けものフレンズR 足跡を辿って   作:ナンコツ

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第十二話 かりごっこ Aパート

 ここは荒野。赤茶けた土と切り立ったガケがどこまでも続き、夜のからっ風が辺りに吹き渡ります。ここでともえちゃん達が出会ったフレンズと言えば、ゴマちゃんことG・ロードランナー。そしてプロングホーンちゃんとチーターちゃんです。

その二人は今、荒野の図工室を訪ねています。みんなで粘土遊びをした、思い出の場所です。

 

「ここに来るのも久しぶりだな。」

「そうね。」

 

 チーターちゃんは図工室を見回しました。いくつか並んでいる大きなテーブルと木のイス。そして黒板に貼りつけられた一枚の絵。この絵は、みんなの作品作りを見ながら描いたともえちゃんの置き土産です。

 

「なんだか懐かしいわね。」

「ああ、懐かしい。ロードランナーも、ともえも。どこで何をしているのだろう?」

 

 プロングホーンちゃんは飾られた絵をまじまじと見ながら、ともえちゃん達の身を案じていました。

 すると、絵に不思議な違和感があることに気づいたようです。

 

「これは……?」

「どうしたの?」

「ロードランナーが、泣いている……。」

 

 チーターちゃんはよくわからず首をひねります。絵が動くなどありえません。この絵に描かれているロードランナーちゃんは笑顔なのに、なぜ泣いているなどと感じたのでしょうか。そこでふと、プロングホーンちゃんはあの子に会えなくて寂しがる時があったことを思い出します。

 

「泣いてる?プロングホーンの方じゃなくって?」

「それもそうなんだが……この絵も泣いている気がして、な。」

 

 プロングホーンちゃんがやたらこだわる絵を、チーターちゃんもじっくりと見始めました。この絵に描かれているロードランナーちゃん達は、確かに楽しそうにしています。でも、ずっと見続けていると何か言いようのない不安が押し寄せてくるのです。楽しげな絵なのに、この胸騒ぎは一体なんなのでしょうか?

 

「なんだか心配になってくる絵ね。」

「そうだな。」

 

 思い出の絵に不安を覚えた二人は、急にロードランナーちゃん達のことが心配になったようです。もう居ても立っても居られません。

 

「なんだか、行かなければならない気がする。」

「あたしも。なんか、ともえやロードランナーが助けてほしいって言ってるみたいで。」

 

 二人は意を決して図工室を後にします。

 すると、さっそくおかしなことが起きていることに気がつきました。空からぱらぱらと雪が降っているのです。

 

「これ……雪?」

「初めて見たな。こんなところに雪が降るのか?」

「なんだか変じゃない?いつ止むのかしら?」

 

 二人が初めて見る雪に戸惑っていると、そこへボスがとことことやってきます。いつもならフレンズとはあまり関わらない彼が、二人に何かを話そうとしているのです。

 

「ボス?」

「ジャパリまんも持たずになぜ?」

 

 ただごとではないボスの様子に、二人はパークの危機を直感的に感じ始めていました。

 一体、ロードランナーちゃん達の身に何が起こったというのでしょうか?

 

 

 ここはサンドスター火山。サンドスターロウの流出を止め、巨大黒セルリアンをやっつけ、ともえちゃんの記憶を取り戻してめでたしめでたし。と言いたいところですがそこまで物事はうまくはいきません。

 ともえちゃんに寄生していたセルリアンが、倒した黒セルリアンを吸い込み、さらにともえちゃんまでも取り込んでしまいました。ともえちゃんは大きないしの中に埋まっており、顔だけを出しています。

 

「そんな……。ともえ~!」

「ともえさん!返事をしてください!」

「ガウウゥゥッ!ガウウウウゥゥゥゥッ!」

 

 ただならぬともえちゃんの様子に、三人はショックを隠し切れません。何度も呼びかけますが、セルリアンは聞こうともしません。

 

「三人ともしっかり!今のともえには聞こえないんだ!」

 

