遊戯王ARC-V Rーe:birth   作:深海の破壊大帝

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素良戦後半
墓地と手札を使いまくっているのでまた長いですが、お付き合いくださいませ。
デッキの方はちゃんと枚数確認したので問題ない、はずです。

≪修正≫
申し訳ございません
ドラゴン族縛りのことを忘れていたために、最後の展開に2枚のカードを付け足しました。


君に太陽を

「僕は絶対生き残る、だから君は大人しく僕の糧になれええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

――ぎゃははははははhhっはははっははははははははhahahははハハハハ

 

 響く絶叫は、悪魔たちの笑いに虚しくもかき消される。

 

「糧になれか・・・俺好みの言葉だが・・・」

 

 だが幽鬼の目の前に立つ、笑わない悪魔は

 

「そいつは無理だな。」

 

 その絶叫を否定する。

 

「・・・なんでだよ・・・・・・・・なんでそんなこと言えるんだよ・・・」

 

「お前がなんでそこまで『生きる』ことに執着するかは知らないが、生きるってことは苦しくて辛いことだ。

 特に自分に待ち受けている運命が分かっているなら猶更な・・・」

 

 遊矢は自らに待ち受ける運命の1つを知っている。

 それは賞賛される輝かしいものだ。

 だが、それは彼にとって、多くのモノを失うだけで意味のない、受け入れられないものだ。

 

「だが糧を得るということはそんな苦痛の中での『幸福』だ。

 糧を得なければ『生きる』ことができない、なら『生きる』ことは『幸福』を得ることだ。

 お前は今、『幸福』か?」

 

「・・・・・・」

 

 遊矢の紅い目は素良をまっすぐ見据えている。

 そこには死への恐怖などない。

 殺されそうになっている獲物にはありえないものだ。

 

「そうじゃないだろ?おまえ、ひっどい顔しているぜ?」

 

「・・・うるさい、うるさい!うるさいうるさいうるさい!!うるさああぁぁぁぁぁいい!!

 君の敗北の運命は変わらない!

 君は、この攻撃力を超えるモンスターを持っていないだろ!

 いや、超えられたとしてもそれは一時的だ!

 

 サーベル・タイガーは3体以上のモンスターを使って融合召喚されたとき、戦闘と効果で破壊されない。

 次のターンで僕のライフを削りきることなんて無理なんだよォォ!!

 カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 クルーエル・ホエール「ゲヘヘッ!」

           ATK5800→4500

 

 クルーエル・ホエール「ギャハハ!」

           ATK5800→4500

 

 サーベル・タイガー「キヒヒッ!」

          ATK4300

 

 シザー・タイガー「ヒャハハハハッ!」

         ATK3800

 

 デアデビル「ギャハハハハハッ!!」

      ATK4900

 

「敗北の運命は変わらない?

 違うな、運命は決するまでわからないものだ。

 そして、運命はこの手札で、そしてこれから引くカードでガラリと変わるかもしれない。

 そう考えたらワクワクしないか?」

 

「ワクワク・・・?まだそんなことを!!」

 

「はっはっはっ、怒るな怒るな

 生憎と俺は泣き虫とつまらないことは嫌いなんでね。

 だから、俺は楽しんでいるよ。このデュエルを!

 俺のターン、ドロー!

 俺はスケール2のEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンとスケール6のEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱に登るのはお馴染みの赤い紳士なトカゲと、初登場となる青い服に帽子を深くかぶったナイフ使い。

 

「これで3、4、5のレベルのモンスターはペンデュラム召喚できる。

 の前に、ダグ・ダガーマンのペンデュラム効果で俺の墓地のEM(エンタメイト)モンスター、ロングフォーン・ブルを手札に戻す。

 

 そして、魔法カード、EM(エンタメイト)ポップアップを発動

 手札を3枚まで捨て、捨てた枚数分ドローし、その後、自分のフィールドのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚可能なEM(エンタメイト)、魔術師ペンデュラム、オッドアイズモンスターを手札からドローした枚数まで特殊召喚する。

 ただし、同名は1枚までで、1体も特殊召喚できない場合は自分の手札の枚数×1000ポイントのダメージを受けるけどな。

 

 俺は手札のEM(エンタメイト)ユニ、スプリングース、オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを捨て3枚ドロー

 そして、俺はレベル4のEM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャンとEM(エンタメイト)ロングフォーン・ブルを特殊召喚!」

 

ペンデュラム・マジシャン「はっ!」

            ATK1500

 

ロングフォーン・ブル「ブモッ!」

          ATK1600

 

「ロングフォーン・ブルを特殊召喚したことにより、デッキからペンデュラム以外のEM(エンタメイト)モンスター、ミス・ディレクターを手札に加える。

 そして、特殊召喚したペンデュラム・マジシャンの効果でペンデュラム・マジシャン自身とロングフォーン・ブルの2枚のカードを破壊し、デッキからEM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーとEM(エンタメイト)カレイドスコーピオンを手札に加える。」

 

 ペンデュラム・マジシャンがロングフォーン・ブルの角の電話で次のキャストに連絡をつけ、役目を終えた2体は出番があるときまで舞台裏に退場する。

 

「墓地のEM(エンタメイト)スプリングースの効果発動

 墓地のこのカードを除外して、ペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)か魔術師カードまたはモンスターゾーンのペンデュラムモンスターを手札に戻す。

 俺はペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンとEM(エンタメイト)リザードローを手札に戻す。」

 

「ペンデュラム召喚もリザードローのドロー効果も使わずに戻す?

 何を考えているのさ?」

 

「さぁな?EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカーを通常召喚。」

 

ドクロバット・ジョーカー「ハッハァー!!」

            ATK1800

 

「ドクロバット・ジョーカーの召喚により、デッキからEM(エンタメイト)、魔術師ペンデュラム、オッドアイズモンスターのうちいずれか1体を手札に加える。

 俺は相克の魔術師を手札に加える。

 

 魔法カード、貪欲な壺を発動

 墓地の御影志士、旋壊のヴェスぺネイト、EM(エンタメイト)ガトリングール、融合呪印生物―闇、EM(エンタメイト)ロングフォーン・ブルをデッキに戻して2枚ドロー

 

 スケール6のEM(エンタメイト)ギタートルとEM(エンタメイト)リザードローをペンデュラムスケールにセッティング

 EM(エンタメイト)がペンデュラムスケールになったことにより、ギタートルのペンデュラム効果で1枚ドロー

 

 さらに速攻魔法、イリュージョン・バルーンを発動

 自分フィールド上のモンスターが破壊されたターン、デッキの上から5枚のカードを確認し、その中にEM(エンタメイト)モンスターがいたらそのうちの1体を特殊召喚する。

 特殊召喚するのは・・・EM(エンタメイト)セカンドンキー!」

 

 セカンドンキー「ヒヒィーン!」

        DEF2000

 

「セカンドンキーの効果でデッキからEM(エンタメイト)クリボーダーを墓地に送るが、俺のフィールドにはペンデュラムスケールが2枚セッティングされている。

 よって、このカードは墓地ではなく手札に入る。」

 

(またデッキ圧縮・・・もう20枚以上のカードが出たり入ったりしているけど、一体あのデッキは何枚なんだ?)

 

「よし、まずはスタートをかけるか。

 俺はレベル4のセカンドンキーとドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 エクシーズ召喚、鳥銃士カステル。」

 

カステル「クワッ!」

    ATK2000 ORU2

 

 茶色いロバとドクロを模したハットをかぶった道化師が混沌の中に消え、そこから狙いを定める天空の銃士が現れる

 

「カステルの効果発動、オーバーレイユニットを2つ使い

 このカード以外のフィールド上の表側表示カード1枚をデッキに戻す。

 デストーイ・サーベル・タイガーには消えてもらおう。」

 

「させるか!カウンタートラップ、デストーイ・マーチ!

