けものフレンズR 足跡を辿って   作:ナンコツ

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※これは第二話こうやの続きです。
まだAパートを読んでいない方は、先にそちらをお読みください。


第二話 こうや Bパート

 ともえちゃんのていあんで、図工室でねんど遊びをするイエイヌちゃん、チーターちゃん、プロングホーンちゃん、ロードランナーちゃん。四人はどんな作品をつくったのでしょうか?

 

「わたしはともえさん……のぼうしを作ってみました!」

 

 イエイヌちゃんの作品はぼうし。ともえちゃんのたんけんぼうを元にしたようです。ところどころゆがんではいますが、羽のかざりもついていてとくちょうをよくとらえた作品です。

 

「わー!ありがとう!とってもすてき!」

「見ろ、こっちはプロングホーンさまだぞー。」

 

 ロードランナーちゃんの作品はじしんのけいあいするプロングホーンちゃんの顔。ほそながいボールに耳とツノをつけただけのような気もしますが、これも力作です。

 

「おー!さっすがロードランナーちゃん!よく見てる~!」

「ヘヘン!」

「ずいぶんザツなプロングホーンね……。」

「これでもけっこう苦ろうしたんだぞ!」

「ぼうしをのせるとにあいそうですね。」

「わーやめろ!ツノがおれるぅぅぅ!」

 

 イエイヌちゃんはよかれと思ってねんどのぼうしをねんどのプロングホーンにのせようとしますが、ロードランナーちゃんはひっしでくいとめます。さすがにそこまでしつこくはなかったため、ツノはまもりきれました。

 

「やってみるとむずかしいものだな。わたしもこんなものしか作れなかった。」

 

 プロングホーンちゃんの作品は走る人……のようですが、まるでサボテンに耳が生えたようなものでした。でもチーターちゃんのようなかわいらしい耳がついており、はじめてなりによくできた作品です。

 

「おー!なかなかいいよ!とくに耳がかわいい!」

「あれ、この耳……ひょっとしてあたし……?」

「ああ……走るすがたを作ってみようと思って。でも自分だとツノまで作らなきゃいけないからめんどうだなと思ってな。ははは。」

「もう……。なんだかあたしのパーツが単じゅんみたいじゃない。」

 

 そう言いつつもチーターちゃんはてれ顔で、どことなくうれしそうです。

 

「でもみんなよくできてるよー。チーターちゃんはどう?」

「あたしは……ちょっとかぶっちゃった。」

 

 チーターちゃんの作品はこれまた走る人です。こちらもサボテンと思われそうな出来ですが、こちらには耳とツノがついています。

 

「これは……。わたしか?」

「おれとかぶってるじゃんかよー。」

「すっごーい!そっくりだよ!」

「ま、まぁ……しょうじき、そのツノはうらやましいなって……ちょっぴり思ってたから。」

「ロードランナーさん!ぼうしをかぶせてかんせいさせましょう!」

「カンベンしてくれよぉ……。」

 

 イエイヌちゃんはしつこくロードランナーちゃんとの合作をもとめます。しかしロードランナーちゃんがいやがっているため、じつげんはむずかしそうです。

 ともかくこのねんど遊びでわかったことは、ともえちゃんが思ったとおり、チーターちゃんとプロングホーンちゃんはどちらもホントはなかよしということでした。

 

「二人とも、やっぱりおたがいが気になってたんだね。」

「そりゃあ……あんだけつっかかられたらね。」

「わたしはずっといしきしていたからな。いつか決着をつけると。」

「じぶんもわすれないでくださいよ、プロングホーンさま!」

「ああ、もちろんだ。」

 

 どこまでもプロングホーンちゃんを持ち上げるロードランナーちゃん。でもイエイヌちゃんにとっても、プロングホーンちゃんをともえちゃんにおきかえてみると、わりと理かいできないこともないのです。そのため、ロードランナーちゃんに親きんかんをおぼえたようです。

 ロードランナーちゃんが気になったイエイヌちゃんは、かのじょに一つしつもんをします。

 

「そういえば、ロードランナーさんってどうしてプロングホーンさまをそんけいしているんですか?」

「決まってるだろ!おれよりもダンッゼンはやいからさっ!プロングホーンさまのストイックなせいしん!はやさ!つよさ!すべてがかんぺき!そんなところにあこがれたってわけ!」

