エイプリルフールのネタ小説

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ジュドー転生~ビーチャ、オレ!?~

 激しく大地が揺れた。

 

 なんだ? 地震か?

 

――ゴォォォォォォォォッ

 

 耳に響く爆音。

 音がした方向に顔を向けると、一つ目の巨人が空に浮いていた。

 

「も、モビルスーツ!?」

 

 意味が分からない。

 あんな物は創作物にだけ存在する創作物だ。

 大事な事なので被せて言ってみた。

 

 って言ってる場合じゃないな。

 

 そもそも論で、自分が誰だか分からない。

 おまけに気付いたらここに立っているとか意味が不明にも程があるし、悪い夢なら覚めてくれ。

 

「戦争したいなら人が居ないところでやりなさいっての」

 

 オレの近くにいた少年が、遠く離れたモビルスーツを相手に憤り、今にも駆け出しそうにしている。

 

「待てっ、ジュドー!!」

 

「ビーチャっ!? 止めたって無駄だからな」

 

 なんだ?

 オレは今ジュドーと言ったのか?

 そして、ビーチャと呼ばれたのか?

 

 そうだ……こいつはジュドー・アーシタ。

 ガンダムの主人公にしてオレの仲間。

 ()()()()()()()()()()()()()()

 なんとも不思議な感覚だ。

 

「頭を冷やせってんだ!

 闇雲に行ってどうなるもんでもないだろっ。大体ジュドーはなんでここに居るのか分かってんのか!? オレは分からねぇからなっ」

 

「そ、そうだ……俺はハマーンと決着を着けるために為に戦って……爆発に巻き込まれ……?」

 

 どうやらジュドーにはジュドーとして生きた記憶があるようで、しかも、最終決戦済みとくればパイロットとしてはほぼ最強クラス。

 しかし、今は単なる子供にすぎない。

 大人達からモビルスーツを与えられないことには、いかなニュータイプのジュドーでも、その真価は発揮されない。

 判り合う為のニュータイプが、戦闘でしか真価を発揮されないのは、なんだかやるせないがそれがガンダム世界の現実だ。

 

 そして、ジュドーを行かせる訳にいかない理由が他にもある。

 

「あんなモビルスーツは見たこともないし、ヤバいっての。勝手な戦争なんか放っといて、避難しようぜ」

 

 そうは言いつつ、オレはあのモビルスーツを知っていて、これがもう1つの理由だ。

 あれはガンダム世界はガンダム世界でも、別の世界線でザフト軍が使用するジンと呼ばれるモビルスーツ。

 

 多分ここはガンダムSEEDの世界で、おそらく原作での第一話に該当する状況だろう。

 

 ははっ……なんだよこれ?

 ビーチャがオレで、ジュドーとSEED世界に転生したってのか?

 それでいて、オレにはビーチャとして生きた経験はなく、かといって元が誰かも分からない。

 都合よくガンダム知識があるだけの一般人。

 

 夢にしちゃ悪趣味で。

 現実にしても悪趣味すぎる。

 

「そんな事言ってる場合じゃないでしょうがっ。オレは行くからな」

 

「だから待てっての!」

 

 いや、だからいきなり行ったところで、どうにもならないだろ?

 ここが元の世界で、これが連邦とジオンの争いならワンチャン可能性があるにはあるが、オレ達はこの世界では異分子だ。

 身分証明すらままならない。

 

 オレの引き留めも虚しくジュドーは飛び交うモビルスーツの下を駆けて行った。

 まぁ……ジュドーなら何とでもするか。

 あいつはガンダム主人公にしては珍しい、バイタリティーに溢れたポジティブ野郎だからな。

 

 さしあたっての問題は、オレがどうやって生き延びるかだよな。

 こんな意味不明な状況でも“死にたくない”と思うんだから、生存本能ってのは大したもんだ。

 

 って、意味がちがうか?

 まぁ、どっちでも良いか。

 

 ここがヘリオポリスなら崩壊する可能性が高いし、なんとか脱出手段を確保しないとな。

 確実なのは大天使(アークエンジェル)に乗り込むことだけど、それは激しく面倒な事に首を突っ込むことを意味している。

 

「かんべんしてくれよ……」

 

 誰も居なくなった轟音響く街角で、オレはひとりごちた。

 

 

 

 

 

 

「あぶねぇっ! 上だ!」

 

 適当に物資を漁りながら戦闘空域を目指して進んだオレは、逃げ惑う四人に出くわした。

 四人の頭上から瓦礫が降り注ぐ。

 

 足がすくんだのか、動かない女にタックルかまして難を逃れた。

 

「あ、ありがとう……。

 って、キミ、ビーチャくん?」

 

「は……?

