身長160センチ無いと戦えんわ!って、その前にハードモードすぎて泣いた!!!   作:あるれしあちゃん

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第95話

 

「......シア」

 

「アル...」

 

私を呼ぶ声。そして、私の肩を譲る手がある。その振動と声に、ゆっくりと目を開けると、スネイプ教授がいた。

 

「す...ネイプ教授」

 

「我輩の部屋で居眠りとは良いご身分ですな」

 

「そう思うなら、もっと早く来てください」

 

「ふむ」

 

教授はそれを無視するように羊皮紙の束を私に押し付けた。一体これはなんだと思いながら見てみると、一年生の初レポートらしい。

 

「レポート...こんなに早い時期から一年生に出していたんですか」

 

「貴様は途中入学だったな。早めに出すことで他の教科でも書きやすくなろう」

 

「教授、優しいのか畜生なのか...」

 

「一番最初に出す教員が一番苦労するのだぞ。スペルミスに文章ミス。ありとあらゆる言葉を添削するだけで我輩は今年の仕事を終えるやもしれん。つまり、そういうことだ」

 

「職務濫用じゃないですか?生徒にやらせるなんて」

 

 

「そもそも書いて慣れろ、というシステムに疑問を感じるがな」

 

「こんなにやったら腱鞘炎になります」

 

「未来の魔法薬学教授殿が何を言うのかね」

 

「わかりましたよ、やります。ただ、羊皮紙にちょっと文章いくつか書いてくれませんか?ある程度は筆跡を真似ます」

 

その言葉に教授は杖を振って羊皮紙にペンを走らせた。それを見ながらやれということだろう。

 

私の分として空けられたテーブルと椅子に腰掛けて羊皮紙を開く。誤字脱字のオンパレード。小学生が初めて書く作文たちのお披露目に、私はなんてこったと思いながら教授を恨むように見た。

 

「昨夜、ルーピンから脱狼薬の報告があった。まだ改良の余地があるゆえ、添削が終わったら手伝いたまえ」

 

「私は教授を睨んでるんですよ」

 

「...我輩とて好きで出してるわけではない。年功序列というものがあるのだ」

 

「若造からレポートを出せと?」

 

教授は答えないまま、ローブのポケットに手を突っ込んだ。出したのは畳まれた紙で、それを読みながら杖で材料を揃えていく。恐らく頼まれている薬を作り始めるのだろう。

 

「大体書き方くらい教えてあげたらいいじゃないですか」

 

「なぜ我輩がせねばならん」

 

「スペルミスや文章破綻は許せたとしても、口調くらいは直せますよ。流石に」

 

そう、このレポート達。敬体、常体、話し言葉が混雑しているのだ。確かに言われてみれば、ホグワーツで書き方について習った覚えはない。大学で習ってきたし、敬語と話し言葉は分けるのは常識だと思ってきたわけだけど、全員が全員ではない。そもそも、日本の学生は作文はあってもレポートは大学や高校で少しやる程度だろうし。

 

色付きのインクに羽ペンを浸し、私はどんどん直し始めた。よく見る、先生がオレンジとか赤で訂正してくあれだ。そういえば小学校では担任の先生がオレンジの筆で直していたけど、それ以降はなんか見なくなった気がする。

 

「評価はどうします?」

 

「E」

 

「流石に全員がEは可哀想では?」

 

「貴様はレポートで最低幾つを取ったことあるのだ」

 

「えっと...E、D −、D、D+...あー多分、最低B−ですかね」

 

「我輩のレポートでB台など大分くれてやっているのだぞ」

 

「本当ですか。いつかA+かSが欲しいです」

 

「Sなどないが?」

 

「闇の魔術に対する防衛術でSがつきました」

 

「クィレルの依怙贔屓とお見受けしますがな」

 

「ノーコメントです」

 

私はそう言って、E判定をつけた。羊皮紙の長さ不足、問いに対する回答不足、そもそも謎の文章、教科書丸写し。

 

