俺は北山家の居候   作:Maverick

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なんか自分で納得いかない文ではあるんですが書き直す気力もなく(多分するとなると最初からになるので……)しかしまあ生存報告というか、気まぐれ更新とも言いますが、一応出しておこうかなって。

優等生アニメも決まりましたからね、雫ちゃん大暴れしちゃってくださいな。


入学編.5

今日も昨日の通りに朝を過ごし、そして高校前の駅まで来た。昨日と同じだったのはここまでで、駅から出ると少し前を達也と深雪が歩いていた。事情を知らない一般人は、達也は二科生で可哀想(笑)とか深雪にあの男は釣り合ってねえ俺が変わる!とか思うんだろうな。俺か?仲睦まじい兄妹は推奨してます。約一年違いの兄妹と知った時は驚いたが。

雫とほのかが深雪に駆け寄ってしまい三人で会話を始めてしまったので、俺たちも達也に話しかけようとケオが近づく。仕方ない、か。

 

「よっ、よう、達也」

 

昨日の帰り道に雫に命令され、結局全員を下の名前で呼ぶことになってしまった。納得いかないが…基本的に俺は雫より立場が下なので大人しく従う。噛んでしまった事は目をつぶって欲しい。まじのかみまみたなので。

この立ち位置は決して俺が悔しながらも甘んじているわけではなく、好きでこの立場に落ち着いている。恩人より上の立場なんて以ての外だし、雫と並ぶのはまだ恐れ多い。けどまあ、そのうちに、うん。

 

「おはよう、八幡、ケオ」

 

「うーっす。兄妹仲が良さそうで羨ましいねえ」

 

こいつ、一時間に一回くらい誰かを茶化さないと生きていられないのか…?

だがそんな茶化しなど、どこ吹く風と受け流す達也。独特のクールな雰囲気は男の俺からもかっこよく映った。

校舎に入ると達也だけ別れてしまった。

二科生と一科生は使う昇降階段すら違うのだ。ここまで徹底して区別意識を持たせる執念は、もはや敬意を払いたくなる。

教室に入ったあとも俺たち五人で会話を続けていた。クラスの男子からの視線が痛い。んー、これは保護対象に深雪も入れておこうか。

ケオと俺が共有する想いの一つに、雫とほのかにどこぞの馬の骨を近寄らせないというのがある。そして、俺は兄への慕い様で深雪と小町が重なってしまい、どうしても同級生相手にしては過保護がちになりそうだ。それで万一達也にあらぬ疑いをかけられても後味が悪い。あいつシスコンだからそんな身に覚えのないことで怒られたくないし、怒らせると絶対怖い。そんなことがあったら死人が出そうだ。

一応、お兄様の許可を取っておこうとメールを入れる。連絡先も昨日の雫令によるものだ。

 

『達也、クラスの男子の視線が深雪に刺さりまくりなんだが、これからフォロー入れていけばいいか?』

 

『そうしてくれるのは有難いが…負担じゃないか?』

 

『ケオもいるし問題ない。2人から3人になるだけだ。この画面も見せてる』

 

『そうか。2人はよほど雫とほのかが大事なんだな。よろしく頼む』

 

了承を伝えアプリを閉じる。恥ずかしいこと言うなやくそ。俺たちの顔が赤くなってないかお互いに確認する。どうやらお互い、少し赤いようだ。

軽くクラスを見渡す。このクラスにまともな奴は…見た感じいなさそうだ。なら、仲良くする意味もない。男子のひそひそ話が耳に入る。

 

「いいよなあ、女子は。深雪さんに近づきやすくて」

 

「あの男らはなんなんだ?」

 

「司波さんと話してる二人と仲いいから、おこぼれもらってるんじゃね?」

 

「羨ま〇ね」

 

俺の本命は雫だし、ケオの本命はほのかなのだが…。勝手に勘違いしてもらっては困る。

しかしそう言うと、深雪にかかる火の粉が増えそうなので耐えることとした。

しばらくすると校内放送が流れ出した。どうやらオリエンテーションが始まるらしい、全員が席に座る。

すぐにクラス毎に配属される指導教官が入ってきて簡単に挨拶をした。ありきたりと言うか…より差別意識を強める内容だと思った。変な競い方をさせる…。まあ選民思想の持ち主らにとっては一番の活性剤なのだろう。ドーピングとも言う。

これからの予定を伝えられるも、どうやら基本的には自由行動らしい。なら俺がすることはひとつ、サボる!

