ゼロカラナリキルイセカイセイカツ   作:水夫

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六章分岐のIFルート。時間が無いため一話だけでもエイプリルフールに合わせて分割投稿します。
コミックアライブ短編の要素多め。


ついに終わった幸せ

 巨人が、大地を踏み鳴らした。

 そう錯覚するほどに重い足音が迫ってくれば、誰だろうと一度は足を止めて振り返ってみるものだ。そして、振り返ってそれを目にした者は揃って絶句する。喉を出掛かった驚愕が含むのは、二つだ。

 

 一つ。地震もかくやという地響きを伴って迫り来るモノ、その正体が一対の巨大な地竜だということ。

 一つ。二体の地竜に引かれる車体に掲げられて翻る旗が、隣国の国是を如実に刻んだ柄だということ。

 

 描かれたのは剣に貫かれた狼。命を串刺しにされ、けれども鋭利な眼差しから隠しようの無い覇気が煌々と覗いている。

『精強で在れ、さもなくば死ね』といった国柄を端的に表した絵図だ。豪快奔放なまでの在り方を以って大陸の南部に堂々と座する、それは神聖ヴォラキア帝国の二つとない印。

 照りつける太陽の光さえも弾き返す漆黒の地竜が、自らの巨躯をものともしない速度で街路を走り抜ける。国旗を背負って暴走するその重機関車を、呆然とした目で見つめる者はいても止める者はいない。いかに屈強な武力も強大な権力も、搭乗者の前では虫けら程度に過ぎないのだから。そもそもの土俵が違うのだ。

 

 もはや見慣れた反応を窓の外に追いやり、竜車内部の椅子に深々と腰を下ろした男──武力の土俵を別次元に置いた、九神将の『壱』セシルス・セグムントはため息を吐く。とうに見飽きた外の景色もそうだが、室内の冷えた空気を含んだこの状況そのものに、どことなく暇を持て余していた。

 

「ねえ、閣下。こんな悪趣味なものをわざわざ見せびらかす必要あります? 僕の足で一跳び、そうすれば断然早くて楽でしょうに」

「戯け者が。二度は言わぬと、余は先ほど伝えたはずだがな」セシルスの真正面、こちらは権力を遥か天上にかざす美青年だ。ヴォラキアの血を継いだ七十七代目皇帝、ヴィンセント・ヴォラキアは、しかし血気のまるで感じられない冷めた顔で問い返す。「首の上に飾ったその空っぽの頭はさぞ軽かろう。どれ、今すぐ切り刻んで確かめてみるか?」

 

 竜車よりも自身の足の方が早いと豪語するセシルスに、それとはまた別の方向で常軌を逸した発言が空気を震わした。皮肉が皮肉でなくなるどころか、端からヴィンセントの冷徹な言は全て、状況さえ許せば即座に実現してみせる類のものだ。

 ただしその脅迫も通じるか通じないかは相手による。そして相手がセシルスである場合、答えは明白と言えた。

 

「またまた、閣下ったらご冗談を。一国の王ともなるお方が、一人しか連れてきてない護衛をそんな気紛れに手放すわけ……あれ、なんで急に扉を開けるんです? 全開にすると『風除けの加護』が切れるかもしれませんよ?」

「知っているのなら、そうなる前に降りるが良い。剣を要する場面でなくては言葉を解さぬばかりか、相応の礼儀も心得ぬ愚物よ。今飛び降りるならその無礼も特別に許してやろう」

「いえ、あの、え!? 正気ですか!? 僕に、疾走する竜車から飛び降りろと? 特に意味もなく歩いて行けと?」

「これも二度は言わぬぞ。一瞬でも加護が切れて余の体を揺らしてみろ。──飛ぶのは、余の腰か、貴様の首か。見物だな」

「今すぐ降ろさせて頂きます! 主人公が一度や二度飛び降りてなんぼ……うわぁぁぁ──!?」

 

 騒がしい叫び声を扉の向こうに置き去りにして、竜車は荷物を降ろしたとばかりに加速する。立ち並ぶ家々の遥か彼方、遠くからでも堂々と聳える中心部の城へとヴィンセントは視線を向けた。

 相変わらず感情の起伏に乏しい顔のまま、鼻を鳴らして姿勢を正す。丁度、大通りに面した道だ。意も介さず通り過ぎる広場には人だかりが出来ており、彼らの注目を独占する掲示板に一枚の紙がでかでかと張られていた。それも国境を越えてから幾度となく目撃してきた光景だ。

 

『親竜王国ルグニカ王位選抜戦終結、本日を以って即位されるは銀髪のハーフエルフ──エミリア』と。

 

 

 †

 

 

 打って変わって、葉擦れが耳に付くほど長閑な場所もまた存在する。

 

