遊戯王ARC-V Rーe:birth   作:深海の破壊大帝

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予想されている方もいましたね
にしてもこの犬どもルビを振るのがめんどくさい
(長すぎるとルビになってくれないのを初めて知りました)


器在らざる世界の王

「もう1時間経っちゃったわね・・・」

 

 アクションフィールド、ワンダー・カルテットが展開され、街の中が別世界みたいに変わった。

 エリアは火山、遺跡、ジャングル、そして今私の居る氷河エリア。

 体感システムの所為で滅茶苦茶寒いわ・・・上着持ってきたほうが良かったかなぁ~?本当は夏だけど。

 

「しっかし、全然見つからないわね。」

 

 ヒントもなしに街中に散らばったカード(といっても様変わりしているけど)を見つけるのはやっぱり難しいわね。

 アンティが出来るのは2枚からだし、1枚じゃあね・・・

 あぁ~あ、遊矢だったら何枚も見つけるんだろうなぁ~

 

「おい、見つけたか?」

 

「いや、ターゲットはまだ、発見できていないらしい。」

 

 人の声?でも遊矢達じゃなさそう

 あれ、今って、大会参加者以外は街に入れないんじゃ?

 氷の陰から声の主をこっそり見てみると、そこには変な仮面を被った人たちが話し合っていた。何あれ?

 

「4班が榊 遊矢と思わしき奴と交戦に入ったらしい!」

 

「何!?」

 

「ちっ、先を越されたか!」

 

 えっ!?遊矢!?

 

「我々も急ぐぞ!」

 

「「おう!!」」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!!」

 

「「「何者だ!!」」」

 

 いや、それ、こっちの台詞!!

 

「あなた達こそ何者よ!今ここは一般人は立ち入り禁止のはずよ!」

 

 どう見ても怪しいコスプレの一団、4班とか言っていたしほかにも仲間が居そうね。

 観察していると3人のうち一人が、驚いたように後ずさる。

 

「ん?セレナ様!?」

 

 セレナ?えっ、誰?

 

「セレナ?私は柚子よ。

 大会の関係者じゃなさそうね。遊矢に何をするつもり?」

 

「あぁ、資料に有った榊 遊矢の関係者か。」

 

「ならばちょうどいい、こいつを人質にしよう。」

 

 えっ!?人質?

 

「それはいい!

 そうすれば我らの勝利は揺るぎない!プロフェッサーもお喜びになるだろう!」

 

「おい女!大人しくアカデミアの為、いや世界の為に、我らに捕まれ!

 大人しくすれば、痛い目に遭わなくて済むぞ?」

 

 げらげらと下卑た嗤いをするコスプレ集団。

 ちょっと待って、こいつら今、アカデミアって言った!?

 

「あなた達、今、アカデミアって・・・」

 

「そう、我らは栄光あるアカデミアの戦士!」

 

「そして、その中でもプロフェッサーに選ばれた誇り高きエリート!」

 

「オベリスクフォースだ!」

 

 間違いない!こいつら、ユートの仲間を攫ったっていう奴らの仲間ね!

 でも、なんで遊矢を?

 

「あなた達、遊矢に何をするつもり?」

 

「奴は、世界を滅ぼす悪魔だとプロフェッサーは言っていた。」

 

「だから我らは正義の為、世界の為、奴を討伐しに来たのだ。」

 

「奴の首を持って帰れば、さぞプロフェッサーはお喜びになることだろう!」

 

 討伐!?それにく、首って、こいつら遊矢を攫いに来たんじゃなくて、殺しに来たの!?

 

「それを聞いて、あなた達を遊矢の所に向かわせるわけにはいかないわ!」

 

 大会中なら、どこかにカメラがあるはず、私がこいつらを足止めして、警備の人が来るまで時間を稼ぐ!

 そしたら、ユートの仲間の事も何か分るかもしれないし。

 

「ほう、我らとデュエルするつもりか?」

 

「痛い目に」

 

「遭いたいらしいな。」

 

 ちょ、ちょっと!?3人ともデュエルディスク起動させたわよ!?

 まさか、3対1のバトルロイヤル!?それはヤバいわよ!!

 

「柚子殿おおぉぉぉ!!」

 

――ボムッ!!

 

「うわっ!?」

 

「なんだ!?」

 

 辺り一面に煙が発生し、私は誰かに抱えられて、その場を離脱したみたい。

 この声は・・・

 

「月影さん!?」

 

「日影でござる。」

 

 あ、ハズレたか

 

「柚子殿、奴らと戦っては駄目でござる!危険でござるよ!」

 

 日影さんはあいつら、アカデミアの事を知っているの?だったら、

 

「ま、まって、あいつら、遊矢を狙っているみたいなの!」

 

「えっ!?」

(奴らの狙いは、柚子殿とセレナ嬢なのでは?)

 

「あいつら、遊矢の事を討伐だとか、首を取るとか言っていたの!

 ねぇお願い!私を遊矢の所に!!」

 

(奴らの狙いが、遊矢殿だとするなら、あの人数が遊矢殿に襲い掛かる・・・)

「とりあえず、月影と合流するでござる。」

 

「えっ!?ちょっと!?私は遊矢の所に」

 

「戦地に警護対象を連れて行くわけにはいかないでござる!!」

 

 警護対象ってどう言う事!?遊矢ー!!


「なぁ?いつまでついてくる気なんだ?」

 

「つれないなぁ遊矢は、僕は君と友達になりたいのに~」

 

「友達?」

 

「そう!デュエルをすれば、みんな友達さ!

 ねぇ~だから、早くデュエルしようよ!」

 

 白々しい、大方親父を馬鹿にしたから、懲らしめてエンタメデュエルの事を認めさせるとか、そういう発想なんだろうなぁ・・・

 バトルロイヤルが開始から1時間ほどだが、始まってからずっとデニスがくっ付いてきている。

 

「生憎とまだ、デュエルする気はないんでね。

 それより、2枚もうあるんだったら、他に持っている奴を探したほうがいいんじゃないか?」

 

「NO!僕の一戦目は君に決めているんだ。

 だから早く、2枚目を見つけてよ、僕も手伝うからさ!

