俺は北山家の居候   作:Maverick

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めっちゃお待たせしました。多少の加筆修正すら億劫になるほど忙しい日々を送っていたということでここはひとつお許しください…。

改めて見て自分の稚拙な文章に嫌気がさしましたがもう知ったこっちゃないです、黒歴史製造はまだまだ続きます。

では、どうぞ。


入学編.1

かなり余裕を持って家を出る。

ドアを開けると、庭に植えられている桜の花びらが舞っているのが見えた。改めて春を感じるとともに、この機械だらけの街の中を過ごすうちに無意識に貯まるストレスが霧散していった。

春の空気を肺いっぱいに充満させ、門を通って学び舎へ歩き出す。爽やかな追い風が辺りを駆け抜けた。

普段ぼっちを好む俺だが、今は隣に雫と小町がいる。航は初っ端から学校の方向が違うので、毎日寂しそうに家を出る。

大丈夫だ、お前も今の調子で行けば一年後には俺たちと一緒だぞ。3人でいってらっしゃいを言うのを忘れない。

途中で小町と別れれば、駅までは雫と二人きりになる。自然と、頬が赤くなる。途中、洋服屋のショーウィンドウに映った俺の顔は、春の花より、霜で色づいた葉より赤かった。

会話については問題ない、伊達に長いこと一緒に暮らしていないのだ。

だからと言って緊張しないのと、会話が不自然にならないのは、訳が違うから俺の心臓は常に徒競走したあとみたいだが。

白状すれば──もっとも、今までのモノローグでわからないやつは朴念仁だが──俺は隣を歩くこの少女を、恋愛的感情の面から好いている。

俺にとっての救世主がこんなに可愛くて優しくて魔法師の卵としてかっこよければ、そりゃ惚れないわけがない。

そんなありふれていて当然なことを考えながら、雫と雑談していれば駅にはすぐに着いた。

雫といるのが楽しいからか、時間の流れがあっという間で、あまりの単純さに我ながら呆れてしまう。水色の髪のカフェの店員さんの嘲笑が頭に浮かぶ…可愛いからいいや。

 

「雫!八幡!」

 

「おはよう、二人とも」

 

駅で俺たちを待っていた二人のうちの一人、光井ほのかがこちらに気づき、名前を呼んで手を振ってくれる。

俺は手を上げるに留まるが、雫は二人に挨拶する。

 

「朝からあついねえ、まだ春なのにブレザーを脱ぎたくなるぜ。全く」

 

朝からそんなことを言ってからかってくるのは、焔緋ケオ。ギリシャ人の母とエレメンツの父を持つハーフ才能マン。

その苗字に負けない、燃え盛るように鮮やかな赤髪をツーブロックにして前髪を上げてかっこよくキメている。母の血が濃く出ている顔立ちと髪が、フィクションのように完璧にハマっている。正直なところ、なんでこいつが俺の親友なのか分からない。見た目リア充層なんだけどなあ。というか俺以外の三人全員リア充層なまである。恵まれてるな、俺。しみじみ。

 

「そんなんじゃないって。行こう、ほのか」

 

そう言い残すやいなやとっとと先に歩いていってしまった雫。顔が赤い気がした…怒らせてんじゃねえよ。

ま、待ってよ〜と雫を追いかけていくほのかを見届けつつ、俺は肘でケオの脇腹をどつく。

 

「おい、お前からかうのもいい加減にしてやれよ。俺は嬉しいが、雫は迷惑に思うだろ──怒ったあの機嫌治すの俺とほのかだぞ」

 

「怒った──ねえ。ほんとに怒ってんのかは、どうか分かんねえよ?」

 

ニヤニヤしながら言ってくるのにかなりイラッときたけれど、特に否定する意味も理由もなかったため、ひとつ大きなため息をして二人の後を追うべく歩き出した。

四年以上一緒にいるんだから、怒ってるか怒ってないかなんてすぐ分かるんだよ──今回はケオに対してイラッとしてた感じ。しかもあれは俺に大して引け目を感じてたな…えっ、なにそれ恐れ多い。けど嬉しい。

雫たちの後ろに並んでキャビネットを待った。二人乗りが二台続けて来たのでそれに男女で別れて入った。

ケオはワクワクしつつ端末を触っている。そうだ、さっきの仕返しをしてやろう。

 

「なあケオ」

 

「なんだよ」

 

「ほのかにはいつ告白するんだ?」

 

