けものフレンズR 足跡を辿って   作:ナンコツ

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第五話 へいや Aパート

 鳥も動物も寝静まる、真っ暗な夜のジャパリパーク。足元が暗く、セルリアンにも気づきにくくなるきけんな時間です。

 ともえちゃん、イエイヌちゃん、ゴマちゃんことG・ロードランナーちゃんは今日の旅をを終え、明日に備えて寝ることにしたようです。一方、ボスは節電モードに入ったらしく青い体をさらに真っ青にして、全く動きません。

 ランプに火を灯し、ともえちゃんは鼻歌を歌いながらスケッチをしています。

 

「そういえば、ともえ。」

 

 ゴマちゃんがともえちゃんのスケッチブックを指差しながら声をかけます。

 

「今までに見つけたスケッチの場所っていくつ?」

「んーとね、まだ4つ。」

「全部でいくつあんだよ?」

「10こあるから、まだあと6こくらいかなぁ。」

「うーん、まだまだ先は長いなー……。」

「そうだねー……。」

 

 ゴマちゃんは難しい顔をします。ともえちゃんもつられて顔をしかめてしまいました。しかし、イエイヌちゃんはポジティブに考えます。

 

「でもそれって、まだまだずっとともえさんといっしょにいられるということですよね?」

「そうだね、イエイヌちゃ~ん♪」

 

 ともえちゃんはイエイヌちゃんをだきよせて頭をなでまわします。イエイヌちゃんもご満えつな顔です。

 そんな二人を尻目に、ゴマちゃんはスケッチブックの中を確認します。

 

「えっと……残ってるスケッチは……。」

 

 ゴマちゃんがかろうじて分かるのは、海の見えるステージ、森の中のロッジ、そして畑でした。でも残りの3つがよく分かりません。

 

「この、黒い岩が光ってんのと、ぼろっぼろの白い箱みたいなのと、黒い島はなんだこれ?」

「さあ~、わかんない。こんなのどこで見たんだろ、昔のあたし?」

「ふ~ん。ま、いいや。この旅がいつまで続くかなって思っただけでさ。」

「そりゃ、むりやり連れてこられちゃったもんね……。さすがに反省してるよ。ごめんね、ゴマちゃん。」

「ま、許してやるよ。ともえとの旅はなんだかんだで楽しいし、プロングホーン様へのおみやげ話もいろいろできそうだし!」

「そこはブレないねぇ~。」

「それでこそゴマさんだと思います。」

 

 ゴマちゃんの変わらない思いを確認したところで、イエイヌちゃんは小さなあくびを一つします。そろそろ寝る時間ですね。

 

「じゃあおやすみ。」

「おやすみ~。」

「お二人ともおやすみなさい。」

 

 三人は明日の旅を期待しながら、それぞれ眠りにつきました。みんなよい夢が見られるといいですね。

 

 

 次の日。この日もともえちゃん達はジャパリバイクに乗り、風を切って走ります。やわらかな日差しとおだやかな風が何とも気持ちの良いここは、ジャパリパークの平野。土地の起伏はそれほど多くなく、なだらかな草原がどこまでも続き、山河も美しく映えます。

 ともえちゃん達の次の目的地はどこなのでしょうか?

 

「ラモリさん、次の場所はどこ?」

「キャベツ畑ダヨ。緑色ノ玉ノヨウナ植物ガイッパイ生エテイル場所ダヨ。キャベツ畑ガコノ辺リニアッタハズダカラ、スケッチニ描カレテイル場所ハキットココダヨ。」

 

 サイドカーに乗るイエイヌちゃんは、ともえちゃんのスケッチブックを開いて確認します。すると、丸くて緑色の草が一面に広がるスケッチが一枚見つかりました。

 

「これのことですね。」

「こんな草ばっか描いて何が楽しかったんだろうな~。」

 

 と、ゴマちゃんがぼやいていると、木製の長イスが置いてあるだけのとっても小さな小屋を見つけます。珍しいものを見つけたともえちゃん達は、それを調べてみることにしました。

 長イスの上には小さくて細長いだいだい色の実、真っ白で長い実、これまた真っ白だけど丸い実が整然と置かれています。そのいずれにも葉っぱがついています。小屋の近くには看板が置かれており、何やら文字が書いてあります。

 