 2人で最高のエンタメをしようよ!」

 

「だから、俺はエンタメには興味ねぇって・・・」

 

 今セットしているデッキでエンタメなんて到底無理だろうしな。阿鼻叫喚にはなると思うけど。

 さて、氷河エリアに行った柚子と並行する形で遺跡エリアの端、元が湾岸倉庫の所まで来たけど、素良の奴は現れるかな?

 黒咲とまったく接点がないから、アカデミアにいるかもしれないけど。

 

「見つけたぞ!!」

 

「ん?」

 

 声をのした方に振り向けば、何故か同じフォームで走ってくる怪しい仮面の3人組。

 見つけた?

 

「おや、何だい君たち?今は大会中だよ?」

 

「我らはオベリスクフォース!」

 

「栄光なるアカデミアの誇り高き戦士!」

 

「偉大なるプロフェッサーの命を受け、世界を滅ぼす悪魔、榊 遊矢を討伐しに来た!」

 

 なんでこいつら3人でしゃべってるんだ。

 しかし、俺を討伐ってどういう事?セレナを迎えに来たんじゃないのか?

 

「俺を討伐?何いってんの?

 それに、世界を滅ぼすなんて一介のデュエリストでしかない俺にできるはずないじゃん。

 そんなこと吹聴している、プロフェッサーとやらはよっぽど頭がイカれているようだ。」

 

「なんだと!偉大なるプロフェッサーを愚弄するか!!」

 

「我らが世界の救世主であるプロフェッサー零王を馬鹿にするなど!」

 

「万死に値する!!」

 

 いや、俺を討伐しに来たんだから、元々殺す気だろ。

 にしても、ちょっと煽っただけで情報をポロ出ししているが、軍人としてそれでいいのか?

 

「Wow、なんだかヤバそうな連中だね。

 遊矢、ここは僕も手伝うから、こいつらをとっとと倒してしまおう!」

 

 デニスが協力?ふむ。

 

「まぁ、いいだろう。」

 

『『『『『決闘(デュエル)!!』』』』』

 

 あぁ、やっぱり3人同時か。


「先攻は俺だ!俺はまず、手札から永続魔法、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動

 自分フィールドのアンティーク・ギアモンスターは召喚、特殊召喚されたターンには相手の効果対象にならず、破壊もされなくなる。

 さらにアンティーク・ギアカードの効果発動に対して、相手はマジック、トラップ、モンスター効果を発動できない。」

 

 へぇ~最初からそのカードを使ってくるか

 彼らが敗退した時、僕が遊矢に止めを刺そうかと思ったけど、必要なかったかな?

 

「さらに手札からマジックカード、融合派兵を発動

 エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を手札、デッキから特殊召喚する。

 俺は古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を公開し、デッキから古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を特殊召喚!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「グオオォン!」

       ATK1000

 

 僕たちアカデミアが誇る狩人の象徴、古代の機械猟犬!

 特殊召喚ゆえにバーン効果の発動は出来ないけど、

 

――ブウゥゥゥン!!

 

 ん?なんだ、虫の羽音みたいな、ヒッ!?

 

「融合派兵発動時に手札の増殖するGの効果を発動した。

 このターン、相手が特殊召喚を行うたびに俺はカードを1枚ドローする。

 ゆえに俺は1枚ドローだ。」

 

 カサカサと遊矢の周りを飛び交う黒い影。

 卒倒物の光景だけど、遊矢は平然と黒い影に取り巻かれている。

 

「ぬぅ!?しかたない、さらにマジックカード、融合徴兵を発動

 エクストラデッキの融合モンスターカード1枚を公開し、そこに書かれた融合素材モンスターを1体手札に加える。

 ただし、このカードの発動後、ターン終了時まで手札に加えたカードと同名のカードは通常召喚、特殊召喚出来ず、効果も発動できない。

 俺は再び古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を見せ、古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を手札に加える。

 そして、手札からマジックカード、融合発動!」

 

「融合発動時に手札の応戦するGの効果を発動

 相手がモンスターを特殊召喚する効果を含む魔法カードを発動した時、このカードを手札から特殊召喚する。」

 

 応戦するG DEF1400

 

 遊矢の周りを飛んでいた黒い影は2つに分離し、1つはモンスターとしてフィールドで羽音を響かせる。

 

「ちっ!俺はフィールドと手札の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)2体を融合!

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル5、古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「ギュオオォォォォン!」」

         ATK1400

 

 特殊召喚されたモンスターにカウンターを置き、カウンターが乗ったモンスターとアンティーク・ギアモンスターが戦闘を行った時、ダメージ計算前に問答無用で破壊する。

 呪われた魔犬が1ターン目で出たか。

 

――ブウゥゥゥン!!

 

「なっ!?なんだ!!?」

 

 前方に出た黒い影から3本の触手のように影が伸び、オベリスクフォースの墓地へ置かれようとしているカードへと喰らい付く

 なんだ!?

 

「あぁ、応戦するGの効果だ

 自身の効果で特殊召喚されているこいつがモンスターゾーンに存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へは行かず除外される。

 ついでに、増殖するGの効果は継続しているから1枚ドローだ。」

 

 オベリスクフォースの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)2枚と融合が応戦するGに喰い千切られる。

 なんて奴だ、僕たちアカデミアの戦士の象徴である融合を!

 

「キサマ!よくも俺の融合を!!」

 

「恨むんだったら、自分の不運を恨むんだな。」

 

「次は俺のターンだ!ドロー

 俺も永続魔法、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動し、手札から古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を召喚!」

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)「ワオォン!」

       ATK1000

 

「このモンスターの召喚に成功した時、相手プレイヤーに600ポイントのダメージを与える!」

 

「うおっ!」

 LP4000→3400

 

 ふふふ、やるじゃないか。

 僕が手助けして、彼から信頼を得た後、ボロボロの彼を僕が倒すって言うのが最高のシナリオだけど、この調子じゃ彼らに負けてしまいそうだね、遊矢?