「ホグワーツには国語の教授を置いた方がいいかもしれませんね」

 

「プライマリースクール上がりの生徒以外は全員受講ですな」

 

「プライマリースクールらしい生徒さん達はD−かDでもいいと思いますよ」

 

「読んでいて不快でなければな」

 

そう言って教授は何かの根を鍋へ放って混ぜ始めた。何を作っているのか。

 

「アルレシアはプライマリースクールに通っていなかったようですな」

 

「はい...まぁ、というか...多分通わせる気がなかったんだと思いますよ」

 

その言葉に、教授は持っていたナイフを落とした。軽快な音がするので顔を上げると、いささか驚いたように私を見ている。

 

「...ここは戦前か?」

 

「なんと言いますか、うーん。他の子供達はスクールに通っていたんですけど、なにせ劣悪な孤児院だったので人手も足りなくて。私はずっと家事をやったりしてましたし。多分あれは、上の方の人たちが寄付金とかせしめてたと思うんですよね」

 

「この時代とは思えぬが?」

 

「今思えば魔法みたいな話ですよね」

 

私はそう言いながら、もう潰れてしまった孤児院にそこまで思い入れはなかった。エリーさん達が何をしているのかも、ロベリア達の現在の様子も、何もかも知り得ないのだから。

 

「どこでレポートの書き方を学んだのだ」

 

「独学で充分です。子供たちの教科書も読ませてもらってから勉強も教えてました」

 

「ふむ...」

 

「...誤字、と。はい、E」

 

教授は聞かなかったことにでもしようとナイフを再び手に取り、何かを刻み出した。そう、過ぎた話なのだからもう気にしてはいられない。私の帰るところはもう無いのだから。

 

「教科書引用だけじゃなくて、自分の考察とか意見とかをちょっと入れるんですよ〜。スネイプ教授には負けずに頑張りましょうね、一年生。はい、Dのマイナス、と」

 

「貴様の方が厳しいと思うがな」

 

「気のせいです」

 

私はさっさとレポートの採点を終えていく。なるべくお名前を見ないようにするのがポイントだ。

 

「ポッターさんの家系って魔法薬学が得意なんですね」

 

「突然なにがいいたい」

 

「別に、特にですが...調べてみると様々なところでポッターと見るので先祖の皆様凄かったんだなぁと思いまして」

 

「...ポッターの父親は傲慢で高慢ちきで、虫唾が走る男だが成績は良かった。そして、ポッターの母親は...当時の魔法薬学教授にも気に入られていた」

 

「つまり、ポッターさんはサラブレッドってことですね。

ポッターさん、どことなく勘がいい感じしますもん」

 

「髪の毛をストレートにする薬など開発して、よほどくしゃくしゃ頭を気にしているらしいな、あの家系は」

 

「髪の毛ですか...教授も最近またゴワゴワなのでお手入れした方がいいですね」

 

「妙にやるとダンブルドアが良い人ができたのかと煩い」

 

たしかに..急にいい感じのヘアスタイルになったら私でも思う。教授は心底嫌そうな顔をして薬の調合を進めていった。

 

「...教授は、自己の証明をどうやりますか?」

 

「質問の意図が分かりかねる」

 

「セブルス・スネイプがここに居る、ここに居るのは私だと証明するにはどうしますか」

 

「貴様は哲学者にでもなるのかね。マグル学の受講は?」

 

「してませんね」

 

「ふむ...周囲の関係から得るしかあるまい」

 

「関係?」

 

「我輩がここに居るのを証明するのは我輩ではない。現在会話をしている貴様が我輩を認識しているのだから、我輩はここに居る。魔法薬学の教員、さまざまな立場が我輩を証明する」

 

「誰かが、教授を認識して初めて教授は存在している、ということですね」

 

「貴様は」

 

「同じ意見です。私たちってここにいるって、意識があるってだけじゃダメなんですかね」

 

「誰も気づかなければ、それは無いにも等しい」

 