「なんでしょうこれ?」

「『ごじゆうにおもちください』だって。ラモリさん、これって野菜だよね?」

「野菜ダネ。左カラニンジン、ダイコン、カブダネ。ドレモ食ベラレルヨ。」

「食べ物か!」

 

 ゴマちゃんは、ラモリさんがニンジンと呼んでいた物を手に取ります。

 

「そんな大事なもの勝手に取っちゃっていいのかな?」

「味見しちゃいけないなんてルールはないぜぇ~?いただきまーすっ!」

 

 ゴマちゃんはニンジンをガリッとかじります。

 

「いかがですか、お味は……?」

「……うん、これいけるな。カタいけど甘みがある。」

「どれどれ?……うん、いけるね。ジャパリまんに慣れてると、こういう野性味あふれる味って新鮮かも。」

 

 ニンジンはおおむね好評だったようです。一方で、イエイヌちゃんはダイコンをかじります。見た目は雪のように白いきれいな野菜ですが……。

 

「うえっ!これ、辛いです!」

「辛いの?大丈夫?」

「ダイコンハ空気ニ触レルト、辛味ガ抜ケテイクヨ。辛イノガ苦手ナラ、切ッタリスリオロシタリシテ、シバラク置イテオクトイイヨ。モシクハ、葉ニ近イ方カラ食ベルコトダネ。」

「おっ……いや、この辛さがいいじゃん。」

「からっ。でも、嫌な感じじゃないかも。人それぞれだね。」

 

 ダイコンは意外にも辛く、一部で不評だったようです。最後に残ったカブはダイコンを小さくしたような見た目ですが、どのような味なのでしょうか。

 

「おいしい!あたし、このカブっていうの気に入っちゃったかも!」

「クセがなくて食べやすいじゃん。これならイエイヌも食べれるだろ。」

「もぐもぐ……。はい、おいしいです!」

 

 イエイヌちゃんも特に問題なく食べることができたようです。

 総じてどのお野菜もおいしいのに、なぜタダでこんなところに置かれているのでしょうか。余計不思議に感じられます。

 

「これ、誰が作ってるんだろ?」

「ラモリの仲間が作ってるんじゃねーの?」

「ピピピッ……ピピピッ……。詳細不明……詳細不明……。恐ラク、ヒトガ作ッタモノト仮定。ナオ、ソノ割ニハ洗練サレテオラズ、雑味モ多ク実モ小サイ模様」

「つまり、ヒトが作った割には色々雑ってこと?」

「作った方はこの近くにいるんでしょうか?」

「会えたらいいなぁ。ゴリラさんの言っていたヒトの仲間かもしれないし。」

 

 思わぬ寄り道をしてしまったともえちゃん達でしたが、改めてバイクをスタートさせます。腹ごしらえも大事ですが、スケッチの場所へも急がねばなりません。

 

 

 バイクでしばらく走行すると、土の中から生えている葉っぱに気づきました。倉庫付きの小屋を中心にずらりと並んだ葉っぱは、とても自然に生えたものとは思えません。

 

「わ~!これ、ウワサに聞く畑ってやつだよね?すっごーい!めっちゃ絵になる~!」

「畑?」

「野菜を作る土地だよ!さっきの野菜はきっとここから収かくしたんだよ!」

 

 初めての畑をじっくり見物するともえちゃん達。すると、畑の中に二人の人影がいることに気づきました。

 

「あら、お客様ですね。」

「こんにちは~。」

 

 一人はほ乳網ウマ目ウマ科ウマ属のロバちゃん。黒い耳を生やし、髪はグレーと黒色。黒髪をポニーテールでまとめています。服は白とグレーを基調としており、短いエプロンスカートと白いブラウスがおしゃれです。

 もう一人はほ乳網クジラ偶蹄目イノシシ科イノシシ属イノシシ亜種のブタちゃん。ピンクの耳に白いショートヘアー。服は白とピンクが基調のドレスで、スカートにフリルをあしらっています。白い手袋にハートを反対にしたようなヘアゴムもかわいらしくまとまっています。

 

「わっ、フレンズだ~!めっちゃ絵になる~!」

 

 ともえちゃんは毎回恒例と言わんばかりに、ブタちゃんに抱き着きます。いきなりのことにブタちゃんは大慌て。

 

「きゃあ~、だ、ダメです~。きたないですからぁ!」

「え~、そんなことないよ~?」

「はいはい、いったん落ち着こうな~。」

「あたたた……。」

 