勢いよく咳き込んだのを見て満足したので、もう何も言わなくてよかったのだが、ケオは律儀にも俺の問に答えてくれた。

 

「今年中…そうだな、九校戦までには、伝えたいな」

 

ケオの顔が髪に負けず劣らず朱に染まる。誰得だよ。

お察しの通り、ケオはほのかに好意を寄せている。傍から見ていればほのかも満更でもない様子だから、もうひと押しふた押しすれば付き合えるだろうが…見た目にそぐわないチキンぷりで二年あまりの両片思い?が続いていた。

俺にからかわれ腹が立ったのか、西方くんのように稚拙なからかいを返してきた。よってケオのからかい指数は中一レベルである。俺がラディッツならゴミめと吐き捨てるところだった。

 

「そういうお前はどうなんだよ?お前だって告白できてねえじゃねえか」

 

「北山邸にお世話になってるうちは言うつもりないけどな」

 

「ほーん、まあお前らしいっちゃらしいか」

 

渋々ながらも納得する素振りをしたもつかの間、首をブンブン横に降り始める。

数年前ならここは電車で、変質者扱いだったろうな。

 

「そうじゃねえよ。ぶっちゃけるが、雫はもうお前の告白を待ってるまであるぞ」

 

「──何言っても聞かねえな、その顔だと」

 

「まあな」

 

ケオは俺にとって三番目に付き合いが長い人なのだから、それくらいは分かる。

ちなみに一番が小町、二番は北山家とほのかだ。

ともかくそれほど長い付き合いということもあって、彼が嘘をついているようにも思えないし、同じく彼がそういうことで勘違いや思い違いをすることはないほど、見た目にそぐわない慎重さを備え付けているのは知っていた。

なら、信じてみようか。

 

「そうか──ま、前向きに善処するよう検討しとくわ」

 

「なんだよ、それ。ほれもうすぐ着くぞ」

 

前向きに検討すると善処するという、なんとも表面とはパラドックスな意味を持つこのワードたちのシナジー効果によって俺が伝えたかったトピックは、残念ながらケオには通用しなかった。

つまり、やる気はない。

駅についてキャビネットから降りた時には雫の機嫌はすっかり元通りだった。テトテトと俺の横に歩いてきてこちらを見上げ、ニコリと笑った。

 

「行こう?八幡」

 

「ああ、だな」

 

最寄り駅から歩いて数分、この高校のための駅だから当然だがすぐに一高に着く。

正面の校門から見える校舎は、威圧感さえ感じられた。しかし敷地内に入った途端にその雰囲気は霧散、空いた空間に滑り込むようにして上級生や教師達からの歓迎する雰囲気が流れてきた。

入学式前で慌ただしい様子だ。それでも、見える新入生は少ない。時間としてはまだまだ早いのだ。

これはひとえに、人混みが苦手な俺に三人が合わせてくれたおかげだ。感謝カンゲキ雨嵐。

そういう訳で俺達にはなかなか時間の余裕があった。

 

「あ、あそこにベンチがある!座って時間潰そうよ」

 

そのほのかの提案に乗らない理由は誰も持ち合わせてなかったし、持ち合わせていたところで断る理由はなかった。

向かい合わせの二人がけのベンチ二つセットが、だいたい八メートル四方のスペースに六つあった。

校門から見て奥の左に俺、横はケオで俺の向かいが雫、ほのかはケオの向かいだった。

だいたいこの四人で向かい合わせに座るとなるとこうなる。暗黙の了解、というやつである。

クラス分けへの不安などのこれからの高校生活に思いを馳せた雑談をしていた時、雫とほのかの視線が動く。二人は顔を見合わせて同時に立ち上がりたったったっと小走りしてこの場を離れてしまった。

目で追いかければそこには重そうな荷物を二つ抱えて運ぶ女生徒──おそらく上級生だろう──が二人いた。雫たちは彼女たちに話しかけ力になりたい旨を伝えているようだった。

取り残された俺たちは、苦笑を浮かべる。

 

「また、か」

 

「また、だな」

 

俺に続いてケオもボヤく。

あの二人、困っている人がいれば大抵何をしていても、相手が誰か知らなくとも助けようとする傾向がある。

それは美徳だとは思うけれど、ただあの重そうな荷物を運ぶのに、あいつらが加わったところでなんだかなぁという感じである。

ため息をついたケオが立ち上がって頭をひとかき、行ってくると呟いて行ってしまった。四つあるうちの一つを雫とほのかで運び、残る三つを上級生とケオが一つずつ運んでいった。