 デストーイモンスターが相手の効果の対象となった時、その効果を無効にして破壊する!」

 

 カステルがデストーイ・サーベル・タイガーに狙いを定めると、地面が割れて大量のデストーイモンスターたちが現れ、カステルを墓地へと引きずり込んだ。

 

「そううまくはいかないか。

 リザードローのペンデュラム効果で片方のペンデュラムゾーンにEM(エンタメイト)カードがあることによって自身を破壊し1枚ドローする。

 そして、空いたペンデュラムゾーンに俺はスケール4のEM(エンタメイト)カレイドスコーピオンをセッティング。」

 

 赤いトカゲが消えた後に浮かぶのは赤いサソリ、そしてその下に表示されるのは4、隣のギタートルのスケールは6でありこのままではレベル5のモンスターしかペンデュラム召喚できない、なので

 

「永続魔法、魂のペンデュラムを発動

 このカードは1ターンに1度、自分フィールド上にセッティングされた2枚のペンデュラムスケールをそれぞれ1つ上げ下げするカードだ。」

 

「スケールの幅を広げられるのか!?」

 

「その通り、俺はカレイドスコーピオンのスケールを3にし、ギタートルのスケールを7に変更する。」

 

 天空に揺れる水晶の振り子が大きく振れる。

 それと連動するように光の柱の中の数字が変化を起こす。

 

 カレイドスコーピオン PS4→3

 ギタートル      PS6→7

 

「これで特殊召喚できるのはレベル4から6のモンスターになった!

 揺れろペンデュラム、異界へつながる扉を開け!ペンデュラム召喚!

 エクストラデッキからレベル6、賤竜の魔術師、レベル4、慧眼の魔術師、龍脈の魔術師、そして手札からレベル5、EM(エンタメイト)ダグ・ダガーマン、レベル6、チューナーモンスター、EM(エンタメイト)ミス・ディレクターを特殊召喚!」

 

 異次元から流星に乗って現れる嵐、光、水の魔術師たちとナイフ使いと眼鏡をかけた女性ディレクター

 これが遊矢の必殺コンボを成立させるために選んだメンツである。

 

 賤竜の魔術師    ATK2100

 慧眼の魔術師    ATK1500

 龍脈の魔術師    ATK1800

 ダグ・ダガーマン  ATK2000

 ミス・ディレクター DEF2000

 

「賤竜の魔術師が特殊召喚に成功したことにより、墓地のオッドアイズモンスター、オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを手札に加える。

 さらにペンデュラム召喚されたダグ・ダガーマンの効果で手札のEM(エンタメイト)コンを墓地へ送り、1枚ドロー

 さて、まずは俺はレベル4の慧眼の魔術師と龍脈の魔術師でオーバーレイ

 2体の魔術師ペンデュラムモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 現れろ!星刻の魔術師!!」

 

星刻の魔術師「はっ!」

      DEF1200 ORU2

 

 光と水が重なり生まれたのは始まりのペンデュラムモンスター、星読みと時読みの魔術師の装備を両手に持った新たな魔術師

 ペンデュラムを指定するその召喚条件に素良は驚く

 ペンデュラムはまだ生まれて間もなく、またエクシーズ次元には存在しないものだ。

 

「そんなモンスター、どこで・・・」

 

「さぁな、気が付いたら持っていた。

 続き、ミス・ディレクターの効果を発動する。

 ミス・ディレクターは1ターンに1度だけ、自分の墓地からレベル1モンスターを効果を無効にして特殊召喚し、そのモンスターとこのカードを使ってシンクロ召喚を行う!

 俺は墓地からレベル1のマジシャンズ・ソウルズを特殊召喚!」

 

――カチンッ☆

 

 マジシャンズ・ソウルズ DEF0

 

 ミス・ディレクターが持っていたカチンコを鳴らすと素良の目から見て、その後ろから青白い2人の魔法使いの魂が現れていた。

 

「そして、レベル1、マジシャンズ・ソウルズにレベル6のEM(エンタメイト)ミス・ディレクターをチューニング!

 2色の眼に写る七つの星よ、流星となって降り注げ!シンクロ召喚!

 星紡ぐ戦の竜、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!」

 

オッドアイズM「ギャオオオォォォォォォォォォォ!!」

       ATK2500

 

 星が連なり、光が輝き赤き流星が竜となってフィールドに舞い降りる。

 

「メテオバースト・ドラゴンの効果発動

 このモンスターの特殊召喚成功時、自分のペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスターを1体特殊召喚できる。

 ただしこの効果を使ったターン、こいつは攻撃できない。

 出てこい、カレイドスコーピオン!」

 

 カレイドスコーピオン DEF2300

 

 流星の竜に導かれ、光の柱から解き放たれる赤いサソリ

 その尻尾のライトが5体の悪魔たちを照らし出す。

 

(何か嫌な予感がする。)

「僕は2体のクルーエル・ホエールの効果を発動

 エクストラデッキのデストーイ・チェーンシープとデッキのデストーイとして扱うエッジインプ・DTモドキを墓地に送り、クルーエル・ホエールの攻撃力をその元々の半分の数値分アップする。」

 

 クルーエル・ホエール ATK4500→5800

 クルーエル・ホエール ATK4500→5800

 

「強敵出現、ってことで、それじゃこのターンの主役を呼ぶとするか

 魔法カード、龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)を発動

 このカードはドラゴン族専用の融合魔法で、使える素材はフィールドと墓地のモンスターだ。

 俺はフィールドの戦士族、EM(エンタメイト)ダグ・ダガーマンと墓地のペンデュラム・ドラゴンモンスター、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを融合する。」

 

 フィールドに現れた1枚の鏡の中に映し出される魔天の竜

 その装甲がパージされ新たな装甲が装着される。

 

「魔天の竜よ、熱き闘志を眼に宿し、鋼の装甲を得て転生せよ!融合召喚!」

 

 尻尾にはキャタピラがつき、装甲はよりメカニカルなものになり、まるで特撮やSF映画に出てくるロボット怪獣のような姿になる。

 そして、新たな姿に換装した魔竜は鏡を突き破って、この世に顕現する。

 

「出撃せよ!ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

ブレイブアイズ「ギャアアァァオオォォォォォォォォ!!」

       ATK3000

 

 駆動音交じりの咆哮を響き渡らせる赤き鋼の魔竜

 

クルーエル・ホエール「ギャアアァァァァぁぁ!!」

          ATK5800→0

 

クルーエル・ホエール「ヒィィィィィィ!!」

          ATK5800→0

 

シザー・タイガー「キャアアアァァァァァァ!!」

        ATK3800→0

 

サーベル・タイガー「ヒャアァァァァぁぁ!!」

         ATK4300→0

 

デアデビル「クッ・・・ヒぃ・・ギギ・・・」

     ATK4900→0

 

 その咆哮を聞いた悪魔たちは、恐怖し、怯えその力を喪失した。

 

「どうなっているんだ・・・なんで攻撃力が!?」

 

「ブレイブアイズの融合召喚に成功した瞬間、相手モンスターの攻撃力は0になる。」

 

「なんだって!?」

 

「もちろん、デメリットはある。

 この効果を使ったターン中、ブレイブアイズ以外の攻撃ができなくなるが・・・

 カレイドスコーピオンの効果発動!

 1ターンに1度、自分フィールド上の表側表示モンスター1体は、このターン、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターすべてに攻撃することができるようになる。」

 

「何っ!?」

 

「まだ終わりじゃない。

 星刻の魔術師の効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキ、墓地から闇属性の魔法使い族モンスターを手札に加える。

 俺は墓地からマジシャンズ・ソウルズを手札に加える。」

 

 星刻の魔術師 ORU2→1

 

 「さらに、レベル6の賤竜の魔術師とEMカレイドスコーピオンでオーバーレイ

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築

 永遠の淑女 ベアトリーチェをエクシーズ召喚し効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキからカードを1枚墓地へ送る。

 俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを墓地へ送る。」

 

ベアトリーチェ「ふふ。」

       DEF2800 ORU2→1

 

 現れた白い女性の周りを浮遊する光がデッキに宿り、振り子の竜を墓地へと導く

 

「さて、準備完了だ。

 ブレイブアイズ、ターゲットロック!」

 

――ズドンッ!!

