草木がまばらに生え、ガケの間を風がふきぬけるカラカラのこうや。
ともえちゃんはジャパリバイクにまたがり運てん、イエイヌちゃんはそれにしがみつき、風を切ってこうやをかけぬけてゆきます。いっぽうでボスはハンドルのせん用せきにのり、ナビゲートをします。じどうでうごかすこともできるようですが、ともえちゃんはじぶんでうごかすことにこだわっているようです。しかし、この車にはシートが一つしかついていないため、イエイヌちゃんは落ち着かない思いをしながらのることになります。それでもがまんできるのは、ともえちゃんにしがみついてあまえられるからなのでしょう。
「なんだかおしりがいたいです~……。」
「イエイヌちゃんだいじょうぶ?ラッキーさん、このままじゃイエイヌちゃんがかわいそうだよ。しゃこまであとどれくらい?」
「モウスグダヨ。カイゾウニハ時間ガカカルカラ、ソノ間ニスケッチノテガカリヲサガストイイヨ。」
「わかった!イエイヌちゃん、もうちょっとガマンしてね。」
「はい~……。」
イエイヌちゃんは力なく答えました。
なんとか気分をまぎらわせようと、けしきをみます。日にやけたような赤い土に、切り立ったガケ。ガケはまるで大きな川のようにうねり、えだ分かれし、あるいは平地のように広がります。
「うわぁ~……。なんだかすごいですね。」
「ここはね、さいしょからこんなガケになっていたんじゃないんだよ。地しんで地めんがくずれたり、昔の川でけずられてこうなったんだよ。」
「ヨリセイカクニイウト、何千マン年モ前ノチカクヘンドウデ地ソウガリュウキシ、ソノ上ヲ川ガ流レテ谷ガデキタンダ。コンナ谷ニナルマデニ、何千マン年トイウトホウモナイ時間ガカカッテイルンダヨ。」
「おぉー。しぜんのちからってすごいんですね~。」
「うんうん、ロマンだよね。めっちゃ絵になる!」
「ジャパリパークデハソレイガイニモオソラク、サンドスターノエイキョウモアルト考エラレルヨ。サンドスターニハ、ナゾモ多インダ。」
「ふ~ん……。」
バイクはガケをぬけ、ひらけたところに出ました。
「ね、ラッキーさん。ここってどんなフレンズがいるの?」
「イロンナフレンズガイルヨ。タトエバ……右ヲ見テゴラン。」
二人はボスに言われて右を見ます。すると、少し遠くに二人のフレンズがきょう走をしているのが見えます。
一人はうつくしいセミロングのブロンドに白いシャツを着こみ、ネクタイやプリーツスカートなどつけているものやはいているものを黄色と黒のまだらもようで固めたフレンズ。もう一人は赤いジャージを着こみ、ジョートブラウンにツノを生やしたフレンズです。
「アレハ、チータートプロングホーンダネ。」
「はやーい。このバイクよりはやいかも?」
「チーターハシュンカンジソク100キロ、プロングホーンハ90キロノスピードデ走レルト言ワレテイルヨ。コノ2ヒキノセイソク地は近イカラ、プロングホーンハチーターカラ逃ゲルタメニ足ガハッタツシタトサレテイルヨ。ベイビータチノバイクハイマ40キロホドデ走行シテイルカラ、アノチータータチハモットモットハヤク走ッテイルコトニナルネ。」
「走りながらスケッチ……は、できないかな。」
ボスといっしょにこうやについてお勉強をしながら、目的地へと進みます。しゃこには10分ほどでとうちゃくしました。
しゃこはまわりの風けいにあまりなじまない、四角いコンクリートのはこのようなところでした。たてものは3つあり、どれも同じような大きさです。
ボスがあんないしたしゃこに着くと、ともえちゃんはポストを持ち、シャッターを開けます。中には、ともえちゃんたちがのってきたジャパリバイクとにたようなものやしゅうり中と思われるものがありました。まるでバイクの工場です。
「さてラッキーさん。どんなかいぞうをするの?」
「アソコニアルサイドカーヲトリツケルヨ。アレニイエイヌヲノセルトイイヨ。」
しゃこのかたすみには、バイクと同じ色で、かたがわだけに車りんのついた小さな車がころがっています。
「わぁぁ……。」
サイドカーにきょうみをもつイエイヌちゃん。しっぽを大きくふっています。
「イエイヌちゃん、のってみて。」
「い、いいんですか?」
「いいからいいから。のってみて~。」
