けものフレンズR 足跡を辿って   作:ナンコツ

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※これは第七話うみのショーの続きです。
まだAパートを読んでいない方は、先にそちらをお読みください。


第七話 うみのショー Bパート

 ここは「カイジュウエンマエ」。どこまでも海が広がり、水平線が見えます。そこにある水族館の廃きょに併設されたステージで、ともえちゃんはイルカアシカコンビの頼みを聞いてハリボテの鐘の修理を行います。修理は無事に終わったのでしょうか?

 ともえちゃんはおそるおそる、ハリボテの中のキカイのスイッチを押し込みます。

 

「カランカラ~ン、カランカラ~ン。」

 

 音は無事に鳴りました。ノイズも聞こえません。修理は無事完了したようです。イルカアシカコンビは大喜び!

 

「すっごーい!ともえありがとー!」

「ありがとうございます、助かりました!」

「うんうん。じゃ、これ戻さないとね。」

 

 ともえちゃん、イエイヌちゃん、ゴマちゃんは再び会場までハリボテを戻し、ロープに結わえ付けると、イルカアシカコンビは舞台裏からするするとロープを引っ張りハリボテを上げます。十分な高さになったら、フックに固定すればOK。

 これで明日の準備は全て整いました!

 

「ここまで親身にしていただいて。本当になんとお礼を言ったらいいか。」

「プレミアムチケット持ってるから、いっちばんの席への招待じゃ意味ないもんね~。」

 

 イルカアシカコンビが首をひねっていると、見回りを終えたカルガモちゃんがみんなに声をかけます。

 

「みなさーん、暗くなってきましたよー。そろそろ宿舎でお休みしてはいかがですかー?」

「はーい!ねえ、ともえ達も来ない?カルガモさんもきっと聞いてくれるよ。」

「わあ、ありがとう!みんなもいいよね?」

「はいっ。明日のショーが楽しみです。」

「ひょっとしておれ達、すっごいラッキーなんじゃね?」

「そもそもプレミアムチケットを持ってること自体が、すごくラッキーかと……。」

 

 イルカアシカコンビはカルガモちゃんに話をつけると、カルガモちゃんは快くOKしたようです。みんなはカルガモちゃんの引率に従い、宿舎に移動します。ちなみにジャパリバイクはラモリさんが宿舎まで移動してくれました。

 

 

 宿舎は会場のすぐ近くにある、二階建ての大きめの家でした。昔は水族館を管理していたヒトがここで寝泊まりしていたそうです。

 ともえちゃん達は二階に案内され、そこに置かれた二つの二段ベッドで寝ることになりました。ベッドは少し硬めでしたが、それでも寝る分には問題なく、むしろ野宿よりもずっと快てきです。

 しばらくベッドで休んで落ち着いたともえちゃん達は、カルガモちゃんに呼ばれて一階の食堂にやってきます。そこには長いテーブルが二台置かれ、その周りにイスが並んでいます。また食堂らしくキッチンも備えられており、カウンターがちょうどいい高さでキッチンを隠してくれます。食堂ではジャパリまんをたくさん用意したイルカアシカコンビが迎えてくれました。ついでに、ここにも電磁調理器や茶葉、ポットがあり、イエイヌちゃんは腕の見せ所とばかりにはりきってお茶の用意をします。

 みんなは、イエイヌちゃんの出してくれたお茶を飲みながら、おしゃべりをします。

 

「ともえさんには本当にお世話になりました。あのキカイは私もお手上げで、どうしたらいいかと。」

「ホントにともえは恩人だよ!何でも聞いてね!」

「う~ん……じゃあ一つ聞いていい?どうしてイルカちゃんとアシカちゃんはショーをやろうと思ったの?」

「きっかけは……アレかな。」

「アレですね。門をくぐる時に見たと思いますよ。」

 

 イルカアシカコンビは、顔を見合わせて答えます。確かにあの門には、廃きょを思わせるようなぼろぼろの字で『イルカ&アシカのショー』と一文字ずつ書かれたタイルが貼り付けられていました。あれが何か関係しているのでしょうか?