 キュルルくんは、ともえちゃんが落としたストックとかばんを拾いつつ、三人を正気に戻そうと声をかけます。しかし、三人は頭に血がのぼっていて聞いていないようです。

 そこへカラカルちゃんがひらめきます。

 

「そうだ、キュルル!サンドスターRを使えば……!」

「いや、ダメだ。ともえがいる。ともえまで消してしまうかもしれない。」

「そんな……。」

 

 混乱するイエイヌちゃん達を相手にもせず、セルリアンはゆっくりゆっくりと歩を進めます。

 

「ともえさん!待って!」

 

 動くセルリアンを反射的に追いかけようとするイエイヌちゃん。それをキュルルくんが引き留めます。

 

「イエイヌちゃん!落ち着いて!」

「でも放っておけません!」

「だまって見てろってのかよキュルル!」

「落ち着いて!」

 

 キュルルくんはできるかぎり声を張り上げました。その声にようやくみんなは落ち着きを取り戻したようです。

 

「お願いだから……冷静になろう。まず、あのセルリアンが何をしようとしているのか確かめないと。」

「おねがい。キュルルだって……つらいのよ。」

 

 誰も、言葉をかけられませんでした。

 しばらく沈黙が続いている間も、セルリアンは歩き続けます。どうやら山を登ろうとしているようです。

 ラッキービースト達が乗り物から降りてキュルルくん達と合流します。これから作戦会議の始まりです。

 

「山の方に何かあんのか?」

「山の上にはサンドスターロウを抑えるフィルターがある。」

「さっき直したものですね。」

「ラッキーさん、ラモリさん。もしまた四神が壊れて、フィルターが消えたらどうなる?」

「サンドスターロウヲ変換デキズ、マタサンドスターロウノ濃度ガ上ガルダロウネ。」

「ソウスレバ、セルリアンガ増殖スル。ジャパリパークニセルリアンガ溢レル。悪夢ハ蘇ル……。」

 

 ボスとラモリさんは淡々と自ら導き出した計算結果を告げます。

 四神を破壊されたら、またフィルターを張り直さなければなりません。そうなったら、四神を直せるキュルルくんを守りながらセルリアンと戦わなくてはならず、そのセルリアンもどんどん強化されます。そうなっては収拾がつかず、ジャパリパークはセルリアンに支配されてしまうでしょう。

 

「つまり、あのセルリアンのやろうとしていることは、仲間を増やすことなんだ。」

「フレンズ狩りごっこがまた起きるってこと?」

「しかも今度は、それを止めるヒトがいない。このままだと異変はどんどん大きくなって、この島はセルリアンだらけになってしまう……。」

「パークの危機じゃん!」

 

 キュルルくんは無言でうなずきます。パークの危機……誰かが大げさにわめくような言葉。そんな、冗談のようなことが今まさに起ころうとしているのでしょうか。そして、そのきっかけを生んだのはともえちゃんということに……。

 背中からおぞ気が走るような事実ですが、しかし立ち止まっているヒマはありません。

 

「あのセルリアンをなんとか倒さないと。」

「でも、ともえがあの中にいたんじゃ、お手上げね。」

 

 誰もが対策を考えあぐねている中、アムールトラちゃんは一人ともえちゃんの下へ向かおうとしています。

 

「アムールトラさん……。」

「ガゥ。」

 

 まっすぐセルリアンの方向を見据えるアムールトラちゃん。その決意に満ちた目は、『何もできないかもしれない、でも何かせずにはいられない』という強い意志が感じられます。

 イエイヌちゃんとゴマちゃんもそれに触発されたようです。

 

「行きましょう。ともえさんを助けに。」

「おれ達の声を、ともえに届ける。それでともえを起こす。」

 

 二人もアムールトラちゃんと同じような目になりました。三人の様子を見たキュルルくんは揺るがぬ決意を感じとります。

 

「行こう、カラカル。もう止めてもムダさ。」

「ジタバタしなきゃ落ち着かないもんね。」

 