「そこまでほめられるとてれるな……。」

「アンタたちも単じゅんね……。」

「ははは。でもロードランナーもだれにもまけないくらいはやいぞ。」

「そうだよね。ロードランナーちゃんってさいしょに会った時、プロングホーンさまについてこれてたもんね。」

「それでも、あたしたちにはおよばないけどね。」

 

 ロードランナーちゃんの話だいでもりあがるいっぽうで、プロングホーンちゃんはチーターちゃんとむきあいます。

 

「チーター。いろいろすまなかった。今まで少し、おしつけがましかったかもしれない。それをわびたい。」

「え、べ、べつに……いいけど。その……たまには走らないと体もなまるし……。それにその……アンタときょう走するのはしんどいけど、それでも楽しいし……。あたしについてこれるフレンズなんて、プロングホーンくらいだから。」

「チーター……。」

「ね、とりあえず今日はあくしゅでもしとかない?友だちきねんってことで。」

 

 ともえちゃんにうながされ、プロングホーンちゃんとチーターちゃんはてれながらたがいに手をさしだし、なかよしのあくしゅをかわします。

 

「でもしょうぶはべつだ。まけるつもりはない。」

「それはこっちのセリフよ。いつでもかかってきなさい。」

 

 ついにおたがいをみとめ合ったライバル。なんというりそうてきなかんけいなのでしょうか。ともえちゃんもうっとりとしています。

 

「うーん、やっぱりいい絵になりそう!ね、四人とも作ひんのまえに立って。ぱぱっと四人分かいちゃうから。」

「ともえがそういうならつきあおう。」

「きれいにかいてよね。」

「え、おれもいいのか?」

「もちろん!」

「またかいてもらえるんですね。うれしいですぅ~。」

 

 ともえちゃんは四人を作品の前にすわらせ、それぞれ一まいずつ、四まいの絵をかきました。それぞれをプレゼントするとみんなまんぞくそうにうけとってくれました。

 四人が作品をつくっていた時の絵はこの図工室にかざるそうです。そうぞうせいをあたえてくれるこのへやに、もうひとついろどりが加えられましたね。

 

 

 ともえちゃんがみんなの絵をかきおえたころ、ボスがとなりのしゃこからやってきたようです。

 

「トモエ。バイクノカイゾウガオワッタヨ。スケッチハドウシタノ?」

「え?ボスって……。」

「あぁーーー!すっかり忘れてたぁーーー!」

 

 チーターちゃんたちはしゃべるボスにおどろきましたが、それよりもともえちゃんのすっとんきょうな声のほうにおどろいてしまいました。ともえちゃんはスケッチブックを三人の前で開きます。

 

「ねえ、三人はこの風けいに見おぼえない?」

 

 ともえちゃんが見せたのは、さきほどさがそうとしていたこうやに生えた大きな木の絵です。見覚えはあるのでしょうか?

 

「これ、いつもゴールにしている木かしら。」

「ああ。少し遠いが、今からいけば夕日が見られるとおもうぞ。ともえには世話になったからな。わたしがあんないしよう。」

「まって、あたしもおれいをさせてよ。」

「プ、プロングホーンさまがいくならも!」

「うんっ!じゃ、みんなでいこっか!」

 

 ともえちゃんたちはうきうきしながら外に出ます。外では、かいぞうされてサイドカーのついたジャパリバイクがでばんをまっています。

 

「これがサイドカーかぁ~。イエイヌちゃん、のってみよ。」

「はいっ!」

 

 イエイヌちゃんはゆっくりとサイドカーにのりこみ、ともえちゃんもバイクにのります。どちらものりごこちはかいてきそうです。

 

「それでプロングホーンさまにおいつけんのかよー。」

「どうなの、ラッキーさん?」

「サイクハリュウリュウ。シアゲヲゴロウジロ……。」

「いみはよくわからんが、なんだかよし!」

「それじゃ、かるくきょう走しながらいきましょう。」

 

 こうして、ともえちゃんとイエイヌちゃんはジャパリバイクで、三人は走って目てき地にむかうことになりました。

 チーターちゃんとプロングホーンちゃんはさすがにはやく、バイクとならんで走ってもまだよゆうがありそうです。いっぽうでロードランナーちゃんはちょっとおくれぎみで、みんなこちらに合わせて走ることになってしまいました。

 

