身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!! 作:あるれしあちゃん
「アルレお姉ちゃん!」
「今日のご飯なぁに?僕お腹すいた!」
「私がアルレお姉ちゃんの髪とかしてあげる!」
「抱っこ抱っこ!」
子供たちの声に、私は笑ってはいはいと返事をする。子供抱き上げて、お手伝いをしてくれる子供たちをハラハラと見つめた。手伝ってくれる皆んなの姿を見るだけで、幸せになれた。
今日も質素なご飯だ。だけど、私は確かに幸せだった。
でも、私の幸せの下には絶望がある。
「アルレお姉ちゃん、何処にいるの?」
清潔な部屋の一室で、小さなロベリアは周囲を見渡した。
「ロベリア?私はここよ」
「ここは嫌、みんなアルレお姉ちゃんのこと嫌っていう。この場所嫌い。アルレお姉ちゃん!」
「....ろべ..りあ」
「アルレお姉...アルレ?誰?」
「ロベリア、私はアルレシア...貴女のお世話をしてたお姉ちゃん...」
小さなロベリアが私を探して歩き回る。目の前にいるはずなのに、私のことは見えてない。まるで、私を知らない人かのように。新たな孤児院で、あてもなくフラフラと歩き回る。小さなロベリアは段々と、アルレお姉ちゃんから興味を失っていった。
バッと暗くなり、次に現れるのは黒いドレスだった。そして、目の前にいるのはスネイプ教授。
そういえば、なんであの時スネイプ教授はいたのだろう。わざわざマグルの劣悪なお店に来る必要なんて無いし、リリーさんがいるだろうに。私に杖を握らせる、その時の顔を思い出した。
そうだ、教授もまるで納得したように。憑き物でも落ちたような不思議な顔をしていた気がする。
そして、賢者の石が終わって夏休みに入ったころ。
子供たちの多くが引き取られた孤児院に歩き出す。嫌な思いをするのはわかっている。だから、行きたくない。なのに、私はズイズイ進む。もうじき孤児院に到着してしまう。
悲しい思いをしたくない。
そう思った時だった。
アルレシア!
名前を呼ばれて、私はハッと顔を上げた。目の前にいるのは真っ黒な何かと大きな穴のような口。
「な...に」
(アルレシア!早く起きて!!)
悲しい気持ちが溢れていく。いや、違う。段々と幸福な記憶を吸い取られていくんだ。薄れる意識の中で、トムが叫ぶ声がする。
(杖を取って!早く!アルレシアッッ)
「っ....え」
もしかして、トムは私の幸福な記憶に当たるのだろうか。ディメンターに連れていかれるのは癪だ。段々と、少しずつトムの声が遠ざかる。苦しそうな声が響く。概念、記憶、魂。どれにも該当し、どれにも該当しないトムはディメンターの捕食対象なのだろうか。
(あ..るれ..しあ)
(いか..ないで、トム)
私は目の前のあるディメンターの顔へ手を伸ばす。そして、指先をその顔へ向ける。指先に力を込めるように、歯を噛み締めて息を止めた。
「エクスペ....と、パト、ローナム」
その言葉と共に指先から弱々しく白い光が出る。その光が、確かにディメンターを私の前から遠ざけた。弱々しい光のまま、確かにディメンターを押し返したのだ。そして、その指に温かみがこもる。
(まだ少しだけ魔力を借りるよ)
その声と共に、光が強くなる。蛇のような動物がディメンターを威嚇するように伸びた。一瞬の出来事のように、ディメンターの退きと共に光は消えた。
そして、どこかで白い光が強く輝く。誰かがパトローナスを呼んだんだ。それを最後に、私はまた意識が遠のいた。
「...っ...む」
目が覚めたとき、私は怒り沸騰のスネイプ教授と目が合った。
「きょ...じゅ」
「....何か言い訳はあるかね」
「えっと...申し訳ありません?
初ホグワーツ特急はどうなりましたか?」
「貴様が寝ている、いや、魔力不足で気絶している間に汽車へ運び込まれた。そして気絶している間にディメンターに遭い、パトローナスを呼び出し、またも魔力不足で気絶し、ホグワーツへ到着した。ここは医務室だ馬鹿者が」
その言葉と共に、教授は私の頭を掴んだ。
「貴様は昨年同様何をして魔力が枯渇するのかお教え願おうか、我輩にはさっぱりわからぬ」
「あー、はい。えっとですね」
「適当な言い訳は不必要」
「パトローナスの練習がうまくいかなくて、お花をたくさん出して楽しんでいましたすみません」
「貴様は馬鹿なのか。パトローナスと花を出しただけで枯渇する魔力とは貴様の魔力量はスクイブですかな?」
私は目の前にまたも登場スフィア石を出されて握った。弱々しく光る石に、魔力全然足りせんよと伝えられて凹む。どうしてこんなに魔力が少ないのか。いや、トムに分配されているだけで、私が少ないとは言い切れまい。
「貴様は魔力が多い方ではない。そのうえ、ルーピン先生が言うには...杖なしの魔法を使ったようですな」
「覚えがありませんね」
スフィア石を教授に返し、私はふらふらしながらベッドから起き上がる。息が切れているわけではないが、一日中走り回って全身が筋肉痛で、体が重くなったような感覚だ。
「チョコレートをさっさと齧りたまえ、我輩達も大広間に行かねばならん」
私はその言葉に頷き、ベッドサイドに置かれたチョコレートのかけらを齧る。ルーピン先生がくれたものだろうか。またお礼を言わなければならない。
(トム?)