 

「ダメだよ、八幡」

 

先生が去ったと同時に雫が俺の席に近づいてきた。

 

「…いつも思うんだが、なんでピンポイントで考えてることわかるわけ?なに、そんなに顔に出る?」

 

「出やすい方だけど、ここまで詳しくわかるのは私だから」

 

出やすい方と聞いてショックを受けるも、その後に続いた言葉にドキリとする。これはもう実質告白では?いやいやこうやって勘違いして告って振られて家の雰囲気が気まずくなって俺が単身家を出ることになるんですね分かります。

そうなるのは嫌なので流すことにする。

 

「にゃ…んんっならいいが」

 

はい噛みました恥ずかしい。ばかじゃねーの?ばーかばーか。何も流せてねえよ。

俺達が話しているあいだに、ケオとほのかは深雪の方に行っており周りを牽制していた。俺たちも行くかと静かに目配せしながら立ち上がる。前を歩く雫と、三人の元へ向かう。

 

「これからどうするよ、深雪」

 

「私は先生について見学しようと思ってるけれど、ケオとほのかは?」

 

「まあそうだよな、俺たちもそのつもりだ。一緒について行っていいか?」

 

ナイス誘導だ、ケオ。変にコソコソしないで周りに情報を与えているのが、無自覚だろうがナイスプレー。

こういう時、自分の知りたい情報を隠されるとイライラが一気に溜まり、危うい道へ足が向いてしまいかねないのがなかなかあってしまう。周りの男子勢はよしっ、と意気込んでいた。

 

「まあ、八幡はサボろうとしていたけどね」

 

「もう!ダメだよ、八幡」

 

「…すみませんでしたー」

 

雫が零した俺への愚痴にほのかが乗っかり注意して、俺が適当に謝罪する。俺たちからすればいつものやりとりだったのだが、これを見て深雪が少し笑顔になる。どうもピエロです。まあかまわん。

恩人の友達に楽しく過ごしてほしいと思えないほど、俺は腐っているわけじゃないのだ。

 

 

*****

 

 

五人で先生の解説付きの見学の最前列を歩く。途中でうちのクラスの男子──森村だったか?──がドヤ顔で先生の質問に答えるも残念賞を貰い受け、直後深雪がなんてことないふうに正解を答えた時には俺とケオで大爆笑してやろうとしたが、流石にやめた。悪目立ちはしないって、決めたんだ…!

その森川が、司波さんは僕の失敗の尻拭いをどうのこうのと変に勘違いしているのには流石に引いた。

その直後は昼の休憩となった。カツオ〜ご飯の時間よ〜。

深雪が食堂を使いたいと言うのでケオが先に席を見に行き、その間に俺は尿意を解放しに行っていた。戻るとそこに三人はおらず、一科の女生徒が数人いるだけだった。

なんだか嫌な予感がする。そして、俺の嫌な予感は結構な確率で当たる。

とりあえず情報を得たい。…話しかけたくはないが、仕方ない。勇気を振り絞る。

 

「なあ、雫…北山たちが何処に行ったか知らないか?」

 

「わっ…えっと、もしかして司波さんと一緒にいた女の子のこと?その子達ならなんか変なグループに半ば無理やり食堂に連れてかれてたよ」

 

「そうか、助かった。ありがとう」

 

「ううん、気にしないで!」

 

いい人だな。A組ではなかったと思うし…ほかのクラスの人だろうか。

中学までクラスのやつに興味はなかったがケオが名前くらい覚えてやれよと言ってくるので、顔と名前だけは初日にできるだけ覚えることにしていた。そうしていたら、そのアドバイスをした張本人に極端すぎると引かれたが。