教授はそう言って火から鍋をおろした。効能を確かめて瓶詰めしていく姿に、私はホッと一息ついた。何に疲れていたのかはわからないが、肩の荷が降りたような気がしたのだ。

 

「なぜそんなことを急に聞く」

 

「夢の中で自己の証明について考えたからです」

 

「勤勉を通り越してガリ勉らしいな、スリザリンの秀才殿」

 

「馬鹿にしていますね...話し言葉はダメですよっと...はい、うんうん、教科書丸写しからの感想文、違うのよ...はい、E」

 

「木曜日の魔法薬学は縮み薬をやる」

 

「突然ですね。縮み薬ってことは、誰かの動物でもひっ捕まえて後退させる気ですか」

 

「ロングボトムのヒキガエルでよろかろう」

 

「スネイプ教授がいつもいつも怖がらせているので失敗ばかりじゃありませんか」

 

「一年の時の爆発を忘れたのかね」

 

私ははてなんのこと、なんて思いながら首を傾げた。そして一年爆発、ネビル・ロングボトムで思いついたのだ。そうだ、初授業で針山なんとかで爆発させておできを作っていたはずだ。

 

「その時に私本当にいました?」

 

「...いなかったようですな」

 

「えぇ、多分いません」

 

「ロングボトムは目を離すと何を仕出かすかわからん。見張る必要がある」

 

「もっと優しく、ロングボトム...それは違う。落ち着きたまえ。とかですよ」

 

「それで落ち着けるようならば、毎回の失敗はないと思うがね」

 

「否定しません。あ、このレポート意外と良いですね。教授、D+あげたいです」

 

そう言ってレポートを見せると、添削を終えた教授は頷いた。そして隣で私が採点したレポートを読み始めるのだ。

 

「ふむ、文章添削でB+をやろう」

 

「そう思うなら成績表を秀にしておいてくださいね」

 

「大体貴様は加点せずとも充分に感じますがな。レポートもグレンジャーと引けを取りまい」

 

「年下に負けそうなの気にしてるんです」

 

私はそう言ってレポートの話し言葉に線を引いた。そしてふと顔を上げると時計は午後十九時を指している。晩御飯が運ばれてくる。そう思ったタイミングで、テーブルに次々と料理が出現しはじめた。最後のレポートにD−と付けてから、私はゆっくりとインクの蓋を閉めるのだ。

 

「ふむ、採点に問題はないようですな。今年はCもおらんのか」

 

「残念ですね。ディナーが運ばれてきたので食事にしますよ」

 

教授は羊皮紙を全て丸めると、1箇所にまとめて新たな羊皮紙を引き寄せて戻ってきた。そして羽ペンもそばに置くので、メモを取るのだろう。

 

「脱狼薬の調合の配分を少し変える」

 

「また変えるんですか」

 

「まだ改良や余地はある」

 

「そうですけど...トリカブトの処理追加しておいた方がいいですか?」

 

「注文しておく。それより、縮み薬に使う材料の下処理をしておけ」

 

「食事の後でいいですか?」

 

「かまわん」

 

私はその言葉にテーブルへと向かった。切られたローストビーフをトングで掴み、綺麗に盛り付けていく。

 

「ローストビーフ何枚ですか」

 

「五」

 

「今日はどうせ羽ペンとかも使うと思ってサンドにしましたよ。どうせならルーピン先生も来ればよかったですね」

 

「あの男が気に入ったのか」

 

「...美味しいって食べてくれるのって凄く嬉しいことなんですよ」

 

その言葉に、教授はさっと目を逸らした。普段から言ってないことがバレバレの動作だ。別に言ってくれなくても慣れているし、ただ言われると嬉しいよねって話なだけなのに。

食事をセッティングし、私たちは席について話し合いを始めた。

 

今度は脱狼薬に人狼の血を入れるとどうなるかの実験を本格的に進めようとしているらしい。ルーピン先生の報告を読みながら、私たちは長いことそれについて話し合ったのだった。

 

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