 一向に離れようとしないともえちゃんを、ゴマちゃんが耳を引っ張って無理やり引きはがします。ゴマちゃんもあしらい方が板についてきたようです。

 二人がひと悶着している間、イエイヌちゃんがロバちゃんとブタちゃんにごあいさつをします。

 

「代わって自己紹介をさせていただきます。私はイエイヌ、あちらの帽子をかぶっている方はともえさん、引っ張っている方はロードランナーさんです。」

「私はブタと申します。」

「私はロバです。皆さん、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。ところであのぉ……あちらにあったお野菜ってひょっとして?」

 

 と、イエイヌちゃんは先ほど来た道の向こう側を指差します。ロバちゃん達には、そこになにがあったかピンときたようです。

 

「あぁ!それ私達の野菜ですね!」

「お口に合いましたかぁ?」

「はい、とっても!」

「おいしかったよ!」

「ごちそうさまっ!」

「やったね、ブタちゃん!がんばってきたかいがあったよ!」

「うん!よかった~……。」

 

 ロバちゃんは大はしゃぎし、ブタちゃんはほっと胸をなでおろしています。やっぱりあの野菜を作って置いたのはヒトではなく、この二人の農業コンビだったようです。

 となると、次に気になるのはなぜ野菜を置いたかです。

 

「あそこにあった野菜ってなんなの?」

「もちろん、フレンズのみなさんにも食べてもらうためです。今はラッキービーストさんがジャパリまんを定期的に運んでくださいますけど、世の中にはまだまだおいしいものがたくさんあるって知ってほしいですからぁ。」

 

 確かに、今はジャパリまんを食べていればほとんど事足りてしまうのですから、ここへ来なければきっと野菜を知らないまま一生を終えていたかもしれません。

 さて、次に気になるのはこの畑です。

 

「この畑もひょっとしてブタさんとロバさんのものですか?」

「はい。私はロバちゃんにさそわれて……。」

 

 ブタちゃんの言葉にロバちゃんはこくりとうなずきました。

 

「私、昔ヒトと一緒に働いていたことがあったんです。それでブタちゃんとも仲が良くて。」

「ヒトと働いていたこと、覚えてるんだ?」

「うっすらと……。それで、ヒトがやっていたことを何かやってみようと思いまして。」

「ヒトと同じように畑を耕して、作物をとる。それがヒトがいたことの証を残すことになるのではないかと思ったんですぅ。」

「それで農業を……ふ~ん。」

 

 ヒトと同じことをし、同じものを作る。全くの手探りでそれをするには、きっと大変な苦労があったに違いありません。

 話を聞いたゴマちゃんは、畑に生えた葉っぱをなでながらつぶやきます。

 

「ヒトってこんな草を育ててたのか。」

「全ては食べるためです。生きるために野菜を育てて、それを食べて暮らしていたんですよ。」

「でも、ここではジャパリまんでいいじゃん?楽だし。」

「それを言われるとミもフタもありませんねぇ……。でもやってみると楽しいんですよぉ、野菜もおいしいですし。しんどいですけど。」

 

 ブタちゃんが野菜づくりのすばらしさを語っているところに、ロバちゃんがそっと耳打ちします。

 

「ねえブタちゃん、そろそろ……。」

「あっ、いけな~い。早くニンジンの収かくをしなきゃ。」

「収かく?」

「ニンジンがもう食べごろを迎えた頃なんですよぉ。だから土から引っこ抜かないと。」

「ちょっと待って、この広い畑を全部見るの?」

 

 ともえちゃんは、改めて畑を見回します。ずらっと葉っぱが並んだ畑は広く、ともえちゃんが100人寝そべっても足りないかもしれません。その中のニンジンだけでもかなりの数になりそうです。

 

「はい~。」

「もちろん。」

「ひえ~。」

「野菜を育てるのって大変なんですね……。」

「ヒトってそんなメンドーなことやってたんだ……。」

「ヒトのフレンズとは思えないこと言うなぁ。」

 

 ゴマちゃんの冷ややかなツッコミに、ともえちゃんは少し申し訳なさそうに頭をかきます。

 でも、ここで見てみぬふりはできません。おいしい野菜を食べさせてくれた恩に報いるのが礼儀というものでしょう。

 

「あたし達もお手伝いしまーす!」

「本当ですか!?」

「助かりますぅ。」

 