 

「さらに俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動

 1ターンに1度、自分の手札、フィールドから融合素材モンスターを墓地へ送り、アンティーク・ギア融合モンスターを融合召喚する!」

 

「じゃあ、その効果にチェーンして手札から儚無みずきと増殖するGの効果発動

 このターン、相手が効果モンスターをメインフェイズ及びバトルフェイズに特殊召喚するたびに俺はその攻撃力分のライフを回復する。

 なお、応戦するGの効果でこの2枚は除外される。」

 

「ちっ!またか!!俺はフィールドの古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)と手札の古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を融合

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル5、古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「ギギャオオオォォォ!!」」

         ATK1400

 

「儚無みずきの効果でライフが1400回復、さらに増殖するGの効果で1枚ドロー。

 そして、お前が素材にしたカードたちはすべて除外される。」

 LP3400→4800

 

 花の花弁が舞い、黒い影が遊矢に手札を運び、そしてその影がオベリスクフォースの手札を貪る。

 

「ちっ!!永続魔法、古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)を発動、フィールドのアンティーク・ギアモンスターの攻撃力を300ポイントアップさせバトルだ!

 双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)で応戦するGに攻撃!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイトハウンドドック) ATK1400→1700

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)が黒い影の塊に圧し掛かり霧散させる。

 だがその陰は遊矢の手の下に集まり、1枚のカードとなる。これは!?

 

「・・・応戦するGの効果、こいつがフィールドから墓地へ送られたことでデッキから応戦するG以外の攻撃力1500以下の昆虫族、地属性モンスターを1枚手札に加える。

 この効果で俺は増殖するGを手札に加えた。」

 

 な、なんて抜け目のない・・・

 ライフの回復、手札増強、攻撃のいなし、相手の妨害、ターンが回ってないのにここまでやるなんて!?

 

「くっ!なら俺は融合派兵を発動!

 エクストラデッキの双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)を見せ、デッキから古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)を特殊召喚!」

 

 古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ) ATK1000→1300

 

「効果モンスターの特殊召喚により俺のライフが回復、そして、ドロー。」

 LP4800→6100

 

古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の効果発動

 フィールドの古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)の2体を融合

 古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル7、古代の機械(アンティーク・ギア・)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)「「「ワオオオオォォォォン!!」」」

         ATK1800→2100

 

「三度俺のライフが回復し、増殖するGの効果でドローだ。」

 LP6100→8200

 

「ちっ!カードを2枚伏せてターンエンド。後は頼むぞ。」

 

「おう!俺のターン、ドロー!

 俺はまず、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)を発動!

 さらに手札からマジックカード、精神操作を発動

 相手フィールド上のモンスター1体をこのターン、俺のコントロール下に置く。

 ただし、そのモンスターは攻撃できず、リリースもできない。

 古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)を俺のフィールドに移す。」

 

 へぇ、うまいね。

 そして古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)を自分のフィールドに呼んだということは

 

「そして、融合発動!

 手札の古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)とフィールドの古代の機械(アンティーク・ギア・)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)を融合する!」

 

「手札の増殖するGを捨て、効果を発動する。」

 

「古の魂受け継がれし、機械仕掛けの猟犬達よ!群れ成して交じり合い、新たなる力と共に生まれ変わらん!融合召喚!

 現れよ!レベル9、古代の機械(アンティーク・ギア・)究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)「「「グオオオオォォォォン!!」」」

         ATK2800→3100

 

 現れるのは三つの首に無数の蛇の尾、さらに胴に巨大な口が付いた機械でできた地獄の番犬。

 前の彼が発動させた古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)の効果でパワーアップもした。

 

「特殊召喚により、1枚ドローする。」

 

「ハッ!いまさら無駄なことだ!

 究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)が融合召喚に成功した時、相手のライフを半分にする!

 喰らえ榊 遊矢!ヘル・ハウンドフレイム!!」

 

――ゴポオオォォォォォォ!!

 

「ぐうああぁぁぁぁぁ!!」

 LP8200→4100

 

 遊矢が火炎に焼かれて、地面を転がる。

 ふふ、いい気味だ。

 

「大丈夫かい!遊矢!!

 そんな、リアルソリッドビジョンとはいえ、こんなダメージが!?」

 

「見たか!正義の鉄槌を!!」

 

 オベリスクフォースのその言葉に、立ち上がった遊矢は目に見えて機嫌を悪くする。

 

「はぁ?正義?

 じゃあ、俺がどうやって世界を滅ぼすか、知っているのか?」

 

「プロフェッサーが仰っていたのだ!貴様は世界を滅ぼす悪魔だと!」

 

 オベリスクフォースのその言葉に、遊矢は青筋を立てている。

 どういう事だ、いきなりこんな状況に置かれて、なぜ彼はこんなに冷静なんだ!?

 

「ほう、そのプロフェッサーがどんな奴だろうが、ろくでもない奴であることは確かなようだな。」

 

「何だとキサマ!!」

 

「プロフェッサーを愚弄するか!!」

 

「あぁ、俺の知り合いに仲間を攫われ、故郷を焼かれた奴がいるんだが、お前達はどう思う?」

 

「な、何だ突然。」

 

「それと、これと、何の」

 

『いいから答えろ。』

 

 遊矢の真紅の目がオベリスクフォースを捉えている。

 僕も彼らも、その有無を言わせぬ物言いに押し黙ってしまう。

 そして、オベリスクフォースの1人がその答えを口にする。

 

「か、可哀そうだと・・・思う。」

 

「へぇ~ちなみにそいつから聞かせてもらったんだが、それをやった奴らは『アカデミア』っていうらしいんだが、何か知らないか?」

 

 !?そんな、なんで彼がそのことを、いや、いるのか!?

