アイドルマスターシンデレラガールズ 疾走のR   作:ヒロ@美穂担当P

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ここからクロスオーバー要素が増えます。
いよいよ悪魔のZ登場です。


三章 悪魔のZ

自動車工場で、美世は愛車のエンジンオイルを変えていた。

オイル交換作業を進めながら、蓮のFD3Sと走っていた時の事を思い出していた。

蓮が見せたハイレベルな走り。そして一時的にとはいえ、蓮のFDは美世のR34と互角の立ち回りをしていた。

19歳という若さでどうしてあそこまでの技術を持っているのか。

 

右手でドレンボルトを取りつける。手で絞めつけた後にメガネレンチで適切なトルクで増し締めをする。

(あたしが出来ることは、自分のRを信じて自分の走りをするだけ)

メカニックとして。走り屋として。美世にはプライドがある。

「美世ー、聞いてるか?」

後ろから呼びかけられ、ハッとしながら美世は振り返る。

「集中するのも良いけど、仕事はやってくれ・・・」

美世が働く工場の親方だ。彼も昔、首都高を走っていた走り屋だったそうだ。親方は美世に注意を促す。美世が整備しているのは客の車ではなく、マイカーだ。

「あっ、すいませーん」

全然心のこもっていない謝罪をした。

「それにしてもよ。気合入ってるじゃねぇか。なんかあったのか?」

「あたし、この間年下の子に負けそうになって・・・。あっちの車のトラブルで勝ったような物で・・・」

そう語る美世の目付きは、真剣その物。

「何にせよ、本気になるお前はこっちにとってもいい刺激になる。やるんならとことんやれ。・・・どうでもいいが光ちゃんのライブチケット持ってない?」

「持ってないですよ・・・」

美世が上京した15歳の時からこの工場でアルバイトしており、この親方に自動車整備のイロハとチューニングの基本を叩き込んだ師匠である。そして美世の所属する346プロダクションの売れっ子アイドルである南条光の熱狂的ファンである。ロリコンの疑い濃厚だが、メカニックの腕は超一流である。

とまあ、若干問題ありそうな人だが美世にとっては第二の家族みたいな人だ。15歳で一人上京してきた美世を仕事しながら、面倒を見てきたのだ。こんな人でも美世にとっては、とても恩がある。

美世が免許を持ってない時、一度だけ彼が運転する真紅のFC3Sの助手席に乗り、首都高を走ってもらったのは今でも覚えている。免許を持ったら、絶対走ると決めていた。

程なくRの整備を終わした美世は客の車であるワゴンRの整備に取り掛かった・・・。

 

丸一日かけて、ワゴンR以外にセルシオやパジェロの整備もして美世は一足早く仕事を終える。

着替えをして荷物をロッカーに仕舞った美世が工場を出ようとすると親方が美世に告げる。

「光ちゃんのライブチケット取れなかった・・・」

「えぇ・・・。なんであたしに・・・」

「まぁ、それはそれ・・・と言いたくないけどな。と言うよりコッチの方が言いたい」

「何ですか?」

「美世、悪魔って知ってるか?」

「知ってます。『悪魔のZ』でしょ?」

悪魔のZ。首都高を走る走り屋なら誰もが一度は聞いた事がある名前。

まるで意思を持つかのように、また「くるおしく身をよじるように」走り、何度もクラッシュを繰り返し、数々の死亡者や負傷者を出したことから「悪魔のZ」として伝説化したS30Z。

何故。今になってその名前が出たのか。

「最近、横羽線の方で見たってよく聞くんだわ」

あたしはオーナーが悪魔のZを「手放した」と聞いた。

何があったのかは知らない。でも、その男はZを降りている。

「もしも湾岸であったらちぎられるだろうナ」

「簡単に言わないでくださいよ・・・」

美世はRを走らせ、首都高へ向かった。

 

