遊戯王ARC-V Rーe:birth   作:深海の破壊大帝

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異次元の王と虹彩の竜

 いきなり、観戦室に入ってきた銀髪に赤縁メガネの青年

 パーカーを着ていて例の針金マフラーはしていないが、日美香理事長の事を母様と呼んでいたことから、彼が『赤馬 零児』で間違いないだろう

 

「すまないが、私ともう一戦してもらえないだろうか?」

 

「いきなり入ってきて、随分な言い草だな?

 レオ・コーポレーションの若社長さん」

 

「ほう、私の事を知っているのか。」

 

「いろいろ有名だからね、あんたは

 ジュニア、ジュニアユース、ユースの3クラスの全てで優勝して、最年少でプロデュエリストになって、その年で社長までやっているんだ

 耳に入らない訳がないさ」

 

「それは光栄だと受け取っておこう、それで私の相手なのだが」

 

「は~い、僕やりた~い!」

 

 素良が元気よく挙手するが、赤馬零児は首を振って俺を目で射抜く

 

「すまないが、私は君とデュエルがしたい、榊遊矢」

 

「ほ~う、俺と?」

 

「そうだ、先ほどの君のデュエルは見させてもらった。

 君のデュエルの腕はそこらに居るプロデュエリストなど、歯牙にもかけないだろう

 君はさっきのデュエル程度では物足りないんじゃないか?」

 

 程度呼ばわりされた北斗が隅っこで白くなって体育座りを始めるが、確かにさっきのデュエルでは物足りないと思っていたところだ、ちょうどいい

 

「いいぜ、その話乗ってやろう。」

 

「感謝する。

 アクションフィールドもそちらが決めて構わない。」

 

「アクションフィールドは修造さんが勝手に決めるから、ランダムの様な物さ

 互いに全力が出し合えるような、いいデュエルにしようじゃないか」

 

「あなた、うちの零児さんがどれほど強いのか、知らないのかしら?

 全力の零児さんにかかれば、あなただって・・・」

 

「やめてください、母様、私とて彼の全力が見たいのです。

 こちらもそれに応えなければ失礼になります。」

 

「うぅ・・・わかったわ、零児さん、頑張ってね。」

 

「はい、母様」

 

 親子仲のよろしいことで、互いに父親に苦労させられているな

 まぁ、同情はするが容赦はしない


『おぉ~本物の赤馬零児だ、初めて見た。

 さぁて、これで最後みたいだからな、2人共今日の〆に相応しい、いいデュエルを見せてくれよー!

 アクションフィールドオン!フィールド魔法、アスレチック・サーカス発動!』

 

 遊矢と零児、2人の周囲に光が満ち

 空中ブランコや回し車などが設置され、無数の玉の様な物が宙に浮いたサーカス小屋に変わる

 

「サーカスか・・・ここは君のホームではないのか?」

 

「そうでもないさ

 このフィールドの特徴としては、低い所にはアクションカードがスポーンしにくいって所か?

 まぁ、それぐらいしか知らないよ。」

 

「ほう・・・では、始めようか」

 

「あぁ」

 

「「『決闘』」」

 

「先攻は俺の様だな、ふん、はっ!!」

 

 遊矢はいきなり宙返りをすると、自分の後ろに有るトランポリンの上に着地

 落下の衝撃と体のばねを利用し、大きくジャンプし球形状の足場の上に着地する

 

「おっ?早速アクションカードだ

 速攻魔法、手札断殺発動、互いのプレイヤーはカードを2枚捨て、2枚ドローする。

 俺はアクションカードを含めた2枚のカードを捨てて2枚ドロー」

 

「こちらも手札を2枚捨て2枚ドロー」

 

EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを召喚」

 

ドクロバット・ジョーカー「ははっ!」

            ATK1800

 

 髑髏の描かれた帽子を被る黒いマジシャンが笑う、戦いの始まりだと

 

「召喚に成功したことにより、デッキからEM(エンタメイト)モンスター、魔術師ペンデュラムモンスター、オッドアイズモンスターの内1体を手札に加える。

 俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に

 

 そして魔法カード、ペンデュラム・コールを発動

 手札を1枚捨て、デッキから同名以外の魔術師ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。

 俺はデッキから慧眼の魔術師と相克の魔術師を手札へ

 