 

「私達が見つけた時もあんな風にぼろぼろでした。でもその文字の意味を知った時、『昔の私達は芸を見せて楽しませてたんだ』と思いまして。それで、今の時代にもショーを復活させよう、とイルカさんが。」

「芸はどうやって覚えたの?」

「なんといいますか……体が覚えてるって感じだったんですよね。」

「私もそんな感じかな。」

「カリフォルニアアシカハ、利口デ物覚エガヨク、一度覚エタ芸ハナカナカ忘レナイヨ。覚エタ芸ヲ5年越シデヤラセテモ、チャント覚エテイタトイウ報告モアルヨ。一方デバンドウイルカモ知能ガ高ク、人間ノ次クライト結論ヅケタ研究者モイルヨ。」

「つまり、二人共とってもかしこいんだね!」

 

 えっへんとでも言いたげにイルカアシカコンビは胸を張ります。二人の記憶力は動物時代から変わらない、むしろフレンズ化でますます磨きがかかっているのかもしれません。

 

「みんなの前で芸をするのって、最初はちょっと恥ずかしかったよ。でもね、難しい芸だとみんながおうえんしてくれるし、終わってみるとすごく興奮したんだ。みんなが私を見て、拍手して、すごいすごいってほめてくれて……。」

「それが病みつきになったんだね。」

 

 イルカアシカコンビはこくりとうなずきます。

 恥ずかしかったと言っていることから、芸の失敗をおそれる気持ちはあったかもしれません。でも、それよりもお客さんの声にはげまされたりほめられたりしてうれしくなる気持ちの方が強かったのでしょう。自分達ががんばることでみんなが笑顔になってくれる。二人にとってこれほどうれしいことはなかったに違いありません。

 

「最初は二人だけでやっていたのですけど、やっぱり司会進行と演技をたった二人でやるのは辛くって。でもそんな時、お客様の引率をしていたカルガモさんが、キビキビとした態度でご案内していましたのが印象に残ったんです。」

「それでね、私がカルガモさんに司会をお願いしようよって提案したんだ!」

「へぇ~、なんかイメージできるカモ。」

 

 というともえちゃんの一言にカルガモちゃんは照れ顔。

 

「私、引率なら自分の力を一番生かせると思って引率をしたんですよ。それが司会進行だなんて……って、断ろうとしたんですけどねぇ。なんだかイルカさんに丸め込まれちゃいまして。」

「私、そういう説得には自信あるから。」

「へぇ~。なんでだろうね、ラモリさん?」

「バンドウイルカハ、コミュニケーション能力ガアリ、音ヤ体ノ接触デ仲間ト会話スルヨ。社会性モ高ク、好奇心デヒトノ船ニツイテ行クコトモアルヨ。ソレガフレンズ化シタ時ニ、コミュニケーション力ニ転化シタモノト考エラレルネ。コミュニケーション力ハ、円滑ナ社会生活ヲ送ル上デハ欠カセナイモノダヨ。」

「じゃあ、それがないヤツって大変だろうな~。」

 

 どうやら、ここまでショーを成功させるにはやはり苦労が多かったようです。芸だけでなく、ショーを進める進行役、会場の整備やお客さんの引率など。一人二人では大変だからこそ、他のフレンズにも助けを求めることがあるのだということがともえちゃん達にもよくわかりました。

 それと、ともえちゃんにはもう一つ気になることがあるようです。

 

「ねえ、二人がやってる芸って練習すればできるものなのかな?」

「どうでしょう?確かに一人でやる芸ならできると思いますけど、二人でやる芸だと、信頼関係もしっかりできていないと。」

 

 ともえちゃん達にはイマイチピンときませんでした。二人はずっと旅をしてきた友達同士です。信頼関係はとっくにできていると言ってもいいはずですが、それだけでは足りないのでしょうか?

 

「例えばですね……。イルカさん、あのフープ芸、付き合ってくれますか?」

「はいはい!任せて!」

 

 と、バンドウイルカちゃんは居間からフープを5本持ってきます。すると、カリフォルニアアシカちゃんはみんなを外へ出るように言います。二人は何をしようというのでしょうか。

 

 

 外に出ると、バンドウイルカちゃんは宿舎から離れていきます。その距離は20メートル前後といったところ。ここからカリフォルニアアシカちゃんのところへ投げるには、ある程度投げ方にコツが必要そうです。カリフォルニアアシカちゃんは準備オッケーと合図するように、手を叩きます。

 

「よく見ててねー!それーっ!」

 

 一本目の輪が投げられますが、カリフォルニアアシカちゃんは見事に頭を輪にくぐらせます。続いて、二本目、三本目と投げられますが、これらも流れるように且つうまくバランスを取りながら頭にくぐらせます。

 そしてとうとう、全ての輪をくぐらせることに成功しました。まるで、輪が彼女に吸い寄せられたかのようです。みんなは拍手かっさい!