仕事を終わした蓮はある珈琲店にいた。

そこのコーヒーがすごい美味しいと評判で蓮も通っている。その為、その珈琲店の娘とも、顔馴染みであった。

また、首都高ランナー達がよく集まる店でもあった。

蓮はカフェオレを飲んでいた。ブラックコーヒーは飲めない蓮。偶然にも、そこの珈琲店の娘もブラックコーヒーが飲めないという。

カフェオレを飲んでると周りの客の声が聞こえてくる。

「おい、聞いたか!?」

「聞いたぜ。悪魔のZがいるって」

「あんな速いヤツ追えねーヨ」

悪魔のZは名前だけなら蓮も知っていた。

L28改3.1L。排気量3134ccツインターボ。その気になれば800馬力を発揮するという本物のチューンドエンジン。

見た事ないが、聞くだけでもレベルが高いのはわかる。

だが、蓮は何となくだが、こう思ってた。

「多分近いうちに見るんだろうな」

店員がカフェオレのおかわりを聞いてきた。

「あ、今日はあと帰るので・・・」

「いつもありがとうございます」

「また来ます、羽沢さん」

 

 

PM10:35。

美世はC1(首都高速都心環状線)を走っていた。

「いないなぁ・・・。すんなり会えたら苦労しないし」

その時、美世の耳に聞いた事のない音が聞こえてきた。

「これは・・・!?」

直後、バックミラーには明るい光が飛び込んできた。

空気が震える本物のチューンド

ミッドナイトブルーのそのボディは見た者を惹き付けるー

「悪魔のZーーーっ!」

現れた悪魔のZ。Zは美世のR34を撃墜(オト)すかどうか見定めているようだ。

その直後、5号線から1台のガヤルドが合流してきた。金持ちが乗ってそんじょそこらの車には負けないという、所詮「マナーが悪い雰囲気組」だ。悪魔のZと美世のR34を激しくパッシングする。

美世のR34が9号線辰巳JCTへ入る。ゆるく右に入るコーナーを半開(パーシャル)で抜け、立ち上がりでアクセルオン。そこから湾岸線合流。有明方面へ向かう3台。

11号台場線。レインボーブリッジをフルスロットルで走り抜ける。ガヤルドがまず悪魔のZを左からまくる。続いて美世のR。

「あばよっ!型遅れ!」

その瞬間、前のトラックが車線変更。ガヤルドの前に出てきた。ぶつかると判断しハンドルを切るが、コントロール不能。コンクリートウォールに激突する。

吹き飛ぶガヤルドのパーツを避けながら、ZとR34は浜崎線JCTへ。C1内回りへ進むルートだ。

事故でこれ以上湾岸線を走れないと判断したためである。

C1内回り浜崎橋より汐留S字へ。危険な銀座エリアを駆け抜けていく。直後、美世は信じられない光景を目にした。

GT-R以上の速度でインからGT-Rをぶち抜くZを。

動き方を見て美世は直感した。Zがドライサンプ化されてると。

ドライサンプとはEg(エンジン)潤滑方式の一つを言う。一般の車はウェットサンプでEgの下にオイルパンがあり、オイルポンプで圧送したオイルはEgをぐるりと回りオイルパンに戻る。35Rも含め歴代GT-Rは全てこの方式を取っている。

ドライサンプはオイルタンクを外部に設定しオイルパンは存在しない。レーシングカーは基本的にこれを採用する。だが市販車もドライサンプ式を採用している車両が存在する。空冷エンジンのポルシェ911やフェラーリの車両がそうだ。

ドライサンプのメリットは2つある。

油圧系の安定とEgコンパクト化による重心低下。

デメリットはオイル循環系のコスト増。

Egの重心がドライサンプ化で下がった事で外から見てもわかるほど軽快な動きをしていたのである。

前に出られた美世を嘲笑うかのように一気にR34を引き離して美世の視界から消えたZ。美世は驚くしかなかった。

 

 

次の日、工場で親方にこの事を話した美世。

「そりゃ相手が悪すぎるってモンだ。くぐり抜けてきた物が違う」

親方にバッサリ一蹴される。

「つーか、まだ生きてたのか・・・悪魔よぉ・・・。」

「というか『迅帝』は?」

「アイツはもう降りた。車も処分したと聞いてるさ」

首都高の走る伝説と呼ばれる走り屋。ベイサイドブルーのBNR34スカイラインGT-Rであらゆる首都高ランナー達を次々と撃墜した。しかし突然姿を消し最速の称号だけを残して消えた存在。

美世がバスで上京した時に見た車だ。もう存在しないという事実が美世に衝撃を与えた。

「えぇ・・・」

「アイツは引き時を探してたさ。ただ速く走ってただけでこう大きく盛り上げられてしまったんだ」

「『迅帝』が降りても『悪魔』は健在だ。お前が追うのはもう居ない方より今存在してる方じゃないのか?」

「・・・ですね」

 