 

 ブレイブアイズの尻尾が振り下ろされ、その体からエネルギーがチャージされる音がする。

 

「お前のライフは6900、3体貫けばお前のライフは尽きる。」

 

「ちっ!!永続罠発動!スピリット・バリア!

 僕のモンスターがいる限り、僕への戦闘ダメージは0になる!」

 

「ふっ・・・だったら!モンスターを倒すのみ!

 クルーエル・ホエール2体、シザー・タイガー、そして、デアデビルを攻撃!」

 

 遊矢の命令でブレイブアイズの口や全身のレンズが発光する。

 

「馬鹿な!?デアデビルは相手によって破壊された場合、相手のライフに僕の墓地のデストーイの数×500ポイントのダメージを与える。

 その順なら僕の墓地のデストーイは9体になる!おまえは4500ポイントのダメージを受けることになるんだぞ!?」

 

「あぁ、メテオバーストには隠された効果があってな。

 こいつがいる限り、相手はバトルフェイズ中にモンスターの効果を発動できないんだ。」

 

「!?君は、そこまで計算して・・・この場面を作り上げたのか!?」

 

「ふっ、行け!ブレイブアイズ!!灼熱のメガフレイム・フルバースト!!」

 

 尻尾のキャタピラが唸りを上げ、反動を受け止めながらブレイズアイズは口と全身から無数のレーザーを発射する。

 雨のように降るレーザーは悪魔たちの全身から飛び出る刃を砕き、その体に穴をあけ、ボロボロになった4悪魔たちは機械魔竜の放つ灼熱のブレスによって焼き尽くされる。

 

 そして残ったのはもはや戦うことのできない、憐れでみじめな姿となったデストーイ・サーベル・タイガー

 3体以上のモンスターを融合素材にして召喚されたこのモンスターは戦闘、効果で破壊されない。

 その自らの力で生きながらえたのだ。

 

 だが、素良のフィールドのモンスターは1体だけとなり、彼が勝利を確信するほどの強力な盤面は1ターンで崩壊した。

 

「言っただろ?運命は決するまでわからない。ってな。」


 楽しい

 これほどデッキを回せることが、全力をぶつけられる相手が居ることが 

 

「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ、このモンスターは自分フィールド上のランク5、6のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。

 俺はランク6の永遠の淑女 ベアトリーチェ1体でオーバーレイ

 1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築

 エクシーズ召喚、迅雷の騎士ガイアドラグーン」

 

ガイアドラグーン「はっ!!」「ギャオオオォォォォォ!」

        ATK2600

 

 ゆえに惜しい

 目の前の相手が泣いていることが

 

「スケール3の相克の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング

 このカードのペンデュラム効果は1ターンに1度、自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して、そのモンスターをそのランクと同じレベルを持つモンスターとしてエクシーズ素材にできるようにする。

 ランク7の迅雷の騎士ガイアドラグーンをこのターン、エクシーズ素材にできるようにする。

 

 俺はレベル7のオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンとランク7の迅雷の騎士ガイアドラグーンをレベル7のモンスターとしてオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 六道八獄踏み越えて、絶対なる力、2色の眼に焼き付けろ!エクシーズ召喚!

 全てを凍てつかせる永久の竜、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!」

 

オッドアイズA「ガアアァァァァァ!!」

       DEF2500 ORU2

 

 感じるのは後悔、嘆き、そして呪い

 あの憔悴しきった顔と異常なまでの生への執着、それは次元戦争のトラウマか、それとも・・・

 

「手札のマジシャンズ・ソウルズの効果を発動

 デッキのレベル6以上の魔法使い族モンスター、EM(エンタメイト)ミス・ディレクターを墓地へ送り、このモンスターを特殊召喚する。」

 

 マジシャンズ・ソウルズ DEF0

 

「さらにカードを1枚伏せて、マジシャンズ・ソウルズの効果を発動

 永続魔法、魂のペンデュラムとセットされた永続トラップ、マジシャンズ・プロテクションを墓地へ送り2枚ドロー

 そして、マジシャンズ・プロテクションがフィールド上から墓地へ送られたことにより効果発動、墓地の魔法使い族、賤竜の魔術師を特殊召喚。」

 

 賤竜の魔術師 DEF1400

 

 だが、素良よ。

 ただ生きるだけのことに何の意味がある?

 そんな顔をしていたら、死んでいるのと変わらない。

 今のお前は動く肉塊と何も変わらない。

 

「魔法カード、グリモの魔導書を発動

 1ターンに1度、デッキから魔導書と名の付くカードを1枚手札に加える。

 俺はルドラの魔導書を手札に加えて発動

 フィールドの魔法使い族モンスター、マジシャンズ・ソウルズを墓地へ送り2枚ドローする。」

 

 人は生きていく中で幸福を見つけるものだ。

 幸福な夢をもって、生き足掻くものだ。だから

 

「カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 そんな不幸そうな顔をしていちゃ、生きているなんて言えないぞ。


 なぜだ。

 僕はさっきまで、遊矢を追い詰めていた。

 攻撃力4000級のモンスターを5体も並べたんだぞ!破壊されれば一瞬でライフがなくなるようなモンスターもいたんだぞ!!

 

「僕の・・・ターン、ドロー

 手札を1枚デッキの上に戻して、墓地のエッジインプ・シザーの効果発動、こいつを特殊召喚する。」

 

エッジインプ・シザー「ゲヘへ」

          DEF800

 

 なのになんで、遊矢の場にはモンスターが4体もいて、僕のフィールドには攻撃力が0になったモンスター1体しかいないんだ!?

 

「僕はセット状態のトイポットを表にして、効果発動

 手札を1枚捨て、デッキから1枚ドローし、それがファーニマルモンスターなら特殊召喚する。

 ファーニマル・ドルフィンを特殊召喚!」

 

ファーニマル・ドルフィン「クカカッ!」

            DEF1000

 

「手札から墓地へ送られたエッジインプ・チェーンの効果発動

 デッキからデストーイカードを手札に加える。

 僕はマジックカード、魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)を手札に加え、発動!

 デッキから融合とエッジインプモンスター、エッジインプ・DTモドキを手札に加える。

 

 さらに墓地のファーニマル・ウィングの効果発動!

 このカードと墓地のファーニマルモンスター、ファーニマル・マウスを除外してデッキから1枚ドロー、さらに僕のフィールドのトイポットを墓地へ送りもう1枚ドローする。

 そして、墓地へ送られたトイポットの効果でファーニマル・ドッグを手札に加える。」

 

 僕は勝たなくちゃいけない。

 勝って生き残らなければいけない。

 それが美宇の願いなんだ!それなのに!!

 

「ファーニマル・ドルフィンの効果で墓地からトイポットをセット

 さらにファーニマル・エンジェルのペンデュラム効果で、墓地からファーニマル・ペンギンを特殊召喚!」

 

ファーニマル・ペンギン「クワッ!」

           DEF1100

 

「そして、融合を発動!!」

 

「おっと、星刻の魔術師がフィールド上に存在するとき、俺のフィールドのモンスター及びペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスターは1ターンに1度、デッキから魔法使い族モンスターを墓地へ送ることで、破壊を免れる。

 融合先は慎重に選ぶんだな。」

 

 なんで君は倒れない!倒れてくれない!!

 僕は君を殺そうとしているんだぞ!なのに!!なのに・・・・

 

「ちっ!それならそいつから消してやる。

 僕はフィールドのエッジインプ・シザーとファーニマル・ペンギンを融合!

 悪魔の爪よ、冷たき心よ、神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!