 いやビーチャだけど、なんで知って……」

 

 腕の中で女がオレの名前を言い当てた。

 想定外の出来事に、言い淀む。

 この場合なんて答えるのが正解なんだ?

 

「あ、ごめんなさい。キミ達は中等部の有名人だからね。こっちが一方的に知ってたの。私はミリアリア。助けてくれてありがとうね。でも、そろそろ退いてくれると嬉しいかなぁ」

 

 なるほど、なるほど。

 

 女――ミリアリアの説明だと、オレが目立つ存在だったから知っていた、と。

 まぁ、オレも原作でミリアリアを知ってるからお互い様だな。

 

 って、違うわっ。

 

 この世界で生きた記憶なんか欠片もないし、原作的に考えてもビーチャなんか居るわけもなく、一体全体どうなってる!?

 

 

――ドゴンッッ

 

 

 思考を遮る様に爆音が響く。

 近くのビルに流れ弾が着弾したようだ。

 

 くそっ、後回しだっ。

 

「い、良いってことだ。でもよ? あんたらなんでこんな戦闘空域をウロチョロしてんだよ」

 

 ミリアリアを立たせたオレは、四人組に向かって問い掛ける。

 とりあえず、こいつら原作組にくっついて行動すれば大天使(アークエンジェル)に搭乗できる。

 

 ややこしい考察は命の危険が危ない状況から脱出してからでいい。

 

「判ってる。けどっ、シェルターがもうどこも満杯なんだよ」

 

 うん。知ってる。

 いや、知ってなくても予想はつく。

 こんなドンパチやってる状況で、一般人が町中をウロチョロする理由なんか他にはない。

 

「も、モビルスーツ!?」

 

 男の誰かが驚きの声を上げる。

 

 見ると、フラフラと歩くことすらままならないといった感じの灰色のモビルスーツが、ジンに追いたてられていた。

 

 ん? あれはストライクか?

 こっちに気付いたようだが、意識はオレじゃなくこいつらに向いている。

 と言うことは、あれのパイロットは原作通りにキラ・ヤマトか?

 ジュドーはどこ行ったんだ?

 

「あんたらっ、ここに居ちゃあ戦闘の邪魔になる。…………こっちだ!」

 

 オレ達は今、ストライクの背後にいる。

 守られているようで普通に危ない。

 ここは、対面する敵の銃撃の着弾点。

 

 周囲を見渡したオレは、二機のモビルスーツの立ち位置なんかも考慮しつつ、なんとなく安全そうな場所を選び、ミリアリアの手を取って駆け出した。

 

「ま、待ってくれ!?」

 

 そうは言いつつ、男三人もオレの後に続いて走り出す。

 まぁ、いくら駆けたところでモビルスーツとはサイズが違うし、戦闘区域から逃げ切るなんて不可能だ。

 

「ここで良いだろう」

 

 完全に倒壊したビル群の跡地で立ち止まる。

 

「えっ?」

「こんなとこ!?」

 

 意味が分からない。

 そんな顔で学生達がオレを見ている。

 

「屋内は倒壊が怖いからな。ここなら回りがよく見えるし、相手からもよく見える。戦争だからって、見るからに一般人のあんたらなら狙われる事はないってもんだ。ヤバいのは流れ弾と建物の倒壊さ」

 

「き、キミは?」

 

 オレに留まる意思がないと気付いたミリアリアが心配そうにオレの袖を掴んでいる。

 

「ちょっと、行ってくる」

 

 それだけ言ったオレはミリアリアの手を振りほどくと、ここに至る道中で漁って手に入れたバズーカを背負って駆け出した。

 

 ストライクがまごまごし過ぎている。

 原作でもこんな感じだったが、原作通りにいくとは限らない。

 原作を馬鹿正直に信じて黙ってみているよりも、()を見てやるべき事をやるとしよう。

 

「そこぉ!」

 

 向かい合うモビルスーツの中間点。

 物陰からバズーカをぶっぱなす。

 オレが放ったバズーカは、ストライクに向かって加速したジンのモノアイ付近に着弾。

 

 ははっ!

 オレだってやれるじゃないか。

 

 でも、ゲリラ的攻撃は国際条約で禁止されてるんだったか? 

