ISの束博士視点の短編となります。
なお筆者は4巻あたりまでしか読んでいないため、それ以降の展開とは内容を異にすることがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

初投稿です。\コンゴトモヨロシク!/

批判、誤字脱字報告、感想等々お待ちしております。

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【IS短編】 beyond the sky

空を飛ぶ。

 

 

 それは人類の永年のテーマの一つであった。鳥のように自由に、いつまでも空を飛んでいたい。そう考える人間は、少なからずいる。私が世にISを発表した当初こそ誰も見向きしなかったものの、今では実に四百以上のISが、今もこの空を飛んでいる。私の目的は空のさらに上(beyond the sky)だったけれど、空の素晴らしさを知った人間は、さらにその先に目が行くに違いない。人間は支配欲の強い生物だからだ。

 首脳部にはその気がなくとも、IS乗りには多分、その気がある。そして、ISが軍事的に重要な意味を持つ以上、首脳部はIS乗りの意向を完全には無視できない。遠い目で見れば、人類は必ず地球の外に目を向ける。それが今だ、と私は主張したのだけれど、受け入れがたかったようだ。

 

 研究の過程で、様々な資料を読んだ。ある時は機械、ある時は物理、そしてある時は生物。生物は鳥類の項を調べた時、彼らの空に対する途方もない努力を知った。文字通り身を削った、その体の大変革だ。彼らの骨は空洞になっている。筋肉も羽の付け根にほぼ集中しており、鳥類の中には地上を歩くには羽ばたいて身を軽くしなければならない種すらいる。糞尿は当然垂れ流しだ。鳩や鶏が首を前後に振りながら歩いているのを見たことがあると思うが、あれは目で見た動画を脳で処理できないため、静止画になるように一定区間ごとに首を動かしているのだ。つまり、脳の容量をすら削ったということだ。そうまでして、漸く空を手に入れることができた。だから私も、ISにはそういった“努力の才能”があるものにしか乗れないようにしたのだ。男性諸君が乗れないことには別に理由がある。まあ言ってしまえば向き不向きの問題だ。

 

 私は自分の研究所に入って、スクリーンを起動させた。何百機ものISが空を飛んでいるものの、周囲にはISは無い。それを確認したのち、外に出てISを展開した。白と青の流線型は私の空への思いが込められている。自画自賛になるが、かなりよくできたデザインだと思う。

 空に向けて、最高速で飛び上がる。拡張領域は耐G用の追加粒子発生システムと追加加速ロケットでいっぱいになっている。これでようやく、第二宇宙速度に到達する。空気が薄くなって空がだんだん暗くなってきた。雲を突き破って太陽の光を見た。

 

 宇宙に出ると、自分以外に何もない感慨を味わうことができる。広大でなおも広がり続ける宇宙に、たった一人でいるような気分になる。それは、言いようのない興奮と、一抹の寂しさと、何にも代えがたい全能感だ。そして眼下には、青くて美しい宝石があって、やっぱりISは空を飛んでいた。

 

 

そして私は思うのだ。

これがわからない者は、“永久に成層圏(インフィニット・ストラトス)に”いればいい、と。

 



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