ教授は思い出したように口を開いていたよ。

アルレシア嬢は、良い助手だ...とね」

 

「ふふ...教授がそんな言い方したとは思えませんよ」

 

「...普段なら迎えに来ぬが...あの生徒は教え甲斐もある。手伝いをさせても、よく気がきく。縁さえあれば、いい魔法薬学者になろう...と、細切れに言っていたよ」

 

本当に!?本当!?思わず問いただしそうになった。慌てて気持ちを落ち着かせて笑うが、トムさんには私の顔が高揚しているのが丸わかりだろう。

 

「アルレシアさん、スネイプ教授は嘘を言ったりしない人さ」

 

「でも...いつもはそんなこと言わないので」

 

「そこも、スネイプ教授らしい」

 

私は本当なんだ、と少しどころかとても嬉しい気分になって頷いた。トムさんは紅茶と、私に少ないけどとアルバイト代をくれて、人が迎えに来たら呼ぶと去っていった。

しばらくすれば、おそらく朝食も運ばれてくるだろう。

 

シャワーを浴び、適当な洋服に着替えると、私は気合を入れるように鏡の前に立った。

 

長い髪を櫛に通して、今年こそはホグズミードに行ったら化粧品を買おうと決意する。眉毛、目、化粧水と乳液。あとトリートメント剤。私は決意を固く杖を取り出した。

 

嬉しいあまりに、今ならパトローナスができると確信した。嬉しい気持ちで心を満たして、いちのさんと杖を振る。

 

「エクスペクトパトローナム」

 

その声と共に、杖先から白いモヤが噴き出す。成功した、そう思って集中し続ける。そして、ふわりと四足歩行の動物が私の前に現れた。

 

「た...たぬき?」

 

弱々しく光を放ち、フワッと消えてしまう。不完全な魔法ではあったが、私はようやくパトローナスを出すことができたのだ。

 

あまりの嬉しさにルンルンで杖を振ってトランクを用意する。荷物の一番上をホグワーツの制服にするのも忘れない。

 

ちょうどよく朝食も運ばれてきて、私はそれを美味しくいただいた。食べているときに、またも扉をノックする音が聞こえて、私はスプーンを置いた。誰だろう、そう思いながら杖を構えて戸を開けると、そこにはポッターが立っていた。

 

「おはようアルレシア」

 

「ポッターさん、おはようございます」

 

「あの..アルレシアは、今日どうやってキングズ・クロス駅に行くつもり?」

 

「私は迎えが来るんです」

 

「そうなの?その、、僕たち車が出るんだ。それで、一緒にどうかなって..でも、昨日はアルレシアは晩御飯にも食堂に居なかったし。ロンもいるから..」

 

モゴモゴとそう言うので、私はポッターはウィーズリーと私のことを気にしてくれていたんだ、とほっこりしながら背伸びをして頭を撫でた。

 

「ポッターさんはいい子ですね。昨日は、少し疲れてしまったので部屋にいたんです」

 

ウィーズリーについては触れずに、私は頭をわしゃわしゃと撫でつけた。すると、私の方にもポッターさんと繋がったような奇妙な感覚が胸にも走る。それと共に、頭の中で声が響くのだ。

 

(アルレシア)

 

(トム、おはよう。ポッターに触ったから起きてしまった?)

 

(あぁ、ポッターか)

 

(私のことを誘いに来てくれたみたい。でも、もう少ししたらルーピン先生がくるね)

 

(そうだね。でもまぁ、あの狼男の教師といれば君もポッターにまた会うだろ?)

 

(うーん、たぶん)

 

「アルレシア、じゃあまた学校で会おうね」

 

「今回は汽車で私も行くので...きっとまた後で会えますよ」

 

「ほんと?でも、ロンもいるし...」

 

「大丈夫ですよ。少し手狭かもしれませんけど。最後尾の方でお会いしましょうね」

 

私はそう言って扉を閉めた。後でまた会うだろうし。ウィーズリーにはあまり会いたくないけど、この弊害的な気持ちが差別を生むんだろうな、なんて思うと諦めて会うしかなかった。

 

鞄の準備をしっかりと終え、2ヶ月近くも過ごした部屋を見回した。そして、ため息を一つこぼすと、杖を振る。

 

「オーキデヴス」

 

花びらが何もない空間から舞い落ちてくるのをぼんやりと見ていた。

 

(アルレシア、汽車に乗ってしばらく休憩できるなら僕の実体化に魔力を分けて)

 

(トムの魔力貯蓄ってどういう制度なの?)

 

(アルレシアにわかるように説明するなら、魂をコップと、コップに入った水とする。

今までは、水を人に移し、相手の水を自分側に移していた。相手の魔力も魂のようなもので水として変換してきた。しかし、コップに入る水の量は決まっている。コップの大きさ以上の魂も魔力も持てない)

 

(簡単に言うと、私の中に残った概念に近いトムのコップは小さくて魔力も貯蓄があまりできないんだよね、ってこと?)

 

(まぁ、そういうことになるね)

 

(大きくするにはどうしたらいいの?)

