けものフレンズR 足跡を辿って   作:ナンコツ

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※これは第六話としょかんげきじょうの続きです。
まだAパートを読んでいない方は、先にそちらをお読みください。

※この回はけものフレンズ2と性格が違っているキャラが多くいます。
そちらが好きな方は注意してお読みください。

※このお話はお芝居をイメージして台本形式にしています。苦手な方はご注意ください。


第六話 としょかんげきじょう Bパート

カンザシフウチョウ(カンザシ)

鳥網スズメ目フウチョウ科カンザシフウチョウ属のフレンズ。黒いマントを羽織り、黄色のリボンを胸につけている。

カタカケフウチョウ(カタカケ)

鳥網スズメ目フウチョウ科カタカケフウチョウ属フレンズ。黒いマントを羽織り、青色の大きな胸飾りをつけている。

ともえ

ヒトのフレンズ。スケッチブックを手がかりに、自分が何者かを知る旅をしている。

イエイヌ

ほ乳網ネコ目イヌ科イヌ属のフレンズ。ともえと共に旅をしている。

G・ロードランナー(ゴマちゃん)

鳥網カッコウ目カッコウ科ミチバシリ属のフレンズ。ともえと共に旅をしている。

アムールトラ(アムール)

ほ乳網ネコ目ネコ科ヒョウ属のフレンズ。非常に攻撃的な性格。

ラッキービースト(ラモリさん)

フレンズからはボスと呼ばれる。青い体にサングラスが特徴。

 

 

 

 図書館の外、そよ風が吹き抜ける。

 カタカケ、台詞を読む。

 イエイヌ、それに続いて読む。

 

カタカケ

「ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの。お父さまと縁を切り、その名を捨てて。それが無理なら、せめて私を愛すると誓って。そうすれば、私はキャピュレットの名を捨てましょう。」

イエイヌ

「ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの。お父さまと縁を切り、その名を捨てて。それが無理なら、せめて私を愛すると誓って。そうすれば、私はキャピュレットの名を捨てましょう。」

カタカケ

「ああ素敵。素晴らしいわライサンダー。あなたは演劇の素質があるわ。」

イエイヌ

「ロミオ?なる方をともえさんだと思ったら、すんなりできました。」

ともえ

「イエイヌちゃんすっごーい!」

ゴマちゃん

「こんなの覚えらんねーよぉ~。」

ともえ

「なら、歌でも歌ってみる?」

ゴマちゃん

「歌?」

カンザシ

「こほん。あーあーあーあーあーあーあー、あーあーあーあーあーあーあー。」

ともえ

「こんな感じ。」

ゴマちゃん

「なるほど。あぁーあぁーあぁーあぁーあぁーあぁーあぁー!あぁーあぁーあぁーあぁーあぁーあぁーあぁー!」

 

 と、突然アムールが屋根から転がり落ちてくる。

 

ともえ

「きゃあっ!」

カンザシ

「何者だ、善良な亡霊か、呪われた悪霊か、その目的は、祟りか、救いか。えーと……。」

ゴマちゃん

「お、おれのせいじゃないぞ。」

アムール

「ガルルル……。」

カンザシ

「わけは知らぬが、かかる怪しき姿で現れた以上、問いかけずにおくものか。貴様を何と呼ぼう。」

イエイヌ

「カンザシ師匠、ビーストですよ!」

カンザシ

「ビースト?まさか、地を焼く剣の使い手、炎の化身スルトの末えいか。」

ともえ

「アムールトラちゃんだよ、カンザシ師匠!」

カンザシ

「アムールトラ?まさか、恋の矢の使い手、愛の化身エロースの末えいか。」

ゴマちゃん

「頼む、話を聞いてくれ、ケガするぞ。」

カンザシ

「なぜだ、何を恐れる必要がある。命など、針一本ほど惜しくもな。」

アムール

「ガブゥッ!」

カンザシ

「あだだだだ!かまないで!いたいよぉ!しんじゃうよぉ!」

カタカケ

「ハムレット殿下!お気を確かに!」

ともえ

「アムールトラちゃん、やめてぇ!」

アムール

「ガルガル……。」

 

 ともえ、アムールを取り押さえる。

 ようやく解放されたカンザシ。

 