「スバル。……どう、かな……?」

「E・M・Q……」

「え?」

「や、エミリアたんマジクイーンって意味です」

「もう。スバルったら、また変なこと言って誤魔化そうとしても駄目なんだからね! 今回ばかりは、ちゃんとした感想を聞かせてもらいます! 敬語も無し!」

「エミリアたんが急に思春期みたいになった! え、いや、その、似合って、る……よ?」

「人と話すときは目を見る! あと感情がこもってない! どうして疑問系なの!? やり直し」

「なんか、今日のエミリアたんやけにテンション高くない? それにちょっと、顔が、近……っ」

「近い? ──ぁ、いや、違うのスバル。別にそんなつもりじゃ、なくて…………ぅぅ、こっちまで恥ずかしくなってきたじゃない……」

「…………」

「…………」

「………………すごく綺麗、です」

「ぁ………………………………は、はい」

 

 ばんっ!

 木製のテーブルを叩き割らんばかりに振り下ろされた掌が、これに割って入る。

 

「ウチらは何の茶番を見せられとるんや!? 話し合いだかなんだかで呼ばれて来てみたら、関係者そっちのけで痴話交わすたあええ度胸やないか! 外交なめとるんか、ああ!?」

 

 細長いテーブルだ。料亭と見紛うほど派手なクロスの上を銘柄のお茶とお菓子が彩っている。囲むような等間隔で椅子が置かれ、一見すればどこぞの貴族主催の優雅なお茶会にも思える雰囲気だが、その実、ここはルグニカ王城の一室だ。

 その中でも特に贅と意匠を凝らした内装が華々しい応接室兼、今は会議室に使われていた。事前準備、もとい痴話をやめた二人は赤らんだ顔でようやく客人に向き合う。

 

「……えーと、全員集まったようなので、そろそろ始めたいと思います」

「説得力が皆無なんやけど」

 

 煌びやかな装飾が施された室内に、少々緊張感の欠けた声が響いた。有り体に言うなれば、この場を主導することに実感が追い付いていない、が正しい。

 

 それでも震えて声が出ないよりはマシだろう。口元に微笑みの弧を描き、顔を上げるエミリアの表情はとても穏やかだ。艶を濡らした銀光の長髪が、彼女の気持ちを代弁して弾むように靡く。その隙間からちらと覗いた紫紺の瞳も決意を結んで強く輝き、左耳辺りに留めた髪飾りに触れる指先は、透き通る眩さを反射する。

 下に続く白皙の肢体を、彼女は紅白の豪奢なドレスとマントに包んでいる。王族にのみ着ることを許された由緒正しい礼装だ。本来なら滲み出るはずの威厳を見事に相殺した可憐な顔貌で、部屋を見渡してから静かに頷く。

 

 その視線上にいた者たちの面々は、親龍王国四百年の歴史を辿っても希少に過ぎる光景を演出していた。

 グステコ聖王国から聖王、カララギ都市国家から大総領、そして神聖ヴォラキア帝国からは皇帝が出席している。ルグニカ以外に名を馳せる三つの大国、それぞれの頂に立つ代表だ。今代の統治者がこうして一堂に会した場が歴史的偉観であることに誰も異論はあるまい。

 そう。恐らくは初めて顔を合わせた三人が居心地の悪い威圧感を放っていたとしても、どちらにしろそれが偉観であることは論を俟たないのだ。

 

「おほん。えー、それではエミリア様の国王ご即位につきまして、この度、式典の前に顔合わせをしたく……あの、お集まり頂いた訳ですが…………訳です、が……もしもーし……………………あれぇー? これ、もしかしなくても誰も話聞いてねぇな……?」

「うーん……」

 

 そんな圧倒的で絶対的なオーラを醸し出す三人の耳に、今日この日、初めて王座に腰を下ろしたばかりの新米国王とその側近の言葉など届かない。いや、一応は呼びかけに応じて直々に来訪したのだから、拒絶ではない、はずだ。先の痴話で興を削いでしまったなどと、どこの王家が恥も知らずに言えようか。

 しかしそんな儚い希望を、ふと挙手した聖王の第一声が裏切る。

 

「お断り申し上げます。私は聖王様の代わりに派遣された使者でありまして。予め承った公的な言以外は立場上発言が難しい点、ご理解頂きたく存じまする」

 これに、怒りを露にしていたカララギの代表も乗ってくる。「……まあ、ウチもそんなところですわ。互いに発言には気ぃつけようや」

「マジかよ。言われたこと以外口に出せないって、来た意味ほとんどねぇじゃん! え、じゃあ皇帝陛下も……?」

 

 グステコとカララギの代表がまさかの代理という、歴史的偉観など犬に食わせたも同然の茶番劇を広げる中、スバルは最後の希望を求めて皇帝を見やる。

 もはや形式も何も知ったものではない。果たしてヴィンセントは、足を組んで仰々しく頬杖を突く。

 