 現れ出でよ!自由を奪い闇に引き込む海の悪魔!デストーイ・ハーケン・クラーケン!!」

 

ハーケン・クラーケン「ヒャハハ刃ははha!!」

          ATK2200→2600

 

「ファーニマル・ペンギンが融合素材となって墓地へ送られたことにより、デッキから2枚ドローし手札を1枚、エッジインプ・DTモドキを捨てる。

 そして、ハーケン・クラーケンの効果で星刻の魔術師を墓地へ送る。」

 

ハーケン・クラーケン「ひゃははははは!!」

 

星刻の魔術師「ぐわぁぁぁぁ!?」――ザシュ!!

 

「あちゃ~墓地送りには対応できないや。」

 

 なんで、そんなに楽しそうなんだよ・・・


「僕はマジックカード、デストーイ・リペアーを発動

 墓地のデストーイ融合モンスター、クルーエル・ホエールをエクストラデッキに戻して、墓地のファーニマルかエッジインプを特殊召喚する!

 戻ってこい!エッジインプ・シザー!!」

 

エッジインプ・シザー「キヒヒッ」

          DEF800

 

「ファーニマル・ドッグを通常召喚!」

 

ファーニマル・ドッグ「ワンッ!」

          ATK1700

 

「ファーニマル・ドッグの召喚時効果により、デッキからファーニマル・キャットを手札に加える。

 そして、融合を発動!

 フィールドのエッジインプ・シザー、ファーニマル・ドッグ、ファーニマル・ドルフィンを融合

 悪魔の爪よ、牙剥く野獣よ、海の知恵者よ、神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!

 再び切り刻めぇ!!デストーイ・シザー・タイガー!!」

 

 エッジインプ・シザーのハサミが犬とイルカのぬいぐるみを切り刻み、それをデストーイ・マイスターがかき集め、ファーニマル・エンジェルが縫い合わせる。

 出来た虎のぬいぐるみの内から、はさみが飛び出し、裂けた口から覗く赤い目の主が嗤い声をあげる。

 

シザー・タイガー「ぎゃはははhぁxはhぁh!!」

        ATK1900→2300→3200

 

 ハーケン・クラーケン ATK2600→3500

 サーベル・タイガー  ATK0→900

 

「シザー・タイガーの効果発動!

 融合素材は3体!よって遊矢の相克の魔術師、EM(エンタメイト)ギタートル、そしてセットカードを破壊だぁ!!」

 

「ならその効果にチェーンして、トラップ発動、アルケミー・サイクル。

 発動ターンのエンドフェイズ終了時まで、自分フィールド上の表側表示モンスターの元々の攻撃力を0にする。」

 

 ブレイブアイズ ATK3000→0

 オッドアイズA DEF2500

         ATK2800→0

 賤竜の魔術師  DEF1400

         ATK2100→0

 

「なっ!?自分のモンスターの攻撃力を0に!?」

 

「この効果で攻撃力が0になったモンスターが戦闘で破壊され、墓地へ送られた場合、俺はデッキからカードを1枚ドローする。

 まぁ、残念なことにペンデュラムモンスターは墓地に行かないから、この効果にはあまり意味がないがな。」

 

 デストーイたちは獲物が出来たと悦んでいるが、素良はそうでない。

 彼は遊矢のデュエルをよく見ていた。

 だから、遊矢がよく使うカードの効果は確認せずとも覚えているのだ。

 

(墓地のEM(エンタメイト)ユニはダメージを1度だけ0にして、手札のEM(エンタメイト)クリボーダーはダイレクトアタック時に特殊召喚され、クリボーダーと強制戦闘、その際発生したダメージはすべて回復となる。

 そもそも、アブソリュート・ドラゴンの効果で1回は攻撃を止められてしまう。

 攻撃力0だからデアデビルで自爆もできない。くそっ!!)

 

 デュエルモンスターズにおいて手札とは可能性だ。

 遊矢の手札で不明なものは3枚

 あそこまで余裕のある様子だと、その手札にバリアバルーンバクのような、戦闘ダメージを0にするカードをまだ持っている可能性がある。

 それをすり抜けるために、素良は考える。

 

「マジックカード、融合回収(フュージョン・リカバリー)

 墓地の融合と、エッジインプ・シザーを手札に戻し、融合を発動!

 手札のエッジインプ・シザーとファーニマル・キャットを融合

 現れろ!!デストーイ・クルーエル・ホエール!!」

 

クルーエル・ホエール「ぎひひひいHIHいひIhi」

          ATK2600→4200

 

 シザー・タイガー ATK3200→3500

 ハーケン・クラーケン ATK3500→3800

 サーベル・タイガー  ATK900→1200

 

「デストーイが増えたことにより、シザー・タイガーの効果で攻撃力がアップした。

 そして、クルーエル・ホエールの効果!

 僕のセットされたトイポットと、遊矢のアブソリュート・ドラゴンを破壊!」

 

 クルーエル・ホエールから撒き散らされる鎌により、カエルのようなガチャガチャと絶対零度の竜が破壊される。

 

(エクシーズ召喚されたアブソリュート・ドラゴンが墓地に送られた場合、エクストラデッキのオッドアイズを特殊召喚できる。

 でも使ってこない?ボルテックス・ドラゴンはいないのか?)

「何もないなら!

 トイポットの効果でデッキからファーニマル・オクトを手札へ、そしてデストーイ・マイスターのペンデュラム効果発動!

 レベル8のハーケン・クラーケンをリリースして、デッキからレベル8のカード名が異なる悪魔族を特殊召喚する!

 僕が特殊召喚するのはこいつだ!現れろ!デストーイ・マイスター!!」

 

 デストーイ・マイスター DEF0

             ATK0→1600

 

 ハーケン・クラーケンから抜け出た魂が新たな姿で実体化し、光の柱にとらわれたフードを着た骸骨と同じ姿になる。

 

「デストーイ・マイスターの効果発動!

 デッキからレベル4以下のファーニマル、エッジインプ、デストーイの内いずれか1体を特殊召喚する。

 出てこい、エッジインプ・トマホーク!」

 

 エッジインプ・トマホーク ATK1800

 

「エッジインプ・トマホークの効果でデッキのエッジインプモンスター、エッジインプ・DTモドキを墓地へ送る。」

 

 これから出そうとしているのは、プロフェッサーから与えられた自身の記憶から作り出されたカードだ。

 それは自分の罪を象徴するもので、誰にも見せたくないものだ。

 だが勝利のためには、生き残るには、そのカードを出さざるを得ない。

 

「ねぇ、遊矢?

 僕がなんで生きることに執着するのかって言ったよね?だったら、教えてあげるよ。

 僕は昔、交通事故にあって、妹に助けてもらったんだ。

 妹も両親もその時にいなくなってしまったけどね。」

 

「・・・・・・」

 

 勝利してしまえば、彼は物言わぬ屍だ。

 自分の罪を話したところで、墓の下だ。

 

「妹が、美宇が最後に言ったんだ「生きて」って、でもね。

 いつの間にか、家族との思い出はボロボロになっていった。守れなかったんだ!

 だからせめて、美宇の最後の願いは守ろうと、僕は決めた。

 

 生き残るために、戦って戦って、人を狩った!

 そのときは何も思わなかった、ただの家畜同然の奴らを狩っているだけ、そう思っていた、生きるために仕方のないことだって・・・」

 

「・・・・・・」

 

 だから、ここで自分の罪をすべて打ち明けても構わない。

 

「だけど、ずっとずっと、頭から離れないんだ!

 怒りが、恨みが、呪いが、ずっと頭に響いてくる!「許さない!」「死んでしまえ!」「生きられると思うな!」って!!

 アカデミアに戻ってから、それがますますひどくなる!!

 それは君に出会ってからだ!!」

 

「・・・・素良。」

 

「それなら君がいなくなれば、この声も消える!

 生きるのに邪魔なこの声を、黙らせることができる!!

 

 僕はデストーイ・マイスターの2つ目の効果を発動!!

 1ターンに1度、自分フィールド上の悪魔族モンスターを2体以上リリースし、エクストラデッキからリリースしたモンスターのレベルの合計と同じレベルのデストーイ融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する!