それはともかくとして、急ぎ足で食堂に向かう。案の定というかなんというか、そこは修羅場と化していた。急いで胸ポケットをまさぐる。

 

「席を譲ってくれないか?補欠くん」

 

そう言ってのけるフォレスト・ストリームくんの眼前にはエリカと美月、達也とあと一人、二科生の男子がいた。エリカは何こいつ?みたいな顔をしており美月はどうしよう?って顔。名前の知らない男子はかなり目つきが悪い。俺が言えたことじゃねえな。

流石に咎めないのは深雪としては不満でならなかったらしい。

黒森の方に振り返り口を開いた。

 

「あの」

 

「わかった」

 

しかしそれを達也が遮る。

ガタンと席を立ち既に食べ物が置かれていないトレイを持ち上げる。五つあった席の空席の一つを森森が引く。深雪をそこに座らせようとしているようだ。

 

「ウィードはしょせんスペア。一科生と二科生のけじめはつけないと…みんなもそう思うだろ?」

 

その言葉を皮切りに周りの一科生が好き放題言う。

はっは、なかなかに無様な光景だ。今はなんとか我慢してやるが、もう一度こんなことがあれば絶対我慢出来ん。

幼稚な一科生の相手をするのが嫌になったかエリカたちも席を立った。達也が去っていく時に深雪に口パクをしていた。読唇術で読み取る。

 

『騒ぎは起こさない方がいい』

 

…出来た兄だ。実は感情がほとんどないんじゃないと思えてくるほどだ、ロボットかなにかなんじゃないのか?ただ深雪の表情が少し暗くなったのは見ていて少しつらくもある。

気づくと雫とほのか、ケオが先程一科生が略奪した席に悠然と座っている。おいおい、これ以上ヒートアップさせるつもりか?当然の帰結として、モリサマーが声を荒らげる。おっと視界の端で茶髪の美少女がガタリと揺れた気がしたな。

 

「またきみ達か!君たちは何のつもりなんだ、少しは司波さんと話をさせてもらってもよくないか!?」

 

「深雪、八幡。座ってよ」

 

「おう」

 

雫が林原を無視して俺たちに声をかける。こういう時、どうしたらいいのか、わからないの。

なんて事はなく、こういう流れにはもはや慣れているため、余裕の態度で席につく。未だに深雪は混乱しているようだがそれでも、残しておいた、達也が座っていた場所に座る。若干嬉しそうな顔してるのは勘違いですかそうですか。

 

「おい!話を…」

 

彼が言葉を止めたのは多分俺がいきなり胸ポケットを漁り始めたからだろう。そこから出てきた右手に握られているのは、黒色の小さな機械。ちょちょいと操作して音を流す。

 

『ウィードはしょせんスペア』

 

「この録音、生徒会に提出したらどうなるだろうな」

 

「なっ!?」

 

この二日間でもっとも木村の顔が驚愕に染まる。が、冷静さを欠きながらも反論してくる。

 

「ふ、ふんっ。貴様の言葉など生徒会役員が信じるわけもない」

 

「どうだろうな。ここには、少なくとも俺の方につきそうな証人が四人いる…さっきお前らを見かねてどいてくれた四人も証人。八人もいれば十分すぎるな。それに、現代の声紋認証は舐めたら痛い目見るぞ」

 

俺のロジックに押されつつもまだ言い続ける。

 

「は、はは…それでも俺は聞いているぞ!生徒会はこの区別を、一科生の優越を黙認していると!ならば同じ一科である会長は…」

 

瞬間俺の中で何かがぷつんと切れた。

ほう、七草さんのことを何も知らないてめえが言うか森崎。

さんざん心中でもふざけてなんとか怒りを鎮めようとしたがもう無理だ。

こいつはあの人が差別意識をなんとか取り除きたいと真剣に考えているのを踏みにじる発言をした、してしまった。からにはやはり、制裁が必要だな。

視界の隅で雫が呆れほのかが慌ててケオが面白がっている。ケオは後で制裁だな、拳で。

 

「おい森崎」

 