 このスタンダードに、エクシーズ次元の住人が!?

 

「は、ハッ!

 なんだ、そいつはエクシーズの奴らの事か!

 だったら、なんてことはない!奴らは栄光なるアカデミアの礎となったのだ!」

 

「そうだ!我らが真なる目的、4つの世界を1つにするという目的のためにな!」

 

「だが、安心するがいい

 礎となった者たちは皆、アカデミアの下で一つとなった世界で再生する。

 真なる楽園で、再び生を得るのだ!それらが我らが目的、アークエリアプロジェクトなのだからな!」

 

 そうだ、そのために僕たちは戦っている。真なる平和の為に・・・

 

「へぇ~御大層なスローガンだな。

 で、4つの世界と言っていたが、この世界だけで人口が70億ほどいるんだが・・・280億人に膨れ上がった人口を賄う食料はあるのか?」

 

 えっ?

 

「えっ?」「何を。」「言って・・・」

 

「当然じゃないか、4つの世界の住人が一つの世界に集まるわけだろう?

 食料やエネルギーとか確保できなかったら、そのうち奪い合うに決まっているじゃないか。

 いや、それ以前にエクシーズの人たちがお前らと同じ箱庭に入れられて、心穏やかにいられるかな~?」

 

「そ、それは・・・」

 

「「・・・・・・」」

 

 彼らは沈黙してしまう。僕もそんなこと考えもしなかった。

 いや、考えないようにしていたのかもしれない。

 一つとなった後の世界のことなど・・・


 あぁ、なんて愚かな奴らなのだろうか。

 少し考えれば無茶なことだと、何故そう思わなかったのか。

 沈黙してしまったオベリスクフォースたちは意気消沈していたが、突然頭を押さえて苦しみだす

 

「うぅ・・・そうだ、プロフェッサーの言う事は正しいんだ・・・」

 

「俺たちの世界を救ってくれたあの人の下でなら、一つの世界も平和になる・・・」

 

「だから、滅びを呼ぶ悪魔を、榊 遊矢を倒す!!」

 

 抑揚のない声で、呟かれた言葉。

 脈絡も中身もないけど、まだ戦う気ではあるようだ。

 

「速攻魔法、リミッター解除!自分フィールド上の機械族モンスターの攻撃力は倍となる!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ) ATK3100→6200

 

「これで終わりだ!古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)で榊 遊矢にダイレクトアタック!!」

 

 俺は手札から1枚のカードをデュエルディスクに置く

 すると耳障りな羽音と共に煙が辺りにまき散らされ、突撃してきた究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)と俺を飲み込む

 

「や、やった!」

 

「奴のライフは4100、これで!」

 

 それはフラグと言うんだ

 

――ブウウゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

「「「「!?」」」」

 

 黒い煙はいつしか無数の羽虫となって究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)の牙を俺に届かせないように拘束している。

 突撃の衝撃は殺せず、少し後ずさったが。

 

「手札のスモーク・モスキートの効果

 戦闘ダメージを受ける時、こいつを特殊召喚し、そのダメージを半分にしバトルフェイズを終了させる。」

 LP4100→1000

 

 スモーク・モスキート DEF0

 

「そ、そんな!?」

 

「馬鹿な!?」

 

「これでも仕留めきれないだと!?

 えぇい!カードを1枚セットして、ターンエンドだ。

 エンドフェイズ、リミッター解除の効果を受けたモンスターは破壊される。」

 

 拘束されていた究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)は部品が飛び散り、スクラップとなって崩れ去る。

 そして、羽虫たちは結集し口が葉巻のようになった蚊のモンスターに変化する。

 

 しかし、この3人目のオベリスクフォースの手札は古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)、融合、リミッター解除、古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)、精神操作、そしてセットされたカード1枚。

 事故一歩手前どころか事故っている手札だ。

 何より不可解なのは俺のライフと手札が増強する状況でありながら古代の機械(アンティーク・ギア)三頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ)を融合召喚する事を強行した2人目。

 そう、まるで3人目の手札が分かっていたかのような動き方。

 

「あぁ、そうか・・・」

 

 さっきの奴らの苦しみ方、そういうカラクリか。

 

「なるほどな、俺のターン、ドロー」

 

「キサマのターンに入った時、このカードを発動する!

 永続トラップ、古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)!自分フィールド上にモンスターがいない時、墓地のアンティーク・ギアモンスターを召喚条件を無視し、攻撃力を200ポイントアップさせて特殊召喚する。

 蘇れ!古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)!!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(アルティメット・ハウンドドッグ)「「「グオオオォォォンン!!」」」

         ATK2800→3300

 

「俺も永続トラップ発動、古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)!俺が特殊召喚するのは古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)だ!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)「「ワオオオォォン!!」」

         DEF1000

         ATK1400→1900

 

 これで破壊効果を持つ古代の機械(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)が2体、そして1人目が伏せたカードがまだ1枚リバースで残っている。

 あぁ、これがタイマンだったら面白かったのに・・・

 

「なぁ、これ楽しい?」

 

「はっ?」

 

「何を言っている。」

 

「ターンの回っていない奴に攻撃してさぁ~マナーがなっていないんじゃないの?

 それに、随分と狡い手を使ってくれるじゃないか?」

 

「なんだと?」

 

「ふん、何を言い出すのかといえば、言いがかりか!」

 

「悪魔とはずいぶん腑抜けた野郎の様だな!戦いにマナーも何もあるか!!」

 

 戦争にだってルールとマナーはあるさ。

 そう、犯してはならない絶対的な一線、これがゲームならなおさらな。

 

「あぁ、そうだ、お前達はハンティングゲームと称して戦争ごっこをやっているんだったな?