 僕はレベル4のエッジインプ・トマホークとレベル6のデストーイ・シザー・タイガーをリリース!修理融合(リペア・フュージョン)!!」

 

 2体の悪魔の魂がデストーイ・マイスターの素材となり、その手で新たな人形が作り上げられる。

 

「現れろ!デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー!!」

 

 ナイトメアリー ATK2000→2400

 

 それは巨大な少女の人形

 顔は口が縫い付けられ、鼻は陥没している。青白い肌も相まってそれはまるで死体のようだ。

 だが、服の中に体はなく闇を吐き出し続ける光によって支えられている。

 

「こいつは・・・」

 

「このカード、僕の記憶から作ったんだってさ・・・

 このモンスターが着ている服、あの時、美宇の着ていた服とそっくりだと一目でわかったよ。

 このカードは、僕の妹の記憶から作られたものなんだって・・・」

 

 ナイトメアリーは他のデストーイたちと違い、狂ったように嗤うことはない。

 ただ、素良の前に浮かび、遊矢の前に立ちふさがる。

 

「笑っちゃってよ、遊矢

 僕は命の恩人を、大切な妹を、こんな姿にしてしまったんだからさ・・・」

 

 遊矢はナイトメアリーを見つめる。

 このモンスターは漫画版に出てきたモンスターだが、今ここに立っているモノと明らかに違う点がある。

 元のモンスターは虚ろな目をした、まさしくただの人形というようなモンスターだったが、遊矢はこのモンスターから強い意志を感じていた。

 そして、素良の話を聞いて納得した。この違和感の正体を

 

「なぁ、素良・・・お前はいつまで、妹に心配をかけさせているんだ?」

 

「!?な、なにを!?」

 

「人は二度死ぬっていう話があってな。

 1度目は肉体の死、そして2度目は誰からにも忘れ去られて消える、魂の死

 こいつがお前の妹の記憶から作られたのなら、その妹がお前が心配だから、こうして化けて出たんじゃないのか?」

 

「・・・・・・」

 

「うじうじしているお前に比べて妹はすごいなぁ?

 俺だったら、こんなブッサイクな人形になるぐらいだったら、それこそ忘れてほしいと思うぜ?」

 

「美宇・・・」

 

「昔話ついでだ。俺のも聞かせてやる。

 俺はかつて、父さんがいなくなったとき、母さんに「笑顔でいよう」と言った。

 確かに俺は母さんに笑っていてほしかったけど、悲しみを押し殺して笑っていろなんて思ってなかった。」

 

 そう、それは勇気が出せなかったために作られてしまった呪いだ。

 その呪いを解くためには、遊勝を洋子の前に突き出すことでしか解けないだろう。

 だが、素良は違う。

 

「素良、お前の妹はお前が不幸の中で生きろと願うような奴だったのか?」

 

「ち、違う!美宇はそんな奴じゃ!」

 

「そうだろうな。

 だったら、お前には、生きて、幸せになってほしいと願ったはずだ!」

 

「!!?」

 

 素良は祝福されていた。幸あれと、幸福であれと

 

「お前、せめて妹の願いは守るって言ったよな!

 違うよな!お前は、妹の言葉を免罪符に楽な選択に流されていただけだ!

 その願いを叶えようだなんて、これぽっちも思っちゃなかったんだ!!」

 

「だったら、どうすればよかったのさ!!

 アカデミアでは、いや融合次元では!今やアカデミアなしでは生きられない!!

 僕にそれ以外の選択肢があったっていうのか!?」

 

「知るかよそんなもん!!

 人の生き方も、人の幸せも、そいつだけが見つけるものだ!

 お前の幸せが何なのかとか、俺が知るわけないだろ!!」

 

「あぁ!!この無責任!!

 幸せがどうのとか!幸福がどうのとか!さんざん言ってたくせに!!」

 

 始まる2人の口喧嘩、2人が出会った時から始まったいつものやり取り

 突如始まったそれに2人のモンスターたちも困惑している。

 

「ふんっ!そんなに幸せになりたかったら、夢でも持ったらどうだ?」

 

「夢?」

 

「そうだ、夢っていうのは生きることの目標だ。

 自分の罪が許せないなら、罪を償うことを夢にしたっていい。叶えられそうにない途方もない夢だっていい。

 当てがないより、目標があるっていうことは目指す道を探しやすいだろ?

 素良、お前は何がしたい?」

 

「夢・・・僕の・・・」

 

 素良の耳に聞こえていた呪詛はいつの間にか止んでいた。

 そして、本音をぶつけ合っているこの場で、もはや嘘をつく必要はない。

 素良は、自分の心から望むことを口にする。

 

「僕は・・・僕は、君とデュエルしたい!

 君と、君たちと一緒に楽しいデュエルをずっとしていたいよぉ!!」

 

 あふれ出る思いを、涸れ果てていたはずの涙とともに吐露する。

 その願いを聞いた悪魔(遊矢)は、笑顔でそれを聞き届ける。

 

「あぁ、だったら今すぐしよう!

 生きるとか死ぬとか、世界とか、戦争とか、アカデミアとか、敵だとか味方だとか関係ない。

 俺たちの楽しいデュエルをしよう!」

 

「・・・うん!だけど、僕が勝ったら君は・・・」

 

「残念ながら、俺はなっさけない泣きっ面をさらしているやつなんかに、負ける気はしないんでね。」

 

「!!・・・言ったな、後悔するなよ!遊矢!!」

 

 グジグジと溢れていた涙を袖で拭って、デュエルは再開される。

 それを見ていたナイトメアリーは何となく嬉しそうだ。

 

「シザー・タイガーはいなくなったけど、ナイトメアリーは僕のターンの間、僕の墓地の悪魔族、天使族モンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする!

 僕の墓地の悪魔族、天使族モンスターは合計24体、よってナイトメアリーの攻撃力は7200ポイントアップ!」

 

 ナイトメアリー     ATK2400→9600

 サーベル・タイガー   ATK1200→0

 クルーエル・ホエール  ATK4200→3000

 デストーイ・マイスター DEF0

             ATK1600→400

 

「さらにデストーイ・クルーエル・ホエールの効果でエクストラデッキのデストーイ・シザー・ベアーを墓地へ送り、デストーイ・サーベル・タイガーの攻撃力をアップ!」

 

 サーベル・タイガー ATK0→1200

 

「そして、ペンデュラム召喚!

 来い!エッジインプ・コットン・イーター!!」

 

コットン・イーター「グオオォォォォォ!!」

         ATK2400

 

「コットン・イーターの特殊召喚により、遊矢に僕の墓地のデストーイモンスターの数×200ポイントのダメージを与える。

 墓地のデストーイは13体、2600ポイントのダメージを受けろ!」

 

 コットン・イーターの口から無数の怨霊が飛び出し、遊矢に襲い掛かる。

 

「ぐおおおぉぉぉぉぉ!」

 LP4000→1400

 

「よし、通った!融合回収(フュージョン・リカバリー)で戻した、融合を発動!

 手札のファーニマル・オクトとフィールドのエッジインプ・コットン・イーターを融合!

 もう一度出てこい!デストーイ・ハーケン・クラーケン!!」

 

ハーケン・クラーケン「ひゃっはっー!!」

          ATK2200→2600

 

 赤いタコのぬいぐるみが青紫のイカへ変形し、その触腕の先に鎌が突き出る。

 素良の予想では、遊矢の防げるダメージは5回が限界だ。

 だから、その上を行く

 

「デストーイの融合素材となったファーニマル・オクトの効果で除外されている自分のモンスターを2体まで墓地へ戻す。

 僕はエッジインプ・サイズとファーニマル・ウィングを墓地へ戻す。

 

 マジックカード、冥界流傀儡術を発動

 このカードは自分の墓地の悪魔族モンスター1体と同じレベルになるように、自分フィールドのモンスターを除外し、そのモンスターを特殊召喚する。

 僕はレベル8のデストーイ・マイスターを除外して、戻ってこい!デストーイ・デアデビル!!」

 

デアデビル「クワハハハハハッ!!」

     ATK3000→3400

 

「これで僕の墓地の天使族、悪魔族モンスターの数は3体増えた!