 やっぱりフレンズは考えるよりも動く方が性に合っているようです。

 アムールトラちゃんはいの一番にともえちゃんの所へ向かおうとしますが、それをキュルルくんがひとまず制止します。

 

「待って、トラさん!その前にこれを……。」

 

 きょとんとした目でキュルルくんを見るアムールトラちゃん。彼はおもむろにポケットからカギを取り出し、彼女の手のクサリにあてがいます。すると、カギがカチリと音を立て、クサリが外されました。

 驚くアムールトラちゃんでしたが、さらにキュルルくんは彼女の手を握ります。すると彼女の傷がみるみるふさがっていくではありませんか。

 

「今でもぼくらを許せないだろうし、これで許してもらおうとも思ってない。けど、今は……。今だけは、一緒にともえを助けて欲しい。」

「がぅ……。」

 

 これはキュルルくんが長年抱いていた思いでした。

 アムールトラちゃんを保護し、クサリを解いて自由にしてあげること。それがキュルルくんの望みであり使命だったのです。

 キュルルくんは自分が嫌われたままでも、殺されて食べられたとしても、それで構いませんでした。ただ、アムールトラちゃんが生きて、他のフレンズのように思い通りに過ごしてさえいれば、彼にはそれで十分だったのです。

 でも、今は状況が違います。ともえちゃんをセルリアンから助けるためには、アムールトラちゃんの力も必要です。

 

「どうか……。」

「……。」

 

 アムールトラちゃんは何も言わず、ぷいときびすを返します。

 

「……あ、り、が、と、う。う、れ、し、い……。」

「トラさん……!」

 

 それだけ言うと、アムールトラちゃんはセルリアンの下へ飛び出して行ってしまいました。二人のわだかまりはこれで解けたのでしょうか?

 

「よかったわね、キュルル。」

「うん。」

 

 アムールトラちゃんとキュルルくんのやりとりを見届けたイエイヌちゃんとゴマちゃん。でものんびりしてはいられません。自分達も彼女に続かなくてはならないのですから。

 

「ラモリさん、行きましょう!」

「いや、話しかけたって……。」

「緊急事態ニツキ、フレンズトノ会話ヲ一時的ニ許可。サア、イコウゼ。」

「わんっ!」

 

 三人はジャパリバイクに乗り込みます。ゴマちゃんが運転席、イエイヌちゃんはサイドカーに乗り込みます。運転は当然ラモリさん頼みです。

 

「ラッキーさん、ぼく達も!」

「ジャパリトラクターハイツデモ発進デキルヨ。」

 

 キュルルくん達もジャパリトラクターに乗り込みます。どうかみんなに、幸運が味方をしてくださいますように……。

 

 

 バイクとトラクターは全速力でセルリアンを追いかけます。セルリアンが山頂に辿り着き、四神を破壊してしまったらそれで終わりです。

 取るものも取りあえず飛ばしたおかげで、なんとかセルリアンとアムールトラちゃんの交戦の場に追いつきました。

 ラモリさんとボスはライトを照らしてセルリアンの誘導を図りますが、全く引き付けられません。今までのセルリアンとは性質が違うということでしょうか。

 

「ともえさん!」

 

 何を思ったかイエイヌちゃんは、突然サイドカーから降りる準備を始めました。

 

「おい、イエイヌ!どこ行くんだよ!」

「ともえさんに呼びかけます!」

「わかった。おれも行く。」

 

 イエイヌちゃんとゴマちゃんはバイクを降り、セルリアンの前に立ちはだかりました。

 

「ともえさん!聞いてください!」

「ともえー!聞いてるかー!」

 

 二人を見つけたセルリアンは一瞬動きを止めました。しかし、すぐに無言で二人を足で弾き飛ばしてしまいます。

 

「きゃんっ!」

「うわあ!」

 

 吹き飛ばされるイエイヌちゃんとゴマちゃん。やっぱり無理なのか……。声をかけても無駄なのか……。諦めかけたその時です。

 宙を舞う二人を素早く抱きとめるフレンズが二人、颯爽と現れます。

 