 カードを1枚セットして、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティング

 そして、エンドフェイズ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのペンデュラム効果発動

 このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターを手札に加える。

 俺は攻撃力100のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ユニコーンを手札に加え、ターンエンドだ。」

 

 静かに1ターンを終えた遊矢に対し、観戦室ではその静かな始まりに不気味さを抱いていた

 

「な、なんだか僕の時とは違い、静かじゃないか?」

 

「そうね・・・」

 

「なんだか不気味だな・・・」

 

「ペンデュラム召喚も出来たのにモンスター1体に伏せ1枚」

 

「墓地に置かれたカードに何か意味があるのか?」

 

「分からないわね・・・」

 

「その程度で、私の本気を受けるつもりなのか?」

 

「あぁ、これで十分だ」

 

「ふっ、私も嘗められたものだな。

 せいぜいこのターンで潰れないことだ!私のターン、ドロー

 私はマジックカード、おろかな埋葬を発動しデッキからモンスターカードを1枚、DDリリスを墓地へ送る。

 さらに永続魔法、地獄門の契約書を発動

 このカードは自分のスタンバイフェイズ毎に1000ポイントのダメージを受ける。

 さらに1ターンに1度、デッキからDDと名の付くモンスターを手札に加えることが出来る

 私はDDナイト・ハウリングを手札に加える。」

 

「DD?聞いたことないカテゴリね?」

 

「ディファレント・ディメンション、異次元って意味だよ。」

 

「異次元・・・どういうデッキなのだ?」

 

「そして、私は手札のDDスワラル・スライムの効果により、このカードと手札のDDケルベロスで融合が可能となる。

 自在に形を変える神秘の渦よ、地獄の番犬を包み込み、今一つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!!

 生誕せよ!DDD烈火王テムジン!」

 

 不気味に蠢くスライムが三つ首の番犬と交じり合い、炎の様なオーラを纏う赤い剣と盾を持つ王へと生まれ変わる

 

烈火王テムジン「フンッ!」

       ATK2000

 

「いきなり融合か・・・」

 

「これで終わりではない!

 私はレベル3のチューナーモンスター、DDナイト・ハウリングを召喚

 このカードの召喚に成功した時、墓地のDDモンスター、DDリリスを攻守0にして特殊召喚する。」

 

 零児のフィールドに牙だらけの大口が現れ、その中から花の様な印象を受ける女悪魔が這い出てくる

 

 DDナイト・ハウリング ATK300

 DDリリス       DEF2100→0

            ATK100→0

 

「私はレベル4のDDリリスにレベル3のDDナイト・ハウリングをチューニング!

 闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!

 生誕せよ!DDD疾風王アレクサンダー!!」

 

疾風王アレクサンダー「ハッ!」

          ATK2500

 

 DDナイト・ハウリングとDDリリスの作り出した光を切り裂き、緑色のマントをたなびかせながら風纏う王が烈火の王と共に並び、王たちはさらなる王を呼び出す為に剣を掲げる

 

「烈火王テムジンの効果を発動、このカード以外のDDモンスターが特殊召喚された場合

 墓地のDDモンスターを1体特殊召喚する。

 蘇れ、DDケルベロス!」

 

DDケルベロス「グルル・・・」

       ATK1800

 

「そして、DDD疾風王アレクサンダーの効果を発動

 このカード以外のDDモンスターが召喚、特殊召喚された場合、自分の墓地のレベル4以下のDDモンスターを呼び戻す。

 戻れ、DDリリス!」

 

 DDリリス ATK2100

 

「DDリリスが特殊召喚されたことにより、その効果で墓地のDDモンスター、DDナイト・ハウリングを手札に加える。

 私はレベル4のDDリリスとDDケルベロスでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 この世の全てを統べるため、今、世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!

 生誕せよ!ランク4、DDD怒濤王シーザー!」

 

怒濤王シーザー「ウオオオォォォォ!!」

       ATK2400

 

 大剣を空へと掲げ、青く重厚な鎧を煌めかせる王、怒濤王シーザー

 その様を見ていた観戦室の面々も驚愕する

 

「なんか・・・全然違う、もしかして本物?」

 

「遊矢以外に3つの召喚法をこれほどまでに使いこなすとは・・・」

 

「そうよ、零児さんの実力よ」

 

「これで終わりではない!