「ま、まってくださいプロングホーンさまぁ~。」

「だいじょうぶか、ロードランナー?むりはするな。」

「ロードランナーハ、ジソク30キロホドノスピードデ走ルコトガデキルンダ。走ルノハトクイナイッポウデ、トブノハアマリトクイデハナイヨ。」

「お、おれだって少しくらいならとべるんだぜ~。でもとぶとつかれるから……。」

「がんばってください、ロードランナーさん!」

「……チナミニ、イッパンテキナイエイヌモ30キロホドノスピードで走レルヨ。」

「えぇ~!?じゃあお前も走れよ~!」

 

 ロードランナーちゃんが走りながらイエイヌちゃんにこうぎします。ひっしで走らされるロードランナーちゃんを気のどくに思ったともえちゃんは、ボスに声をかけます。

 

「ねえ、ラッキーさん。ロードランナーちゃんもバイクにのせてあげられないかな?」

「ベイビーのセイカクナラ、ソウクルダロウトオモッテ、トルクヲ上ゲテタンデムシートモツケテミタヨ。ダレカ一人ナラノセラレルヨ。」

「それ、先に言えよな!」

 

 ロードランナーちゃんはここぞとばかりに、ジャンプからのひこうをひろうします。そしてそのまま、バイクのうしろのタンデムシートにのりました。なるほど、これはかいてきです。

 

「ひゃー、らくちんらくちん。」

「やあやあ、ロードランナーちゃん。ようこそわたしのバイクへ~。」

「い、いや、なでなくていいって~……。」

「ロードランナーさんちょっとずるいです。」

 

 ロードランナーちゃんはうまいことともえちゃんのうしろにのれた上に、さらにあたままでなでてもらえました。そのすがたにイエイヌちゃんは、ちょっぴりやきもちをやいてしまったようです。

 ともえちゃんたちは風を切りながら走ること10分。ようやく目てきの木にたどりつきました。ちなみに一番はプロングホーンちゃん、二番はチーターちゃんでした。

 

 

 絵のとおりに夕日がさし、木のまわりのガケをてらします。ガケは夕日にてらされ、まるであかあかともえあがるほのおの岩かべです。葉っぱの少ない大きな木は夕日によってカゲができており、まさに大しぜんの生んだうつくしさです。

 バイクからおりたともえちゃんは、木をしばらく見つめます。

 

「どうですかともえさん?なにか……。」

「……。」

 

 風けいを見つめていたともえちゃん。すると、ふたたびあのなにかがわきでるような、ふしぎな感かくがおそってきました。

 

 

 ――ふらふらと荒野にやってきたともえ。

目の前には大きな木と夕陽とそれに照らされる崖。吹き抜ける風が頬を撫で、木の枝を揺らす。

 燃えるように赤い岩壁と沈みゆく太陽。それによって影が生まれ、光と影を備える大木。生と死の交わる空間を思わせる神秘的な風景を、ともえは夢中でスケッチブックに描く。

「この木も、あたしと一緒なんだ……。」

 描き終えた後、来た道を戻ろうと後ろを振り返る。すると、自分の視界を横切ってゆく二人のフレンズの姿を目撃する。

 一瞬ためらったものの、勇気を振り絞って声をかけようと追いかけるともえ。しかし、その時にはすでに遠くにいたため、追いつくことはできなかった。――

 

 

 目が覚めたともえちゃんは、今思い出したことを忘れないうちにぽつりぽつりとつぶやき、記おくをふり返ります。

 

「あたし……この風けいに感動して……スケッチをしたみたい。」

「わぁ!それがこのスケッチなんですね!」

「それで、だれかがかけっこしてるのが見えたんだけど……。」

「プロングホーン様か!?」

「でももう遠くに行っちゃってて。結局、声をかけられなかった。

 それで、一人ぼっちのままになっちゃったみたい。」

 

 それがともえちゃんが思い出したことでした。いっしゅん遠くをよぎった姿は、果たしてプロングホーンちゃん達のものだったのでしょうか。

 早速、ともえちゃんは三人に聞いてみました。

 

「うーん……。なんだか覚えがないわ。」

「わたしもだ。そもそも、走っている間は相手ばかり気にしてしまってな。」

「う~ん、わかんないな~。」

「そっか。ごめんね、せっかくみんなが助けてくれたのに……。」

「おたがい様だ。世話になっておきながらなさけない……。」

「あたしもなさけないわ。周りが見えていなかったなんて。」

「ううん、もういいの。ありがとうみんな。」

 