「な、なんだ?もしやお前も結局はこち」

 

「舐めんなよ」

 

周囲の音が確かに消え始める。それは感覚という次元ではなく、確かな物理現象。

突如として音が消える恐怖というのは、なかなか計り知れないものだ。今この場で唯一空気を震わせることが出来る声帯から声が発せられる。

 

「七草さんがどれだけ差別撤廃に奮闘しているか何も知らない奴が、エゴであの人を堕落させんなよ…次そんなこと言ってみろ、一生喋れなくしてやるからよ」

 

俺の腐敗した三白眼が鋭さを増し、森崎を突き刺す。完全に怖じ気づいた森崎が後ずさり振り返って机にどんどんぶつかりながら食堂を出ていった。それでも、音は鳴らない。

しばらく去っていった背中を見ているとおでこに何か当たる。途端世界に音が戻った。風の音、木々が揺れる音、食器と食器がぶつかる音、人が散っていく足音。

気づけば目の前に雫がいた。ハッとして雫に頭を下げる。

 

「いつも悪い…感情をコントロールできないのは、治さないとな」

 

「いいよ、私がそばにいるあいだは何時でも怒ったり泣いたりして──でも、最後には笑ってね?」

 

「──おう」

 

たまに真顔で恥ずかしいことを言ってくるのは極力やめて欲しい。こちらだけが恥ずかしくなる敗北感がすごい。

笑ってと言われたので、下手な作り微笑を雫に返す。彼女から帰ってきたのは、とても自然な微笑だった。

 

「えっと…八幡?」

 

驚き言葉を失っていた深雪が俺に話しかける。瞳に映る感情は疑心と興味。

目だけで先を促す。

 

「今のは…?」

 

「あーっと…お前でいう周りの温度の低下、と言えば分かるか?」

 

深雪の事象干渉の結果が冷却ならば、俺の事象干渉の結果は音の消失。

空気を振動させ音を出すという物体の情報を、非生命体に限り書き換える…つまり物体を振動させなくするのだ。だから多分声帯だけでなく指パッチンや拍手は聞こえるはずだ。

 

「え、ええ…けどそこまで七草会長が大切なのね」

 

「なっ!?」

 

からかうように放たれたその言葉は予想の斜め上をズドンと大砲でぶち抜かれそうな衝撃を俺に与えた。突かれたなんてそんな甘ったるくない。深呼吸して冷静になる。

どうなのだろう。俺は七草さんが大切なのか?好きか嫌いかで言えば、少なくとも大嫌いではない。が、やはり人種が違うため苦手意識は根付いている。それでも、荷物持ちが全く楽しくないなどと言うつもりはないし…大抵ヘトヘトになって帰るけれど、そんな日は間違いなく充実していたと満足するし熟睡できる。

こんな俺にとって、そんな人物は必要不可欠なのではないか。そんな気がしてくる。

 

「まあ、大切な──というか、俺みたいな奴の知り合いとして、一人はいていいタイプの人だな」

 

「酷く合理的な解釈をするのね、八幡は」

 

「相手による」

 

雫なら論理も理論もすべてぶっ飛ばして好きだから一緒に笑っていたいと思うし、ほのかもケオも大切な親友だから隣で話していてほしいとも思う。

こうして思うと、俺は四年半前からかなり変わっている気がする。それが少しむず痒い。

 

「ほ、ほら早く食べよ。時間無くなるよ?」

 

俺たちの会話をぶち切り昼ご飯を食べることを促すほのか。時計を探してみると、見学再開まであと二十分ほどしか残ってなかった。

 

「やべえやべえ、早く食っちまおう。ほれほれ二人とも仲良しなのはいい事だが、いい子でいねえと好き勝手できん」

 

「…俺は中学ほどお前に付き合って馬鹿やるつもりは無いぞ」

 

そうして昼休みは過ぎた。

流石にこれ以上森崎があいつらにちょっかいかけるつもりは無いだろう。…今日もまたみんなで帰るのだろうか、そう考えた後でそれほど嫌がってない俺がいることに気づいて自嘲的に笑う。

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