 墓地のDDネクロ・スライムの効果を発動

 墓地のこのカードと融合素材モンスターを除外しDDDモンスターを融合召喚する。

 私は墓地のDDネクロ・スライムとDDゴーストを融合

 冥府に蠢く物よ、満たされぬ魂にその身を与え、真の王として生まれ変わらん!融合召喚!

 いでよ!神の威光伝えし王!DDD神託王ダルク!」

 

神託王ダルク「ハアアァァァァァ!フンッ!!」

      ATK2800

 

 大きな翼を翻し、悪魔へと堕ちた聖乙女が王となって降臨した

 零児のフィールドのモンスターの総攻撃力は9000を超え、攻撃力1800のドクロバット・ジョーカーだけではとても耐えられるものではないが、遊矢の表情は崩れることなく飄々としていた

 

「ほ~う、こんなに王様がいっぱいいると壮観だね。」

 

「そうだろう

 DDDとはすなわち、ディファレント・ディメンション・デーモン

 異次元をも征する王の力、たっぷり味わうがいい!バトル!!

 烈火王テムジンでドクロバット・ジョーカーに攻撃」

 

 烈火王テムジンの攻撃によって、ドクロバット・ジョーカーは切り裂かれ、その風圧によって球体の上に居た遊矢はその下の回し車の上に落下する

 

「いやまったく、危ないじゃないか」

 LP4000→3800

 

「そんなことを言っていられるのも今の内だ!

 行け!怒濤王シーザー!ダイレクトアタックだ!」

 

怒濤王シーザー「ウオオオォォォ!!」

 

 大剣を構え迫るシーザーだが、遊矢は回し車を器用に回し安定させながら、何の気後れもなくカードを発動させる

 

「そうはさせない

 永続トラップ、EM(エンタメイト)ピンチヘルパー

 1ターンに1度、相手のダイレクトアタックを無効にし、EM(エンタメイト)モンスターを効果を無効にし特殊召喚する。

 来い、EM(エンタメイト)マンモスプラッシュ!」

 

マンモスプラッシュ「パオオォォ!!」

         DEF2300

 

 シーザーの前に薄紫の毛長のマンモスが現れ、噴出した水で怒濤の王を返り討ちにする

 

怒濤王シーザー「グオオォォォ!?グゥ・・・」

 

(攻撃が止められたか・・・あのモンスターの効果、そして、彼の手には不明なカードが1枚・・・ここは)

「私はバトルを終了し、カードを2枚伏せターンを終了する。」

 

「おやぁ~攻撃してこないのかい?まぁ、いいか

 俺のターン、ドロー

 俺はスケール5の慧眼の魔術師とスケール3の相克の魔術師をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 遊矢のフィールドの両端に立ち上る光の柱

 その中にはフードを被り、その眼を仮面で覆った魔術師と不思議な装飾をされた大盾を構える魔術師が鎮座している

 

「これでレベル4のモンスターが同時召喚可能となったか・・・」

 

「おいおい、そう急かすなよ

 慧眼の魔術師のペンデュラム効果発動

 もう片方の自分のペンデュラムゾーンに魔術師またはEM(エンタメイト)カードがある場合、このカードを破壊し、デッキから慧眼の魔術師以外の魔術師ペンデュラムモンスターを置く

 俺はスケール8の時読みの魔術師をペンデュラムスケールにセッティングする。」

 

 慧眼の魔術師が消え、代わりに現れる時を見つめる黒装束の魔術師

 その下にある数字の様な紋様も5から8へ変化する

 

「これで、俺のエクストラデッキには表側表示のペンデュラムモンスターが3枚、よってこのカードが発動できる。

 魔法カード、ペンデュラム・ホルト

 このカードの発動後、このターン、俺はこれ以降デッキからカードを手札に加えることが出来なくなる代わりにデッキから2枚ドローする。

 そして儀式魔法、オッドアイズ・アドベントを発動!」

 

「儀式だと!?」

 

「俺の手札、フィールドのペンデュラムモンスターを儀式モンスターのレベル以上になるようにリリースし墓地か手札からドラゴン族儀式モンスターを儀式召喚する

 俺はレベル6のEM(エンタメイト)マンモスプラッシュと手札のレベル1のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ユニコーンを儀式の供物として捧げ、墓地に封じられた竜を呼び覚ます。

 さぁ、地の底に眠りし竜よ、その2色の眼に星をも統べる力を宿せ!!」

 