そう名前を呼んでも、返事はない。トムも魔力切れだろうか。
私は大人しくベッドから起き上がると、ベッドのカーテンを開けた。マダム・ポンフリーはどうやらいないらしい。どこかへ出掛けているのだろう。地面に足をつけて気づくのは、私が制服を着ていることだった。誰かが着替えさせたのだろう。至れつくせりありがたや。手櫛で髪を整えながら、教授の背中を追いかけた。
「パトローナス、出せるようになったのだな」
「まだムラはありますが、形だけなら」
「そうか。
....貴様を汽車に乗せぬほうが良かった。貴様は貴様でポッター同様にトラブルに遭いやすい」
「じゃあ、来年からは迎えに来てくださいね」
私は、脱狼薬の改良をして金貨を一山稼ぐのでまだ死ねません。なんて言いながら二人して歩き出す。教授が改良しきれていないのに、私ができるとは思っていない。
「随分な自信ですな。それなら、我輩の後釜を任せても構わぬようで」
「お給料沢山ですものね。後釜として、教授の元で助手か助教授として働かせてください」
「貴様は魔法薬学という繊細な科目を料理か何かだと思っている節がある。料理とは違うのだ」
「お料理も調合もちゃんと繊細にやってますってば」
「...玉ねぎをみじん切りにするようにアイリスの根を刻んでいたことをお忘れかね」
「似てますってば」
「似ておらん。エラ昆布まで切り込みを入れて煮込むのは貴様くらいだ」
「出汁文化ですよ」
「ダシカルチャー?」
「...話は変わりますが、ルーピン先生の授業、満月の時は教授が行うんですか?」
「さよう」
「それは楽しみですね。でもまさか...人狼についてやったり、特に見分け方なんかを勉強させたりませんよね」
映画を見た時にそのシーンがあった。わざわざ生徒たちにヒントを与えるようにしたために、すんなりとルーピン先生は人狼であることがバレたというか納得されたというか。
教授はその言葉には答えず、ただ黙々と歩いた。そして大広間につき、私は組み分けも既に終わったらしい生徒たちに混じるように席の隅の方へ行くのだ。
久々に見るダンブルドア校長先生のお話を聞き、晩餐が始まる。私は今日も周囲に知り合いがいないまま夕食を食べ始めた。正直まだまだ体調は最悪だ。
お皿へローストビーフとサラダを盛り付けて、あとはパンをちまちまちぎる。もう部屋で寝ていたい。今年のお部屋も一人部屋になっているだろうか、そんなことくらいしか考えることがなく、ぼんやりとお皿を見ていた。
「アルレシア、久しぶりだね」
その声に顔を上げると、見慣れたノットだった。夏休みぶりだ。成長期だからか、また背も伸び、大人っぽい顔つきになった。流石は白人、と言うべきだろうか。年を重ねるごとに、憂いまでも帯びる表情は単純に羨ましい。
「あ、お久しぶりですセオドールさん」
「...」
話しかけてきたくせに、私の顔を見て口をぱくぱくさせてから閉じた。なんですか???なんか文句でも??と言いたいのを我慢して首を傾げることにとどめた。
「えっと...?」
「痩せた?」
「ほんとですか?嬉しいです」
「はい?」
「体重計がないですし、全身鏡もないので、体型の変化が分かりにくいんですよ。痩せたなら嬉しいです」
対してダイエットしてたわけではないが、スネイプ教授も薬の改良と研究のせいでだいぶお痩せになられた。私も今年の夏は割と忙しくていたのでどっこいどっこいなのだろう。
「いや、悪い意味でだよ。顔色もあまり良くないし。校長は夏休みのアルレシアをどんな環境で過ごさせているのか」
「私は漏れ鍋でお世話になってると言っただけで、校長先生が関与しているとは一度も言ってませんが」
「...僕が何も知らない貴族だとでも?校長だって少しは考えるさ。夏休みにホグワーツへ残りたがった生徒を孤児院へ帰ら....いや、なんでもない」
何気ない世間話かのようにいいかけ、ノットはそこで口を閉じた。まるで言ってはいけないことを言ってしまったような、そんな表情をしてからゴブレットを手に取って飲み物を煽る。夏休みにホグワーツへ残りたがった孤児...そんなのみんなそうだろうに。なんの話かまではわからないし、詳しく聞き出すつもりもないため、私はパンを千切って口に入れた。