イエイヌ

「大丈夫ですか、師匠!」

ゴマちゃん

「師匠!」

カンザシ

「いたたた……。まだズキズキする。まるで、頭が割れるようだ。頭が……いや違う。」

カタカケ

「ハムレット殿下、いかがなさいましたか?」

カンザシ

「刺激……そうだ刺激だ。刺激を受けて身体が頭を治そうとする。それが、私の頭脳に、カガク変化をもたらした。おお、おお、今なら言えるぞ長台詞。さっそく読むぞ長台詞。」

 

 カンザシ、本に目を通し、台詞を覚える。

 やがて、ともえ達の前に立つ。

 

カンザシ「生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ。どちらが気高い心にふさわしいのか。非道な運命の矢だまをじっとたえしのぶか、それともどとうの苦難にきりかかり、戦って相果てるか。死ぬことは眠ること、それだけだ。眠りによって、心の痛みも、肉体が抱える数限りない苦しみも終わりを告げる。それこそ願ってもない、最上の結末だ。死ぬ、眠る。一体、死という眠りの中でどのような夢を見るのか?ようやく人生のしがらみを振り切ったというのに?だから、ためらう――そして、苦しい人生をおめおめと生き延びてしまうのだ。すぐれた人物がたえしのぶ、下らぬ奴らの言いたい放題、そんなものに耐えずとも、短剣の一つきで人生にケリをつけられるというのに?行けば帰らぬ人となる黄泉の国――それを恐れて、意志はゆらぎ、想像もつかぬ苦しみに身を任せるよりは、今の苦しみに耐えるほうがましだと思ってしまう。こうして、決意本来の色合いは、青ざめた“思考”の色に染まり、いだいなる“くわだて”も、色あせて、流れがそれて、“行動”という名前を失うのだ。」

 

 カンザシ、礼。

 一同、拍手。アムールもつられる。

 

ともえ

「すごいすごい!こんなのよく読めたよ師匠!」

イエイヌ

「これが頭脳のカガク変化なんですね!」

アムール

「がぅ……。」

ゴマちゃん

「ジャラジャラ鳴って、うるせーよ……。」

カタカケ

「感服いたしましたハムレット殿下。あなたの後ろに、芸術の神ミューズが見えました。そんなあなたにおくるお花はクルミの花。知恵の花。」

 

 と、拍手するアムールのスカートからぬれてくしゃくしゃの紙がこぼれる。

 

ともえ

「……あれ?アムールトラちゃん。その紙……。」

 

 と、ともえ、紙を拾う。

 

ともえ

「あっ……。前に描いたスケッチ……。」

アムール

「ウゥ……。」

ともえ

「だいじょーぶだいじょーぶ。また描いてあげるから!めーっちゃ、まかせて!」

ラモリさん

「……読ミ込ミ完了。再生開始。」

 

 と、ラモリさん、突然サングラスが光り出す。すると映像が映し出される。

 

アムール

「ガウッ!ガルルル!」

イエイヌ

「あっ、これジャングルの時の?」

ゴマちゃん

「今までだまってたのに突然だな。」

カンザシ

「これは一体、なにごとだ!?」

カタカケ

「しゃべったりしゃべらなかったり、幻を見せたり。ふしぎな動物!」

 

 映像には、ともえに似た帽子をかぶった緑髪の子どもと、同じく帽子をかぶった女性。

 どうやら子どもが女性に歌をきかせているようだ。

 

子ども

『ふふんふふんふ~ふ~ふふ~ん、ふふふんふふふんふ~ん。』

ガイド

『まあ、お上手。歌声きれいね。』

子ども

『これねー、今はやってる歌なんだー。』

ガイド

『へぇ~。最近、そういうのにうとくなっちゃったから……。』

子ども

『ミライお姉さんにも教えてあげる!』

ガイド

『わあ、ありがとう!でも残念だけど……ちょっと別のちほーへ行かなきゃならなくなっちゃって。』

子ども

『えぇ~。じゃあもう会えないの?』

ガイド

『きっとまた会えるわ。それまでパパとママと、そしてこのラモリさんと一緒に待っててね。』

子ども

『うん!じゃあもう一回うたうね。歌の名前はねー、あし……なんとかって言うんだ。』

 

 ここから、子どもの歌が続く。

 