 サーカスのステージの地面が隆起し、地を割りながら黒き影がその巨体に見合わず浮かび上がってくる

 

「儀式召喚!大地の力宿る戒めの竜、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン!!」

 

オッドアイズG「ギャオオオォォォォォォォ!!」

       ATK2800

 

 その黒い影、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンは周囲に一緒に浮かんだ破片を打ち払う様に咆哮する

 金、橙、黒で彩られたその竜は零児すらも威圧されるほどのプレッシャーを放つ

 

「まさか、君が儀式まで使うとは・・・」

 

「驚いてくれてなによりだよ

 さて、そっちが1ターンに3つの召喚法でモンスターを呼びだしたんなら、俺は5つの召喚法で迎え撃とうじゃないか。」

 

「5つだと・・・!?」

 

「まずは、グラビティ・ドラゴンの効果だ

 このカードの特殊召喚時、相手フィールドの全ての魔法、トラップカードを手札に戻す

 この効果の発動に対して、相手はカード効果を発動できない。」

 

「何!?」

 

「ライズ・グラビテーション!」

 

 零児のフィールドの伏せカードと契約書が反重力に晒され浮かび上がり、零児の手元に戻ってゆく

 

「くっ!?」

 

「そして墓地の貴竜の魔術師の効果発動

 オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンのレベルを3つ下げて、このカードを墓地から特殊召喚する

 来い、チューナーモンスター、貴竜の魔術師!」

 

貴竜の魔術師「はっ!」

      DEF1400

 

 グラビティ・ドラゴンの上に現れる白い導師服の少女、その手に持つ杖の紅い宝石がらんらんと輝く

 

「レベル4となったグラビティ・ドラゴンにレベル3の貴竜の魔術師をチューニング

 2色の眼に写る七つの星よ、流星となって降り注げ!」

 

 貴竜の魔術師の作り出した輪の中に大地の竜が飛びこみ天へと昇っていく

 眩き極光と共に転生した竜は炎を纏いて流星となりフィールドに降臨する

 

「シンクロ召喚!星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!」

 

オッドアイズM「ギャアアァァァァァァ!!」

       ATK2500

 

「メテオバースト・ドラゴンの効果発動

 このモンスターが特殊召喚された時、ペンデュラムゾーンのモンスター1体を特殊召喚できる。

 俺はレベル7の相克の魔術師を特殊召喚」

 

相克の魔術師「ふん!」

      ATK2500

 

「これでレベル7が2体・・・」

 

「その通り、俺はレベル7のオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンと相克の魔術師でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 六道八獄踏み越えて、絶対なる力、2色の眼に焼き付けろ!」

 

 大地が割れ、流星の炎に焼かれたサーカス小屋が今度は強烈な冷気に包まれる

 混沌の渦から、氷の様に美しくも吹雪よりも過激な魔竜が姿を現した

 

「エクシーズ召喚!全てを凍てつかせる永久の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!」

 

オッドアイズA「ガアアァァァァァ!!」

       ATK2800

 

「そして、お待ちかねのペンデュラム召喚だ

 俺は手札からスケール1の星読みの魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング!

 これでスケールは1と8となり、レベル2から7のモンスターを同時に召喚できるようになった。」

 

 ここに再び、主のもとに始まりを告げた2人の魔術師がそろった

 魔術師たちの間で揺れる振り子はその速度を速め、天空に光のアークを描き出す

 

「揺れろペンデュラム、異界へ繋がる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 現れろ!レベル4慧眼の魔術師、EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー、レベル6EM(エンタメイト)マンモスプラッシュ、そしてレベル7、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

オッドアイズP「ギャオオオォォォン!!」

       ATK2500

 

 慧眼の魔術師       DEF1500

 ドクロバット・ジョーカー DEF100

 マンモスプラッシュ    DEF2300

 

「マンモスプラッシュの効果発動

 デュエル中に1度だけ、ドラゴン族融合モンスターを融合召喚できる。

 俺はペンデュラムモンスターであるマンモスプラッシュとオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを融合

 疾風迅雷、その2色の眼に写る歯向かう者を平伏させよ!」

 

 オッドアイズの赤い装甲が雷を帯びて緑と白を基調とした機械的な物へと変化する

 未熟な翼のような突起も4つのスタビライザーの様な物になり、凍てついた世界に紫電を迸らせる

 