ともえちゃんはサイドカーを支えながら、イエイヌちゃんにのりこむようにうながします。おずおずとしながらサイドカーにのりこむイエイヌちゃん。のりごこちはどうなのでしょうか。
「わあ……。ふかふかだけどかたくて、でもなんだかここちよくて。ベッドにすわってるみたいです。さっきとは大ちがいです~。」
「まんぞくしたみたいだよ、ラッキーさん。」
「ヨカッタ。サッソク作業ニトリカカルヨ。
カイゾウハマカセテ、コネコチャンタチハ、スケッチノテガカリヲサガシテオイデ。」
そうです。ともえちゃんたちはスケッチの場所をさがして、きおくの手がかりを手に入れなければならないのです。それを思い出したともえちゃんはさっそくスケッチを見てみます。
「このあたりの土は赤いから……このスケッチがそれっぽいかなぁ。」
ともえちゃんが開いたページはこうやのスケッチ。たいようとガケ、そして一本の大きな木があります。
「土の色、似てますね。この大きな木が目印ですか?」
「うん。高いところからさがせばきっと見つかるよ。じゃ、いってくるねラッキーさん。」
「アマリオソクナラナイヨウニネ。コノアタリハケッコウヒエルヨ。」
二人はボスにわかれをつげてしゃこを後にしました。
目印は大きな木。ならば高いところから見ればわかるはず、といきごんで近くのガケをのぼろうとしますが、二人はガケのぼりになれていません。のぼってはずりおち、しがみついてはずりおち……まったくのぼることができません。あるいてさがそうにもこうやは広く、のりものなしでは歩くだけでもたいへんです。
ふたりはとほうにくれてしまいました。
「ともえさん、だいじょうぶですか?」
「ありがとう。はぁ……さっきのフレンズにまた会えたらなあ……。」
「……いて……!」
「え?イエイヌちゃん、なんか言った?」
「いえ……。ともえさんあれ……。」
ともえちゃんはイエイヌちゃんのゆびさしたほうこうを見ます。すると、ものすごいはやさでこちらに近づいてくる一人のフレンズがいるではありませんか。
「どいてええええええ!」
「きゃあっ!」
「わんっ!」
どいてと注意されても時すでにおそし。二人は見事にぶつかってしまいます。
このぶつかってきたフレンズは、さきほど見たブロンドにまだらもようのネクタイやスカートが印しょうにのこったあの子でした。かのじょはほにゅう類ネコ目ネコ科チーター属のチーターちゃんです。
「あいたたた……。」
「ちょっと!どいてって言ったじゃない!」
「すみません……。」
「ご、ごめんね…………。」
「せっかくプロングホーンよりもリードしてたところだったのに……ん?」
ともえちゃんは、さっきぶつかってきたフレンズをじーっとかんさつしています。
「な、なによアンタ。このチーターさまに何か用があるの?」
「チーターちゃんかぁ…………かわい~!めっちゃ絵になる~!」
ともえちゃんは目をかがやかせてチーターちゃんにだきつきます。
「きゃあっ!は、はなして!あたしもう行かないと……。」
チーターちゃんがともえちゃんをふりほどこうとしたその時、むこうから二人のフレンズが大声を出しながらこちらにむかって走ってきます。そのはやさはさきほどのチーターちゃんにまさるともおとりません。
「……おーい、どうした?」
「……まだしょうぶのとちゅうだろ~?」
二人はチーターちゃんを見つけると急ブレーキでとまりました。
一人はこれまたさきほど見たツノの生えたフレンズ、ほにゅう類クジラぐうてい目プロングホーン科プロングホーン属のプロングホーンちゃん。
もう一人はちょう類カッコウ目カッコウ科ミチバシリ属のオオミチバシリ、またの名をG(グレーター)・ロードランナーちゃん。「Beep」とかかれた青いTシャツとはい色がかったベージュのかみに羽の生えたあたまがとくちょうです。
「ふぅ……。どうしたのだ、じゃれついて?ともにはやさをみがくのではなかったのか?」
「ち、ちがうわよ!こっちがじゃれついてきたの!」
「そういって、つかれてきたからいいわけしてんだろ~?」
「ちがうって!」
うろたえるチーターちゃんをはなしたともえちゃん。こんどは二人のフレンズに目をかがやかせます。
「うわ~!また絵になりそうなフレンズ~!