イエイヌ

「はぁ~……。いい歌ですねぇ~。」

カンザシ

「まさに、青天のへきれき。こんな歌がその昔はやっていたとは。」

カタカケ

「これを風化させてはならないわ。そうでしょう、ハムレット殿下。」

カンザシ

「もちろんだ。さあ歌おう、そしてこの歌を広めよう。」

ともえ

「アムールトラちゃん、いっしょに歌ってみて。きっと楽しいから!」

アムール

「……ウン……。」

 

 一同、映像の歌を歌う。

 ともえ、その様子をスケッチ。

 

ともえ

「できた!はいっ、アムールトラちゃん!」

アムール

「えっ……。」

ともえ

「また欲しくなったらいつでも言ってね。何回でも描いてあげるから。」

アムール

「ウ……。」

 

 と、アムール、おずおずと一礼。

 

カンザシ

「おお、これぞフレンズ。凶暴にして粗暴な、ネメアのライオンのごとき気性のヘレナとも、こうして分かり合うことができるのだ。」

カタカケ

「ヘレナ、あなたにおくる花はライラック。友情と思い出の花。」

カンザシ

「そうだヘレナよ。貴様も我らの弟子となるがいい。」

カタカケ

「私達の弟子になってくれれば、図書館は使い放題。本も持って行っていいし、字だって教えてあげる。他にもお得な特典がいっぱいよ。」

ゴマちゃん

「だから特典ってなんだよ。」

カンザシ

「さあ、弟子にならぬか?」

カタカケ

「さあ、弟子になりましょう?」

 

 カンザシとカタカケ、アムールを囲んでマントを広げ、ステップをふんでダンスを踊る。

 

カンザシ

「さあ!さあ!」

カタカケ

「さあ!さあ!」

アムール

「……?」

カンザシ

「さあ!さあ!」

カタカケ

「さあ!さあ!」

アムール

「……。」

カンザシ、カタカケ

「さあ!」

アムール

「ウガ。」

 

 と、アムール、カンザシとカタカケの顔面に強烈なパンチ。

 

カンザシ、カタカケ

「きゅぅ~ん……。」

イエイヌ

「師匠!」

ゴマちゃん

「しっかりしてよぉ!」

アムール

「フン。」

 

 アムール、不機嫌そうに退場。

 

ともえ

「ま、待ってよアムールトラちゃん!二人にちゃんと謝って!ねえってば!」

カンザシ

「うぅ~ん……。」

イエイヌ

「あっ、気がつきました。」

ともえ

「ほんと?大したことなさそうでよかったぁ~。」

カンザシ

「……さて、母上。どうなさいました?」

ともえ

「え?」

カタカケ

「美しいおきさき様はどちら?」

イエイヌ

「まだ頭いたみますか?」

カンザシ

「いいえ、わかっています。あなたは妃、あなたの夫の弟の妻。そして残念ながら、わが母上。」

カタカケ

「本当の恋人をどうやって見分けるの?帽子に貝がら、手には杖、歩く巡礼よ。」

ゴマちゃん

「なぜこうなった。」

カンザシ

「いや、いや、おすわりください、動いてはならぬ。じっとして。今、鏡を見せます。心の奥底までご覧になるがいい。」

カタカケ

「お願い、聞いて。死んだあの方はもういない、もういない。緑の草に覆われて、足には小石。」

ともえ

「大切な理性をなくしてしまった……。ああなってはフレンズは形ばかり、動物同然だ……。」

カンザシ

「……あっ。」

カタカケ

「……あっ。」

カンザシ、カタカケ

「めっちゃひらめいた~!」

 

 カンザシ、カタカケ、ものすごい速さで図書館へ入る。

 

ゴマちゃん

「……どっかで聞いた気がする。」

イエイヌ

「もしかして、『めっちゃ絵になる』って、ここから?」

ともえ

「まぁ……あたらずとも遠からず、かな。」

ゴマちゃん

「モロじゃんこれ。」

 

 三人、後を追って図書館へ入る。

 