 ともえちゃんは努めて笑顔でふるまいました。ただでさえ周りが落たんしているのだから、せめて自分だけは明るく過ごさなければならないと思ったのでしょう。……というのもありますが、あるいは自分のさみしさをあまり周りに見せたくなかったのかもしれません。

 

 

 ともえちゃん達は木を見つけた後、辺りが暗くなってしまったためあの図工室で夜を過ごし、朝を迎えました。

 そろそろ出発の時間です。

 

「ソロソロ行クカイ?子ネコチャン?」

「うん。それじゃ、あたし達行くね。」

「みなさんお世話になりました。」

 

 ともえちゃんとイエイヌちゃんは、お世話になったチーターちゃん、プロングホーンちゃん、そしてロードランナーちゃんの三人に別れを告げます。三人もバイクに乗り込むともえちゃん達を見送ります。

 

「なんか、さみしくなるな……。」

「気をつけてな。」

「こまった時はいつでも会いに来て。かんげいするわ。」

 

 三人に見送られ、ジャパリバイクは発進します。すると、さみしさからかロードランナーちゃんが走ってきました。

 

「二人とも~!」

「ロードランナーちゃん!」

「ぜったいまた、ここに来てくれよな~!その時はまた遊んでやるからな~!」

 

 ロードランナーちゃんはなみだながらにさけびながら走ります。今はバイクと並走できていますが、やがてつかれてしまえばはなれていってしまうでしょう。だとしてもその時が来るまで走り続けるのが、彼女なりのエールであり、メッセージなのです。

 

「ぜったい、ぜったいだからな……。みんな、お前達のこと忘れないから……。」

 

 ぐずりながら走るロードランナーちゃん。

 その姿に心打たれながら、ともえちゃんはイエイヌちゃんにそっと耳打ちします。

 

「……イエイヌちゃん。……ね。わかった?」

「はい。」

 

 イエイヌちゃんは冷静にうなずきます。

 体力のげんかいがきたのか、サイドカーからはなれ始めるロードランナーちゃん。そこですかさず、イエイヌちゃんは彼女をむんずとつかみ、サイドカーに引っ張り込みました。

 

「うわっ!な、なんだよ!」

「ロードランナーちゃん。そんなにお別れがいやなら、いっしょに行こうよ。色んな世界を見てプロングホーン様にじまんしよ?」

「いや!おれはここでずっと……!」

「いっしょに行きましょう。私とともえさんとボスと、四人で旅をしたらきっと楽しいですよ。」

「チョウドタンデムシートモ空イテルシネ。旅ハ道連レダヨ。」

 

 ロードランナーちゃんを引き込んだ二人はニコニコと笑いながら、旅にかんゆうします。このあまりにも突然の出来事にロードランナーちゃんは大混乱です。

 

「で、でもそれならせめて、プロングホーン様ともう少しドラマチックなお別れを……。」

「プロングホーン様ならゆるしてくれるって。ヘーキヘーキ。」

「でも、旅をするならもう少し短い名前が欲しいですね。」

「そっか。うーん……ランナーちゃんとか?」

「ゴマすりさんとか。」

「ご、ゴマすりってお前……。」

 

 プロングホーン様をやたら持ち上げる姿がゴマすりに見えたからでしょうか。ゴマすりクソバードですね。

 

「略してゴマちゃんか!いいね!」

「じゃあよろしくお願いします、ゴマさん。」

「まっ、待て!おれはまだ、行くなんて言ってな~~いっ!」

 

 ゴマちゃんのさけびが荒野にひびきわたります。しかし、そのさけびはむなしくこだまするだけでした。

 かくして、ともえちゃん達一行は新たにゴマちゃんを加え、四人での旅が始まりました。これから四人にはどんな冒険が待っているのでしょうか?

 

 

 

終わり




ゴマちゃんは、最初はもっと感動的に加入させようと思いました。
でもそのためにはエピソードを増やさなければならず、これ以上冗長になるのはよくないのではないかと考えてやや強引に加入させました。
でも一番の理由は、「ゴマちゃんに涙は似合わない」ということですかね。
いるだけで笑顔をもたらす子なのだから、こういう荒唐無稽なエピソードの方が似合うのではないかなと思います。

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