 

「こういうことができるのは、互いの信頼関係があってこそです。『イルカさんならうまく投げてくれる、大丈夫、信じよう』と、そういう“信頼”ができている。それがひいては自分の力を信じ、最大限に引き出すことにつながるんです。」

 

 みんなは宿舎へ戻りながら、カリフォルニアアシカちゃんの解説に耳を傾けます。すると、バンドウイルカちゃんも一言付け加えました。

 

「ステージの上って案外孤独なんだよ。私なんて、ジャンプするたびに不安になるもん。」

 

 合流したバンドウイルカちゃんは目を伏せながら語ります。ということは、リハーサルの時にたびたび見せたあの見事なジャンプも、実は不安を抱きながら飛んでいたということなのでしょう。リハーサルでそうなら、失敗できない本番では……。それを想像したともえちゃん達はぶるっと身震いをしてしまいました。

 

「でも、お客さんにはそれが見えないようにしてるんだよね?」

「もちろんです。それが私達を信頼してくださるお客様へのレイギですから。」

「キレイなとこだけ見て、笑顔で帰って欲しいもんね!」

「う~ん。やっぱこの二人、おれが思ってるよりもずっとすごいのかも。」

「そうですよ~。この子達、みんなが思ってるよりもしっかりしてますから。」

 

 と、カルガモちゃんは我が子をジマンするように胸を張ります。

 イルカアシカコンビの意識の高さには、ともえちゃん達も大いに感心しました。だからこそ、19回も公演を続けることができたのでしょう。

 

「でも、カルガモさんもすごいよ~。声の出し方とか、仕切り方とか。ショーのプログラムもスケジュールも、全部任せちゃってるくらいだし。」

「カルガモさんは私達の母です。お母さま~。」

「ママ~。」

「もう~。甘えても何も出ませんよー。」

 

 カルガモちゃんに急に甘えだすイルカアシカコンビにみんな笑顔。

 ともえちゃんには“信頼”という言葉が強く印象に残りました。互いの力を信じ合うことで、自分の力を最大限に引き出せる……。これはこれからの旅にも言えそうです。フレンズみんなと仲良くなる夢を持つ彼女は、先ほどのカリフォルニアアシカちゃんの言葉を強く心に刻み込みました。

 

「他に意識してることってある?」

「う~ん……。そういえば、こことは別のエリアの遠くのちほーでは、ペンギン達がアイドルになってライブをしてるってウワサ知ってる?」

「さぁ……。」

「風のウワサで聞いたことは……。」

「イエイヌに同じ。」

「それを聞いた時、やっぱり他のフレンズを楽しませたい子っているんだって分かって、なんだかうれしくなっちゃって。」

「そうそう。それも励みになってますね。私達も頑張らなきゃって。」

「ライバルかぁ。プロングホーン様とチーターみたいだな。」

 

 ゴマちゃんはプロングホーンちゃんを懐かしんで遠い目をしています。すると今度は、イエイヌちゃんが質問をします。

 

「これからもこちらでショーを?」

「うん。私はどこもあったかくて過ごしやすい、このエリアが大好きだから。今のとこ、他に行く気はないかな。」

「私もですね。ここが自分に合っている気がして、非常に気に入っています。」

「私は二人の行くところならどこへでも。」

「みんな、ここが自分の居場所って感じなんだね~。」

 

 自分のハッキリした居場所を持っているイルカアシカコンビとカルガモちゃん。それに引き換え自分は……と考えてしまうともえちゃんでしたが、それは自分の心の中にしまい込みました。

 しばらくおしゃべりした後、みんなは明日に備えて寝ることにしました。みんなはそれぞれ、自分の寝場所に向かいます。

 明日はイルカ&アシカショー当日。興奮して目がさえてしまった子もいれば、おかまいなしに寝てしまった子もいるようです。

 

 

 次の日、ともえちゃん達は目を覚まし、一階へ下りてゆきます。すると、見なれないフレンズがいるのに気づきました。

 彼女の身なりは、白い耳と黒いふさふさした尻尾を生やしており、髪の白い部分はショートヘアーのようにまとめ、黒い部分はポニーテールに束ねています。服はノースリーブシャツとタイツ、そしてロンググローブの手首から後が黒いしまのような模様のついた白で統一されていて、さらにホットパンツとブーツ、グローブの手首から先は黒く、アクセントになっています。