「ふん。激務にかまけて一国の主としての礼儀を損なうか。揃いも揃って料簡のなんと狭きことよ、所詮は精霊と金銭に恵まれただけの臆病者よな……時に、凡夫。貴様は如何なる理由を以ってして余を許可無く視界に入れるのだ? 死にたいのか?」

 礼儀とは、何だったか。そんな馬鹿らしいことを考える余裕もなかった。「俺側近! エミリア様の護衛! そしてこの場の進行役! でも来て下さったのは誠にありがとうございましたぁ!!」

 

 そしてこの状況、事前の顔合わせとは言っているものの、結局は名ばかりのものに過ぎない。

 国民の総意、そして神龍の選択を受けて国王の肩書きを冠するに至ったエミリアだが、何分それまでの過程が特殊だった。国の根本的な方針が大きく変わる局面で、これまでと同じようなやり方をなぞるだけでは些かインパクトに欠ける。四大国の一角を担う立場として、少しばかり顔が立たないのだ。

 

 約四百年の空白期間、そして亜人戦争という内紛を経た四十年ほど前から、王と神龍との繋がりはルグニカ国内のみならず各国から疑問視されていた。伝承でしか語り継がれない彼の存在の庇護の認識は時が過ぎ行くほどに薄れ、一度はそこに付け込まれて呪龍の暴走を許した事もある。その際は神龍の恩恵によって難を免れたものの、三年前、王族全員の病没が新たに不安を上書きし、それを機に問題は再点火された。

 地盤の安定を取り戻す手段は、新たな王の器を選出し改めて神龍を迎え入れること。龍の威を借りるといえば前代の踏襲に過ぎないが、それが実際、国家間の諍いへの強力な抑止力になるのだから借りない手はない。

 ただ、立ち直すとなれば龍に頼り切りの姿勢もまた廃すべきものだ。ここ数十年の遅れを取り戻すための穴埋め、ひいては国力増強を最優先とする必要がある。

 

 従ってエミリアが国王に即位してまず手をつけたのが、世界へ向けた大々的な政治宣伝だ。

 親竜王国ルグニカは、神龍の庇護を再度その手に収めた。更には血筋を無視した新国王が統治を始め、変革の真っ只中にいる。それはルグニカ一国だけでなく周辺国にも少なからず影響を及ぼしうるものであり、もし誰かが流れを乱しでもすれば、その余波は国単位の問題へと発展する。好機だからといって不安定な足場を壊したら、かえって自身までもを滅ぼす羽目になるかもしれない──とは深読みか、否か。どちらにせよ、好き好んで賭博へ身を投じるほど三国とも愚かではないとエミリアは踏み切った。

 

「だから、どうせなら友好的な関係を結びましょう。相手を蹴落とすんじゃなくて、互いに助け合って進むの。龍の威が怖くても、協力し合ってそれが味方に回るなら、これ以上ない安心になるはずよ。違う?」

「それこそ賭博であろう。そこな代理とやらを見ても分からないのか? 四つの大国間に最も足りないのが、正に、貴様の大好きな友好だ。一方的な信頼に盲目的な信用、それで国が墜ちるのならば素人風情のままごとにお似合いの結果に違いない。貴様は三年間素人なりに精を尽くしたかも知れないが、その狭隘な視野に、国内のみならず周りの趨勢を入れる余裕があったか? 自国民が貴様の歪な理想像を認めたとて、他国からの認識は尚も銀髪のハーフエルフにとどまったままである貴様の言葉に、誰が愚かしく耳を傾けよう?」

 

 銀髪のハーフエルフ。その単語に、エミリアの眉が顰められる。

『嫉妬の魔女』が残した爪痕は、四百年の歳月を経てもなお深々と刻まれている。身体的特徴が似ているというだけの銀髪のハーフエルフでさえ、主に向けられるのは憎悪と軽蔑、良くて同情だ。

 王選が開かれていた三年間、エミリアの必死の奮闘が奏功して今こそその認識はある程度覆ったものの、ルグニカ以外の国では平等な目線を期待するに足りない要素として色濃く根付いている。筋違いの感情と訴えるには未だに理解が遠い、これが現実だ。

 

「そういう貴方は、どうしてわざわざ来てくれたの? ここまで足を運んでくれたんだから、少なくとも他の二国よりは仲良くできると思ったのだけど」

「余の考えを容易に推し量れるなどと自惚れるなよ、小娘。ルグニカとヴォラキアの関係性は頭に入れてあるのか? 長年に亘り小競り合いが続き、今でも国境付近では諍いが絶えぬ有り様だ。不可侵条約があるとはいえ、畢竟、それが機能するのは国が存命である場合のみだろうよ」