 デュエルする気がないわけだ。」

 

「ごっこだと!!」

 

「何処まで我らを!」

 

「侮辱するつもりだ!」

 

「どこまででもさ。

 ルールもマナーも守れない奴らに、ゲームも戦争も付きあう価値なんてないからな。

 俺はスケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとスケール3のEM(エンタメイト)シール・イールをペンデュラムゾーンにセッティング。」

 

 光の柱に浮かび上がる、体がギターになった亀と口にバッテンマークの付いたうなぎ。

 

「ギタートルがペンデュラムゾーンに居る時、EM(エンタメイト)モンスターをペンデュラムゾーンに置いたことによりペンデュラム効果が発動、デッキから1枚ドローする。

 そして、シール・イールの効果で1人目の古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果をこのターン中無効にする。」

 

 古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の対象を取れなくする効果が発揮されるのは召喚ターンのみ、1人目に対しては問題なく使える。

 

「さらに永続魔法、炎舞―天璣を発動

 このカードの発動時、デッキから獣戦士族モンスターを1体手札に加える。

 俺が手札に加えるのはEM(エンタメイト)オッドアイズ・ミノタウロス

 

 魔法カード、EM(エンタメイト)ポップアップ、手札を3枚まで捨て、捨てた枚数分ドローする。

 俺は手札のEM(エンタメイト)スプリングース、カレイドスコーピオン、ラクダウンを捨て3枚ドロー

 そして、自分のペンデュラムゾーンのカード2枚のペンデュラムスケールでペンデュラム召喚可能なレベルを持つ、EM(エンタメイト)、オッドアイズ、魔術師ペンデュラムモンスターを手札から特殊召喚出来る。

 俺のペンデュラムゾーンのスケールは3と6、よってレベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンを特殊召喚。」

 

ペンデュラム・マジシャン「はっ!」

            DEF800

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果発動

 自分フィールド上のカードを2枚まで破壊し、デッキからペンデュラム・マジシャン以外のEM(エンタメイト)モンスターを破壊した枚数分手札に加える。

 ただし、同名は1枚だけ

 俺はペンデュラム・マジシャン自身と炎舞―天璣を破壊しデッキからEM(エンタメイト)オッドアイズ・ユニコーンとEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを手札に加え、EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを召喚する。」

 

ドクロバット・ジョーカー「いひひひっ!」          

            ATK1800

 

 白黒の道化師が現れ、被っている髑髏の描かれたシルクハットから取り出される雨合羽。

 

「このモンスターの召喚時、デッキからEM(エンタメイト)、オッドアイズ、魔術師ペンデュラムモンスターの内、どれか1種類を1枚手札に加える。

 俺が手札に加えるのはEM(エンタメイト)レインゴート。

 

 魔法カード、貪欲な壺発動

 墓地の5体のモンスター、増殖するG2体、応戦するG、EM(エンタメイト)カレイドスコーピオン、EM(エンタメイト)ラクダウンをデッキに戻して2枚ドロー

 そして、揺れろペンデュラム、異界へ繋がる道を開け!ペンデュラム召喚!

 舞い戻れ!EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!」

 

ペンデュラム・マジシャン「ふんっ!!」

            ATK1000

 

 空から光とともに現れる振り子の魔術師。

 やはり、融合次元にはないのか、ペンデュラム召喚を見て驚いている。

 

「これが、ペンデュラム召喚・・・」

 

「この程度で驚くなよ。

 手札より速攻魔法、揺れる眼差しを発動

 ペンデュラムゾーンのペンデュラムカードを全て破壊し、破壊した枚数によって効果を発揮する。

 ギタートルとシール・イールの2枚を破壊し、1枚破壊した時の効果で相手ライフに500ポイントのダメージ

 そうだな、その馬鹿でかい犬っころの飼い主にでも与えておこう。」

 

 天空から釣り下がっていたペンデュラムが相手のフィールドに向かって落ちてゆき、オベリスクフォースにそのペンデュラムの破片が散弾のように振りかかる

 オベリスクフォースにそのペンデュラムの破片が散弾のように振りかかる

 

「ぐわああぁぁぁ!」

 LP4000→3500

 

「な、なんだ!?」

 

「この威力はスタンダードのモノなのか!?」

 

 500ポイント程度のダメージで大げさな奴だ。

 

「そして、2枚破壊した時の効果でデッキからペンデュラムモンスターを1体手札に加える。

 俺が手札に加えるのはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

 さらに魔法カード、ペンデュラム・コールを発動

 魔術師ペンデュラムモンスターの効果をまだ使って無いターン、手札を1枚捨て、デッキから名称の異なる魔術師ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。

 俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを捨てデッキから相克の魔術師と相生の魔術師を手札に加える。

 このターンの終了時までペンデュラムゾーンの魔術師カードは破壊されない。」

 

 これで準備ができた。

 

「スモーク・モスキートの効果発動

 1ターンに1度、フィールド上のモンスターと同じレベルになることが出来る。

 よって、スモーク・モスキートのレベルはペンデュラム・マジシャンのレベルと同じ4になる。」

 

 スモーク・モスキート LV1→4

 

「レベル4となったスモーク・モスキートと同じくレベル4のペンデュラム・マジシャンでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 来い!竜魔人クィーンドラグーン!!」

 

 混沌から現れる燃え滾る竜の体を下半身にした半人半竜の女性がその手に持つ竜を模した竪琴を鳴らす。

 

クィーンドラグーン「ふん!」

         ATK2200 ORU2

 

「エクシーズ!?」

 

「はっ!負け犬どもと同じ召喚法など、とるに足らん!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)の効果発動!