 ナイトメアリーの攻撃力がさらに1200ポイントアップ!」

 

 ナイトメアリー ATK9600→10800

 

「行くぞ、バトル!!

 デアデビルで賤竜の魔術師を攻撃!!」

 

 デアデビルの投げた槍が賤竜の魔術師を貫き、遊矢の横をかすめる。

 

「デアデビルの効果!モンスターを戦闘で破壊したことにより1000ポイントのダメージだ!」

 

「くっ!?」

 LP1400→400

 

(これで遊矢は手札のカード効果を使わざるを得ない。

 もしなかったら、それだけで僕の勝ちだ!)

「デストーイ・サーベル・タイガーでブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンへ攻撃!」

 

 サーベル・タイガーがクルーエル・ホエールの鎌を口に咥え、無力となったブレイブアイズに襲い掛かる。

 

「攻撃宣言時に墓地のEM(エンタメイト)コンの効果発動

 相手ターンに、このカードと墓地の別のEM(エンタメイト)モンスター、ミス・ディレクターを除外して俺のライフを500回復する。」

 LP400→900

 

「ダグ・ダガーマンの効果で捨てたカードか!でも500ポイントくらい!!」

 

「そして、ダメージ計算時、手札の」

 

(来た!)

 

 サーベル・タイガーがブレイブアイズを切り裂くと、その鋼鉄の体の中から黒煙が噴出する。

 

「な、なんだ!?」

 

 バリアバルーンバクの効果が発動したとき、黒煙など上がらない

 それはつまり、別のカードが発動したことになる。

 それを象徴するように

 

――ブウゥゥゥゥゥゥゥン!

 

 羽音が響く

 

「俺は手札のスモーク・モスキートの効果を発動した!

 こいつは俺が戦闘ダメージを受けるとき、そのダメージを半分にしてフィールド上に特殊召喚され、バトルフェイズを終了させる!」

 LP900→300

 

 スモーク・モスキート DEF0

 

 煙が収束し現れたのは口が葉巻のようになった蚊

 素良のモンスターたちはせき込んでおり、攻撃できるような状態ではなくなっている。

 

「ほんっとにしぶといね。君は。」

 

「いや、今のは結構ヤバかったぜ。

 ブレイブアイズはアルケミー・サイクルの効果を受けているから1枚ドローだ。」

 

「ちっ、カードを1枚伏せてターンエンド。

 僕のターンが終わったことで、ナイトメアリーの攻撃力はサーベル・タイガーで上がっている分を残してダウンする。

 サーベル・タイガーもクルーエル・ホエールの効果が切れる。」

 

 ナイトメアリー   ATK10800→2400

 サーベル・タイガー ATK1200→0

 

「でも僕の墓地にはデストーイの破壊を防ぐエッジインプ・サイズがいるし、ナイトメアリー自身もエクストラデッキのデストーイを除外することでこのカードを対象とした効果を発動したとき、それを無効にする。」

 

「でも、もう融合は2枚しかいないだろ?」

 

「遊矢だって、あんなにカードを使ったんだから、残り少ないんじゃないのぉ?」

 

「お生憎様、このデッキは60枚デッキだ。

 それでも後十枚少しだけどな。」

 

「60枚って、どんなデッキ組んでるのさ・・・」

 

「もちろん、勝てるように組んでいる!

 俺のターン、ドロー!

 じゃあまずはそのよくわからないカードをどうにかするか

 マジックカード、ギャラクシー・サイクロンを発動

 相手の魔法、トラップゾーンにセットされたカード1枚を破壊する。」

 

 重力の嵐が、素良のセットカードを破壊する。

 それは素良がペンデュラム対策に入れたカード、それが発動されてしまえば遊矢は勝つことができなかったであろうカードだ。

 

「奈落の落とし穴か・・・危ないものを伏せてくれる。」

 

「ちっ!引くのがもう1ターン早ければなぁ~」

 

「それは残念だったな。

 俺はスケール3のEM(エンタメイト)シール・イールとスケール8のオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱に登るのは口をバッテンシールでふさいだ鰻と、緑色の異虹彩の眼を持つ竜

 

「これでレベル4から7のモンスターをペンデュラム召喚可能だ。

 揺れろペンデュラム!異界へつながる扉を開け!ペンデュラム召喚!!

 エクストラデッキから現れろ!レベル7、相克の魔術師!レベル6、賤竜の魔術師!レベル4、EM(エンタメイト)ペンデュラム・マジシャン!EM(エンタメイト)ユーゴーレム!」

 

 相克の魔術師       ATK2500

 賤竜の魔術師       ATK2100

 ペンデュラム・マジシャン ATK1500

 ユーゴーレム       ATK1600

 

 流星に乗り異界から現れる4体のモンスター

 どのモンスターも、主のためにその力をあらん限りにささげる。

 

「賤竜の魔術師の効果で墓地の慧眼の魔術師を手札に加える。

 さらにペンデュラム・マジシャンの効果でペンデュラム・マジシャン自身とミラージュ・ドラゴンを破壊してデッキからEM(エンタメイト)リザードローとEM(エンタメイト)バリアバルーンバクを手札に加える。」

 

「何?ここでまた守る気?」

 

「いや、もう選択肢がこいつぐらいしかいないんでね。

 ここでシール・イールのペンデュラム効果を発動

 1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスター1体の効果を無効にする。

 デストーイ・サーベル・タイガーの効果は無効だ。」

 

 シール・イールからバッテンシールが飛ばされ、サーベル・タイガーにくっ付く

 ただでさえ攻撃力を剥奪されているサーベル・タイガーはシールが貼られたことで完全に崩れ落ちる。

 

 ナイトメアリー    ATK2400→2000

 クルーエル・ホエール ATK3000→2600

 デアデビル      ATK3400→3000

 ハーケン・クラーケン ATK2600→2200

 

「魔法カード、おろかな副葬を発動

 1ターンに1度、デッキから魔法、トラップカードを1枚墓地へ送る。

 俺が墓地へ送るのはトラップカードのファイナル・ギアス。」

 

「トラップを墓地に送る?

 墓地効果でもあるの?」

 

「いや、これは墓地効果も手札効果もない、ごく普通の通常トラップカードだ。

 何分圧縮したくてね。

 空いたペンデュラム・ゾーンに慧眼の魔術師をセッティングしてペンデュラム効果発動

 このカードを破壊し、デッキから貴竜の魔術師をセッティングする。

 だが、もう片方のペンデュラムゾーンにいるのはEM(エンタメイト)シール・イール、魔術師じゃないため、貴竜の魔術師は自らのペンデュラム効果により自壊する。」

 

(せっかくセットしたカードを自壊させた!?

 というか、まだデッキ圧縮するの!?)