「──? 今まで喧嘩してたからって、これからも続ける必要なんてないでしょ? なら私たちがもっと表に出て、仲直りをした方がいいと思うの」

「────はっ……! 必要、必要ときたか。なるほど確かに、互いに消耗し続けるだけの下らん争いに必要性など欠片も見出せぬ」苛烈で容赦のない物言いに反して美形を成したヴィンセントの顔に、嘲笑とも好奇とも取れる色が浮かぶ。「だが、必要はなくとも理由ならあるぞ。人の感情とはそういうものよ」

「……そう。でも、私は諦めないわ。出来れば前向きに考えて欲しい。貴方だって、別に戦争は望んでいないじゃない」

 

 皇帝はこれを不定せず、肩を竦めて瞑目する。話は終わったとその態度が語っていた。

 ふと何かに気付いたスバルが、首を傾げて問いかける。

 

「ところで、皇帝陛下。お側付きというか、護衛はどちらに……?」

「む。そういえば竜車から落として来たのだったな。なに、もうじき走って到着するだろう。さすれば騒がしくなるぞ、拙速に終わらせろ」

「落とした……!? まさかとは思いますが、この場に邪魔だからわざと置いて来たとかそういう……」

「余の考えを凡夫ごときの度量で愚直に推し量るなと、そう──」

 

 ヴィンセントの鬼気迫る忠告は、最後まで紡がれない。

 縦横無尽。鋼の煌きだけが一歩遅れて軌跡を描いたかと思うと、光と音が滂沱として降り注いだ。

 壁一面に切り込みが入り、支えを失った欠片が爆ぜるようにして弾け飛んだように、スバルの目には見えた。瞬きの間に破壊された壁面を更なる衝撃が直撃し、応接室の天上すれすれを横切っていく。

 それが女性の体だと気付いたエミリアは、落下地点を瞬時に判断して手をかざす。ヴィンセントは事情を察した顔で座ったまま、他の二人は自分の身を守る体勢に入っている。

 一方側近でありながら騎士でもあるナツキ・スバルは、壁の外から出現した人物を見た。

 

 そう、見た、だ。

 青色のキモノに、ゾーリを履いた青年──セシルスはすでに駆け出している。誰の視認をも拒む速度で、その手に細長い刀を携えて室内を駆け抜ける。

 制止する暇もなければ、欠片ほどの慈悲もなく彼の刃は振るわれた。血液が付着することさえ許さない雷速の一閃。人の命が、紙くずの如く両断されるに十分たる一撃だった。

 

「待って!」

「止めよ」

 

 直後に迫り上がった氷の壁と、主の声が無ければ、実際それは彼女の命を刈り取っていただろう。冷気を掠めるだけに止まった刀を無言で引き、姿勢を正したセシルスが振り返る。

 

「あれ、閣下じゃないですかぁ! よく見れば王国の王様もいるみたいだし……なんだ、こんなとこにいたのなら先に言って下さいよ! 閣下と陛下の前で血腥いもんを見せるところでした、あぶないあぶない」

「危ないという言葉の意味を知っているのなら、その刀を収めて這い蹲り意思を見せろ。半分が紛い物とはいえ、仮にもここに糾合されたのは四大国家の首脳なのだぞ、セシルス」

「やだなぁ、さすがに王様に斬りかかったりはしませんって! 僕がそんな殺人鬼に見えます? グルービーには戦闘狂と言われましたけどね!」

「騒がしくなるって、普通に人殺しかけてんじゃねぇか……いや、それよりエミリア様!」

 

 ヴィンセントの予告通り、もしくはそれ以上に慌ただしくなった中でスバルはエミリアへと駆け寄る。咄嗟に生み出した氷の魔法で飛んできた女性を受け止めたエミリアは、安堵に一息吐いて胸を撫で下ろしていた。

 衝撃を与えないように四肢を絡めとる形で受け止めることに成功した氷の柱。それをゆっくりと解き、床に下ろす。女性は気を失っており、所々にセシルスの仕業だと見受けられる切り傷が刻まれている。だがさすがに、セシルスが無辜の一般人を襲ったと思えるほどスバルもエミリアも純粋ではない。

 

「セシルス……貴方が、皇帝さんの護衛なの? この女の人は誰? こんな王都のど真ん中で、どうして斬ったりなんかしたの?」

「あー、走って来る途中だったんですが。そこの女性がなんか人目を避けてうろちょろしてたんで、もしやと思って追いかけてみたらなんとピックリ! 得物と腕前を見るに、下っ端のシノビでしょうか? 王城と知らずにかくれんぼしてたー、とかじゃなけりゃ……あ! 他国の間諜なのでは!? なんだ、だとしたらしがない端役ですよ。まあ確かに、主役たるこの僕が斬るまでもなく消えていく役柄でした。反省します!」

