けものフレンズR 足跡を辿って   作:ナンコツ

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第一話 おうちとこうえん Aパート

 ここはジャパリパーク。草げんやたかい山、さばくやみずうみなど、どこまでもどこまでもいろんなせかいがひろがっています。ここにはたくさんのどうぶつ、「フレンズ」がいて、それぞれなわばりをつくっています。フレンズは、山からサンドスターがふきだしたときに生まれるといわれています。

 おだやかな風のふく、のどかなひる下がり。きょうは女の子がひとり、ジャパリパークの草げんにやってきたようです。はねつきのぼうしをかぶり、みどり色のかみにあおいベストを着た、元気そうな女の子です。

 

「うーん……この辺りはやっぱりあったかくてきもちいい~。風もおだやかだし、そうすると……。」

 

 女の子は、手にもっていたスケッチブックを開きます。そこにえがかれているのは、あお色とピンク色にしろ色、そしてむらさき色の花ばたけに大きなはしら、そしてシーソーなどのゆうぐです。ひょっとしたら、どこかのこうえんでしょうか?

 

「おんだんで、風もおだやか。土の水はけもよさそう。いかにもアネモネがそだつかんきょうってかんじかな。ひょっとしたらこの絵のばしょ、近い?」

 

 女の子は花をさがすために、あたりをみまわします。すると、とおくのほうに門とかこいがみえるではありませんか。その上からやねの丸いおうちが、ちらほらとみえます。

 

「あそこにフレンズ、いるかな?よーし、いってみよう!」

 

 女の子ははりきって、おうちにむかってかけだしていきました。

 

 

 やねの丸いおうちがたくさんならぶところ、いわゆるじゅうたくちとよばれるところでしょうか。そのいりぐちにはアーチのような門があります。

 門のまえには、ひとりの女の子がまっています。

着ている上着やプリーツスカートははい色、かみもはい色。あたまの上に耳をピンと立て、きいろい左目と、あおい右目をもった子です。この子はほにゅう類ネコ目イヌ科イヌ属のフレンズ、イエイヌ。

 かのじょはずっとまっています。くる日もくる日もずっとまちつづけています。なにをまっているのかというと……。

 

「あっ。」

「あっ。」

 

 みどりの女の子が、門のまえのイエイヌちゃんをみつけたようです。イエイヌちゃんも女の子と目があいました。

 

「あなた……ヒト……。」

 

 とちゅうまで言いかけたそのときです。

 

「かわいい~!めっちゃ絵になる~!」

 

 女の子はイエイヌちゃんにだきつきました。とつぜんだきつかれたイエイヌちゃんは、びっくり!

 

「わっ……あっ……あの……。」

 

 どぎまぎしつつも、なつかしいヒトのにおいをかんじます。

 

「なつかしい……におい……。」

「えっ?あっ、ごめん!あたしったら、かわいいフレンズをみるとこうふんしちゃって……。」

「いえ……いいんです。……ようやく……会えましたから。」

「ふぇ?会えたって?」

「会いたかったです~!この日をどれだけまっていたことか~!」

 

 こんどはイエイヌちゃんがだきつきます。あべこべにだきつかれてほおずりされ、女の子の方がぎゃくにどぎまぎしてしまいました。

 

「えっ?あの、ど、どういうこと?」

「わたしはイエイヌです。ずっと、ヒトをまっていたのです~。」

「イエイヌちゃん、かぁ。かわいい名まえだね。」

「ささ、こちらへどうぞ。おうちへおつれします。」

 

 じこしょうかいもそこそこにイエイヌちゃんは女の子の手をひっぱり、丸いどうぶつのようないえにつれていってしまいました。まるで、ずっとまっていたごしゅじんさまの手をひっぱるかのように……。

 

 

 イエイヌちゃんがつれてきたおうちは、たしかにちゃんと人のすめるようなところになっていました。ベッドにタンス、テレビにテーブル。ここにだれかがすんでいたといわれてもふしぎではありません。

 

「ここはずっとむかし、なんにんものヒトがいたんです。わたしもよくあそんでいました。でも……ある日みんないなくなってしまって。でも、いつかもどってきてくれるとおもっていました。」

「じゃあ、ずっと……ひとりで?」

「おるすばんしていたんです。」

「そっか……。ずっとわすれずにまってたんだね。」

「はい。いちどもわすれたことはありません。」

 