「融合召喚!雷の力帯びし竜、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!」

 

オッドアイズV「グオオォォォォ!!」

       ATK2500

 

「よもや、これほどとは・・・」

 

 驚愕に目を見開く零児、観戦室でも前代未聞の5召喚連続使用に空いた口が塞がらなくなっていた

 

「そんな・・・馬鹿な・・・」

 

「融合、エクシーズ、シンクロ、ペンデュラムに儀式まで・・・」

 

「本当に5召喚やりやがった!?」

 

「むちゃくちゃね・・・」

 

「ひ、ひぇ~」

 

「遊矢、すごい・・・」

 

「うむ、それでこそ俺が越えるべき頂に立つ男よ!」

 

「ボルテックス・ドラゴンの効果発動

 特殊召喚時、相手の攻撃表示モンスター1体を手札に戻す

 まずは厄介な、そいつには退場願おうか!」

 

 遊矢が指差した先に居るのはシーザー

 ボルテックス・ドラゴンはシーザーに向かって電気を帯びて突撃、シーザーは感電で苦しみながら消えて行った

 

怒濤王シーザー「グオォォァアァァァァ・・・・」

 

「く!?」

 

(シーザーの効果を使わせなかった、直感で避けたのか?さすがだな)

「まだ終わりじゃないぞ

 俺はレベル4の慧眼の魔術師とドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 来い、鳥銃士カステル!」

 

カステル「クワアアァァァ!」

    ATK2000 ORU2

 

 遊矢が召喚したのはテンガロンハットを被り、猟銃を構えた鳥人

 カステルは自身の周囲に飛ぶオーバーレイユニットを即座に2つ猟銃に装填する

 

「カステルの効果発動

 オーバーレイユニットを2つ取り除き、このカード以外のフィールドの表側表示カードを1枚選択し、持ち主のデッキに戻す。

 神託王ダルクにも消えてもらおうか」

 

 カステル ORU2→0

 

神託王ダルク「グワアアァァァ!」

 

 カステルの放った風の弾丸が神託王ダルクを零児のデッキに吹き飛ばす

 あまりもあっさりと処理されてしまった異次元の王たち、だが零児には驚く暇すら与えられない

 

「バトル、カステルで烈火王テムジンを攻撃」

 

(攻撃力が同じモンスターで攻撃、相打ち狙いか・・・いや)

 

 零児は跳ぶ、次々と異常とも思える身体能力を発揮し球形の足場を飛び跳ね、あっという間に空中ブランコの乗り台にまで辿りつくとそこに存在していたアクションカードを発動させる

 

「アクションマジック、ハイ・ダイブ!

 このターン中、私のモンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

「おっと、そんなことしなくても攻撃は中止だ。

 ついでに攻撃力アップも消すとしよう

 ボルテックス・ドラゴンとアブソリュート・ドラゴンの効果を発動

 まずはボルテックスの効果で俺のエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターを1体デッキに戻し、このカード以外のカード効果の発動を無効にし破壊する

 俺はマンモスプラッシュをデッキに戻し、ハイ・ダイブを無効にする!パラライズ・シャウト!!」

 

 ボルテックス・ドラゴンは翼を展開し電気エネルギーを増幅、光弾として撃ちだし、零児の発動させたハイ・ダイブを焼き消した

 

「何!?」

 

「さらにアブソリュートの効果でオーバーレイユニットを1つ使い、カステルの攻撃を無効にする。」

 

 オッドアイズA ORU2→1

 

 銃を構えるカステル、そしてそれを迎撃しようとする烈火王テムジン

 だがその両者の間に巨大な氷塊が出現、突如現れた氷塊にテムジンは炎を纏う剣でそれを破壊しようとするが、その剣が当たる前に氷塊が割れ、中から2色の眼の黒竜が姿を現す

 

オッドアイズG「グルルオオオォォォォォ!!」

       ATK2800

 

「アブソリュート・ドラゴンが攻撃を止めた後、墓地か手札のオッドアイズモンスターを特殊召喚出来る

 俺はこの効果でオッドアイズ・グラビティ・ドラゴンを呼び戻した。」

 

「なんだと!?」

 

「さぁ、堪えきれるかな~?

