魔法科高校の神童生   作:RAUL85

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EPISODE14:性格の悪い人達の集団に入ると大変です

 

あの馬鹿みたいな騒ぎの部活勧誘週間が始まってから一週間が経った。

結局、俺が忙しかったのは初日くらいで、他は美術部を始めとする室内の部活の見回りを優先的にしていたためさほど大きなトラブルに巻き込まれることなくここまでこれた。途中、達也を狙ったであろう魔法を捌きまくったことはあったけど、まあ、比較的平和だった。今日も今日とて、美術部らへんの見回りをして、本日の巡回の時間は終わった。どうやら、昨日俺が非番だったため、今日は達也が非番みたいだ。

そのことを確認して、俺は風紀委員会本部を後にした。

通路を抜け、扉を開ける。

 

「あ…」

 

「………」

 

市原先輩と目が合った。

え、なんでこんな気まずいの?

よく分からない居心地の悪さを感じて、俺は足早に生徒会を出ようとした。

 

「九十九さん」

 

「はいっ?」

 

しかし、扉に手をかけたところで市原先輩に呼び止められてしまった。

 

「この後、空いていますか?」

 

今年一番の波乱の予感を、俺は直感的に悟った。

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

 

 

 

「市原先輩って甘いものが好きなんですか?」

 

「ええ、まあ」

 

俺が、入学式の日のお礼として市原先輩に連れてこられたのは校内にあるカフェテラスだった。奢ってもらえるというので、取り敢えずコーヒーを頼んだのだが、どうやら好意でショートケーキまで奢ってもらってしまった。

申し訳ないと思いつつも、俺の腹は正直で、不覚にも断っている最中に昼飯抜きが祟ってお腹が鳴ってしまった。

結局、甘いものの誘惑に勝つことはできずに俺は市原先輩の差し出すショートケーキを受け取ったのだった。

しばらく経って、俺がショートケーキを食べ終わってコーヒーを飲んでいると、意外にも市原先輩の食べているケーキがモンブランで飲み物がミルクティーだということに気づいた。

 

「甘いものは頭の回転が速くなるので好んで食べていますね」

 

「ハハ…なるほど」

 

実に冷静な市原先輩らしい理由だ。普通、女の子で頭の回転を良くするために甘いもの摂るっていう感覚の人はいないんじゃないかな?

 

「そう言う九十九さんは、苦いものは平気なんですか?」

 

市原先輩が、俺の持ってるカップを指差して言う。

 

「俺は案外苦いのは好きなほうですよ。というか、好き嫌いがないんですよね」

 

「なるほど…」

 

そう呟いて、市原先輩は最後のモンブランを口に運んだ。それを見てから、俺は視線を横にズラした。

ズラした視線の先。そこには、二人の男女の姿があった。

 

「やっぱ、気になるんですか?あの二人、というか達也のことが」

 

持っていたカップをソーサーに戻しながら問うと、市原先輩も目だけを達也たちに向けた。

 

「ええ。彼は、私と同じような臭いがするので」

 

「なるほど…」

 

それは、恐らく研究者として同じということだろう。確かに達也は魔法理論に限っては確実にこの学校ナンバーワン。傍目から見れば、将来研究者や技術開発者として輝かしい成績を残すことは間違いないだろう。

けど、あの冷静さ、剣術部員との乱戦のときの体捌き、そして服部副会長を秒殺したあの並列処理…それに多分、達也はまだ自分自身の本当の力の一部も出していないと思う。そう考えると、到底達也がただの研究者で終わるのは想像できない。というか、深雪さんのために戦ってるほうが全然しっくりくる。

 

「……市原先輩、達也と一緒にいる人は誰ですか?」

 

俺がそう問うと市原先輩はもう一度視線を達也たちに向けた。

 

「彼女は二年E組の壬生紗耶香さんです。確か、九十九さんと司波君が場を抑えた剣道部と剣術部の乱闘のもう一方の発端ですよ」

 

「ああ、あの人!そっか…でも、達也になんの用事なんでしょうかね?」

 

「さしずめ、部活勧誘ではないでしょうか」

 

そう言い切って、市原先輩は完全に達也たちから目を離した。

 

「司波君はあの服部副会長を倒し、剣術部員数十人を相手にしても傷一つつけられませんでした。増して、彼は二科生。

噂では、壬生さんは二科制度に対する、非魔法競技系クラブの連携に入っていると聞きます。ひょっとしたら、剣道ではなくそちらのほうに勧誘を受けているかもしれないですね」