 

「速攻魔法、異次元からの埋葬を発動、除外されているカードを3枚まで選んで墓地へ送る。

 俺はEM(エンタメイト)スプリングース、EM(エンタメイト)コン、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを墓地に戻す。

 ペンデュラムゾーンにリザードローを置いて効果発動、こいつを破壊して1枚ドロー

 そして戻したスプリングースの効果をさっそく発動

 墓地からこいつを除外して、ペンデュラムゾーンのEM(エンタメイト)シール・イールとペンデュラムモンスター、EM(エンタメイト)ユーゴーレムを手札に戻す。」

 

「融合召喚しないの!?」

 

「ガトリングール出しても、エッジインプ・サイズに防がれるだけだからな。

 俺はスモーク・モスキートの効果を発動

 自分フィールド上のモンスター1体を選択し、こいつのレベルをターン終了時までそのモンスターと同じにする。

 俺はスモーク・モスキートのレベルを賤竜の魔術師と同じ、レベル6に変更。」

 

「レベル6のモンスターが2体!」

 

「そう、俺はレベル6の賤竜の魔術師とスモーク・モスキートでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!目覚めよ!甲虫装機(インゼクター) エクサビートル!」

 

エクサビートル「うぉぉぉぉぉ!はあっ!!」

       ATK1000 ORU2

 

 出てきたのは巨大な黄金のカブトムシ

 それが変形して、人型になって大地に降り立つ

 

「エクサビートルの効果発動

 このモンスターがエクシーズ召喚されたとき、自分か相手の墓地のモンスター1体を装備して、このモンスターの攻撃力は装備したモンスターの攻撃力の半分の数値分アップする。

 俺の墓地からオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンを装備!」

 

 エグザビートル ATK1000→2250

         ORU2

 

「ん?墓地にもっと攻撃力が高いモンスターいるじゃん。」

 

「いや、実は使わなくてもいいんだけど、カッコよさげだからやってみた。」

 

 自分の生死がかかった戦いで、別段関係ないからとか、かっこいいからとか、そんなことで効果を使った意図に、さすがの素良も耐えられずに笑いがこみあげてくる。

 

「あはは、なにそれ!で、何をやるのさ。」

 

「まぁ、見ていればわかる

 手札からチューナーモンスター、ヴァレット・シンクロンを通常召喚!」

 

 ヴァレット・シンクロン ATK0

 

 現れたのは弾丸のような姿をした小型のドラゴン

 EM(エンタメイト)以外で遊矢がまともに当てたシリーズカードの1枚が、このカードである。

 

「ヴァレット・シンクロンの効果発動

 この効果の後、このターン、エクストラデッキから特殊召喚できるモンスターは闇属性に限定されるが、自分の墓地からレベル5以上の闇属性、ドラゴン族モンスターを効果を無効にして特殊召喚する!

 待たせたな、来い!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

オッドアイズP「キュオオォォォォォォ!!」

       DEF2000

 

 やっとの出番に甲高い咆哮を上げる異虹彩の竜

 だが、守備表示であり、ヴァレット・シンクロンの効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズに破壊されてしまう。

 

「ここでオッドアイズ?」

 

「ふふ、そして、俺はレベル7の相克の魔術師にレベル1のヴァレット・シンクロンをチューニング!

 受け継がれしその称号、今ここに光を超えて覚醒する!シンクロ召喚!!

 現れろ!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!!」

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)「はあっ!!」

       ATK2500

 

 光の中から現れる二振りの剣を携えた時読みの魔術師に似た白き魔導剣士

 相克の魔術師を素材にしたことで、その秘められた力が解放される。

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)が魔術師ペンデュラムモンスターを素材にシンクロ召喚されたとき、自分の墓地から魔法カードを1枚を手札に加える。

 俺はアメイジング・ペンデュラムを手札に加え発動

 俺のペンデュラムゾーンにカードはない、よってエクストラデッキの相克の魔術師と貴竜の魔術師を手札に加える。」

 

(相克の魔術師、あのモンスターはエクシーズをさらにエクシーズさせる効果があったね。

 でも、今フィールドにいるのはランク6のエクサビートル、レベル8の覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)、レベル7のオッドアイズ

 どれもばらばらで、エクシーズ召喚なんてできない。)

 

「さてあとは未来に賭けるか!

 魔法カード、EM(エンタメイト)キャストチェンジ!

 手札のEM(エンタメイト)クリボーダー、シール・イール、バリアバルーンバク、ユーゴーレムをデッキに戻して戻した数+1枚、つまり5枚のカードをドローだ!」

 

(このためにスプリングースの効果を・・・

 ここまで来てまだドローするか、次は何を狙っているんだい、遊矢。)

 

「来たぜ!魔法カード、ブーギートラップを発動

 1ターンに1度、手札を2枚捨てて、自分の墓地のトラップカード1枚をセットする。

 俺は手札の貴竜の魔術師とペンデュラム・コールを捨ててトラップカード、ファイナル・ギアスをセット!」

 

「それは、さっきの・・・」

 

「そしてエクサビートルの効果を発動する。

 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、自分フィールド上及び相手フィールド上に存在するカードをそれぞれ1枚ずつ選択して墓地へ送る。

 俺はこの効果で覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)とデストーイ・クルーエル・ホエールを墓地へ送る!」

 

 エクサビートル ORU2→1

 

「今度はシンクロモンスターを自ら墓地へ送るのか!?

 その効果にチェーンして、クルーエル・ホエールの効果発動

 エクストラデッキのデストーイ・マッド・キマイラを墓地へ送りナイトメアリーの攻撃力をアップさせる!」

 

 ナイトメアリー ATK2000→3000

 

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)がエクサビートルへ搭乗すると、その手に星の光を湛える赤き剣が出現し、その一斬は太陽のフレアのような熱を帯びて、クルーエル・ホエールを焼き切った。

 一見して無駄だらけな遊矢の行動だが、それはすべてこのカードを発動させんがためのことである。

 

「これでこのカードの発動条件が整った!

 ブーギートラップの効果でセットされたトラップカードはそのターンで発動できる!

 トラップ発動!ファイナル・ギアス!!」

 

 そのカードが発動された瞬間、墓地に眠るモンスターたちがすべて飛び出してくる。

 いきなりたたき出され、彷徨う素良のモンスターたちを遊矢のモンスターたちが熱線で焼き、魔天の光が照らし、剣で切り裂き、ある者は拳や蹴りでその魂を昇天させてゆく

 

「ファイナル・ギアスは自分と相手のフィールドから元々のレベルが7以上のモンスターがそれぞれ1体以上、墓地へ送られたターンに発動できる。

 そしてその効果は、互いの墓地のモンスターをすべて除外する。」

 

「なっ!?」

 

 デュエルモンスターズにおいて墓地とは第二の手札である。

 そして、そこに眠るモンスターたちが終盤ですべて消えたということは、優位性をすべて喪失したことに他ならない。

 事実、素良のモンスターを守っていたエッジインプ・サイズは魔天の光の中に消えていった。

 

「そして、除外された中で一番レベルの高い魔法使い族モンスターを俺のフィールドに特殊召喚できる。

 戻ってこい!覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!」

 

覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)「はあぁぁ!デュアッ!!」

       ATK2500

 

「くっ!?確かに墓地はなくなったけど、僕のライフはまだ!!」

 

「あぁ、だから俺は手札のスケール3の相克の魔術師とスケール8の相生の魔術師をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 光の柱の中に浮かぶ大盾を構えた男性魔術師と弓を構えた女性魔術師

 それは星を操り、星を与える、眠れる魔竜を呼び起こすためのキーカード

 

「相生の魔術師のペンデュラム効果発動、1ターンに1度、自分フィールド上のエクシーズモンスター1体とレベル5以上のモンスター1体を選択し、そのエクシーズモンスターのランクをターン終了時まで、そのレベル5以上のモンスターのレベルの数値と同じにする。

 俺は甲虫装機(インゼクター) エクサビートルのランクをオッドアイズのレベルと同じ7に変更。」

 

 エクサビートル RUNK6→7

 

「相克の魔術師は、エクシーズモンスターをそのランクと同じレベルのモンスターとして、エクシーズ素材にできる!?」

 

「その通り、俺は相克の魔術師のペンデュラム効果をエクサビートルに対して発動

 そして、速攻魔法、揺れる眼差し、ペンデュラムゾーンのカードは4枚、すべてを破壊し、まず相手に500ポイントのダメージを与える。」

 

「くッ!」

 LP6900→6400

 

 叩き落された振り子がハーケン・クラーケンを貫いて、破片が素良へと飛ぶ

 

「2つ目の効果でデッキからペンデュラムモンスター、降竜の魔術師を手札に加え、3枚以上破壊したときの効果でハーケン・クラーケンを除外した。」

 

「くっ!?3枚以上破壊する効果なんてあったのか・・・」

 

「もちろん4枚破壊した時の効果でデッキから揺れる眼差しを手札に加える効果があるんだが、このデッキに揺れる眼差しは2枚しか入ってないので使わない。

 そして、空いたペンデュラムゾーンに新たに降竜の魔術師をセッティング!」

 

 新たに光の柱に登るのは竜の魂をその身に宿す魔術師

 さぁ、目覚めよ、厄災の魔竜よ。

 その身に宿る業火で、亡霊となった魂を天へと還せ

 

「降竜の魔術師のペンデュラム効果で昆虫族のエクサビートルをドラゴン族に変更!」

 

 エクサビートル 昆虫族→ドラゴン族

 

「行くぞ!レベル7のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとレベル7のドラゴン族として扱うようになった甲虫装機(インゼクター) エクサビートルでオーバーレイ!