「どうした?ロードランナー。ともえを助けるんじゃなかったのか?」

「ぷ……プロングホーン様!」

 

 その優しく強く気高い声は、自身が最も憧れるフレンズ、プロングホーンちゃん。思いがけない再会にゴマちゃんは感激です。

 チーターちゃんは、抱きとめたイエイヌちゃんを下ろしながら、ゴマちゃんに話しかけます。

 

「プロングホーンがね、アンタがいなくて寂しがってたわよ。」

「そ、そんなことはないぞ。ただお前を案じてだな……。」

「プロングホーン様……会いたかった。」

 

 ゴマちゃんはプロングホーンちゃんに抱きつきます。彼女の気持ちを察したプロングホーンちゃんは、肩を叩きながらそれに応えます。

 

「マキューシオだけではないぞ。」

「我らも助けに来たぞ。お前達の危機を聞きつけて。」

 

 暗闇の空から現れた二人の黒い影。それはカンザシフウチョウちゃんとカタカケフウチョウちゃんです。

 流れから察するに、マキューシオとやらはどうやらプロングホーンちゃんのことのようですね。

 

「始まりの火山と雪の大地……終幕にふさわしい。」

「者ども剣を取れ、勇ましき調べを奏でよ、ステップを踏み歌を歌え。」

「悪しき魔王より姫を助ける、古の英雄譚の再現。」

「その主役こそ我ら!皆の力、今合わせる時!」

 

 雪の積もったこの場所を舞台に見立て、あるいは拳を上げ、あるいは翼を広げ、大仰に振舞います。バイクとトラクターのライトがまるでスポットライトを当てているかのようです。

 

「げっ、フウチョウコンビさんかぁ……。」

「相変わらず芝居好きなのね……。」

 

 キュルルくんとカラカルちゃんは一瞬顔をしかめました。印象はどうあれ、どうやら二人はフウチョウコンビと面識があるようです。

 

「フウチョウさんだけではありません。」

「私達もいます~。」

 

 やってきたのはレッサーパンダちゃんとジャイアントパンダちゃん。ジャイアントパンダちゃんは眠そうにあくびをしています。

 

「レッサーパンダさんにジャイアントパンダさん!」

「イリエワニとメガネカイマン……って大丈夫か?雪?」

 

 メガネカイマンちゃんは寒そうに震え、イリエワニちゃんもかたい笑顔で返事をします。まだ気温はそれほど上がっていませんが、雪が降っていた時はどれほど寒い思いをしていたのでしょうか。

 

「さ、さむいでじゅ……。」

「でも、ボスに頼まれちゃ引き下がるわけにはね。」

 

 イリエワニちゃんはセルリアンを見据えます。どうやら、みんなは各地のボスに声をかけられて集まってきたようです。

 

「ともえさ~ん!これ昨日とれたお野菜ですよ~。」

「皆さんも食べていってくださぁ~い。」

 

 大きなリュックを背負ってやってきたのはロバちゃんとブタちゃんです。この中にはたっくさんの野菜が詰まっているのでしょう。

 

「アシカちゃん、寒くない?」

「最初は寒かったんですけど、慣れました。」

「み、みなさーん。寒い時は身を寄せ合って暖を……くしゅん。」

 

 バンドウイルカちゃんとカルガモちゃんも寒そうにやってきます。しかし、カリフォルニアアシカちゃんの方は平気そうです。アシカは元々寒さには強いのです。

 

「オオミミギツネさん、私に任せてロッジにいても……。」

「お客様のピンチよ。黙って待っていられるもんですか。」

「おーっす。イエイヌ。元気かー?……ックションッ!」

 

 アードウルフちゃんとオオミミギツネちゃんもロッジを休んでやってきたようです。

 でもハブちゃんはまだツルで縛られています。寒いのも苦手なようですし、踏んだり蹴ったりですね。

 

「皆さん……。ともえさんのために……。」

 