 まぁ、良いか。

 時間は稼げたし、長居は無用ってヤツだ。

 

 オレは明らかに動きのキレが増したストライクを一瞥すると、逃げる様に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほぼ原作通りにキラ・ヤマトがジンを撃退し、一時の安息を手にしたオレ達は、気絶したラミアス大尉をストライクのコクピットから引きずり出して近くのベンチに寝かせおく。

 

 なにが、とは言わないが、

 

 凄かった

 

 とだけ言っておこう。

 

「き、キミはさっきの?」

 

 オレに気付いたキラが話し掛けてくる。

 即座に逃げたハズだが、一瞬でオレが潜んでいた場所を特定して見つけていたらしい。

 

「へぇ~? あんたがあのモビルスーツのパイロットか?」

 

「そ、そういう訳じゃないけど、偶然こうなって……その……みんなの姿を見て何とかしなきゃって。それで……キミの攻撃のお蔭で助かったよ。ありがとう」

 

 何とかしなきゃで何とか出来るんだから大したもんだと言うしかない。

 さすがはコーディネーター……いや、こんな思考が差別に繋がるし、さすがはキラ・ヤマトと言うべきだな。

 

「オレも助かったぜ。バズーカじゃ嫌がらせ程度のことしか出来ないからな」

 

「え? あ、アレは……嫌がらせのレベルを越えてるんじゃ? 加速したジンの側面からバズーカを当てるなんて、さすがはビーチャ君だね」

 

「は? あんたもオレを知ってるのか?」

 

「あ、ごめん。キミと僕は初対面だったね。僕はキラ・ヤマト。工業カレッジの学生だよ」

 

「あ、あぁ……オレはビーチャ。ま、よろしく頼むぜ。パイロットさんっ」

 

 あらゆる事においてハイスペックなキラ・ヤマトだが、どこか自信なさげでオドオドしているようにも見える。

 そんなキラ・ヤマトと平静を装って握手を交わすオレの内心はこうだ。

 

 って、マジでここのオレは何をした!?

 

 普通、学年が違う下級生の事なんか知らないだろ?

 

 そ、そうだ。

 何か手掛かりはないか?

 

 ここに至り、自分の身体をまさぐり何かもっていないかと探し始めた。

 

 そして見つけた財布の中の学生証。

 

 は……?

 

 ビーチャ・オーレグ

 本校の生徒であると証明する

 

 手のひらサイズの手帳には確かにビーチャの顔写真が貼り付けられていて、オレではないビーチャ・オーレグがこの世界に存在したと証明していた。

 

 まじか?

 いや、これは好都合か?

 これで、身分の証明は可能。

 でも、ビーチャをよく知っている人物――家族なんかと出くわしたらアウト。

 

 ジュドーはどうなんだ?

 てか、アイツはマジでどこ行った?

 

「その機体から離れなさいっ!」

 

 あ、まずっ。

 まにゅ、もとい、マリュー・ラミアス大尉が目を覚ましたようだ。

 ストライクのコクピット内に入り込んだ学生達に銃口を向けている。

 

 これは普通に悪手だ。

 

「撃ったら撃つ…………話せば分かるだろ?」

 

 手に入れていたマシンガンの銃口を至近距離でラミアス大尉に向けて威嚇する。

 因みに、オレのマシンガンからはマガジンを抜いてあるので、殺傷力はゼロだ。

 

「あ、あなたっ!? 

 い、良いわ。兎に角降りてきなさい!

 それは軍の機密機体です!」

 

 機密もなにもキラ・ヤマトに弄くられてんのに、この人は何を言ってんだか。

 異常事態にヒスってるにしても、この辺りのやりとりはどうにも好きにはなれない。

 

 そんなことを考えながらも、目の前では原作で見た様な展開が進む。 

 ストライクから降りた学生達が集まり、不平不満を言いながらも順に氏名を述べていく。

 

 実に不思議な感覚だ。

 オレはどうしてここに居るんだろ?

 

「あなたの番です!」

 

 オレの番が回ってきたようで、ラミアス大尉が敵意剥き出しの視線をむけている。

 

 一体、オレが何をした?

 一般人に向けて威嚇射撃を行う、あんたの蛮行を止めただけだぞ。

 

 まぁ、いい。

 ハッキリしたし名乗るとしよう。

 

「オレはビーチャ、ビーチャ・オーレグだ」

 

 

 

 

 

 

 

 さて、何故だかラミアス大尉に嫌われたが、大天使(アークエンジェル)に搭乗する流れに紛れたからには、のんびりしている暇はない。

 この辺りには破壊を免れた戦闘物資が数多くあり、集めれば集めるほど今後の展開が有利に運ぶに違いない。

 

「5番はここで良いですかー?」

 

「7番はこっちか?」

 

「あ、ありがとう……って、どうしてあなたが普通に運転しているの?」

 

「いや、物資がある方が良いし、オレってなんかこういう火事場泥棒的なのが好きなんだよな」

 