「シノビ、か。下級ともなれば、金か女さえ差し出せば誰の背を刺す事も躊躇わぬ半端者どもよ。逆に元の依頼を上回る報酬を掲げて取り込むことも可能だが、この手の末端にはなにも握らせておるまい。捨て駒だな」

 

 殺害一歩手前まで行った張本人の割りには、あまり関心を見せないセシルス。しかし語った内容はまるで無視できるようなものではない。

 他国の間諜が王城に侵入していたと、国王即位式の直前に発言したのだ。それも、あろうことか他三国を交えた話し合いの最中にだ。地盤の安定していないこの状況において、それは爆弾投下以外の何物でもない。

 騒ぎを聞いて駆けつけてきた王城の衛士たちと他国からの護衛や御者も居合わせ、場は混乱の様相を呈する。

 

「ちょっと待って、まだ間諜だと決め付けるには早いわ。とりあえず警備を固めてから、もう少し様子を見ましょう」

「ウチらは知らん、なんて言うて見逃してはくれへんやろな。参ったわ、シノビとなったらまず疑われるのが、ウチらカララギやないの」

「困りました。よもやこのような事態に出くわそうとは……」

 

 各々が緊迫感を抱いて額に汗を垂らす。今この場に集まった関係者の中に、国家間の拮抗を破って矛を掲げた者がいるかも知れないのだ。しかし当然ながら自ら名乗り出るはずもなく、足りない根拠でも疑いの目線を互いに向け合うことになる。

 よりにもよってこんな時に、いや、こんな時だからこそ。誰もが忙しなく状況把握に励む中、ただ一人冷静に物事を眺めていた男が、ふいに口を開く。

 

「──何故、他国だと決め付ける?」

 

 酷く、耳が凍りつくほどに冷めた声音だった。

 

「皇帝陛下? なにを……」

「世界的関心の焦点を、王国からずらそうとしたのではないか? 三国をも巻き込んだ疑心暗鬼の舞台を作り出し、注意を少しでも背ける為に用意した王国の自作自演でないと、誰が言い切れよう?」

「──な、……それこそ、貴方がセシルスとシノビを使って状況を演出していないとの証明もできないはずです! 余計に掻き乱さないで頂きたい!」

「乱すも乱さぬも、事件の明確な関係者は今のところ王国だけだ。加害側の決定的な手掛かりは皆無。此度は偶然居合わせて巻き込まれた賓客でしかない余らに、貴様らが何を強要できる? 余は言いたい事を口にしたまでよ。過去に似たような事件が我が帝国で起きた以上、王国の正式な調査依頼には応じるが、国の柱もまともに機能せず、如何なる態勢も取れていない寄せ集めの集団に合わせてやる道理などない」怒りよりは蔑みに近い感情を淡々と吐き出す声だ。誰一人として、それを遮る術を知らない。「ままごとには付き合ってられぬ。もうこの場にいる理由……いや、『必要性』は見当たらんな。帰還の準備をしろ、セシルス」

 

 意趣返し、エミリアの前言を揶揄した言葉を告げてヴィンセントは応接室を後にする。「えぇー、またあのごつい竜車ですか?」と場違いな不満を垂れるセシルスの後ろ姿を、エミリアたちは呆然と見ているしかない。実際には止めるべきだが、エミリアもスバルも混乱で状況判断がままならない。そして、指導者が迷いを見せればそれは部下にも伝播するものだ。やがて我を取り戻したグステコとカララギの使者も、誰にも止められることなくそそくさと部屋を出て行ってしまう。

 残された面々はしばらくの間、ほとんど何も出来ずにいた。衛士たちが事態の収拾に向けて断片的な情報を整理しているが、結果は期待できない。ヴィンセントの言った通り、あのシノビを尋問したところで有益な手掛かりは出てこないだろう。

 

 だとしたら敵は、何の目的があって末端のシノビなどを送り込んだのか。そしてどんな方法で警備を──それも、国王即位のために一段と厳しくなっているこの時期を選んで──突破したのか。

 疑問は絶えず、燻りだけが胸にわだかまる。

 

「なんでだ……全部うまくいってたのに……!」スバルが体をよろめかせて壁にもたれる。

「……スバル? 大丈夫?」

「ああ、ごめん。ちょっと眩暈がしただけだよ。エミリア……陛下は、とりあえず部屋を移しましょう。ラインハルトが近くにいたはずだから彼に護衛を頼みます」スバルは頭痛に耐えるように、額を手で押さえて案内する。「私は少し、頭を冷やして来ますから」

「そう……分かった。無理はしないでね、スバル」

 

 素直に引き下がるエミリアを横目に、スバルは倒れたままのシノビへ振り返った。半壊した壁から流れた風が僅かに乱れた前髪を揺らす。

 エミリアの姿が完全に見えなくなった後、衛士に命じて人を呼んだ。同時に人払いも。数分が経過し、閉じていた扉がノックされる。一応、エミリアの騎士として前線を駆け巡り、多くの功績も残した分、ある程度の権限がスバルには認められている。