 1ターンに1度、特殊召喚された相手モンスターにギア・アシッドカウンターを置く

 これでそのモンスターが我らのモンスターに攻撃した時、そのモンスターは破壊される!」

 

 クィーンドラグーン ギア・アシッドC0→1

 

 召喚法で優劣を決めるなんて愚の骨頂だな。

 

「クィーンドラグーンの効果発動

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを使い、墓地のレベル5以上のドラゴン族モンスターを特殊召喚する。

 ただしそのモンスターは効果は無効化され、このターン攻撃も出来ない。

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを墓地から特殊召喚。」

 

オッドアイズP「ギャオオオォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

「新たなモンスターだと!?」

 

「だが、攻撃も出来ず効果も無効ならば、恐れるに足らん!」

 

「そうだ、我らアカデミアに敗北はない!」

 

 敗北はない?狩りとは狩るものと狩られるものの命のやり取りだ、そこに絶対の勝利などない。

 

 なぁ、オッドアイズ、お前は何を考えているんだろうな?

 負けるのが嫌だったか?人を傷つけるのが嫌だったか?見世物にされるのが嫌だったか?

 

「俺はスケール3の相克の魔術師とスケール8の相生の魔術師をペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 この頭を焦がすような熱はオマエのモノか?

 

「相生の魔術師は自分フィールド上のカードが相手のフィールドの枚数より多いときスケールが4となる。」

 

 相生の魔術師 PS8→4

 

 いや、デュエルを貶す無法者に腹を立てているのは俺だ。

 

「相生の魔術師のもう1つのペンデュラム効果、1ターンに1度、自分フィールド上のレベル5以上のモンスターとエクシーズモンスターを選択し、このターン中、選択したエクシーズモンスターのランクを指定したもう1体のレベルと同じ数値にする。

 オッドアイズとクィーンドラグーンを選択しクィーンドラグーンのランクを7に変更。」

 

 クィーンドラグーン RANK4→7

 

「ランクを上げた!?」

 

「何をする気だ!?」

 

 この胸に煮えたぎる思いはオマエのモノか?

 

「相克の魔術師のペンデュラム効果、1ターンに1度、自分フィールド上のエクシーズモンスターを選択し、そのモンスターをこのターン中、そのランクと同じ数値のレベルのモンスターとしてエクシーズ召喚の素材にできる。

 これでクィーンドラグーンはこのターン、レベル7のモンスターとしてエクシーズ召喚の素材にできるようになった。」

 

 違うな、俺はオマエの声が聞こえるわけじゃない。

 

「エクシーズモンスターをさらにエクシーズ素材に!?」

 

 この思いは、怒りは、

 

「遊矢、君は一体!?」

 

 俺のモノだ!!

 

「覚悟はいいか?」


月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)が特殊召喚された時、自分フィールドのムーンライトモンスター1体の攻撃力を倍にする。

 私は月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)の攻撃力を倍にする!」

 

 月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー) ATK2400→4800

 

「行け!月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)!お前達の全てのモンスターに2回攻撃!フルムーンクレスタ!!」

 

「「「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

 

 いきなりユートに襲い掛かってきたオベリスクフォースの3人

 1人に対し3人で挑むとはなんという連中だ!

 

「ふぅ、やったぞユート、我々の勝利だ。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

 ユートはカードへと変わったオベリスクフォースを見つめている。

 甘い奴だ、とはいえ私もゲスな奴らとはいえ同じアカデミアの仲間を手にかけたのだから、気分がいいものではない。

 

「まさか、アカデミアが戦場でこんなデュエルをしているとは思わなかった・・・」

 

「あぁ、俺もここまで卑怯な手を使ってくる奴らは初めてだから驚いている。」

 

 ユートが先攻で手札抹殺を発動してくれなかったらやられていただろう。

 自分たちだけで連続でターンを回し、私に攻撃を仕掛けてくるとは・・・アンクリボーが居てくれて助かった。

 

「にしても、こいつらは君を狙っている様には見えなかったが・・・」

 

「あぁ、私の事を全く知らない様子だったな。」

 

 普段は閉じ込められているようなものだったし、アカデミアは広いから顔を合わせてない奴がいても不思議じゃないが、追って来たのなら私の顔くらい知っているだろう。

 

「俺を榊 遊矢と間違えて襲って来たみたいだったが?」

 

「それは解からん。

 何故アカデミアが赤いのの事を知っているのかも、皆目見当が付かん。」

 

「ふむ、奴らの狙いは君ではなく榊 ゆうぅ!!?」

 

「!?」

 

 ユートが突然胸を押さえて蹲る。なんだ!?いきなりどうしたんだ!?

 

「大丈夫かユート!?さっきのデュエルで何か・・・」

 

「わ、分らない・・・急に・・・なに・・か・・・」

 

――ドサッ・・・

 

「ユート!ユート!!」

 

 気を失ってしまった、一体何が?ん?

 

「ユートのドラゴンが・・・」

 

 崩れ落ちたときに飛び出たのか、ユートのダーク・リベリオンのカードが飛び出ていた。

 そのカードは、何かに怯える様に弱々しく光っている。なんだこれは?

 なぜ光っているのか確かめるために、そのカードに手を伸ばそうとしたとき

 

――ボオオォォォォォォォォ!!

 

「!!?」

 

 轟音と共に空が燃えた。


『覚悟はいいか?』

 

 その呟きは誰に向けられたものだったのか。

 

「俺はレベル7のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとレベル7として扱う竜魔人クィーンドラグーンをオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 2条の光は天へと上り、曇天の雲を燃やす

 

「何だこれは!?」

 

「何が起きている!?」

 

 燃えた空は渦を巻き、その中心で竜は覚醒の時を待つ。

 主が祝詞を読み上げるまで。

 

「怒り秘めたる二色の眼の竜よ、紅蓮の翼で地上を蹂躙し、蔓延る愚かな罪人を討滅せよ!エクシーズ召喚!!」

 

――バキバキッ!