 こうしてともえちゃん達は農業コンビの畑仕事を手伝うことに決めました。

 しかし、三人は畑仕事のことがまるで分かりません。まずは二人に指示を仰ぎます。

 

「これは……食べごろですね。葉っぱの根本のほうからグイッとお願いします。カタければ掘りながら抜いても構いませんよ。」

「ふんっ!……けっこう力いるなこれ。」

「くんくん……これも食べごろみたいですぅ。抜いてしまいましょう。」

「くんくん……ほっ。くんくん……ほっ。」

 

 鼻の利くブタちゃんに収かく時期のニンジンを教えてもらっている中、イエイヌちゃんはとても快調にニンジンを選別して抜いてゆきます。持ち前の鼻のよさと力強さを生き生きと発揮させているようです。収かくしたニンジンは、ネコ車と呼ばれる台のついた一輪車にどんどん乗せてゆきます。

 みんながニンジンを収かくしていく中、となりのダイコン畑にちょっとした異変が発生しているようです。

 

「あっ!この葉っぱ、虫がついてる!」

「かわいそうですが、潰していただけますか?」

「うー……。虫はちょっとニガテ……。」

「ともえさん、無理しなくても私が潰しますよ。」

 

 と、イエイヌちゃんはためらうことなく、虫を潰します。イエイヌちゃんは一人で二、三人分の働きは軽くしているでしょう。

 

「イエイヌさん、本当によく働きますね~。」

「えへへ……。」

 

 ほめられて照れるイエイヌちゃんを尻目に、ラモリさんは黙々と作業をしています。

 

「品質良好、収カク。品質良好、収カク。害虫発見、処理。」

 

 収かく時期のニンジンを見つけては尻尾で器用に引っこ抜き、雑草を見つけてはお尻に内臓されたカッターで器用に刈り取り、虫を見つけては器用に踏みつぶし……。淡々と高速で作業をこなしてゆきます。フレンズ達とは比べ物にならない効率の良さです。

 しばらく作業をしていたともえちゃんはふと、あることに気づきます。

 

「ひょっとして、ダイコンとカブも土の中に?」

「はい。今見えているのは葉っぱだけですけど、土の中ではすくすくと育っているはずです。」

「あと二週間もすれば食べられるようになると思いますよぉ~。引っこ抜くまでのお楽しみですね。」

「へぇ~……。二週間かぁ……。」

 

 さすがに二週間も待つことはできませんが、それでもこれだけ広い畑の野菜達が一斉に実をつけたらどんな光景になるのでしょうか。想像するだけでも胸のドキドキが止まりません。それに楽しみを見出した農業コンビを、ともえちゃんはひそかに尊敬の目で見つめました。

 

 

 全ての畑を回ってニンジンを収かくし、雑草と虫を駆除して水やりも行い、ようやく作業が終わりました。

 そこへ、ロバちゃんがネコ車を引きながら次の作業内容を教えます。

 

「さあ、収かくしたニンジンを洗いに行きましょう。」

「川までこれを運ぶの?歩くの大変そう。」

「ナラ、ジャパリバイクでケン引スレバイイヨ。バイクトネコ車ヲツナゲテ、引ッ張ロウ。」

「ひえぇ~!ボスがしゃべってますぅ~!」

「これもお約束だったっけ……。」

 

 ラモリさんの提案を受けてジャパリバイクにネコ車をつなげてけん引し、川へ一直線。

 川へ着くと、みんなはニンジンの土を一個一個丁ねいに洗い落とし、ネコ車に乗せます。するとその途中、イエイヌちゃんがともえちゃんに相談をします。

 

「あの、ともえさん。ナイフ持ってましたよね?貸していただけませんか?」

「いいよ。でもどうするの?」

 

 ともえちゃんはかばんからナイフを取り出してイエイヌちゃんに渡します。何やらニンジンを丁ねいにタテにむき、サイドカーに乗せています。一体、何をしているのでしょうか。

 

 

 全てのニンジンを洗い終え、再び小屋に戻ってきました。洗ったニンジンを高床倉庫に置いて作業完了です。ともえちゃんとゴマちゃんの身体はもうクタクタで動けません。

 

「や、やっと終わったぁ~……。」

「ありがとうございますぅ。こんなに早く終わるなんて、久しぶりかも。」

「こんなことをずーっと続けてるんだね……すごいや。」

「イエイヌさんは平気そうですね。」

「はい。まだ大丈夫です。」

 

 イエイヌちゃんは元気そうに尻尾を振ってアピールをします。ここへ来てからイエイヌちゃんはとても生き生きとしていますね。

 そこへふと、ロバちゃんがともえちゃんに質問を投げかけます。

 

「そういえば、ともえさん達は何しにこちらへ?」

「あっ、そうだ!聞きたいことがあるんだけど……。」

 

 思い出したようにスケッチブックをかばんから取り出し、キャベツ畑のページを開きます。ロバちゃんは何か手がかりを知っているでしょうか?