となればやはり俺は一人、別段その事に問題は無い。三人の案内が少しでもできるようにと、敷地内を歩き回ることにした──と言っても、手持ちの端末にマップデータは入ってるんだが。

ぶらぶら歩いていると、とある自販機横のベンチに見知った顔がいた。足をそちらへ向けた瞬間にこちらに気づいた相手には、一科生のエンブレムがなかった。

 

「よう、シルバー。一高入れたんだな」

 

こいつの評定基準での実技能力は小耳に挟んだことがあったため、少し皮肉をブレンドしながら話しかけた。

 

「比企谷か、というかここで俺をそう呼ぶのはやめろ。でないと俺もお前をレンズと呼ぶぞ」

 

「脅しか、しかしそれは効かない。なぜなら俺はお前の本名を知らないからな」

 

「──はあ。司波だ、司波達也。達也でいい」

 

絶句して固まっていたシルバー…改め司波が本名を名乗る。いきなり名前呼びが無理なのはデフォ。

俺とこいつは同じ会社に出入りする超新星としてお互いを認知している。

片や『新技術』のトーラス・シルバー。

片や『未来スペック』のグリム・レンズ。

世界レベルのCAD開発を主にする会社、FLTでのお互いが持つブランド名だ。

 

「お前は、一科生か」

 

「ああ…手抜いて二科生なんてやっちまったら友人達に弾劾裁判される」

 

「訳が分からん」

 

司波が自分の隣の空きスペースを指さす。特に断る理由が見つけられなかった俺は渋々座った。

 

「たまにお前のCADの実験を見るんだが──」

 

「何盗み見てんだよ」

 

「まあ、そこはお互いだろ?」

 

バレてたのか、俺が部下からこっそりトーラス・シルバーの技術実験の様子の動画を仕入れていることが。

なら、お互い不問としよう。それを伝えると司波は肯定の頷きを返してきて、会話を再開させた。

 

「お前なら総代行けたんじゃないか?あそこまでのCADをつくる座学教養もあれば、実技能力も申し分ないほどあるだろう」

 

俺は自身の開発したCADの実験を部下にさせたりしない。単純なことで、それがもし暴発して被験者が怪我を負ったとしても俺は責任を取れないから。

今や会社を支える大きな柱とまでされている──まだブランド設立から一年も経っていないのにそれはどうなのかと思う──が、蓋を開ければただの魔法科高校生なのだから。しかもひと月前までは中学生だ。

結局のところ何が言いたいのかというと、実験の映像を見られるとはつまり、俺の魔法師としてと実力と魔工師としての手腕を見られるということになる。

なにそれ恥ずかしい、リークルート見つけたら即断絶せねば。え?人材派遣?それはリクルート。

 

「友人たちに土下座してそこは手を抜いた」

 

「面倒くさがりなのか」

 

「基本的には、そうだな」

 

と言うより知らない人との交流はなるべく少なくしたいと思うだけだ。多くしすぎると人間強度が下がるから。

友人なんてあの三人でおなかいっぱいだし、別腹デザートだって司波で問題ない。

デザートに司波というイメージは問題かもしれないし、そもそも司波が友人かも怪しいところではあるが。

けれど俺の友人が欲しいという欲は、その程度で十分満たされるものだった。狭く深くがモットー。

 

「…時間も時間だな」

 

ふと司波が呟く。時間が気になって端末を開くと入学式まであと十五分を切っていた。

こいつの体内時計すごいな。

と、開いていた端末に連絡が入った。アイガッタメール。

送り主は雫、内容は『講堂前、あと五分』とだけ。

うーん、ちょっと怒ってるけどそれ以上に俺がなにかに巻き込まれたのか、万に一つ帰っちゃったかと思って心配してるな。それとあと五分と言っときながらも四分で行かなきゃ怒られるし、今返信しないと怒り三割増しの攻撃を食らうことになりそうだ。返信しないけど。

潮さんと紅音さんに雫検定準一級を貰ったのは伊達じゃない。雫本人にバレた時には軽く引かれた。軽くで済むのか。

立ち上がり数歩行って振り返る。

 

「行くぞ」

 

「お前の友人だって一科生だろ。俺は」

 

「いいから来いっ!」

 

変に遠慮しようとしている司波を無理やり引っ張って講堂へ向かった。らしくないことをしてしまったが、流石の俺でも浮かれているということで見逃していただきたい。あとそんな俺たちを見てきゃーと叫んでいた女子どもを個人的には見なかったことにしたい。

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