 

「あれ?あなたは誰?昨日はいなかったけど。」

「あ、おはようございます。それと、初めましてですね。私はアードウルフと申します。」

 

 どうやら彼女は哺乳網ネコ目ハイエナ科アードウルフ属のアードウルフちゃんのようです。アードウルフちゃんはうやうやしくおじぎをし、自己紹介をしました。

 

「あたしはともえ。よろしくね。」

「私はイエイヌと申します。」

「ロードランナー。……で、朝っぱらからなんかあった?」

 

 自己紹介を済ませたところへ、バンドウイルカちゃんがやってきます。

 

「みんなおはよう!この子はね、アードウルフちゃん。ショーをやる時はいつもヘルプに来てもらってるんだ。」

「よろしくお願いします~。」

「ヘルプ?普段は何をしているの?」

 

 と、ともえちゃんが質問をすると、アードウルフちゃんはゆっくりと答えます。

 

「私、この近所のロッジの従業員をしておりまして。その宣伝がてらヘルプに来ているんです。」

「宣伝~?どんな宣伝してんの?」

「えっ?えっと……この道の先、森の中にかん静なロッジ、『キツネノアリヅカ』がございます。お泊りでしたらぜひお立ち寄りください。よろしくお願いします。……とこんな感じでしょうか。」

「地味だな。」

「あんまり絵にならないかも。」

「そっ、そんなぁ~。」

 

 宣伝があまり心にひびかなかったことにショックを受けるアードウルフちゃん。どうやら、ともえちゃんとゴマちゃんはイルカアシカコンビのショーで目が肥えてしまったようです。一応、宣伝文句としてはちゃんとしているので問題はないはずですが……。

 

「フフフ。さ、ご飯食べたら私達も会場にいこ。アシカちゃんとカルガモちゃんが待ってるよ。」

「うん。なんかお腹空いちゃった~。」

「ゆっくりでもいいからね~。ショーはお昼からだし。」

 

 ともえちゃん達は食堂に向かい、朝食をとります。バンドウイルカちゃんとアードウルフちゃんは、すでに食べた後らしく、お茶の用意などをしてくれました。

 

 

 ともえちゃん達が朝食を食べ、会場に向かっている一方。

 カリフォルニアアシカちゃんとカルガモちゃんはステージでこの日の段取りについて話し合いをしていました。何度も話し合ったことのはずですが本番前、最後の確認です。

 

「じゃ、今日の段取りはこんな感じで。」

「はい。カルガモさん、今日もよろしくお願いします。」

「こちらこそ。じゃ、私は門の方でイルカさん達を迎えに行ってきます。」

 

 カルガモちゃんを見送った後、カリフォルニアアシカちゃんはステージ裏を確認しに行きます。彼女はなかなかに几帳面な性格のようで、お客さんの目に触れることのないステージ裏にまで気を配ります。

 ステージ裏は、出演者の移動をスムーズに行えるようにするためか工具などがスミにどかされており、道をはばむものはありません。ところが、カベを見てみると気になるものを見つけたようです。

 

「あら?このロープ……。」

 

 それは、昨日ともえちゃん達がハリボテを修理するために上下させたロープでした。いつもと少し違っていたため、カリフォルニアアシカちゃんは気になったようです。

 

「少しほつれていたんですね。テープで直しておかないと。」

 

 カリフォルニアアシカちゃんは置かれていたテープを取り、ロープにまきつけました。

 ところが、ふとしたはずみでロープがフックから外れてしまいます。支えを失ったロープは、ハリボテの重量に引っ張られて上がっていき、ハリボテは大音量と共に落下!部品がバラバラに散ってしまいました。

 ちょうどその頃、門でバンドウイルカちゃん達を待っていたカルガモちゃん。あくびをひとつかいていると突然、ガチャンというすさまじい落下音が鳴りひびいたのだからびっくり仰天。

 

「な、何!?」

 

 カルガモちゃんは血相を変えてステージに向かいます。すると、彼女はあっと短くさけんでしまいました。そこには無残にバラバラになった金属板とキカイが転がっていたのですから。しかもステージは、練習でまき散らされたのか、ある程度水でぬれてしまっています……。

