身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第94話

次の日の授業を終えて、私はようやくスネイプ教授の部屋へときた。約束通り、放課後十七時。朝早くに態々厨房へと赴き、夕食用の食事を仕込んでいたので、今日は教授の部屋でご飯だ。作った物は食器と合わせて教授の部屋に温めてから十九時に送ってもらうようにお願いしてある。

今日はシーザーサラダ、ローストビーフとマッシュポテト。夕食らしくはないが、きゅうりなどをマスタードを塗ったパンで挟んだサンドだ。そしてデザートにはプリンを作った。

 

寮の自室から荷物だけを置いて教授の部屋に来たのだが、残念ながら教授はどこにもいない。

 

私は何も持たずに来てしまったので、手持ち無沙汰に近くにあった洗い物を片付けてからソファに座ってそばにあった本を読んだ。

 

「...解毒剤、石」

 

中身としては、ベゾアール石のように解毒剤になるのを探すというものだった。特に爬虫類関係の毒についてのその本に、私は蛇の毒があることに気づいた。

 

「...なぎ..に」

 

スネイプ教授ほどの人が、ナギニの毒を相手に何の抵抗もせずに死んだのが信じられない。ナギニによる毒ではなく、動脈を切られたことによる失血死だったのだろうか。

 

本をペラペラとめくり、私にはまだ早かったと閉じた。スネイプ教授は何をしているのだろうか。私はそんなことを思いながら本を積み直して目を閉じる。

 

マルフォイは今日の授業にも出て来なかった。しかし、私が心配だと見に行くわけにも行かないだろう。

 

スネイプ教授の部屋は程よく薬草の匂いなどが残っていて、私はいい気分で眠りについた。

 

 

 

 

「ア...シア」

 

私のことを誰かが呼ぶ声がする。体を揺さぶられる感覚に、私はゆっくりと目を開けた。

 

「アルレシア」

 

「ト...ム」

 

私の目の前にいるのはトムだった。変わらぬ制服姿のトムは、私を見ていつも通りの笑みを浮かべていた。

 

「ようこそ、僕の城へ」

 

そう言われて辺りを見渡すと、そこは一つの部屋だった。壁いっぱいの本たち、座り心地の良いソファとテーブル。窓の向こうには木々によって緑が広がっていた。

 

そして、その部屋にはひとつの扉があった。決して大きくはない扉にはプレートが掛かっていて、ここからではよく見えず、細い字で書かれているようだった。

 

「トムの部屋?」

 

「城ともいい、部屋ともいう。そして、記憶の中とも。ここは僕の魂の中。僕の記憶の部屋であり全て。記憶の刻まれた場所だ」

 

「うーん?」

 

「ここには僕の全てが詰まっている、といえばいいかな。僕は僕の記憶を分霊箱として日記に閉じ込めた。だから、ここは僕の記憶、核、魂」

 

トムはそう言って、指をパチンと鳴らして一冊の本を引き寄せた。記憶の中だから、トムは杖がなくとも魔法が使えるのだろう。

 

「僕の記憶達はこの本によって整理されている。この本には、魔法薬学について僕がまとめたもの達が入っていてね、フェリックス・フェリシスの作り方も全てまとめた」

 

「幸運の液体。トムは50年間この部屋の中で一人考え事や記憶の整理をしてたってこと?」

 

「そうなるね。僕が分霊箱故に、ヴォルデモートである僕と繋ぎ合うようなものさ。お互いに何かあれば、反応し合う。赤子のポッターによって滅ばされた惨めな僕についても、気づいていた。そして、ホグワーツ生のポッターによって僕自身が滅ぼされかけた時にも、ヴォルデモートである僕は反応していただろうからね」

 

そう言いながら、トムは本を開く。題名のない本だった。本の中身をペラペラとめくり、指を鳴らすと出てくる大鍋。かき混ぜられた大鍋から煙が上がった。

 