 

「こ、これ……ブタちゃん!」

「どうしたのロバちゃ~ん?……あっ!」

 

 スケッチを見た二人が突然息を呑みます。

 

「ど、どうしたの二人とも?」

「このキャベツ畑……。」

「私達が畑を作ろうと思った、あこがれの場所なんです~……。」

「あこがれ……?どうして?」

「一度見てみれば分かります。ボスが管理してるんですけど。」

「あんなきれいな畑、私達も作りたいですぅ。」

「そんなにすごいんだ。」

「絵を見た感じじゃ、丸い草がバーっと生えてるようにしか見えないけどな~。」

 

 ゴマちゃんの目はうたがいの眼です。身体が綿になるほど疲れる印象しかない畑を、あまり好意的には見れないようです。その一方でイエイヌちゃんはやる気マンマンです。

 

「ともえさん、ゴマさん!行きましょう!」

「で、でももう疲れて……。」

「ジャパリバイクなら疲れません!」

「それだと、ブタちゃんとロバちゃんは歩くしかなくなっちゃうよ。」

「あ、大丈夫ですよ。私はまだ歩けますし。」

「ゆっくりご案内しますぅ。」

 

 二人はニコニコと答えます。なんというタフさでしょうか。いやしかし、これだけの体力がなければとても農業をやろうなどとは考えないのかもしれません。

 

 

 ジャパリバイクは農業コンビの二人に合わせてゆっくりと走ります。みんなは今、山の方へ向かって進んでいます。キャベツ畑は山の中にあるのでしょうか。

 小刻みなゆれと疲れのせいで眠ってしまいそうですが、まだ眠るわけにはいきません。ふるい立たせるように首を振るともえちゃんに、ブタちゃんが声をかけます。

 

「ともえさんって、その本に描いてある場所を探してるんですかぁ?」

「うん。色々あってね。」

 

 ともえちゃんはここまでの旅のことを農業コンビにも教えてあげます。記憶を失くしたこと、スケッチブックを手がかりに記憶を探していること、その記憶が今のところ一人ぼっちなこととフレンズが嫌いだったこと……。

 

「ふぁ~、大変ですねぇ。」

「そろそろいいことが思い出せるといいですね。」

「うん、ありがと!」

 

 自分を心配してくれる二人に、ともえちゃんは笑顔でお礼を言います。そこへイエイヌちゃんが、何やら気になることがあるらしく、二人に質問をします。

 

「ところで、お二人はどうやって農業を始めたんですか?」

「そうですね……小屋の周りには倉庫がいくつかあるんですが、そこにニンジン、ダイコン、カブの種があったんです。」

「それと農具や育て方の本とか。図書館で字の読み方も勉強しましたよぉ。」

「へぇ~、熱心だね。」

「最初は右も左も分からなくって。実が生らないまま終わることもあったりして。でも、やっとまともに野菜を作れた時、『ああ、自分達でもやれたんだ』って……。」

「それでずっとお野菜を?」

「はい。でも、一番の理由は……。」

「やっぱりあのキャベツ畑、ですかねぇ。」

 

 ロバちゃんもブタちゃんも夢見る乙女の顔をしています。それほど二人に衝撃を与えたキャベツ畑とは一体どんな畑なのでしょうか。ともえちゃん達はワクワクしながら山の中を進んでゆくのでした。

 

 

 

続く




2期では接点がありませんでしたが、家畜繋がりということでロバちゃんとブタちゃんを出しました。
家畜と言えば人間のお手伝い、家畜にできるお手伝いと言えば、農業。
1期の図書館では色んな食材があったから、ラッキービーストがどこかで野菜を作っているに違いない。
とここまで思いついた時はよく気づいたと自画自賛でしたが、Aパートを書いた後でブタちゃんの服装は農業に向いていないことに気づきました。
しかも、土地と動物だけでなく野菜についても調べなければならず、労力が嵩む始末。あーあ。

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