けものフレンズR 足跡を辿って   作:ナンコツ

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※これは第一話おうちとこうえんの続きです。
まだAパートを読んでいない方は、先にそちらをお読みください。


第一話 おうちとこうえん Bパート

 夕方のこうえんについた二人。そこにはあお色とピンク色にしろ色、そしてむらさき色のアネモネがさきみだれ、大きなりっぱなはしらが立ち、シーソーやブランコ、すべり台といったゆうぐがあります。

 スケッチのばしょはここにまちがいありません。ともえちゃんはなにかを思い出せるのでしょうか?

 

「いかがですか、ともえさん……?」

「まって……。」

 

 ともえちゃんはじっとふうけいをみつめます。すると、まるであたまからなにかがわきでるような、ふしぎなかんかくにおそわれます――。

 

 

――日の高く昇った青空。

 一人、公園に立ち尽くすともえ。その目はきらきらと輝いている。風景のスケッチをし、一人でシーソーを蹴って遊び、公園を走り回り、すべり台を滑り、めいっぱい遊んで公園を楽しむ。彼女の顔自体は笑顔である。が、しかしその表情はどこか硬く、決して心から楽しんでいるような晴れやかなものではない。

 ブランコに揺られながら、沈みゆく夕陽を見上げる。

「……やっぱり、つまんない。」

 ともえの頬を一筋の涙が伝う――

 

 

 そこで、ともえちゃんははっと目が覚めました。ともえちゃんは何かを思い出せたようです。

 

「思い出した……みたい。」

「ほんとうですか!どんなことですか?」

 

 しっぽをふってワクワクをかくせないようすのイエイヌちゃんですが、ともえちゃんの顔はくもり顔です。

 

「あたしここで……一人で遊んでたみたい。でも、だれもきてくれないの。ずっとずっと一人で遊んでたけど……だれもこない。なにをまってたかはわからないけど……ずっと一人で遊んでた。」

 

 ふるえながら思い出したことをかたるともえちゃん。そのショックをうけたようすに、イエイヌちゃんはことばも出ませんでした……。

 ようやくこえをしぼり出そうとしたその時です。大きなカゲ……青くまんまるで、目のついたものが二人にちかづきます。それはとても大きく、ともえちゃんたちが5人いても届かないかもしれません。

 

「あれは……セルリアン!」

「セルリアン……?」

「あれに近づくと……。」

 

 イエイヌちゃんがそこまで言いかけたときです。ともえちゃんは目をかがやかせてスケッチブックを開きます。

 

「めっちゃ絵になる~!」

「あ、あぶないです!近づいてはいけません!」

 

 スケッチをはじめたともえちゃんに、セルリアンは体当たりをしかけます。イエイヌちゃんが手をひっぱってくれなければ、かのじょは大変なことになっていたにちがいありません。

 

「あれに近づくと食べられてしまうんです!」

「た、食べられるの!?」

「だれかれかまわずおそいかかります。あの目のちかくにあるいしをこわせば、セルリアンをたおせますけど……。」

「あんなところを?ムチャだよ!」

「ごしんぱいなく。あなたのことは、このわたしがおまもりしますから。」

 

 イエイヌちゃんにゆっくりと近づくセルリアン。まけじとうなり声をあげていかくします。にらみ合う二人に、ともえちゃんはおどおどするしかありません。

 まずこうげきをしかけたのは、イエイヌちゃんです。大声でほえながら、セルリアンにとびかかります。しかし、セルリアンは気にするようすもなく、丸い体に生えているしっぽのようなもので、小さな体をふきとばします。

 さらにセルリアンは、とどめをさそうとイエイヌちゃんに近づいていきます。イエイヌちゃんはすばやくふりきり、ともえちゃんによびかけます。

 

「はやくにげて!」

「イエイヌちゃんもにげよう!」

「ともえさんだけにげてください!ヒトをまもるのが、わたしのしめいですから!」

「そんなのできないよ!だってイエイヌちゃんはあたしの友だちだもん!」

「ともえさん……。」

 

 友だち……それは、イエイヌちゃんがずっとほしかったものでした。ずっと会いたかったヒトの友だち。それさえまもれれば、もうこうかいはありません。

 

「ありがとう……。」

 