カンザシ

「主人公はジャパリパークで生まれる!そこへフレンズが、迷子になった主人公を見つける!」

カタカケ

「その主人公を助けるためにパークを冒険し、家を見つける旅に出る!」

カンザシ

「しかしその途中で、主人公は大事なものを失くしてしまう!」

カタカケ

「そこで主人公は謎の影と出会い、自分にとっての居場所は何か、自分の大事なものは何かを自問自答する!」

カンザシ、カタカケ

「これは名作の予感!」

ともえ

「あー、始まっちゃった。」

イエイヌ

「なんだか鬼気せまるものがありますね……。」

ともえ

「何か演出を思いつくと、ああやってメモが止まらなくなるの。……そうだ!ねえ、師匠!今日はここに泊めてもらってもいい?」

カンザシ

「ああ、構わない。」

カタカケ

「好きなところで寝なさい、すてきな夢をみなさい。」

ともえ

「ありがと~。やっぱり、たのみごとをするなら忙しい時をねらうに限るね!」

ゴマちゃん

「悪いやつ~。」

カンザシ

「我々に何度も知恵とひらめきを与えるとは、ヘレナには感謝してもしきれない……。」

カタカケ

「そう!彼女こそ、知恵の神メティスのもたらした祝福の子だったのよ!」

ゴマちゃん

「それはいいすぎ。」

 

 第三幕終了。

 

 

 

 図書館の入り口。別れの時である。

 

カタカケ

「もう行ってしまうというのか?」

ともえ

「うん。そろそろ記憶探しを再開しないと。」

カンザシ

「他に持って行くものはないか?図鑑にマッチ、ばんそうこうに羽のペン。なんでもあるぞ。」

ともえ

「大丈夫。スケッチブックだけでいいの。」

イエイヌ

「カンザシ師匠、カタカケ師匠。昨日と雰囲気が違いますね。」

カタカケ

「今の私はカタカケではない。私はその名も気高きハムレット。」

カンザシ

「私はその腹心の友、ホレイシオ。」

イエイヌ

「配役が入れ替わってますよ。」

ゴマちゃん

「オフィーリアはどこいった。」

カタカケ

「ならせめて、これだけ持って行ってくれ。」

ともえ

「この紙は?」

カタカケ

「今度海でやる、バンドウイルカとカリフォルニアアシカのショーのチケットだ。」

カンザシ

「我々が演出をしている。ぜひ観に行ってくれ。」

ともえ

「ショーのチケット!なんだかめっちゃ絵になりそう~!」

イエイヌ

「私、行ってみたいですぅ~!」

ラモリさん

「ベイビー。今、重要ナ情報ガ入ッテキタヨ。」

ともえ

「じゅうよう?」

ラモリさん

「海デヤルショー、海デヤル、海……。」

ともえ

「まさか……。」

 

 と、ともえ、手がかりのスケッチブックを開く。

 

ともえ

「あっ、そっか!海のステージ!」

ゴマちゃん

「次の手がかりの場所か!」

カタカケ

「そう。我々はこの時を待っていた。」

カンザシ

「そう。我々はそのために残しておいた。」

カタカケ

「いざ進め、自らの記憶をたどる道を。」

カンザシ

「いざ歩め、自らの足跡をたどる旅路を。」

カタカケ、カンザシ

「そして、いつか戻れ、我らのすみかのこの図書館へ。」

ともえ

「カンザシ師匠、カタカケ師匠、どうもありがとう!」

イエイヌ

「またお芝居のことを教えてください!」

ゴマちゃん

「今度来る時には、もっと歌、うまくなってくるぜ~。」

ラモリさん

「コネコチャン、バイクノ準備ハデキテルヨ。今日モゴキゲンサ。」

ともえ

「うんっ。じゃあまたね~。」

 

 ともえ、イエイヌ、ゴマちゃん、手を振りながら図書館を後にする。ラモリさんもそれに続く。

 カタカケ、カンザシ、退場するまで手を振り続ける。

 

カンザシ

「あっ!」

カタカケ

「どうしたホレイシオ。ジャパリまんをノドに詰まらせたような顔をして。」

カンザシ

「そういえば、忘れていたことが。」

カタカケ

「……あっ。そんなことを言うから思い出してしまったではないか。」

カンザシ

「ヒトがここを訪ねたことを。」

カタカケ

「フレンズを連れていたことを。」

カンザシ

「どうする……?」

カタカケ

「どうする……?見てこよう。」

 

 カタカケ、入口のトビラを開けてチラッと見る。やがて、ため息。

 

カタカケ

「生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ……。」

 

 

 

終わり




フウチョウコンビは、フレンズ思いで優しく、おせっかいな子として描写しました。言動はアレだけど。
どんなフレンズも分け隔てなく愛する、ともえちゃんのスピリットに繋がるキャラを目指しました。言動はアレだけど。

今回は変わった形式になりましたが、次回からはちゃんと元に戻します。

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