あなたたちの名まえは?」
「わたしか?わたしはプロングホーン。地上さいそくをめざし走りつづけるものだ。」
「そしておれが、プロングホーン“さま”のいちばんの子分、G・ロードランナーさまさっ。」
「プロングホーンさまにロードランナーちゃんかぁ。」
「ともえさん、うつってます。」
「あたしはともえ。よろしくね!」
「わたしはイエイヌです~。ところで、お二人はどうしてチーターさんを追いかけてたんですか?」
「追いかけてたんじゃねーぞ。プロングホーンさまはちょっとでおくれただけだ。」
すかさずせつめいするロードランナーちゃん。どうやらプロングホーンちゃんの名まえが汚れることを気にしているようです。それほどそんけいしているのでしょう。
「わたしの目てきはただひとつ!おのれをきたえるために、さいそくのけものとスピードを高め合うことだ!」
「だからっていちいちつっかかってこないでよ!」
「なら、地上さいそくはわたしのものになってしまうぞ。」
「ビビってんのか~?」
「ビビッてないわ!なんどでもかえりうちにしてあげるわよ!」
どうやら、あつくるしいプロングホーンちゃんはチーターちゃんをライバルとしてきそい合うかんけいになりたいようですが、チーターちゃんからはうっとおしがられているようです。しかし、ちょうはつにはかんたんにのってしまうようですね。
「なんだか三人とも気が合いそうだよね。」
「チーターさんもプロングホーンさまもロードランナーさんも……もうすこしみんなすなおになったら、ほほえましくなると思います。」
「もっともっと絵になりそうだよね~。みんなをなかよくさせてあげたいなー、うーん……。」
ともえちゃんはしばらく考えこみます。
「ただきょう走するだけじゃ平行せんだし、何かつくるにしてもふくざつなものだとほうりなげちゃいそうだし……。」
いろいろと考えたけっか、なにかをひらめいたようです。
「そうだ!ねえ、わたしたちにちょっとついてきて。」
「おっ、おまえもわたしと高め合ってくれるのか?」
「うーん、ちょっとちがうかな。でもきっと、すてきなことだから!」
「お?なんだなんだ~?」
「まあ、たのしいことなら……。」
「だいじょーぶ。め~っちゃ、まかせて!」
チーターちゃんたち三人がうまくともえちゃんについてきたようです。ともえちゃんはどんなことをしようとしているのでしょうか?