 ともえちゃんとパークの危機に駆けつけてくれたたくさんのフレンズ。

 イエイヌちゃんが思わず目頭を熱くしていると、後ろからスーツケースを引いたフレンズに声をかけられました。それはリョコウバトちゃんでした。

 

「はじめまして。あなたがイエイヌさんですね。」

「あなたは?」

「私はリョコウバトと申します。ともえさんにはいつぞやお世話になりまして。」

「そうなのですか。でも今、ともえさんは……。」

 

 イエイヌちゃんは不安そうにセルリアンのいしの部分を見上げます。そこには、いしの中に埋まったともえちゃん。事の重大さを察したリョコウバトちゃんは真剣な表情です。

 

「私はあの時、マーサを助けられませんでした……。今度こそは。」

 

 リョコウバトちゃんの目にも決意に満ちたものがあります。ともえちゃんの救出によって、彼女は果たせなかった思いを成し遂げることができるのでしょうか。

 ゴマちゃんを下ろしたプロングホーンちゃんは、セルリアンを前に頭をひねります。

 

「さて。こいつをどうするかな。」

「あれを見てください!あの中にともえがいるんです!ともえは一人ぼっちで……きっと誰も信じられずに泣いてるんです。」

「いしを壊したらだめなの?」

「わかんない。けど、その前に何かしなきゃと思って、ともえに呼びかけてるんだ。」

 

 みんなが目の前のセルリアンをどうするべきか考える中、アムールトラちゃんは再びジャンプします。

 

「ガウウゥゥッ!」

 

 いしに到達したアムールトラちゃんは、それを砕かんと力いっぱいに殴りつけますが、まるで効果がありません。アムールトラちゃんの力をもってしても、あのいしを砕くことはできないのでしょうか?

 でも、アムールトラちゃんの事情がよく分からない他のフレンズは、彼女の登場にざわつきます。

 

「えぇっ!?ビーストさんが!」

「大丈夫だよレッサーパンダちゃ~ん。あの子の目はなんだか、あの時とちがうよ~。」

 

 震えるレッサーパンダちゃんをジャイアントパンダちゃんは優しく抱きとめます。

 

「イリエワニざんど、ケンカじてた、時とちがいまずね……。」

「ああ。もうケンカふっかけてた頃とは違うよ。あれは、覚悟の目さ。」

 

 イリエワニちゃんとアムールトラちゃんは一度拳を交えた仲。それだけに、二人には何かが通じ合っているのでしょうか。

 

「わ、私達も戦わなきゃいけないのかな……?」

「ダメですよイルカさん!これはショーじゃないんですから!」

「せめて、私達の思いをともえさんに伝えられれば……。」

 

 一方で、戦いにあまり慣れていないバンドウイルカちゃん、カルガモちゃん、アードウルフちゃん……。それだけでなく大勢のフレンズ達もまた、どうするべきか迷っているようです。

 

「ともえさん!この絵を見てください!」

 

 イエイヌちゃんは突然、絵を取り出してともえちゃんに見せるように掲げました。ゴマちゃんもそれにならって、絵を掲げます。

 

「この絵は、私とあなたが初めて会った時に描いてもらったものです!初めて命令をしてもらって……褒めてもらって……。私は今でもこの絵が大好きです!ともえさんは一人ぼっちでも、セルリアンに操られたヒトのフレンズでもないんです!ともえさんはともえさんです!私の大事な……絵を描くことが大好きな、私のご主人様です!」

「ともえー!この絵も覚えてるだろー!粘土で遊んでたおれを描いてくれた絵だよー!おれの粘土は……まあ置いといて。でも、ともえは褒めてくれたよな!プロングホーン様のことをよく見てるって言ってくれたよな!でも、ともえだって色んなフレンズのことちゃんと見てるんだぞー!だからこんなにたくさんのフレンズが集まってくれたんだよ!お前のために!」

 

 二人の様子を見た他のフレンズ達も続々と絵を取り出します。

 まずは、プロングホーンちゃんとチーターちゃんがともえちゃんの前に躍り出ました。

 