 

 渦巻く炎の中で、無機質な竜の装甲が軋み、ひび割れ、その内から強靭な真紅の鋼殻が露わとなる。

 

「天を焦がせし烈火の竜!」

 

 未熟だった羽は炎の翼となり、雄々しく羽ばたき纏わり付いた炎を弾き飛ばす。

 罪人たちを見る二色の眼の片方からは血の涙のごとき赤いラインが突き出た鋼殻へと伝っている。

 そして、その存在を主が認めるため、魂を宿せし(ディスク)に名もなき(カード)が置かれる。

 置かれたカードに無数の像が重なり、魔竜の真の姿と名が刻まれる。

 

 さぁ、その名を告げ、世界に知らしめろ。

 

「覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオォォォォォォオオォォォ!!」

            ATK3000 ORU2

 

 今ここに、この時存在しないはずの魔竜が誕生した。

 

「なんだ、あのモンスター!?」

 

「これはエクシーズなのか!?」

 

「ヒィ・・・!!」

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンがエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚された場合、オーバーレイユニットを1つ使い、1ターンに1度、相手フィールドの全てのカードを破壊する!」

 

「「「何!?」」」

 

 その魔竜は王の怒りの化身、儀式を汚す、罪人を処刑する執行者。

 その背にした燃えた空が魔竜の掲げた腕に導かれるようにうねりを上げ、

 

『レイジングテンペスト!!』

 

 罪人たちに落とされた。


「うぅ・・・あぁ・・・」

 

 気を失っていたか・・・・遊矢が白紙のカードをディスクに置いてそれで・・・

 そうだ、現れたドラゴンが燃えた空を落とすという滅茶苦茶な方法で効果を使ったんだ。

 その凄まじい衝撃で、僕は吹き飛ばされて

 

オッドアイズ・レイジング「グルル・・・」

            ORU2→1

 

 !?

 

――ズシンッ!

 

 顔を上げてみれば、地上へと降り立った紅い魔竜がオベリスクフォースたちを見下ろしている。

 

「ァツッ!?」

 

 頭の混乱が解けて来たのか、手に伝わってくる地面の熱。

 周りを見てみれば、遺跡は倒壊し、煮たった海から湯気が出ている地獄の様な光景が広がっている。

 

「うぅ・・・」

 

「あぁ・・・」

 

「ぐぅ・・・」

 

「そら、起きろ、まだデュエルは終わって無い。」

 

 この惨状を起こした張本人は、何事もなかったかのようにデュエルを進めようとしている。

 

古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)には破壊された時、墓地のアンティーク・ギアを特殊召喚する効果があったな。

 それで、どうだ?使うのか?使わないのか?」

 

 気が付いた彼らに告げられる質問。

 

「ヒッ・・・ヒィ!!俺は墓地から古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)を守備表示で特殊召喚!!」

 

 古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト) DEF2000

 古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ) ATK3300→3000

 

 古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の効果で破壊から免れた古代の機械(アンティーク・ギア)究極猟犬(・アルティメット・ハウンドドッグ)を持つ彼は墓地に眠る、巨大な機械犬を呼び出す。

 その恐怖から逃れるために

 

「あぁあああぁぁぁ・・・俺は墓地の古代の機械(アンティーク・ギア・)三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)を守備表示で特殊召喚!!」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)参頭猟犬(・トリプルバイト・ハウンドドッグ) DEF1000

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ) DEF1000

                   ATK1900→1600

 

 同じく古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の効果で双頭猟犬を死守した彼は発狂しかけながら新たな壁役を呼び出す。

 痛みから逃れるために。

 

「・・・お、俺は古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(・ダブルバイト・ハウンドドッグ)を特殊召喚、守備表示だ・・・」

 

 古代の機械(アンティーク・ギア)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ) DEF1000

 

 残る彼は、もはや諦めているのだろう。

 言われるがままに墓地に残る唯一のモンスターを呼びだす。

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンは自身の効果で破壊したカードの枚数×200ポイント攻撃力を上げる。

 お前達のカードは占めて10枚、その内2枚が破壊から免れたから破壊できたのは8枚

 よって、レイジング・ドラゴンの攻撃力は1600ポイント上がる。」

 

オッドアイズ・レイジング「グオオォォォォォォオオオオォォ!!」

            ATK3000→4600

 

 咆哮を上げる魔竜の節々から上がる炎。

 全身の鋼殻もまるで血管が浮き出る様に紅いラインが浮かび上がる。

 

「墓地のEM(エンタメイト)スプリングースの効果発動

 自分のメインフェイズに墓地からこのカードを除外することで、自分のペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)カードか魔術師カード、フィールドのペンデュラムモンスターの中から2枚を対象にし、そのカードを持ち主の手札に戻す。

 

 俺はペンデュラムゾーンの相克の魔術師と相生の魔術師を手札に戻し、新たにスケール6のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ミノタウロスとスケール8のEM(エンタメイト)オッドアイズ・ユニコーンをペンデュラムスケールにセットする。」

 

 大盾を持った男性と弓を構えた女性が消え、新たに発生した柱に上るのは異虹彩の魔物たち。

 

「バトルフェイズに入って速攻魔法、竜の闘志を発動

 このカードはこのターン特殊召喚されたドラゴン族モンスターを対象にして発動できる。

 対象モンスターはこのターン通常の攻撃に加えて相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターの数まで、一度のバトルフェイズ中に攻撃できる!」

 

「「「なんだと!!?」」」

 

「こいつは素で2回攻撃できる効果を持っているが・・・古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)の効果を使わなかったら3回で済んでたのにな?