 

 

 キカイと板はステージ裏に置きましたが、キカイがこわれてしまってはある程度プログラムを変更しなければなりません。カリフォルニアアシカちゃんとカルガモちゃんはまっさおな顔をしながら相談をします。

 そこへ、何も知らないバンドウイルカちゃん、ともえちゃん、イエイヌちゃん、ゴマちゃん、アードウルフちゃんがやってきました。

 

「おーい、アシカちゃーん!」

「どう?今日はイケそう~?」

 

 にこにことしながらやってきたともえちゃん達でしたが、みるみる顔が青ざめていきます。なぜなら、二人の顔がこの世の終わりのようにまっさおだったのですから。

 

「い、イルカさん!ともえさん!あ、あの、実は……。」

 

 カルガモちゃんは焦りながら事情を説明します。ロープをいじったせいでハリボテが落下してしまったこと、ハリボテはバラバラにくだけてしまったこと、部品はステージ裏に置いてあること。

 ともえちゃん達はすぐさまステージ裏に向かい、こわれたキカイを見ますが、水にぬれたそれは見るも無残な姿をさらしています。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……!私のせいなんです!私がロープに触ったせいで……。」

「アシカさん、どうか……どうかあまり気にしないで……。」

 

 カルガモちゃんはアシカちゃんを必死でなぐさめます。ショーを控える役者なのもありますが、それ以上に傷心の彼女の苦痛を和らげたいという母性本能が働いたのでしょう。

 

「と、ともえさん、ラモリさん。このキカイもう直せないんですか?」

「えっと……ラモリさ~ん。」

「アワワワワ……アワワワワ……。モウドウニモナラナイ……。コンナトラブルハ……想定外……。」

 

 ラモリさんもこんらんのあまりふるえています。部品がこんなにバラバラに散ってしまっては、いまさら修理しても間に合うはずがありません。それどころか水にぬれている部品はもう使い物にならないでしょう。幸い、おおっていた金属板は底の部分以外は無事ではありますが、中身がこれではなぐさめにもならないでしょう。

 

「昨日話した通りの内容に変更するしか……。」

「でも、あそこで鐘を鳴らすのが肝ってカンザシ師匠達も言ってたし……。何かで代用できないかな?」

「でも、昨日話し合っても何も出ませんでしたし……。」

 

 話し合うカリフォルニアアシカちゃんとバンドウイルカちゃんから笑顔は消え、焦りの表情しか見受けられません。その表情がますます周りを落ち込ませ、カリフォルニアアシカちゃんを追い詰めます。

 

「ともえさん、何とかなりませんか?」

「いつもみたいになんかひらめいてくれよぉ~。」

 

 まるで神様にお願いするかのようなイエイヌちゃんとゴマちゃんですが、さすがのともえちゃんでもこんな状況では何も考えられません。

 一方でカリフォルニアアシカちゃんは自責の念にかられ、こらえ切れずにとうとう泣き出してしまいました。予想もしていなかったこととはいえ、このような事故を起こしてしまったのは自分です。あれだけ自分の仕事にほこりを持っていたのに、自分のせいでショーを台無しにしてしまった。でも、それを誰も責めないことが、かえって彼女には重荷になってしまったようです。

 

「アシカさん、どうか気になさらないで……。」

「ごめんなさい……ごめんなさい……。」

 

 引き続きカルガモちゃんがはげましますが、あまり効果は見込めないでしょう。。

 まるで暗いトバリが降りたかのように落ち込んだ様子の一同。ですが突然、ともえちゃんは金属板をじっと見つめ始めました。すると、何を思ったか無事な金属板を組み立て、そこにバレーボールを何度か落とし始めたではありませんか。あまりの静けさに風の音すら聞こえるステージで、ガゴンというボールのはね返る音だけがひびきわたります。

 ともえちゃんがいきなり取った不思議な行動。これには一体、どんな意味があるのでしょうか。ともえちゃんのひらめきなのか、あるいは……?

 

 

 

続く




最初、問題を起こすのはカルガモさんにする予定でしたが、なんかしっくりきませんでした。
どうしようと悩んでいたところへ、アシカちゃんが静かに名乗り出ました。
「もう……いいですよ、カルガモさん……。刑事さん、私がやりました。犯人はアシカです。」
こんな感じで。
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