「ともえ!あの絵はまだ車庫に飾ってあるし、私も絵を持ってきているぞ!お前がいなければ周囲の気持ちも理解せず、一人で突っ走り続けていたかもしれない!それを改めて気づかせてくれたのは、お前だともえ!」

「あたしだってそう!あの粘土遊びがなかったら、仲良くなりたい自分の気持ちにずっとウソついてたと思う!今プロングホーンといいライバルになれているのは、あなたのおかげよ!あなたも大事な友達なの!だから、一人ぼっちだなんて言わないで!」

 

 次にやってきたのはレッサーパンダちゃんとジャイアントパンダちゃんです。

 

「ともえさん、一緒にセルリアンをやっつけてくれましたよね!臆病だった私が勇気を持てたのは、あなた達のおかげです!あれから私、自信がついて竹林の案内ができるようになったんです!ジャイアントパンダちゃんも好きだけど、あなたも負けないくらい大好きです!」

「ともえさ~ん。また一緒にお昼寝しましょう~。この絵を見て、枕にして寝るととってもいい夢が見られるんですよ~。」

 

 メガネカイマンちゃんとイリエワニちゃんも寒さを押してともえちゃんに呼びかけます。

 

「と、ともえさん……!私、あれからがんばって、少しだけ慣れてきましたよ!落ち着いてやれば、できるんですよね?今だって、日向ぼっこしなくても、ちゃんと、噛まずに、言えてますよね?ともえさんから、もらった絵も、私の、励みになっているんです!あなたは、私の心、つかめてるんですよ!」

「ともえ!元気かい?あたいもメガネカイマンががんばってる姿を見て励みになってる!この子の目が変わったのは間違いなく、アンタのおかげだよ!今、ゴリラがジャングルでみんなを助けてる!寒さに弱いみんなに、知恵を与えてるんだ!アンタがアイサツしてくれたヒョウとクロヒョウもそうさ!自分の身は自分で守る。でも、どうにもならない時は、みんなで助け合う!それがジャパリパークのオキテだよ!」

 

 ロバちゃんとブタちゃんも野菜を抱えながら呼びかけます。

 

「ともえさん!あなたがきっかけを与えてくださったキャベツの苗、植え付けの時期が近づいてます!ぜひ畑にお越しください!あなたにも手伝ってもらいたいんです!絵でも描きながら、まったり過ごしていってください!」

「ともえさ~ん!ダイコンとカブの収穫、終わりましたよ~!ここに、少し持ってきているんです~。また是非食べにいらしてくださ~い。それから、料理というものもあるそうです。難しそうなので、ともえさんに色々教わりたいです~。」

 

 カンザシフウチョウちゃんとカタカケフウチョウちゃんも今回ばかりは演技ナシで呼びかけるようです。

 

「ともえちゃん!私達といっしょにいっぱい勉強したよね!私達、いつも他のフレンズから『変わってる』って言われるけど、ともえちゃんは色眼鏡なしで接してくれてうれしかったよ!絵のためにはいっぱい勉強しなきゃダメだからね!師匠なんて言われてるけど、私達だってあなた達から教わることいっぱいあるんだから!」

「この絵見てよぅ!芸術はバクハツだって教えた時に、描いてくれた絵だよぅ!ともえちゃんには、これからもたくさんのバクハツがきっとあるんだよぅ!それをみんな絵にしなきゃ!だからこんなところで終わっちゃダメだよぅ!まだあなたの舞台公演は続いてるんだからぁ!」

 

 バンドウイルカちゃん、カリフォルニアアシカちゃん、カルガモちゃんは笑顔で呼びかけます。ショーマンシップでしょうか。

 

「ともえー!私達、また新しいこと考えたの!内容は……ダメダメ。見に来てのお楽しみ!でも、きっとともえも気に入ると思うよ!だから絶対見に来て!私達にはたくさんのファンがいるけど、あなただけはちょっと特別なの!あなたは私達の……私の……大事な友達なの!」