 イエイヌちゃんはにこりとほほえみました。

 セルリアンはかのじょに体当たりをしかけます。それにたいして、イエイヌちゃんはジャンプしてむかっていきます。それでいしまでとどけばいいのですが、ざんねんながらそのジャンプではとどきません。しっぽのようなものではたかれ、イエイヌちゃんはふきとばされてしまいました。

 ボロボロになって、いきもたえだえです。ですがそれでも、イエイヌちゃんはまだあきらめようとしません。イエイヌちゃんをとめるには、もうあのセルリアンをたおすしかなさそうです。

 

「でも、どうすれば……。」

 

 ともえちゃんは何かないかまわりを見回します。すべり台に上ってジャンプしても、おそらくとどかないでしょう。大きな柱はつるつるとしていて、のぼるのはむずかしいでしょう。

 ですが、柱の近くにはシーソーがあります。一人シーソーで遊んでいたことを思い出したともえちゃんは、シーソーは重しになるものがひつようなことに気づきました。

 

「きゃあっ!」

 

 イエイヌちゃんはふたたびジャンプしたのですが、またしてもはたかれてしまいました。体はもうボロボロです。またおなじことになったら、こんどこそうごけなくなってしまうでしょう。

 イエイヌちゃんにとどめをさそうと近づくセルリアン。そこへ、ともえちゃんが大声でさけびます。

 

「イエイヌちゃん、おいで!こっちへおいで!」

 

 イエイヌちゃんはめいれいされたと思い、かんがえるよりも先に体がともえちゃんのところへはしってゆきます。

 

「ともえさん!」

「イエイヌちゃん!あれにのって!」

 

 ともえちゃんはシーソーのはしの方をゆびさします。

 

「いい?あれにのったら、ずっとそこですわってて。」

「でも……。」

「だいじょーぶ。め~っちゃ、まかせて!」

 

 ともえちゃんはガッツポーズをします。そのじしんありげな顔を見て、イエイヌちゃんは信じることにしました。言われたとおり、すぐにシーソーのはしにのっかります。

 ともえちゃんは柱の前に立ち、はねてさわいでセルリアンをさそいこみます。

 

「こっちだよこっち!こっちにきて!」

 

 セルリアンは、言われたとおりにともえちゃんにむかってきます。ですが、ともえちゃんはまだにげません。ギリギリまで近づき、もう止まれそうにないところまで近づいたとき、すかさず横にとびぬけました。

 セルリアンは柱にガツンと音を立ててぶつかり、柱をこわしてしまいました。その柱はシーソーの方へむかってたおれます。柱がずしんとたおれたとき、イエイヌちゃんの体が大きくとびあがりました。それはちょうど、いしにちかづけるくらいまで……。

 

「イエイヌちゃん!がんばって!」

 

 ともえちゃんのおうえんをうけて、イエイヌちゃんは力いっぱいこぶしをふりあげ、いしをたたきます。いしはパッカーンとくだけ、セルリアンもおなじようにくだけちってしまいました。

 セルリアンをたおしたイエイヌちゃんに、ともえちゃんがしんぱいそうにかけよります

 

「だいじょうぶ?!イエイヌちゃん!」

「しんぱいありません。わたしはへいきです。」

「よかったぁ……。」

 

 ともえちゃんは、心のそこから安心してイエイヌちゃんにだきつきました。その目にはなみだがいっぱいたまっています。

 

「ともえさんのおかげです。

 ともえさんがいてくれたから、がんばれました。」

「イエイヌちゃん……ありがとう。」

「こちらこそ、ありがとうございます。」

 

 二人は、いまこうして生きているよろこびにいつまでもひたっていました。

 

 

 こうえんからの帰りみち、ともえちゃんは話しかけます。

 

「ねえ、イエイヌちゃん。あたしといっしょに旅をしてみない?」

「えっ?でも……。」

「なんだか、あたしとイエイヌちゃんって、とってもなかよしな気がするんだ。」

 

 ふしぎに思うイエイヌちゃんに、ともえちゃんはじぶんの目をゆびさします。ともえちゃんのひとみは、右と左でちがっています。イエイヌちゃんの目も、右と左でちがっています。

 

「ほら、おそろい。」

「おそろい?」

「そう。ふたりいっしょってこと!だからずっといっしょにいてほしいの!」

 

 ともえちゃんはにっこりとわらっています。イエイヌちゃんもなんだかうれしくなってきました。

 

「あの……ほんとうに、わたしもついてきてもいいんですか?」

「もちろん!ずっといっしょにいて!」

 