ともえちゃんは、チーターちゃんたち三人をしゃこまであんないしました。しかし、ともえちゃんが用があるのはしゃこのほうではありません。そのとなりの図工室のほうでした。
図工室のシャッターをあけ、みんなを中に入れます。
「ここにみんなに見せたいものがあるんだ!」
「さて、なにがまっているのか……。」
「わくわくしますね、プロングホーンさま!」
「それであたしをまんぞくさせられるかしらね。」
するとともえちゃんは年きの入った大きなはこをあけ、その中みをとりだします。中に入っていたのは、四角くかためた灰色の土のようなものでした。
「みんなにはここで、ねんどであそんでもらいまーす。」
「ねんど?」
「あ、むかしあそんでいるのを見たことがあります。この土をこねて……。」
イエイヌちゃんはともえちゃんからねんどをもらうと、なれない手つきで土をこねます。すると、四角いねんどはみごとなボールになったではありませんか。
「おぉ~。」
「こんな風につくるんですよね?」
「そう。なんでもじゆうにつくってみよ?きっと楽しいよ!」
ともえちゃんはにこにことわらいながら、ほかの三人にもねんどをくばります。そして三人とイエイヌちゃんは、古ぼけた木のイスにすわり、ねんどをこねて作品をつくりはじめました。
ともえちゃんはなにをしているかというと、四人のようすを絵にかいているようです。めっちゃ絵になりそうですね。
「ならおれは、プロングホーンさまをつくる!」
「いきなりレベルたかいな……。わたしはなにをつくろうか。」
「このあたりって、なんにもないからどうしたらいいのかしら……。」
チーターちゃんはきょろきょろと中を見わたします。ここには、いますわってるいがいにも、さぎょう台がいくつかおいてあり、さらにがようしにがばん、ねんどへらやキリなんかもおいてあります。子どものそうさくいよくをしげきしてくれそうなへやです。ですが、モデルになりそうなものはあまりおいてありません。
「ねえ、ともえとイエイヌっていままでにどんなものをみてきたの?」
「わたしは、ずっとおうちでまっていたので。ほとんどしりません。」
「もったいないなイエイヌは。わたしは、はやさをもとめていろんなところをたびしてきたものだ。」
「さっすがプロングホーンさま!たびのけいけんもほうふですね!」
「……でもここさいきんは、チーターばかり目にしているからな……。」
「そ、それでもプロングホーンさまはすごいですよ!」
イエイヌちゃんのわだいはなにかともりあがりましたが、ともえちゃんはその手のわだいになると少しくらくなります。
「あたしは……なんにもおぼえてないの。」
「おぼえてない?なんで?」
ともえちゃんはゆっくりと、じぶんのことを話します。きおくがないこと、スケッチが手がかりであること……。みんなはとてもしんけんな表じょうで聞いてくれました。
「そうだったのか……。」
「だから、いまはっきりおぼえているのはえ~っと……としょかんでべんきょうしたことと、ラッキーさんに会ったときのことと……イエイヌちゃんとの思い出くらいかな。」
「ともえさ~ん。」
イエイヌちゃんがともえちゃんにあまえるようにすりよります。ともえちゃんもうれしそうにイエイヌちゃんのあたまをなでてあげます。
「いろいろ思い出せるといいわね。」
「うん。ありがとっ。」
「じぶんはプロングホーンさまのこと、ぜったい忘れませんから!」
「それだとわたしが死ぬみたいじゃないか……?」
プロングホーンちゃんのツッコミでわらいが起き、まわりがなごやかな空気になりました。ふんいきがくらいままだったら、ねんど遊びどころではなかったかもしれませんね。
その後もそれぞれ思い思いの気持ちをこめ、ねんどをさまざまな形にこねてゆき、ついにみんな作品をかんせいさせたようです。
さあ、これからはっぴょう会です!
続く
ゴマちゃんの一人称が分からなくて雰囲気的に俺女にしてみました。いかがでしょうか。
粘土遊びは、原作のように競走するだけでは勝った負けた以外の感想が期待できませんし、かといってセルリアンみたいなのを出して吊り橋効果を演出するのも……と悩みました。そこで創造性を互いに刺激し合えば、発想が柔軟になるのではないかと考え、粘土遊びをさせてみることにしました。
クレイモデルというものもありますし、何よりジャパリパークは動物園ですから、殺風景な荒野にこんな図工室があってもいいのではないかなと……。
(19.8/9 誤字報告があったので訂正しました。ありがとうございます。)