 ボルテックス・ドラゴンで烈火王テムジンを攻撃、迅雷のボルテックス・シュート!!」

 

 先程よりも強力になった電気エネルギーはプラズマ化し、光線となって烈火王テムジンを撃ち抜く

 瞬く間に光の中に消えたテムジンは叫び声をあげる事すら敵わず、消滅した

 

「ぐおぉぉぉ!!」

 LP4000→3500

 

 ボルテックス・ドラゴンの凄まじい一撃の余波を受けた零児は、吹き飛ばされるがその先でアクションカードを発見する

 

「アブソリュート・ドラゴンで疾風王アレクサンダーを攻撃!永結のアブソリュート・ゼロ!!」

 

 放たれようとしている絶対零度のブレス、まともに食らえばアレクサンダーは粉々にされるであろう

 

「くっ!私はアクションマジックをはつ―!?」

 

 いきなり零児の体を襲う異常、とてつもなくカードが重くなり、あわや落としそうになる。何とか踏みとどまるが、異常は全身に及び、立ってるのもやっとの状態だ

 

(なんだ!?体が異常に重い、まるでいきなり何かに押さえつけられたような・・・

 押さえつける、加圧、重力!?)

 

 聡明な零児の頭がこの異常現象の原因を突き止める

 そう、グラビティ・ドラゴンである

 

「おっと、アクションカードを使いたいんだったら使用料を払ってもらおう

 グラビティ・ドラゴンがモンスターゾーンに存在する限り、相手がカード効果を発動する為には500ポイントのコストが発生する。」

 

「な、に・・・!?くっ!

 私はライフ500を払い、アクションマジック、回避を発動

 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの攻撃を無効にする!」

 LP3500→3000

 

 放たれるアブソリュート・ドラゴンの攻撃

 それを疾風王アレクサンダーは自身の剣を犠牲にして零児を守り切る

 だが、剣を失った疾風王をすでに大地の竜は捉えていた

 

「追撃だ、グラビティ・ドラゴンで疾風王アレクサンダーに攻撃!超重のグラビティ・ハリケーン!!」

 

 疾風の王は残された風の力で守ろうとするが、重力波の嵐の前では風は役に立たずひしゃげ潰され破壊された

 

「ぐうぅぅ・・・」

 LP3000→2700

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ。」

 

 苛烈に攻め立てた後で、静かにエンド宣言する遊矢、3体の竜を従え佇む姿に零児は悪魔の幻覚を見た

 だが、冷静さを取り戻すと疑問が湧いてきた

 なぜ、これほどの力を彼が持つのかと

 

「予想以上だ・・・君のやることなすこと、全て私の想像を超えている。

 だが、君はどこでこれほどの力を手に入れた?

 君のお父上も柊修造もエクストラを使った召喚法も儀式も使っていなかったはずだ。」

 

「独学と言っておこうか

 別に難しい話じゃないだろ?ルールブックにやり方の説明は載っているんだし

 後はカードさえあれば、誰にだってできるさ」

 

「ふっ、確かにそうだな

 折角だ、もう一つの疑問も解消しておこう

 君はお父上の事をどう思っている?」

 

「・・・何故そんなことを聞く」

 

「私は彼の事を現在のアクションデュエルの隆盛を築き上げたパイオニアとして、心から尊敬している。

 だが、君のデュエルスタイルは彼とまるで真逆、容赦の一欠片も感じられない」

 

「へぇ~若いのに父さんの事をそこまで良く言う他人にあったのは初めてだよ。

 まぁ、たしかにアクションデュエルを流行らせたという点じゃ尊敬できるかもね。

 父親として、デュエリストとしては尊敬できないけど」

 

「!?なぜだ、彼は素晴らしいデュエリストだった!

 周りがアクションデュエルの腕を磨く中で、自分も負けじと腕を磨き続け、それが今のアクションデュエルの隆盛へと繋がった!」

 

「腕を磨くなんて、デュエリストとして当たり前の事だろ?

 それに父さんのデュエルスタイルはマジックショーじみたものだったからね。

 真剣に向き合っている相手からしたら、ショーのダシに使われたように感じて、たまったものじゃないだろうさ」

 

「だが、彼のエンターテインメント・デュエルは大勢の人々を楽しませていた!」

 

「あれは『楽しんでいる』んじゃない、『面白がっている』っていうんだ

 それにデュエリストとして、観客優先で相手を蔑ろにして、何処に尊敬できる要素があるんだ?