 ともえちゃんはイエイヌちゃんにだきつきます。イエイヌちゃんもまた、強くだきかえしました。こうしてだきついていると、なつかしいにおいをもっとちかくにかんじて、ぷるぷるとしっぽをふってしまうようです。

 

「わたし、ずっとおそばにいます。ともえさんはわたしがおまもりしますから……。」

 

 とそこへ……。

 きゅるるるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。どこかでおなかの虫がなく音がします。

 

「あっ、ご、ごめんね……。」

 

 ともえちゃんははずかしそうにおなかをかかえます。

 

「おうちにジャパリまんがあります。帰って食べましょう。」

「うんっ!いっしょに食べよ!」

「はいっ!」

 

 二人はなかよく手をつなぎ、おうちへと帰っていくのでした。

 

 

 おうちの前の門に着くと、そこにはふしぎなものがとまっていました。

きいろい犬のようなかっこうをしていますが、足には丸いものがついています。おまけに、おなかからぎん色のハラワタがまる見えになっています。イエイヌちゃんはふしぎそうにそれを見ていますが、ともえちゃんはしまったと言わんばかりの顔です。

 それのあたまの方からぴょんと、サングラスをかけたウサギのような青いどうぶつがとびだして、ともえちゃんに近づきます。

 

「ら、ラッキーさん!ごめんね、まだしゅうりしてると思っちゃって!」

「ヘイ、ベイビー。シュウリハトックニオワッタヨ。シンパイダカラ、マイゴノ子ネコチャンノ足アトヲオッテ、ムカエニキタンダ。スケッチノバショハミツカッタ?」

「うん!ばっちり!ラッキーさんの言ったとおりだったよ~!」

 

 ともえちゃんはラッキーさんとよばれるどうぶつのことをしっているようです。しかし、イエイヌちゃんはラッキーさんを見てひどくおどろいています。

 

「しゃ、しゃべった!?ボスがしゃべりましたよ!」

「え?ラッキーさんってしゃべらないの?」

 

 この青いどうぶつはラッキービーストといい、フレンズからはボスとよばれて親しまれています。ラッキービーストはジャパリパークの色んなところにいて、フレンズといっしょにくらしているようです。

 

「ボクタチラッキービーストハモトモト、君タチヒトヲガイドスルノガシゴトナンダ。フレンズニハ、アマリカンショウシナイヨウニスルタメニ、シャベラナインダ。」

「ボスって本当はしゃべれたんですね~。」

「そうだ、ラッキーさん。この子はイエイヌちゃん。あたしといっしょにパークをまわってくれる友だちだよ。」

「二人デバイクニノルノカイ?一人用ダカラアブナイヨ。」

 

 ボスはバイクとやらを見ながら言います。たしかに、だれかがのるところは一つしかないようです。

 

「イエイヌちゃんがあたしにつかまるって、ダメかな?」

「アブナイヨ。ドウシテモトイウナラ、シャコニモドッテカイゾウシナイト。」

「かいぞう!?」

 

 ともえちゃんは目をかがやかせます。

 

「どんなかいぞうするの!?」

「ソレハモウ、ベイビーノ目玉ガブットブクライ、トビッキリノスゴイヤツダヨ。」

「やったー!たのしみっ!」

 

 と、よろこぶともえちゃんでしたが……。

 きゅるるるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。またしてもおなかの虫がなく音がします。ともえちゃんは、またまたはずかしそうにおなかをかかえます。

 

「えへへ……。まずははらごしらえしないとね。」

「キョウハモウオソイカラ、カイゾウハアシタニシヨウ。ヨフカシトヒアソビハ、子ネコチャンニハオススメデキナイヨ。」

「さんせい!」

 

 ともえちゃんはまちきれないとばかりに、おうちにむかいます。とそこへ、イエイヌちゃんがよび止めます。

 

「あの、ともえさん。」

「な~に?」

 

 二人はしばらく見つめあいます。

 

「これからどうぞ、よろしくおねがいします。」

「うん。よろしくね!」

 

 二人はえがおでニッコリ、かたいあくしゅをかわしました。

 

 

 

終わり




※ちょっと修正しました
記憶を取り戻すたびに文章の漢字が増えていく、という演出を入れてみました。その方が記憶を取り戻している感じが出てくるかなと。
でもやっぱり、漢字がないと読みづらいですね。

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