「わすれた」ということばを聞いて、女の子はちょっとくもり顔になります。

 

「わたし、なにかしつれいなことを……?」

「ううん。あたしじつはね……きおくがないの。」

「えっ?」

「たぶん、ほかのフレンズとおなじようにサンドスターから生まれたんだとおもう。でも、生まれたばかりじゃないんだ。ほらみて。」

 

 女の子はもっていたスケッチブックをイエイヌちゃんにみせます。スケッチブックはすこしきずがついていて、はしっこに「ともえ」とかかれています。それがきっとかのじょの名まえなのでしょう。

 

「あたしの名まえはたぶん、ともえ。このスケッチブックのなかみ、みてみて。つかいこんだかんじがするでしょ?」

 

 ともえちゃんはぱらぱらとページをめくります。そこにはこうやのふうけい、ジャングルのふうけい、森のなかのロッジのふうけい……。さまざまなスケッチがかかれています。

 

「でも、どこでかいたのかはわからない。じぶんのなわばりも、じぶんがなにをしようとしてたのかも、なんにもわからない。わかってるのはヒトのフレンズってことだけ。あなたみたいにずっとわすれずにいるものなんて、ひとつもないんだ。」

「そうだったんですね……。ごめんなさい。わたしはわるい子です。」

「そんなことないよ!ずっとわすれずにいるイエイヌちゃんも、とってもすてきだよ!」

「じゃあ……ここでなにかおもいだせませんか?ひょっとしたら、あなたがほんとうにごしゅじんさまかも。」

 

 ともえちゃんはいえをみまわします。でもやがて、くびをよこにふりました。

 

「そうですか……。」

「ごめんね。でもせっかくだから、いっしょにあそんで、思い出つくろ!思い出がなにもないなら、いまからつくればいいよね!」

 

 さみしさをかくすような、せいいっぱいのえがおのともえちゃん。そんな心をよみとったイエイヌちゃんも、まんめんのえがおでうなずきます。

 

「はいっ!さっ、ともえさん!なにか言ってください!」

「なにか?」

「わたしにあれをしろとか、これをしろとか、どうぞえんりょなく!」

「じゃあ~……あっ、そうだ!」

 

 ともえちゃんはスケッチブックを開き、バッグから色えんぴつをとりだします。

 

「そこでじーっとしててね。今からイエイヌちゃんをかくから!」

「はいっ!どうぞ!」

 

 イエイヌちゃんはえがおでポーズをとります。かわいらしいかのじょのポーズを見たともえちゃんは、ふでがとまらないとばかりに、むちゅうでスケッチをします。

 

「やっぱりめっちゃ絵になる~!もうすこしうごかないでね!」

「はいっ!ぜったいうごきませんから!」

 

 いわれたとおりにイエイヌちゃんは、じっとうごかずにまちました。まつのはなれていましたし、なによりもヒトのやくにたてることがうれしかったのです。

 ともえちゃんは、かいた絵をイエイヌちゃんにわたしました。絵をあげると、とてもうれしそうにしっぽをふってよろこんでくれました。

 そのあとは、おうちにあったフリスビーであそんだり、おちゃとよばれるおゆにはっぱを入れたものをのんだり……。たのしいじかんがあっというまにすぎていきました。

 

 

 たくさんあそんだ二人。そのかおはとてもまんぞくしたようなえがおです。そこへふと、イエイヌちゃんがスケッチブックのページをめくります。

 

「あの、これ……。」

「どうしたの、イエイヌちゃん?」

 

 イエイヌちゃんが開いたページのスケッチは、お花ばたけと大きなはしら、そしてゆうぐがかかれたこうえんのものでした。

 

「ずっと気になってたんです。ひょっとしたらわたし、ここをしってるかもしれません。」

「ホント!?やっぱりここにあったんだ!」

「このちかくに、よくにた花がさいています。大きくてながいはしらも立ってます。」

「やったぁ!ねえ、いっしょにいこ?」

「はいっ!いきましょう!」

 

 二人は手をつなぎ、なかよくおうちをでてこうえんへむかいました。

 

 

 

続く




※ちょっと修正しました。
ともえちゃんは明るい子という設定だったので、あまり暗い雰囲気を出さないよう、とにかくポジティブな性格にしてみました。
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