 オッドアイズ・レイジング・ドラゴンで古代の機械獣(アンティーク・ギアビースト)へ攻撃

 そして、オッドアイズモンスターの攻撃時、オッドアイズ・ユニコーンのペンデュラム効果を発動できる。

 このカードがペンデュラムゾーンにある限り一度だけ、戦闘するオッドアイズモンスターの攻撃力をそのモンスター以外のEM(エンタメイト)モンスターの攻撃力分アップさせる。

 レイジング・ドラゴンにドクロバット・ジョーカーの攻撃力1800ポイントを加える。」

 

 オッドアイズ・レイジング ATK4600→6400

 

「あっ・・・あぁ・・・・」

 

 告げられる無慈悲な宣言。

 そして、放たれた魔竜の拳は獣を砕き、究極まで上り詰めたアカデミアの象徴すら粉々にし、オベリスクフォースの一人にその拳を付きたてた。

 

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 LP3500→0

 

「さて・・・次はど、い、つ、に、し、よ、う、か、な?」

 

 遊矢は残り2人のオベリスクフォースたちを交互に指差す。

 まるで、どちらのおもちゃで遊ぼうかと決めかねている子供の様に。

 

「ひぃ・・・ああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああAAAAaaaaaaa!!」

 

 恐怖に耐え切れなくなり、三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)を従えていたオベリスクフォースが逃げ出す。

 だが、魔竜は双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドッグ)を踏みつけ、助け出そうと挑みかかる三頭猟犬(トリプルバイト・ハウンドドッグ)の首を掴み締め上げる。

 

「おいおい、デュエル中に逃げ出すなよ。

 もっともさっき見たからわかると思うが、オッドアイズ・ミノタウロスがペンデュラムゾーンに居る限り、俺のオッドアイズモンスターとEM(エンタメイト)は貫通効果を得ているがな。

 オッドアイズで双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンドドック)に攻撃。」

 

 踏みつけ、締め上げていた猟犬達が突然発火する。

 そして、逃げ出していた彼もまた発火し炎に焼かれる。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」

 LP4000→0

 

「あぁ・・・・・・」

 

 暴虐の限りを尽くす魔竜の攻撃は終わることはない。

 この処刑場に立たされた罪人(僕ら)を焼き尽くさんと唸りを上げ、そして咆哮する。

 

オッドアイズ・レイジング「グルル・・・オオォォォォォォォ!!」

 

 その恐怖に支配された彼はアカデミアの戦士の誇りなど投げ捨てて、処刑人に命乞いをする。

 

「や、やめて!た、助けてくれ!!」

 

「ほう、じゃあ、お前はそう言われて助けたことはあるのか?」

 

「そ、それは・・・」

 

 あるはずがない。

 僕達はエクシーズ次元で何度もその言葉を耳にし、そして踏み躙ってきたのだから・・・

 

「じゃあ、ダメだ。」

 

「ち、違う!俺は、ホントはあんなことウッ!ガアアァァァァ!!」

 

「!?」

 

 突然、彼が苦しみだす

 

――キシャアアァァァァァァァ!!

 

 その理由は彼の仮面の下から伸びた薄緑がかった触手の様なナニカ

 不気味な叫びを上げて彼の首を締め上げている。

 

「ガ・・・はっ・・た・・・助け・・・て・・・く・・れ・・・・」

 

 彼は息も絶え絶えに、目の前の悪魔と罵った男に手を伸ばす。

 

「・・・オッドアイズ!その虫けらを焼き殺せ!!

 『激情のストライク・インフェルノ!!』」

 

 魔竜が纏う炎が一点に収束し、業火となって彼らを焼く。

 その衝撃で海へと放り出された彼らは、海の底へと消えてしまうのかと思ったが埠頭から伸びた赤黒いミミズの様なモノが彼らを捉え呑み込んでいく。

 なんだあれは!?

 

「ミエルの奴、何をやったんだか・・・

 それでデニス、実はと言うとペンデュラムカードを3枚持っているんだ。」

 

「えっ?」

 

「此処で決着つけないか?」

 

 決着?もう、そのモンスターの攻撃は・・・あっ、双頭猟犬(ダブルバイトハウンドドック)究極猟犬(アルティメットハウンドドック)もこのターンに融合召喚されたモンスター

 ならレイジング・ドラゴンはこのターン6回の攻撃が可能!?

 

「あぁ・・・」

 

 このまま、挑み、アクションカードで防いでも3回の連続攻撃だ。勝てるわけがない!

 いや、改めてデュエルをしても僕は勝てるのか?

 

 僕はこのデュエルで何もできていない。

 彼に僕の力を見せることも、一矢報いることも・・・

 

 いや、それでいいのかもしれない。

 彼の後ろで控える魔竜は罪人を裁く処刑人そのものだ。

 僕のデュエルで人を笑顔に出来ればいいと思っていたけれど、こんな血に塗れた手で人を笑顔に出来るはずがないじゃないか・・・なら、ここで、

 

「ふっ、冗談だよ。」

 

「えっ・・・?」

 

「こんなケチのついたデュエルの延長戦なんてやってもつまらないからな。

 さて、どうやらこの大会に変なのが紛れて、おまけに俺を狙っているらしいな。」

 

「あ、あぁ・・・そうだね。」

 

「あいつらはデュエルじゃなくてハンティングゲームをしているらしいし、どうせなら。」

 

 不気味な笑みを浮かべた口から紡がれる言葉

 

「乗ってやろうじゃないか、あいつらのゲームに。」

 

「えっ?」

 

「誰が俺を狩ることが出来るのか、はたまた俺に狩られるのか、生き残りをかけたデスマッチ

 敗者はあぁして、機怪蟲に呑み込まれて退場する。

 どうだ?最高にスリリングなゲームだろう?」

 

 く、狂っている!

 この状況で、自分からオベリスクフォースたちに戦いを挑むつもりか!?

 

「ふふふ『さぁ、ゲームを始めよう。』」




って、訳でお前も付きあえ、デニス

ゑっ?

――バシッ!(レイジング・ドラゴンの尻尾に拘束される。)

さぁ、出発だ!空の上なら見つけやすいだろう。

ギャオオオォォォォォォォ!!(離陸)

NOooooooooo!!(強烈な風圧)

ふははははは!本当に飛んでる!(変なテンション)
さて次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『曇り模様の空に』
雨が降らないといいんだがなぁ?

あばばばばばばば!!(死にそう)

「CC」カード群の効果について

  • 制作したものをそのまま使用
  • 後付け効果を削除
  • メインに入るカードの後付け効果のみを削除
  • EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
  • 完全にアニメカードそのまま

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