 父親としてもそうさ

 手紙一枚置いてハイさよなら、な~んてどうよく思えばいい?」

 

 おどけた調子で答える遊矢、だがその言葉には静かな怒りと侮蔑が零児には読み取れた

 

「それに、その点じゃ俺たちは似た者同士じゃないのか~?」

 

「なに?」

 

「数年前、大々的にニュースになっていたよな

 レオ・コーポレーション社長『赤馬 零王』謎の失踪って」

 

「っ!?黙れ!!」

 

 その名が出たとき、零児の感情が爆発した

 彼にとってその名は母を悲しませ、世界を狙う憎むべき敵の名なのだから

 

「はは、怖い怖い

 さぁ、こんな湿気た話はやめにして、デュエル再開と行こうじゃないか

 お前のターンだ、父さんの事を尊敬しているんなら、ここからどう俺を楽しませてくれるんだ?」

 

「くっ!私のターン、ドロー!

 私はライフを500払い、マジックカード、手札抹殺を発動

 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数だけデッキからカードをドローする

 私はアクションカードを含めたカード6枚を捨て6枚ドロー!」

 LP2700→2200

 

 アレクサンダーの攻撃時、密かに持っていたアクションカードを零児はここで活用する

 だがそれは遊矢も同じことで、彼は自分の足場の回し車を調整しアクションカードを手にする

 

「俺もアクションカードを含めたカード2枚を捨て、2枚ドローする。」

 

「5つの召喚法を使う君に応えて、私も新たな力を使うとしよう

 私はスケール1のDD魔導賢者ガリレイとスケール10のDD魔導賢者ケプラーで、ペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 零児のフィールドに現れる2本の光の柱

 その中には天体望遠鏡の様なモンスターと天球儀の様なモンスターが浮かび上がる

 

「来たか・・・

 だが、ペンデュラムカードの設置もカード効果の発動とみなされる

 よって、お前には合計1000ポイントのライフを支払ってもらおうか」

 

「ぐっ・・・」

 LP2200→1700→1200

 

「これで、後使える効果は2回だ

 効果を繋げて戦うタイプのそのデッキで、堪え切れるかな~?」

 

「ならば、その2回でグラビティ・ドラゴンを無力化すればいいだけの事!

 我が魂を揺らす大いなる力よ、この身に宿りて、闇を切り裂く新たな光となれ!」

 

 けたたましい機械音を上げながら2つの装置が潤動する

 天には無数の線が描かれ、異界への新たな門が開かれる

 

「ペンデュラム召喚!出現せよ、私のモンスター達よ!」

 

 異界の門を潜り抜けて降臨するのは2体の巨大なクリスタルで出来たペンデュラムの様なモンスターと威風堂々と赤いマントをたなびかせた偉大なる王の一人

 

「レベル7DDD制覇王カイゼル!

 地獄の重鎮たる王をも超えた2体の超越神!DDD死偉王ヘル・アーマゲドン!!」

 

 制覇王カイゼル      ATK2800

 死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000

 死偉王ヘル・アーマゲドン ATK3000

 

 突如として使われた遊矢だけしか使っていなかったペンデュラム召喚を零児が使用したことで、この場の全員の目が見開かれる

 だが、遊矢だけは心底嬉しそうに笑いそれを迎え撃とうとする

 

「はははっ!そうだ、そう来なくちゃな!!

 だったらそれを俺は全力で迎え撃とう!カウンタートラップはつど――」

 

――ビイイィィィィ!!

 

「なに!?」

 

「緊急停止のブザー!?」

 

 鳴り響くブザー、アクションフィールドが解除され、零児のディスクに彼の部下、中島からの通信が入る

 

「なに、マルコが?」

 

 零児は苦虫を噛み潰したような表情をし、遊矢を一瞥すると背を向け早足で歩き始める

 

「この勝負・・・預ける。」


 夜の闇に消えていくリムジンのテールライトを眺めながら、俺は遊勝塾の屋上で零児の手を考える

 

(カイゼルにはペンデュラム召喚された時、俺のフィールドの表側表示カードの効果を無力化する効果があったな

 それはボルテックス・ドラゴンの効果で止めるとして、次に死偉王2体でカリ・ユガを出して、完全に無力化する算段か・・・)

 

 そして、彼の墓地のカードのことも考え、俺のライフをあのまま消し飛ばすようなコンボを予測する

 

(手札抹殺でヴァイス・テュポーンが墓地に送られていたな

 となると、テュポーンの効果でエグゼクティブ・テムジンを出してネクロ・スライムの効果でダルクを再び融合

 テムジンの効果でナイト・ハウリングを呼び出して、エグゼクティブ・アレクサンダーを出せば、攻撃力6000、3500、2800のモンスターが並ぶ

 手札が1枚残っていたが、あれは予備として取っていた3体目の死偉王かな?