「僕には...これがあの日、そう、スラグホーンのスラグクラブで出た食事の、最後のチョコレートサンデーの香りがする。チョコレート、アイスクリームの甘ったるさと、しっかりと炒められたナッツの香ばしい香りだ」

 

そう言ってトムは、またも指を鳴らして砂時計のようなものを出現させて。それを指先でキーンと弾く。ガラスの弾く音で、私は気づいた。そう、トムが分霊箱のことをスラグホーン先生から聞き出した時の記憶だ。トムは一人でそれを再現しているにすぎない。

 

大鍋の中を覗き込めば、そこには真珠貝のような光沢を持つ、美しい液体が入っていた。そこから立ち上る煙は螺旋を描き、ゆっくりと私の前で消えていく。

 

「アルレシア、君にはどんな香りがする」

 

私は大きく息を吸い込んだ。そして、またゆっくりと吐き出す。最後にそっと、トムを見上げた。

 

「...しない、何の香りも」

 

「そう、僕の記憶に過ぎない。ポッターが僕の記憶を見たのと一緒さ。すでに過ぎたことだ」

 

「過ぎたことなのに嗅がせて期待させるんだ、ちょっとひどくない?

それに、それは愛の妙薬。しかもアモルテンシアでしょ。最も強力な魅惑万能薬」

 

「そう。スラグホーンの部屋によくあるものさ。当時の僕には、欲しかった情報を与えたスラグホーンとの思い出になる香りがチョコレートサンデーだった」

 

そう言ってトムは指をパチンと鳴らして鍋も砂時計も消した。本も本棚へと消えていき、元の静けさが残る。

私は何となく居心地の悪さを感じて周囲を見渡した。そして、プレートのかかった扉の方を見たのだ。

 

「あれ、あの部屋は何?」

 

「...あの部屋はね、何て書いてあるか見るといい」

 

そう言いながら、トムは私の手を引いた。黒を基調とした扉。白いプレートにはゴールドの文字が浮かび上がる。

 

「アルレシア、私の名前ね」

 

「この部屋の向こうはアルレシアの記憶だ」

 

そう言ってトムは扉を開ける。その先には、トムの部屋とそう変わらない本棚があった。本の敷き詰められた部屋には、ソファと魔法薬学の大鍋、キッチン。私を作るもの達が並んでいる。

しかし、よく見るとトムの部屋と同じような配置で、またも扉がある。同じようにプレートのかかった部屋だ。

 

「君の生活なんて、僕と大して変わらないからね。それに、記憶はどれも料理ばかりだし」

 

「料理が得意だったからだよ。参考になった?」

 

「ならない」

 

私はそっか、なんて笑った。トムに比べれば決して多くはない本の数々。私は近場の本に手を伸ばして開いた。

 

「トムに比べて本がすごく少ないね」

 

「僕が記憶を保存したのと比べて、アルレシアは魂に刻まれた思い出だからだよ」

 

そう言われて、私はへぇーと本を捲る。本の中身はホグワーツに来たばかりの私の話だった。友達がいない、年下からの嫌がらせ。いつもいつも苛立っている。

 

「...読んでて気分がいいものじゃないね」

 

私はそう言ってすぐに本を閉じた。本をしまい込むと、プレートのかかった扉の方へ歩き出す。トムは私の隣を歩きながら、真っ直ぐにその扉を見つめるのだ。

 

「トム?」

 

「...僕には読めない」

 

近くに寄って気づいた。私には易々と読めたが、トムは首を振る。そう、ゴールドの文字が描くのは、私の名前だった。

 

「アルレシアの母国語?」

 

私はそれに応えず、プレートに手を伸ばした。指先でそれをなぞり、小さくため息をこぼすのだ。そうだ、これは私の名前だ。長く呼ばれていなかった、私の名前。

 

「読み方は?」

 

「...トム、私の名前は?」

 

「アルレシア、アルレシア・ジェフィフィーナ」

 

「うん。私の名前はアルレシア。だから...必要ないの」

 

私はそう言って、プレートを裏返した。日本に戻ることはもうない。私は過去にきてしまった。魔法なんてない世界からある世界に。

 