「ともえさん!あの時私達を助けてくださったこと、とても感謝しています!自分がミスをしてしまった時、本当に頭が真っ白になったんです!今こうしてイルカさんとショーを続けられているのは、イルカさんやカルガモさんや……あなたのおかげです!ですから、今こそ恩返しをさせてください!今度はあなたを助けたいんです!」

「は~い、ともえさ~ん!今のジャパリパークはとっても寒いですよ~。そんなところで寝ていないで、暖かくして寝ましょうね~。それから、ともえさんからもらったこの絵、とってもよく描けてますよ~。この絵のようにまたみんなで一緒に過ごしたいから……だから、目を覚まじでくだざい~!」

 

 アードウルフちゃん、オオミミギツネちゃん、あまりなじみがなかったハブちゃんもともえちゃんに呼びかけ、リョコウバトちゃんもそれに続きます。

 

「ともえさん!あなたとはよほどご縁があるようです!ボスにパークの異変を聞かされて、嫌な予感がして、いてもたってもいられなくなりました!ここまでの縁があるとすれば、もはや運命なのだと思います!私はあなたの力になりたいんです!」

「ともえさ~ん!この絵、本当にありがとうございます!よく描けていらっしゃると思いますよ~!この絵は受付に飾るつもりです。きっと話題になると思ってます~。ぜひまたロッジでおくつろぎください。従業員一同、心よりお待ち申し上げておりま~す。」

「え~っと……ロッジで遊んでくれたよな~!それから、絵も描いてくれたよな!そんくらいじゃこんな寒いとこ、行く気にならないんだけどさ。でも、イエイヌもロードランナーもほっとけなかったから来ちゃったよ!お前だって、二人をほっとけないだろ?ともえ!」

「ともえさん!これから厳しいことを言いますが、どうか聞いてください!私はまだ、マーサの思い出を探して旅を続けています!あなたもまだまだ旅の途中でしょう?こんなところで終わってしまってよいのですか?諦めてしまってもよいのですか?あなたはまだ、この世界の……ジャパリパークの半分も訪れていないのですよ!あなたも私も、まだ何も成し遂げてなどいないのです!」

 

 キュルルくんとカラカルちゃんは絵を持っていませんが、精いっぱい声を張り上げてともえちゃんに呼びかけます。

 

「ともえ!聞こえてるだろ!?キミはこんなにもたくさんのフレンズと仲良くしてきたんだ!キミのピンチを感じて、駆けつけてくれたんだ!これは奇跡だよ!この奇跡を起こしたのはキミ自身!キミの力なんだ!サンドスターRなんかよりもよっぽどすごい、最高の力だよ!」

「ともえ聞いてる~!?ここまでずーっとみんなの言葉を聞いてきたけどさ。みんなにばっか絵ぇ描いててずるいじゃない!私にも一枚描いてよ!とびきりのポーズがあるの!あなたに描いて欲しいの!だから早く起きてよ!ねぇ、ともえ!」

 

 

 みんなの精いっぱいの呼びかけが通じたのか、セルリアンはその動きを止めました。その目から感情を読み取ることはできません。

 しかし、ともえちゃんの方も全く動きがないのです。

 

「…………。」

 

 しばらく動きを止めたセルリアンでしたが、やがて再び山を登り始めます。

 やはりダメだったのでしょうか?絶望の色が濃くなり始めますが、イエイヌちゃんは違っていました。

 

「ともえさん!私、まだあきらめません!」

 

 イエイヌちゃんは歌を歌います。

 それは、ともえちゃんが気に入ってよく口ずさんだあの歌……。キュルルくんはこの歌に聞き覚えがあるようです。

 

「これ、あの頃流行ってた歌じゃないか。」

「ラモリが見せてくれた奴で知ったんだよ。ともえ、すっかり気に入ってさ。」

「そうか……なるほど!」

 

 キュルルくんは、今度はフレンズ達に呼びかけます。

 