ノットは少し悩むような表情をしてから私を見ていた。
「君は夏休み、なにしていたの?」
「漏れ鍋にいましたよ」
「嘘だね。僕は何度かダイアゴン横丁に行った。だけど、どの時間帯にも君はいなかった」
「私がお休みをいただいた日と被ってしまったか、ちょうど居なかった時間かもしれません」
適当にそう返すと、ノットはますます眉を顰めた。そして、改めて私の顔をよく見るのだ。居づらくなり、私が追加の夕食を、取り分け始めても、その顔は変わらない。
「君がそんなにあちらこちらに行く方だとは思っていなかったけど」
「....セオドールさん、私だってそれなりに漏れ鍋以外にも行きますし...貴方が私の何をご存知なんですか」
スネイプ教授と薬の改良をしていました。とは言い難い、私は話をさっさと切り上げるために少し突き放すようにそう言った。どのみち、ノットの中身が確定しない限り、多くの情報を与えるのは得策ではない。
「アルレシア...君は誰?」
ローストビーフを口に入れた瞬間、突然のその言葉に思わず顔を上げた。ガヤガヤとした周囲の音が一瞬無くなったような気さえしたのだ。
「何を言っているんですか?」
「君は誰?」
「あ、アルレシア・ジェフィフィーナですけど」
「違う、去年の君と今の君は確かに違う。
....随分、スリザリンらしくなった」
「それは褒め言葉ですか」
「皮肉だよ」
「...セオドールさん、貴方にとっての私はどんな人間だったんですか」
「...僕の知ってる君は、ハッフルパフやグリフィンドールみたいな人間だった。少なくとも...そんな風にニヒルな笑い方をしなかった。
アルレシア、君からしたらそれも“私の何を知っているの?”ってことだろうけどね」
「よくお分かりですね。
だって、セオドールさんの本当の姿を私も知らない。セオドールさんも私の本当の姿を知らない。それに、私たちは年を重ねるごとに成長しています。だから、私たちは常に進化していて、今を留まったりなんてしませんよ」
その言葉と共に、ゴブレッドへ葡萄ジュースを注ぎ、ゆっくりと口に含んだ。
葡萄ジュースを飲みながら、私はもう一度彼を見るのだ。同じように食事を始めるノットは、先程の話なんて遥か昔かのように笑っていた。
「...君がただ猫をかぶって笑っていただけなら、今の君が本物かもしれないからね。
アルレシア、君は誰?」
「アルレシア・ジェフィフィーナですよ。友達が...トム、さんしか居なくて勉強しか取り柄のないただのスリザリンの嫌われ者です」
「ふっ..ふふ...表情や仕草は二ヶ月前と全く違うけど、後は別人の片鱗が見える君のままだった。僕の思い違いだったようだね」
「そのようですね」
「でも...この夏休みに、何が君を変えたんだろうね」
そう言いながら、ノットは目を細めた。まるで確信しているようなその表情に、私は机の下でローブを握りしめる。シラを切るように笑みを浮かべて、私は首を傾げた。さてなんだろう、という顔をしておけばいい。
「強いていうならば...トム、ですかね」
「漏れ鍋の亭主がそんなに好きなのかい」
「トムさんはいい方でしたよ。来年もまたお世話になりたいです」
「そう...。でも、卒業したらどうするんだい。君を迎え入れてくれる家も無ければ、迎えてくれる家族もいない。頼れる友も仲間もいない。
そうしたら君は、ホグワーツ卒業後何になるんだ」
「...私、将来何になるんでしょうね。まだ考えられませんよ。でも...お金を貯めてどこかで一人暮らしをして、細々と生きていくんじゃないですかね」
「そうしたら、君のことを別荘か別宅のキッチン担当にでもしてあげるよ」
「お給料と相談ですかね」
私たちは特に役に立たないような会話を、解散の時間までした。そうやって、ホグワーツの入学式は特筆するようなことがないまま終わったのである。
そして、今年も変わらず一人部屋だった。寮では、早速私がディメンターを相手に気絶していたらしいとコソコソ話し合われていた。しかし、汽車に乗っていた段階から寝ていたせいで、ずっと寝てた馬鹿なのでは?と意見が分かれている感じもする。
今年のホグワーツは今までの中で一番平穏になりそうなので、是非楽しく過ごしたいものだ。