ここは私の知る世界じゃない。

日本に私の知り合いはいないだろう。今更日本に行ったところで、私は帰国子女か何かだ。受け入れてもらうところすらない。

 

「トム、自己の証明ってどうやってすると思う?」

 

「自己の証明?自分という証明ってことか」

 

「うん。自分という人間がここにいる証明って、どうやってすると思う?」

 

「僕が僕である限り、ここにいる。生きている、僕はここに確かにいる...みたいなことではないようだけどね」

 

私はその言葉に笑って、ドアノブに手をかけた。私の予想が当たっていれば、この先にあるのはいわば閲覧禁止の棚。トムが見られなかった、過去の私の記憶、魂。

 

「僕には開けられないけど、君なら入れるね。ここは、僕の閲覧禁止の棚だ」

 

そう言ってトムは一歩下がった。私はドアノブをひねる。ゆっくりと開く扉。その先にあるのは、先程よりも多くの本達だった。

 

ゆっくりと体を踏み入れる。そして、扉を閉めた。両手を出して、私は本の方へ体を向けた。

 

「家族」

 

一冊の本が私の手元へ現れた。表紙のない本だ。ゆっくりと開くと、ページには家族の情報が現れ始める。そして、思い出深い記憶達が刻まれていた。

 

「...お母さん、ローストビーフ。お父さん...一緒にやってたジグソーパズル」

 

会いたくて会いたくてたまらなくなった。

でも会えない。私にはもう会えないのだ。この記憶は私であり、私ではない。日本人だった、過去の私だ。

 

「記憶は魂に刻まれるのか、肉体に刻まれるのか...ってやつ?」

 

本を閉じて本棚に返す。これ以上読んでいたらもう戻れない気がしたのだ。もう一度ドアノブを捻ると、アルレシアである私の部屋にはトムはいなかった。トムの部屋まで戻ると、ソファに腰掛けて本を読んでいた。

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

「閲覧禁止の棚はどうだった?」

 

「...うーん、うん」

 

「君の前世の記憶は、アルレシアの部屋のどこにもない。君の習慣や行動は前世の記憶に基づいているんだろうけど、君に前世の記憶がある記録はこのどこにもないんだよ」

 

「...記憶しか見られないから?」

 

「そう、記憶したものしか見られない。君の感情も何もかもが、見られない」

 

私はそっか、なんて言いながら隣に座った。トムは私の肩に頭を寄せて本を閉じる。そして、ゆっくりと息を吐くのだ。

 

「アルレシアの香りがする。ここは記憶の世界だけど、僕達には実体があるから...記憶の上書きがされ続けるんだ」

 

「難し過ぎて全然わからない」

 

「君は頭が悪いな」

 

「秀才トム・リドルとスリザリンの嫌われ者である私が同じ脳レベルなわけない」

 

「...さっきの、自己の証明の話。僕は自分がここにいる、という主張が自己の証明じゃないね。誰かが僕のことを認識して、僕はここに存在してる。誰にも認知されていなければ、僕がここにいるという証明にはならない。50年間、記憶の中にいる僕は認知されていないから存在していない」

 

「...トム、同じ意見よ。前世の私は、もうここにいない。私はアルレシア、アルレシアとして認知されてる。だから、前世の私はもういない」

 

「アルレシアがいなくなれば、僕は本当の意味で消えるのか」

 

トムはそう言ったきり、もう何も言わなかった。私ももう一度目を閉じて眠ることにした。トムが私の肩に頭を乗せたように、私もトムの頭に頬を寄せる。鼻先にトムの柔らかな黒髪がついた。それでも、私にはトムの香りはしなかった。魔力を渡してトムが実体化しない限り、まだ曖昧な存在だ。

 




まじもんに過去(中学生)の私、題名意味不すぎます...
そのうち本気で題名変えたいので、今必死に考えているんですが、いいのが思いついたら本一冊分は○○(旧〜)って形にしますので何卒
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