「お願いみんな!イエイヌちゃんに合わせて歌を歌って!みんなの思いを歌にのせて重ねれば、もっと届くかもしれない!」

「なるほど!歌はヒトの心を最も揺さぶり、また最も落ち着かせもする最高の芸術!」

「ミューズはじめ、かの芸術の神々は、音楽の神アポロンの奏でる竪琴に合わせて踊り歌い、神々を楽しませたという。」

「師匠達のおっしゃる意味はよく分かりませんが……。それは、歌はすごいということでしょうか?野菜作りみたいに?」

 

 フウチョウコンビの言葉をロバちゃんがざっくりまとめます。そのおかげでみんなにも歌の力を大体理解できたようです。

 

「ヘタでもいい。とにかく歌ってほしいんだ。ともえにぼく達の声を、思いを届けなきゃ。」

「ガルル……。」

「歌なら任せて!ねっ、アシカちゃん!」

「もちろん!演目にあるものですから。」

「歌ですか。宣伝によさそうですね~。」

「オオミミギツネさん……。」

「経営者の鑑だよほんと。」

 

 他のみんなも続々と、アムールトラちゃんでさえ、イエイヌちゃんに続いて歌い始めます。

 みんなの歌声を聞いたセルリアンは再び動きを止めます。その目からはやはり、感情を読み取ることができません。でも、その目はなぜか上を向いています。ともえちゃんを見ているのでしょうか?

 

「みんな……。」

 

 ともえちゃんは薄っすらと目を開けました。

 今、何か言ったような?みんなは一斉に歌うのをやめ、耳をそばたてます。

 

「みんな!」

「ともえさん!」

 

 それは聞き間違いではありません。ともえちゃんはようやく目を覚ましたのです。

 でも、本人はまだ不安そうな顔をしています。まだフレンズへの不信感があるのでしょうか。

 

「あたし……帰ってきてもいいの?」

「早く帰って来いよともえ~!」

「私達、ずっと待ってますよ!」

 

 みんなは笑顔でともえちゃんを見上げています。すでにみんな、彼女を迎える準備はできているのです。

 

「あたし……。」

 

 いしにわずかにヒビが入ります。

 

「……帰りたい!」

 

 ヒビはさらに大きくなります。

 

「みんなのところに、帰りたい!」

 

 とうとう、ヒビが全体に回りました。これなら力を合わせれば壊せるかもしれません。

 

「ゴマさん、アムールトラさん。」

「ああ。助けようぜ、ともえを。」

「ガルルゥ!」

 

 イエイヌちゃん、ゴマちゃん、アムールトラちゃんの三人は走る準備を始めます。

 

「ロードランナー……。昔は、ただの腰巾着だと思ってたのに。」

「ああ。あいつはもうただの腰巾着でも何もできない弟子でもない。」

 

 ゴマちゃん達は走り出しました。ともえちゃんに向かって……。

 

「ともえの親友になったのさ。」

 

 三人はセルリアンの前で、奥の手を発動させます。

 

「野生解放!」

 

 三人は野生解放を発動します。今まではともえちゃんのセルリアンに吸われていたためか、サンドスターが不足気味でした。しかし、今彼女達を縛るものは何もありません。

 野生解放した三人は、ジャンプで軽々といしまで届きました。

 

「わおおおおおおおおおおんっ!」

「うらああああああああ!」

「グルゥアアアアアアアア!」

 

 三人の気合を込めたパンチがいしをとらえます。

 いしはその一撃に耐えきれず、ぱっかーんと砕けました。さらに、砕けたいしからともえちゃんが脱出します。イエイヌちゃんはともえちゃんをしっかりと抱きかかえました。

 崩れ落ちるセルリアン。三人は悠々と着地します。

 ともえちゃんを救うための戦いは、これでようやく終わりをみたようです。

 

 

 

 

続く




3つ以上に分けるか悩みましたがABパートにまとめました。もうちっとだけ続きます。
呼びかけの台詞を考えてたら、「君達なんでそんなに優しいの」とか「よくここまで旅を続けたなあ」とか感慨深くなってしまった。
自分だけでないことを祈りたいです。
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