蓮は今日は地方営業だ。年少組達の営業に出ていた。

赤城みりあや龍崎薫といった元気いっぱいのアイドル達とバスで昼ごはんを食べていた。

渋滞でなかなかバスが進まないのである。

「渋滞でごめんね、みんな」

「ううん、だいじょーぶだよ、プロデューサー!」

みりあが答える。

「うん・・・プロデューサーも・・・ペロも一緒・・・。楽しい・・・」

「みなさんと一緒にバスでお弁当を食べるのも楽しかったですよ〜。ヒョウくんも、お腹いっぱいみたいで〜」

みりあと薫がみんなの箸とプラスチックを手早く集める。

すると窓の外に大きな山が見えてきた。

「見てみて、プロデューサーくん!あっちにおっきい山が見えるよ!あれって富士山!?」

「そうだよ。あれが富士山だよ」

「あれが日本一のお山なんだー!愛海ちゃんがいたら登りたがったかもね!」

「せんせぇ、かおる、知ってるよ!富士山には、やっほーって叫ぶんだよねー!やっほー!」

「「やっほー!」」

「やっほーです〜」

「・・・やっほー・・・」

蓮も一緒に叫ぶ。

「やっほー!」

 

「あっ!これってもしかして、カラオケの機械?ねぇねぇプロデューサー、お歌うたってもいーい?」

「いいよ」

「やったー♪みりあ、歌いまーす♪プロデューサー、なんでもいいから曲おねがーい!」

蓮が機械を操作すると『TOKIMEKIエスカレート』が流れ出す。

「あっ、美嘉ちゃんの曲だー!それじゃあみんなっ、一緒にー!」

この後みんなでカラオケ大会した。

 

それからしばらくして。

みんなアイドル達はみんな眠ってた。スタッフが呟く。

「・・・みんな、はしゃぎ疲れて寝ちゃったみたいですね」

「あっ、騒がしくてすみません!」

「いえいえ!みんな、とっても可愛くて。元気な声が聞けて楽しかったですよ」

「毛布はありますか?」

「あっ、はい!すぐに用意しますね♪」

 

「みんな、お疲れ様」

一人山形から上京した蓮にとって見るもの全てが新鮮だった。

本でしか見た事がない、富士山。蓮は上京してプロデューサーをやってると言う実感がやっと湧いている感じだった。

その一方で首都高に対する思いは冷めない。

再び美世と戦う事を信じて。

 

 




今回ついに悪魔のZ登場!また、様々なコラボネタやパロディが入っています!恒例のネタの解説です。
・工場の親方
光のファンである彼。真紅のFCの助手席とありますが、これでピンと来た人はすごいです。
本名は「内藤健二」といい、首都高バトルでは『追撃のテイルガンナー』と呼ばれてました。本編開始数年前に走り屋を引退してますが、一線を退いたFCに美世を乗せて首都高を走った事が美世が走り屋になるきっかけになってます。
・悪魔のZ
湾岸ミッドナイト本編を見てる人は知らない人はいない主人公朝倉アキオの乗機。細かい説明は省きますが、本編終了後にアキオが手放した事になってます。手放した理由はご想像にお任せします。
・蓮の行きつけの珈琲店
「珈琲店の娘なのにブラックコーヒーが飲めない」「羽沢さんと呼ばれる店員の娘」でバレバレだとだと思いますが、「バンドリ!」の『羽沢つぐみ』がゲスト登場してます。この世界ではガールズバンドが活躍しており、「パステルパレット」は346プロとは別の事務所の有名アイドルとして登場する、という世界観です。なお、キャラの年齢はシーズン1に準拠してます。
・迅帝の消息
首都高バトルではラスボスとして登場する迅帝ですが、内藤が語ってるように物語開始前にR34を降り、走り屋を引退しています。そのため、この物語では迅帝は登場しません。(重要事項)
何故降りているかと言うと、現実の走り屋の場合でも栄枯衰退は必然だと思います。何よりも、ゲームのライバル達のその後を書きたかったという点は大きいです。
・蓮と年少組アイドル達の地方営業
デレステ内の中央地方の営業コミュ「ちびっこ達、帰りのバスで」が元になってます。富士山見てみたいですね。


最後に私情で申し訳ないのですが、今後は学校の関係で更新が遅くなると思います。できるだけ早く更新するよう心がけていこうと思いますが、どうしても遅れる事があるかも知れません。ご了承ください。
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