 2体のドラゴン族モンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 激情秘めたる二色の眼の竜よ、紅蓮の翼で戦場を焼き、浮かばれぬ魂を討滅せよ!エクシーズ召喚!!」

 

 星と太陽の力を持つ竜の魂を宿した甲虫巨神の熱が渦巻く炎となってオッドアイズの赤き装甲を焼き焦がし、その内から新たな深紅の鋼殻が露わとなり、雄々しい紅蓮の翼をその背に広げ、断罪の魔竜が咆哮を上げる。

 

「天を焦がせし烈火の竜!覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!!」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオオォォォォォォォォオオオオォォォォォ!!」

            ATK3000 ORU2

 

「エクシーズで・・・ペンデュラム!?」

 

「ふぅん、これでゲームエンドだ!

 オッドアイズ・レイジング・ドラゴンの効果発動!

 このモンスターがエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚されているとき、1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手フィールド上のカードをすべて破壊し、破壊した数×200ポイントこのカードの攻撃力をアップさせる!」

 

「なんだって!?でも、同時に破壊ならデアデビルの効果で君には2000ポイントのダメージが!?」

 

「言っただろ?負ける気はしねぇって、『レイジングテンペスト!!』」

 

オッドアイズ・レイジング「ギャオオォォォォォォ!!」

            ORU2→1

 

 天へとささげられた光は曇り空を焦がして大地へ落ちてくる。

 魔竜の炎が悪魔たちを燃やしてゆく、そのうちの一体の中から無数の怨霊が飛び出て遊矢に襲い掛かるが

 

「手札のEM(エンタメイト)レインゴートの効果

 自分にダメージを与えるカード効果が発動したとき、このカードを手札から捨て受けるダメージを0にする。」

 

 遊矢がカードを振るうと青い雨合羽が怨霊たちを払い

 はじかれた怨霊たちは炎の中で焼滅していく、次々と燃え尽きてゆく悪魔と人形たちの中で、最後に立っていたナイトメアリーは素良に一瞬だけ振り向き炎の中へ消えていった

 

「美宇・・・」

 

「・・・破壊したカードは7枚、レイジング・ドラゴンの攻撃力は1400ポイントアップする。」

 

オッドアイズ・レイジング「グルル・・・」

            ATK3000→4400

 

「あぁ、それと素良、柚子から言伝だ。

 悪いことしてたらぶん殴ってでも止めるってさ。」

 

「あは、それは・・・」

 

「あぁ、だから俺もとりあえず1発、いや2発ぶん殴るとしよう!

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)とオッドアイズ・レイジング・ドラゴンでダイレクトアタック!!」

 

 覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)が素良へと素早く近づき剣を捨ててアッパーで素良を宙へと浮かせ、そこをレイジング・ドラゴンが炎をまとった拳を突きつける。

 

「ぐふぅ!!まったく、容赦がないな君は・・・」

 LP6900→4400→0


「あたたた、まったく、なんで最後の攻撃がパンチなのさ?」

 

「俺が知るか。」

 

 冗談じゃなくて本当に痛い。

 壁にぶつかったのもあるけど、この世界のリアルソリッドビジョンってこんなに痛かったっけ?

 

「で、素良、これからどうするんだ?」

 

「ん~どうしよう。

 ぶっちゃけ、世界がどうとか、アカデミアとか、もうどうでもいいや。」

 

 いや、むしろ僕は最初からそんなものに興味はなかったんだ。

 生きるために必要なことだと思っていただけなんだから

 

「でも、自分の犯した罪は償うつもりだよ。

 どうやってするかはわからないけどね。」

 

 遊矢が気づかせてくれた。

 幸福な生き方をするためには、この背中の十字架は重過ぎる。

 背負ったまま、無視したまま胸を張って生きていくなんてことは僕にはできない。

 

「そうか、ん?」

 

「どうしたの?」

 

「あぁ、何でも柚子が迷子になったらしい、探しに行かないとな。」

 

 柚子が迷子?何やってるんだい、あの弟子は

 

「あぁ、柚子からは直接殴られると思うから覚悟しておけよ?」

 

「あはは、それは怖いなぁ。」

 

 遊矢は僕に背を向けて、いまだにいる赤い竜、レイジング・ドラゴンの背に乗り込む

 

「じゃあ、またな素良。」

 

「あぁ、また・・・」

 

 また、デュエルをしてくれるのか、優しいんだか厳しいんだか

 僕の夢は叶わないものだ。

 君たちと一緒に居たいだなんて、一生かけても償いきれない罪を犯している僕には到底無理な話なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、ひとつ言い忘れていた。」

 

 彼は竜の背中で何かを突然思い出したように振り向き

 

「Gotcha!いいデュエルだったぜ、素良。」

 

 二本の指で僕を指さし笑顔でそれだけ言った彼は、黄昏の空に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんだよ。ガッチャって、カッコつけちゃってさ・・・」

 

 体は動かないし、なぜかディスクの強制転送装置も動かない。

 いや、任務に失敗したんだ。

 戻ったところで再訓練、もしかしたらデッキも取り上げられるかも・・・

 

「ねぇねぇ、ここには君一人?」

 

「!?痛ぅ・・・」

 

 突然かけられた声に驚いて、振り向いてしまったけど、めちゃくちゃいたい。

 そこにいたのは遊矢によく似た顔つき、いやそんなに似てない?なんでそんなこと思ったんだろう?

 まぁ、よく見れば似ているかもといった感じの紫の男、たしかこいつは・・・

 

「ユーリ?」

 

「ん?そうだよ、僕はユーリ、君はアカデミアだろう?」

 

「あぁ、そうだけど・・・」

 

 プロフェッサー直属のデュエリスト、ユーリ

 初めて会うけど、アカデミアで勝るものがいないといわれるほどのデュエリストがなぜここに?

 

「君、柊 柚子って子、知らない?」

 

「えっ?」

 

 なんで柚子が?

 

「なんかさぁ、彼女を追って氷だらけの場所にいたんだけど、気が付いたら街の外に出ててさ。もうびっくりだよ。

 スターヴ・ヴェノムも突然消えちゃうし。」

 

 スターヴ・ヴェノム?彼のモンスターだろうか

 そうか、ここアクションフィールドが張られてたんだ、僕も遊矢も全くアクションカード拾わなかったから忘れてたけど

 ということは、一瞬で範囲外のエリアに出たってこと?

 

「あぁ、それと君がデュエルしてた相手!榊 遊矢だよね!

 どんな風だったのか教えてくれない?

 プロフェッサーがさぁ、彼と戦うのは絶対にダメっていうんだよ。

 だからさ、感想だけでも聞かせてよ!」

 

 あぁ、なんかまた変なのが・・・いや、でもこれは好都合かも

 

「いいけど、ひとつ頼みがある。」

 

「えっ、何?」

 

 僕は生き抗う、君とまた楽しいデュエルをするために




君たちはアカデミアの撃退に成功した、まさに対デュエルアカデミアのためのデュエルの戦士【ランサーズ】の名にふさわしい力を示したわけだ。

へぇ~だったら、お前の会社の持ち株15%で手を打とう

何っ!?

ただし、俺にデュエルで勝てたらな?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth 
『突きつけられた真実』
まぁ、その前に準備運動でもするか。

「CC」カード群の効果について

  • 制作したものをそのまま使用
  • 後付け効果を削除
  • メインに入るカードの後付け効果のみを削除
  • EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
  • 完全にアニメカードそのまま

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