「火事場泥棒ではありませんっ! ここにあるのは私たち連合の資産です!」

 

「あー、はいはい。

 下らないことに拘るんだから……これだから大人ってやつは」

 

 オレの言葉尻を捕まえて、ラミアス大尉が目くじらを立てている。

 どうやら、元のビーチャに影響されているのかいないのか、オレも勝手な大人に反発を抱く性分らしい。

 

 

――ドゴンッッ

 

 

 何度目になるのか分からない爆音が響き、大地に衝撃が走る。

 

 音がした方に目を向けると、コロニーの外壁に穴が開いた様でそこから3つの機影が現れた。

 

「あ、あれはバスター!?

 一体誰が乗ってるの? キラ君、通信をっ!」

 

 さすがに開発者のラミアス大尉。

 遠目でも機影の正体を看破する。

 

 ん? あれに乗るのはジュドーか。

 ってことは、今まで宇宙空間で戦ってたのか?

 

 というか、すげぇな。

 一体何をどうやったらバスターを盗めるんだ?

 さすがジュドー、モビルスーツを盗ませたら天下一品だ。

 

 上空で追い回されるバスターを見上げながらオレはそんな事を考えていた。

 どうやら、武器弾薬が尽きているらしい。

 

 まぁ、ジュドーなら大丈夫だろ。

 

 それから、コロニーに穴を空けて出現した大天使(アークエンジェル)とエールストライクに換装したキラ・ヤマトの活躍で、変態仮面(推定)を追い払うことに成功したオレ達は、合流を果たすのだった。

 

 

 

 

 

 カタパルトに降り立ったバスター。

 屈むような姿勢を取ったバスターガンダムからジュドーが降りてきた。

 

「ジュドーっ!」

 

 ラミアス大尉が詰問する前にジュドーに駆け寄り抱き付いたオレは、勢いそのままに押し倒す。

 

「落ち着いて聞けよっ。ここはオレ達の世界じゃない。ここで生きた記憶がお前にあるかっ?」

 

「ない……」

 

 モビルスーツの性能や規格が違いすぎていたのだろうか、ここが違う世界だとジュドーも認識しているようだ。

 

 これなら話が早く済みそうだ。

 

「オレもだ。でも、こんなものを持っていた。お前はあるか!?」

 

「学生証っ!? 

 どうなってんのっ!?」

 

 それはオレが聞きたい。

 

「良いかっ。お前はこれから詰問されるっ。違う世界の住人と言うより、ここヘリオポリスの只の学生! とりあえずそれで通せ。それからの事はそれからだっ」

 

「あ、あぁ……」

 

 ジュドーが神妙に頷く。

 勢い任せでなんとかなる状況にない、と正しく認識してくれたようだ。

 

「ジュドー・アーシタ君ね? あなたのお蔭で助かった事は認めます。でも、そのモビルスーツは軍の重要機密なの。あなたの身柄は軍で預からせて頂きます」

 

 何故だかどこか偉そうなラミアス大尉。

 

 かなりの反発を抱くも、オレは黙って頷いた。

 

 こうしてオレ達は見知らぬ世界でで戦争に巻き込まれていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「って、夢を見た」

 

「はぁ? なに言ってんのよ!?

 そんな事を言ってジュドーがホントに帰ってこなかったらどうすんのよ!」

 

 オレは今、ネェル・アーガマの艦長席でエル・ビアンノに頬をつねられていた。

 

 って、夢から覚めてもまだこれかよぉぉ!?

 

 

「イテテッ、

 ホントにかんべんしてくれよ!」

 

 

 オレは力の限り叫ぶのだった。

 

 

 

 




エイプリルフールの一発ネタ。
タイトルでオチがつくという。

細かいことは何も考えてません。





オレ/ビーチャ・オーレグ

レベル99→レベル1
(転移により再成長)

射撃 B+
格闘 B
回避 A
防御 C
技量 B

ニュータイプL3
指揮官L1
悪運
シャングリラ魂
異邦人
空間把握能力L5

友情
ド根性
ひらめき
解析

(使用トリガーがないため使えない)


ジュドー・アーシタ

レベル70→レベル1
(転移により再成長)

射撃 S
格闘 S
回避 SS
防御 B+
技量 A+

ニュータイプL9→真正ニュータイプ
強運
異邦人
シャングリラ魂
空間把握能力L8

直感
熱血
幸運
覚醒

(使用トリガーがないため使えない)

参考データ

変態仮面/??・?・??ー?

レベル27

射撃 B
格闘 C
回避 B+
防御 C-
技量 B



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