 

非魔法競技系クラブの連携組織…思ったより、この学校の差別意識の問題は大きいようだ。まさか、そんなデモ組織のようなものができているとは。けど、俺がこの存在を聞いたのは今が初めて。まだ動きは活発化していないということか。

 

「まあでも、達也なら断ると思いますけどね。あいつが一番大切にしてるのは自分でも体裁でもなくて、妹様ですから」

 

俺が笑いながらそう言うと、市原先輩も微笑を浮かべた。

 

「同感です」

 

その後は他愛ない会話しながら、その日は終わった。

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

 

 

 

次の日、学校の教室でお昼ご飯を鋼と食べていると、

 

『一年B組の九十九隼人くん、至急、生徒会室まで来てください。繰り返します。一年B組の九十九隼人くん、至急、生徒会室まで来てください』

 

「ねえ隼人?僕、友達は疑いたくないんだけどさ…もしかして隼人ってさ問題児なの?」

 

「取り敢えずその憐れむような眼をやめよう鋼くん。いやお願いたがらやめて、なんか居た堪れない気持ちになってくる」

 

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

 

 

「ハァァァァァ……」

 

人生で一番長いと思える溜息を思い切りつく、というか吐き出す。目の前に現れた生徒会室の扉を睨みつけ、五指をピンと伸ばしそのまま体を引き絞り、

 

ーーピンポーンーー

 

ドアホンを押してみた。

 

「一年B組の九十九です」

 

『はーい、どうぞー』

 

もはやお馴染みとなった生徒会長の砕け散った言葉遣い。俺は溜息をもう一度小さくついて、引き戸を開いた。

 

「うわ、さむ」

 

思わずそう声を上げてしまうほどの冷気が生徒会室から漏れ出て来た。この時季はまだクーラーは早いはずだけど、そんなことを考えながら取り敢えず頭を下げておく。

 

「いらっしゃい隼人くん。どうぞ、そこの席に腰掛けてね」

 

「あ、はい。失礼シマス」

 

指定された席は達也の隣の席。というか、達也と深雪さんの生徒会室でのお昼ご飯は恒例になっちゃってるみたいだね。

 

「…それで、なんで俺は呼ばれたんですか?」

 

こんな風に呼び出したんだ。なにか大事な用事があるのだろう。そう、俺はそう信じている。

信じて…

 

「男の子が達也くん一人だと、バランスが悪いでしょう?」

 

「お疲れ様でした」

 

瞬間的に席から立ち上がり扉へと向かう。

 

「ちょっ、嘘よ隼人くん!」

 

慌てて俺を引き留めてくる生徒会長。嘘か。嘘なんだな、信じていいんだな?

本日通算三度目の溜息をついて、俺は席に戻った。

 

「それで本題なんだが……隼人くんはブランシュという組織を知っているか?」

 

再び椅子に座った俺に投げかけられた問いは、今度は別の意味で驚かされた。

ブランシュ。俺が、前に消したあの組織の総称だ。

正直俺は、ここでシラを切るか、それとも正直に言うかで迷った。知っていると言えば、逆になぜ知っているかと更に追求されてしまうだろう。そうなれば、俺は暗殺者なのだと言わなければならなくなる。それは是非とも、少なくとも一年生の間は勘弁したい。

けど、この豪華メンツでこの話題。明らかになにか問題があったのだろう。平和な学校生活を望む俺としては、ほれは是非とも解決しておきたかった。

 

「名前くらいなら」

 

結果、俺はどっちつかずの答えを返した。まあ、ブランシュという組織の名前は特別厳重に秘匿されているわけではない。家として少し情報が流れてくるなら、知るだけなら簡単なはずだ。

相手はあの十師族筆頭・七草家の人間。九十九家が暗殺一家だということは知らなくても、百家の一つだということは既にバレているだろう。なら、下手に隠せば逆に怪しまれてしまう。

 

「それなら話が早いです。なら、部活勧誘週間が始まってから、いえ、正確に言えば達也くんと隼人くんがあの剣術部員を沈静化させた事件以来、達也くんが何者かに狙われているかは知っていますか?」

 

「ええ。幾つか俺も魔法攻撃を捌いたので」

 