 

(わからない)

 

(魂の大きさは決まっているけど...トムは初めに作られた分霊箱で、ヴォルデモートの半分だったんだから強力な魂のはず)

 

私は少し考えてみたが、なんの方法も思い浮かばなかった。そのため、諦めるようにトムに実体化の許可を出した。余った魔力がトムの魔力へと変換されれば、私の魔力循環は上がり、きっといいダイエットに...とは言えない。

 

念のため、魔法を終了させてから椅子に腰掛ける。そして、トムの掛け声を頭の中で聴いていた。続けるように、体の力がガッと抜けていくような感覚がある。

 

そして、ひどい目眩に襲われて椅子に掴まって目を閉じた。

 

「アルレシア、大丈夫かい?」

 

その声が目の前でする。そして、ゆっくりと目を開けた。そこにいたのは紛れもなく、私に声をかけていたエイブリー先輩。そう、トムリドルに他ならない。

 

「大丈夫。久しぶりの実体化はどう?」

 

「マグルみたいな気分だよ。魔力がすっからかんだ。でも、地面の感触もアルレシアの匂いも感じる」

 

今にも「いきてるってすばらしいっっ!!」言わんばかりにトムは笑って見せた。そして、私の杖を借りて歌をように杖を振るのだ。

 

「オーキデヴス」

 

その言葉と共に私たちの頭上から花が落ちてくる。私よりも繊細に魔法を使い、美しい花々が降っていた。

 

「いい気分だよ。ただ、また記憶や概念に戻れば疲れてしばらくは動け無さそうだね」

 

そう言いながら、私の手を取って立ち上がらせる。そして、鼻歌でも歌いながら踊りだす。トムってこんなやつなの!?えぇ?と思いながらも、私は久々の楽しいことに同じように笑みをこぼした。

 

私のへなちょこステップをカバーするように優雅に踊るのだ。トムのリードして踊る様は、そんじゃそこらの貴族よりも誇り高そうだ。

 

「ワンツースリー、その調子だよ」

 

「なんで踊れるの?」

 

「スラグホーンのスラグクラブでは踊れることが必須なんだよ。それに...僕にならこれくらい朝飯前だからね」

 

「へぇ〜」

 

「それにしてもアルレシアはダンスが下手だね」

 

「初めてやったんですぅ〜」

 

「初めてでももう少しうまいステップが踏めるよ」

 

「どうせ将来使えないからいいんだってば」

 

私はそう言ってトムから離れた。トムは心底楽しそうに笑うので、私も釣られて笑ってしまう。本当にイケメンなのでちょっとハリポタワールドの顔面偏差値には殺意が湧きそうだ。

 

それでも、ただの概念になって生きているのに死んでいる状態はさぞ辛かっただろうなと思った。私の中で、トムはいつも何をしているのだろうか。私の中で起こった疑問を投げかけるには、トムはあまりに上機嫌。やめておこう。

 

「さて、もうそろそろ狼男の教師が迎えに来る頃だね。

...アルレシアに可能なら一つだけ頼みがあるんだ」

 

真剣そうなその表情に、なんだなんだ身体よこせはやめてくれと思いながら頷く。

 

「僕の分霊箱である日記。あの日記を手に入れてくれないか」

 

「え、いや、無理じゃない?」

 

「あの日記の中には僕の残穢が残っているから、僕があの日記の中で過ごしたものが残っている。魂がなくとも、中身は無事だろうから」

 

「うーん...まぁ、頑張ってみるけど期待しないで」

 

「構わないよ。ダンブルドアを馬鹿にするつもりはない」

 

トムは本当に諦め半分といった感じで苦笑いを浮かべる。そして、もう一度私の手を取ると踊りだす。今度はフォークダンスのようだった。

 

「さぁ、スリザリンの生徒たちに泡でも吹かせに行こう。僕がいれば大丈夫だよ」

 

「本当に上機嫌だね」

 

「アルレシアの中は、アルレシア自身が今まで蓄えてきた知識が詰まっていて悪くないけど...でも、やっぱり肌で感じるのが一番だよ」

 

「私の知識?」

 

「君の脳に記録された全て、その全てが僕の閲覧可能の棚として記録されているみたいなものだよ。ただ、魂は肉体に刻まれるものだから、肉体の記憶しか僕は辿れないけどね」

 

何いってるかわかんねー!と思いながら頷く。つまり、トムが私について見られるのは、私がこのハリポタワールドに来てからの記憶のみということだろう。

 

「君の経験したことは僕の経験になる。アルレシア、学ぶことをやめてはいけない」

 

「...今の教師っぽいね」

 

「これでも、ホグワーツの先生になりたかったからね」

 

そっか、なんて思っていると廊下ではドタバタと走り回る音がし始めた。続け様に、聴いたことのある声が聞こえる。そう、ウィーズリーたちが動き出した音だ。

もうそんな時間か、なんて思いながら窓の外を見ると、つぎはぎたらけの鞄を持った男性が歩いているのを見た。

ルーピン先生がその辺で姿現しをして来たのだろう。

 

「そろそろ行く時間だね。実体化を終えることで、空になった魔力の補給があるだろうから気をつけて」

 

「うん」

 

ベッドへ腰掛けると、トムはフワッと消えた。その瞬間に先程に似た眩暈と貧血のような感覚を味わう。

グラグラと頭が揺れ、視界が真っ暗に染まった。

 

目が開かない、気持ちが悪い。そう、気絶の直前はこういう状態になる。車の免許を取るために救命の学科も受けた。その際に教えてくれた先生が、視界が白くなるのは酸欠、黒くなるのは気絶直前だと言っていた。本当かはわからないけれど、危険なことはよくわかる。

 

座っていることができず、私はベッドへと倒れ込んだ。しばらくそうしていると、意識ははっきりしているけど、頭を動かすと気持ちが悪いというところまで回復してくる。

 

前世は何度かこういう貧血を起こしているので大丈夫だ。ぼんやりとしていると、扉を叩かれる音がした。

 

「アルレシアさん、お迎えが到着したよ」

 

そんな声がしていたが、未だにトムに譲渡されていく魔力の枯渇問題に体が追いついていなかい。

頭がふらふらと、視界は黒々しく。諦めて目を閉じると、私は吐き気を我慢するように意識を飛ばした。

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