 

「入れ」

 

 短く応じる声と共に一人の男が恭しく入場する。くすんだ金髪を伸ばし、折り目の鋭い礼服と柔らかい上品さを纏った大人の佇まいだ。すらりとした細身はか弱さでなく清々しさを感じさせる。

 見るものが見れば、彼が視覚的な第一印象を重要視しているのだと分かるだろう。仕事柄、常に抜け目無い身嗜みが要求されるためだ。

 

「さてと、話をしようか。適当に座っていい」

「は」

 

 スバルに命じられ、男は姿勢を低くしたまま椅子に腰掛ける。

 内装の派手さに比べて面積自体は広くない部屋だ。その気がなくとも端に倒れている女性に自然と目が行く。しかし男は、特に気付いた素振りも見せずにスバルと向かい合った。感情をあまり表さない癖があるようだ。

 それは仕事上の理由か、はたまた対面した人物の影響か。

 

「お前の肩書きは、何だ」

「商業組合の代表を務めております」

「表ではな。俺は裏の方を聞いている」

「『六枚舌』の長官であります」

「そうだ。じゃあ『六枚舌』はそもそも何だった?」

「秘密防衛機構──王国の、諜報機関」

 

 男の素性は、ルグニカ王国の交易の中心を支える商業組合、その頂上に名を乗せるラッセル・フェローその人だ。国内の重要な物流のほとんどは組合によって管理されており、それを取り締まる彼にとって経済情勢は日常の一部。

 経済とは言い換えれば国の健康状態だ。国内のどこでどのような事があってどう動くか、把握するには広範囲かつ精密に情報網を広げていなければならない。スバルの元いた世界ほどではないにしても、日が昇ってから沈むまで、各地から集まるデータの量は膨大だ。それを上手く組み立てると、等身大のミニチュアの世界が目の前に出来上がる。

 流動する世界の今を知ること。盤上の駒を動かす指導者において、必須でありながら最も難しい類のものだ。しかし一度でも自分のものにしてしまえば、文字通り今の世界を掌握することが出来る。

 

『六枚舌』はそのような事柄を担当し、国の骨子を内部から支える役割を担っている。政治の実質的な柱である賢人会とは裏表の関係にあり、王国を支えるという共通した役割を持っていながら船首を向ける方向は少しばかり違う。

 なにせ諜報機関だ。安全保障という名目の下、謀を是とする機構に法の適否は問われない。非人道的と呼ぶのも憚られるような残酷極まりない行為も、自身の大切な何かを削る捨て身の計画も、国の利益に繋がるのであればラッセルは迷わず実行する。

 その絶対的姿勢にスバルは目を付けた。エミリアが新国王の冠を携えて表舞台へ上がる傍ら、彼は影からラッセル含む『六枚舌』を経由して外部へ干渉を続けてきたのだ。同時に自らの身を置いた王都中心部の防衛も。

 

 それが今日になって、破れた。

 

「どうしてシノビなんかの侵入を許した? 最近騒がしい雰囲気だったとはいっても、アレを見逃すなんて考えられない。やるべきことは……『六枚舌』の任務は、怠ってないよな?」

「信用を裏切ってしまったのは理解の上ですが、もちろんそのつもりです。日々、尽力しておりました」

「俺だって、なにも世界を征服しろとは言ってない。大きくなり過ぎても碌な結末は待ってないだろうしな。そもそも大陸全土の情勢を掴め、なんて無理な話だ。俺はただ、今のこの状態を維持したい。分かるか? 無理して崖を上る必要はないから、その分の余力を落ちないように他へ回せってことだ」

「はい、重々承知しております。私は王国の平穏を願って何もかもを捧げた身ですから」

「なあ、ラッセル」

「なんでしょう」

「口だけは達者だな、商人が」おもむろに歩み寄るスバルが、双眸の奥底に隠し切れない嫌悪を湛えて睥睨する。「尽力してた? それでこのザマか、おい」

 

 跳ね上がったスバルの足がラッセルの腹に突き刺さり、鈍い衝撃音が苦鳴と共に漏れ出る。思わず前屈みになったラッセルを見下ろし、そのままスバルはつま先に力を込めて内蔵を圧迫する。端から見る分には地味でも人間の腸は脆い。少し要領を知っていれば、片足だけでも確実に苦痛を与えられる。

 商人は第一印象が大事だ。顔を傷つけてはいけない。穏便に痛めつけるには、普段は他人に見せない胴体部分が好ましい。彼にはこれからもやってもらうべきことが沢山あるのだから──

 

「いや、待てよ?」

「く……ふ、ぅ」

 