そう、あの日以来、達也は何者かから度々襲撃をうけていた。まあ、二科生からの風紀委員抜擢、更に暴動の沈静化など色々活躍したから目をつけられること事態は予想できていた。けどまさか、魔法まで使ってくるとは思わなかった。

 

「恐らく、その犯人は非魔法系クラブ連携組による仕業だと俺は考えているのですが」

 

「それは同感ね。あそこは最近動きが活発化してるから、いつかなにかが起こっても不思議じゃないわ」

 

「生徒会長の言うことではないな。まあ話を戻すぞ」

 

うっかり本音が出てしまった生徒会長の言葉を指摘して、渡辺委員長は一つ咳払いをした。

 

「あの暴動以来、達也くんはある組織の組員と思われる人間に度々狙われているのは隼人くんが言った通りだ。そしてその組織が、恐らくはブランシュと関わりのある『エガリテ』という組織だと。私達はそう推測している」

 

エガリテーーー、確かブラックリストにも載っていたっけな。ブランシュとの表側の繋がりはないとされてるけど、実際はブランシュの一組織のうちの一つであり、政治色を嫌う若い人たちを吸収するための、表だけの存在だ。まったく、こういう組織は根が深いから困るんだよね。

 

「……それで、俺にどうしろというんですか?」

 

「ふっ、話が早くて助かるよ」

 

そう笑って、次の言葉は生徒会長が引き継いだ。

 

「達也くんには、引き続き壬生さんの様子見を。隼人くんには、非常時

のときにすぐに対応できるように備えておいてもらいたいのよ」

 

「その口振り…近々厄介なことが起こることを確信しているみたいですね」

 

「勿論。私達としてはなにも起こらないのがいいに決まっているわ。けど、万が一ってこともあるでしょう?」

 

ウィンクしたお茶目な生徒会長に、俺は苦笑いを浮かべた。

 

「分かりました。できる限りで頑張りますよ」

 

「ああ。頼むよ」

 

渡辺委員長がそう言うのを聞いて、俺は立ち上がった。

 

「では、俺はここで失礼しますよ?まだお昼ご飯食べてる途中だったんですから」

 

「ああ。ちょっと待った隼人くん。一つ聞いておきたいことがあったんだ」

 

引き戸の取っ手に手をかけたところで渡辺委員長に呼び止められ、俺は仕方なく振り返った。

 

「昨日、市原と一緒にカフェにいたのを見たのだが……デキてるのか?」

 

「ブフォッ!?」

 

思わぬ爆弾発言に噴出してしまった。

 

「ち、違いますよ!あれは…入学式のときに生徒会長を探すのを手伝ったお礼ってことで誘っていただいただけで…!」

 

「あらあら、隼人くん必死ねえ」

 

「ほう、やっと市原にも春がきたか。あとはお前だけだな真由美」

 

「やっぱり付き合ってたんじゃないのか?」

 

「九十九さん、本当ですか?」

 

「真っ赤なウソです!!」

 

全員が全員、人の悪い笑みを浮かべていた。特に生徒会長。渡辺委員長を視線だけで殺しちゃうような絶対零度の視線のまま俺を見ないでください怖いです。

 

「そんなに否定すると市原が可哀想だろう?あいつ、お前といるときは楽しそうだったぞ?」

 

「…え、え?」

 

そんな馬鹿な。俺が何度揺さぶりをかけてもあのポーカーフェイスは決して揺るがなかったぞ。

 

「まあ、三年も一緒にいれば少しの表情の変化も分かるのよ」

 

「はぁ…そんなものなんですか?」

 

少し軌道修正してきたかな。じゃあ、いまの内に逃げ…

 

「で、隼人としては市原先輩はどうなんだ?」

 

「たっ、達也!?」

 

「あら、随分と頬が緩んでいますよ九十九さん?」

 

「み、深雪さんまで!?」

 

「もしかしてアリなのか?」

 

「私達としては風紀さえ乱さなければアリよ?」

 

み、みんな俺の話を聞こうとすらしないんだな。

 

「どうなんだ隼人?」

 

「九十九さん?」

 

「いやー、隼人くんと市原がなぁ…」

 

「式場はお城かしら?それとも神社かしら?」

 

「…ふ、不幸だぁーーー!!」

 

昼時の生徒会室に、俺の情けない悲鳴が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーto be continuedーー

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