 スワラル・スライムの効果で特殊召喚すれば、さらに3000か)

 

 エクゼクティブ・テムジンの効果も考えれば、アクションカード対策もされた盤面だ

 よくもまぁ、ドローしたカードでひっくり返すコンボを思いついたもんだ

 できていればの話だがな

 

「今回は勝たせてもらったぜ?

 次はもっと楽しいデュエルをしようじゃないか、赤馬零児・・・」

 

 俺は最後に発動させようとした、カードを月に掲げた


「残念だったわね、零児さん

 あと少しで、榊遊矢を倒せていたというのに・・・」

 

 レオ・コーポレーションに向かうリムジンの中、日美香は零児の盤面からこのターンで遊矢を倒せていたと残念がるが零児は違った

 

「いえ、あのデュエル、私の負けです、母様」

 

「どうして!?零児さんのモンスターの効果は・・・」

 

「カイゼルの効果を無効にされ、カリ・ユガをエクシーズ召喚出来れば、確かに私にも勝機があったでしょう

 ですが、彼が最後に発動させようとしたあのカードは・・・」

 

 消え失せるソリッドビジョンの中、彼の脳裏に焼き付いた遊矢の最後の1枚、それは

 

「神の宣告

 ライフを半分払い、マジック、トラップの発動、またはモンスターの召喚、反転召喚、特殊召喚を無効にし破壊するカード」

 

「なっ!?それでは・・・」

 

「はい、私のペンデュラム召喚は無効にされ、ボルテックス・ドラゴンの効果をすり抜け、手札に残したヘル・アーマゲドンをスワラル・スライムの効果で呼び出し攻撃しても、アブソリュート・ドラゴンの効果で攻撃を止められていたことでしょう。

 そうすれば、残りライフ200となった私が次のターン生き残れるとは思えません」

 

「そんな・・・零児さんが、負けた・・・」

 

 放心する日美香だったが、零児は自分が負けたことよりも気になっていることがあった

 

(なぜ彼は攻撃力が高い、ダルクやアレクサンダーではなくシーザーを最初に戻したのだ?

 公の場で、私がシーザーを使ったことはない

 彼がシーザーの効果を知ることはない筈なのに・・・)

 

 シーザーにはデッキから契約書を手札に加える効果が備わっている

 それを嫌ったと考えたら納得いく話ではあるが、遊矢はシーザーの効果を確認した様子がなかった

 それはつまり、初見のカードの効果を当てたということになる

 

(・・・いや、ただの偶然か・・・もしそうなら彼は)

 

 初めから自分のカードのことを知っていたことになるのだから

 ありもしない荒唐無稽な考えを捨てて、今直面している問題を零児は問う

 

「今はそれよりも、中島、マルコ襲撃事件の詳細を報告せよ。」

 

「はっ!発生しましたのは、舞網市内NLD38地区

 発生時刻は17時54分、かなり強い召喚反応を検知しました。」

 

「召喚方法は?」

 

「エクシーズです。」

 

「そうか、ならばまだ遠くには行っていないはずだ、何としても見つけ出せ!!」

 

「はっ!」

 

(そして榊遊矢、この借りはいつか必ず・・・)

 

 遊矢がそうであったように、零児もまた彼との再戦を夢想する

 

 これで序章は終わり、新たな1ページが捲られた

 その先の物語は、まだ誰にもわからない




LDS、ならば俺が相手だ!!

やめろ隼!!ここは俺たちの戦場じゃない!
彼らは俺たちの敵じゃないんだ!!

ここは俺の戦場だ!邪魔をするならユート、ここで貴様も倒す!

次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『鉄の意志と鋼の強さ』
もう俺は、だれにも傷ついてほしくないんだ!!

「CC」カード群の効果について

  • 制作したものをそのまま使用
  • 後付け効果を削除
  • メインに入るカードの後付け効果のみを削除
  • EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
  • 完全にアニメカードそのまま

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