 しばし考えて何かに気付いたスバルは、足を引っ込めてラッセルの背後に回る。そして服を無造作に捲り上げ、背中を覗き込んだ。

 そこに煌くのは奇妙な模様だ。濃い鈍色をした不気味な模様が、痣とは違う痛々しさを滲ませて背中の皮膚に刻まれている。淡く光を発しているのは、それがただの模様ではない超常的な力が施されているという証拠。

 手で触れたスバルの動きに躊躇いは感じられなかった。

 

「呪印は生きてる……なら、お前の言ったことは本当なのか?」

「…………」

「嘘を吐けば体内のマナが暴走する。俺が『六枚舌』を支配する際に、そう、お前に呪いをかけたはずだ」

 

 性質の悪い唾棄すべき術として認識されている呪いだが、やられる側でなくやる側に転じれば、これ以上便利な束縛も存在しない。ラッセルの背に刻印されているのは言葉の真偽を感知するもの。本心と異なる嘘を口に出せば、術が発動して体内を巡っているマナの循環を狂わせるという仕組みだ。マナの制御法によほどの見識がない限りは和らげることもままならない。

 しかし彼の体に、呪印は残っているがそれらしき異常が起きた様子はなかった。となれば単に嘘を吐かなかったという事実が浮かび上がる。

 ラッセルは本当に、彼の全てを捧げて尽力しており、そうにもかかわらず侵入者の襲来を許したのだ。セシルスが見つけていなければ更なる内部まで入り込まれただろうことは想像に難くない。

 

 諜報機関ですら悟れなかったのを、他国の部外者が偶然見つけた?

 偶然にしては不自然なものが目に付くが、果たしてそんな回りくどいことをヴィンセントがするだろうか。彼の物言いは言い方こそ苛烈であれど、内容自体は間違っていなかった。外交を俎上に載せてエミリアの言葉に一つ一つ答えていたのも彼だ。

 全面的に信じるには至らずとも、偽言を疑うほどの人物でもない。スバルはそう判断した。

 

 カチリ。

 今朝まで順調に回っていた歯車の、どこかの歯が欠け落ちたような、気持ち悪い違和感が胸中に生じる。

 

「……ラッセル。お前、国に身を捧げたっつってたよな」

「ええ、その通りです」

「答えろ。あの女を城内に通したのは、本当に見逃したからなのか?」

 

 問いに、答えは返ってこない。

 

「尽力してたんだろ? 俺の言うこともちゃんと理解して、『六枚舌』を動かしてたんだろ? なら、お前が挺身してまで守ると決めた対象、……そこに、俺は入っているか?」

「…………」

 

 沈黙は嘘に含まれない。

 それ自体が明白な答えだった。

 

「そうかよ。お前が俺たち王国を裏切ったのか」

「……それは違いますよ。私は王国に何もかも捧げた身だと、先ほど言ったではありませんか」

「なに?」

「私が裏切ってしまったのは、事情をお知りでないエミリア陛下の晴れ舞台だ。王国を虫喰うあなたに対して忠誠心を向けた覚えなど端からない。輝かしい未来などくれてやるものか……これが、私の本心ですとも」

 

 最初から仕えるつもりなど毛頭なかった。ゆえにこれは裏切り行為といえない。ただ、国王になるエミリアをも巻き込んでしまったのは事実なのだと。

 露骨な反抗意思だ。スバルを騙すために仕方なくエミリアまで裏切って国家間の疑心を招いた。事もあろうに、それが王国のためでもあるとラッセルは言っている。

 

「あなたは一つ、勘違いをしているな。シノビを侵入させた目的は国家次元の混乱じゃない。確かに話し合いは決裂したが、そんなのどうだって良いことだ」どこまでも、どれほどまでにも、この男は徹底的に献身し、王国の未来を見据えて行動する。目先の結果を越えた、更に奥の事象を。「私の命と引き換えに、お前さえ引き摺り下ろせればな」

 

 笑い飛ばす言葉をスバルは持ち合わせていない。睨めつける瞳に燃え滾る熾盛な覚悟が、生半可なものではなかったからだ。少なくとも、筋違いの逆恨みや被害妄想の類ではないと窺える。

 その原動力は私怨か。いや、王国のためというのなら、きっとそれは正義だろう。

 ナツキ・スバルという一人の人間を排除することが、正義に基づく執行だとラッセルは思い至ったのだ。

 

 潮時か? ──断じて、違う。

 まだ終わっていない。この企てに関わっているのはラッセルだけではないはずだ。その全てを炙り出し、二度とスバルの行く道を邪魔できないようにしてやらねばならない。

 それがナツキ・スバルの幸せな人生へと続くのだから。

 

「最期に残す言葉はあるか」

「──残された時間を精々楽しめ、寄生虫」言って、袖裏に隠していたナイフを、スバルの横腹に突き刺した。

「っ、クソ商人がぁっ!」

 

 スバルの態度が限度を超えて爆発した。椅子ごと蹴飛ばし、抵抗もせずに倒れたラッセルへ飛び掛かる。横腹から引き抜いたナイフを、出血も意に介さずに投げ捨てる。赤い斑の軌跡は半壊した壁の穴から外に吸い込まれていった。

 

「クソが、クソが、クソクソクソクソクソクソッ! あァ、忌々しいッ! 何にでも値札をつけやがって、結局自分のことしか頭にない! これだから商人は信用できないんだ! 平気な顔して散々利用した挙句、他人の価値を踏み躙る! せっかく、せっかくここまで来たってのにッ! ナツキ・スバルの人生で最良の選択をしてきたんだぞッ! 誰にこの幸福が壊せるもんか、壊せてたまるか、ふざけるな、チクショウッ!!」

 

 馬乗りになって拳を振るい、スバルは両手を血で濡らしながら叫び喚いた。皮の剥けた拳をラッセルの顔面に叩き付ける度に、骨と骨の擦れ合う耳障りな悲鳴が響く。執拗に、強情に、一方的に、粘着質に、無秩序に。頬骨が削れ、鼻先が折れ、眼窩が潰れ、唇が爛れ、鮮血が溢れ、人としての顔の形が崩れるまでずっと。

 すでにラッセルに意識はなく、殴られるだけのサンドバッグと化していた。しかし、いくら殴れどスバルの歪んだ表情は晴れない。顔を覆った激情と床を汚す血液の色は濃くなる一方だ。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……死なせ、ないよ。ラッセル・フェロー!」眼前に開いた掌を、こびり付いたどす黒い血と一緒に舐める。「イタダキ、マスッ!」

 

 客人のために用意されていたお茶やお菓子がテーブルの上に残された応接室。それらには目もくれず、死んだように倒れ伏している男を、食した。名前を、魂を蝕した。

 あらゆる生物が命を繋げるべく本能的に行う食事とは、根底から質の違うものだ。およそ生存の尊厳を侮辱の限りに陥れ、あまねく倫理をも蔑ろにする行為。到底理解の一片も及びようがないそれを本人は飽食と称している。

 

「食って、喰らって、喰らい付いて、噛んで、噛み付いて、噛み砕いて、噛み千切って、噛み締めて、貪り食い尽くして、あァ、暴飲ッ! 暴食ッ! どこだッ、どこの記憶にいるッ!? 私たちを脅かす奴は誰だァッ!!」

 

 咀嚼し、嚥下した記憶をスバル──ではない何かがすぐさま手繰り寄せた。命を奪うよりも惨たらしい摂食の真価は食べた後にこそ発揮される。

 ラッセルの歩んできた足跡を遠慮なく踏み荒らし、好き勝手に引きずり出していく暴挙。家族との縁も友との絆も知ったことか。自身を嵌めた黒幕を突き止めんと、暴食する何かは血眼になって洗いざらい平らげる。

 

 そしてついに、一つの答えに至った。

 

「──ああ、おぞましい。実に陋劣この上ない食事だ。本当に、見ていて不快感しか込み上げてこない」

 

 それとまったく同時に、高い位置から聞こえた軽蔑の声。いつの間にか開かれていた扉に背をもたれる。

 記憶を辿って見つけ出した答えと、鼓膜を震わす声音の主が重なり、繋がった。

 

 怖気と悪寒に引っ張られてつと仰げばそれがスバルを見下ろしていた。

 濃紺の髪を肩より少し下まで伸ばし、その先を奇妙な暗色系の衣装に隠した長身。諧謔的な道化の化粧が施された顔は白く、色合いを別にする二つの瞳に嫌悪の感情が濃く宿っている。血腥い部屋の空気が、彼の情調に呑み込まれてまるで重さを帯びたようだ。

 

 ナツキ・スバルの姿をした何かがなす術もなくしてやられたのは、理由を挙げるならばたった一つ。

 さながら魔人の如き在り様をその身に孕んだ、決して端倪すべからざる男の存在を今際の今まで失念していたこと。

 

「さて、答え合わせの時間だよ」掲げた手、指先と掌に紅蓮の輝きが渦を巻く。「当たっていたのなら苦しみもがいて、間違っていたのなら泣き叫ぶがいい」

「黒幕はお前か、ロズワールゥゥゥ──ッ!!」

 

 網膜を貫く閃光が、輪郭と色彩を消し去りながら迫り来る。血溜まりは熱気に分解され、霞がかって蒸発する。それを横目に。

 灼熱の業火を直に受けた一瞬の猶予の中、ひび割れた断末魔の一声は周囲の空気諸共焼け焦げ、耳朶へ届くより前に掻き消された。




題材とした大罪は『暴食』です。
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