月は徐々に地球から離れて行っているんだとか、潮の満ち引きとかがだんだん変わっていきそうですね。
「社長、沢渡とセレナが負傷したユートと黒咲を連れて帰還しました。」
「うむ、アカデミアは・・・」
「全滅しました・・・その後の行方は不明です。」
中島の報告を聞き、私は安堵する。一山は越えたと
うまくはいった。うまくはいったのだ。不気味なほどに
「内状は?」
「はっ!侵入したアカデミアは仮面をかぶったものが48人、それとは別に2名の計50人
黒咲、ユート、セレナ、沢渡が倒した9名以外ですが・・・
風魔忍者、月影と柊 柚子、それと融合次元のデュエリストと思わしき人物が共闘、それにより3名が倒されておりますが・・・同デュエリストにより権現坂道場の権現坂 昇が柊 柚子をかばい負傷。」
映像に映る、紫のデュエリスト、あれがユーリ
各次元でセレナに似た少女たちを攫っている奴か・・・
仮面の集団と一線を画す実力、そして思考、厄介な相手だ。
「謎のデュエリストとシンクロ次元のデュエリスト、ユーゴの2名によって3人。」
謎のデュエリスト、カメラにはフードを被った小柄な人物としか映っておらず、何者か不明
街を覆うほどの巨大なモンスターを召喚し、一帯のリアルソリッドビジョンを掌握していた疑いがある人物。
各映像から、どうやら敗れたアカデミアを捕縛しているようだったが、何をどうやって、どういう目的でなど一切のことが不明だ。
「ですが、戻った月影の報告によると、ユーゴは突如、柊 柚子とともに消えてしまったと・・・
同時に柊 柚子を追っていた融合次元のデュエリストの反応もロストしています。」
消えたか・・・ユーゴがどうやってこの世界に来ているのかは不明だが、もしかするとシンクロ次元にはアカデミアの使っている転送装置のようなものがあるのだろうか?
それに以前ユートも巻き込まれたとしたら瞬間移動の説明も付くが・・・不審な点が多すぎる。
いや、ユーリが消えたとなると、柊 柚子はもうこの世界にいないのでは?
「柊 柚子に関しては引き続き捜索を、ユートのように離れた場所にいるかもしれない。」
「はっ!
それと残り33人ですが・・・榊 遊矢がデニス・マックフィールドと風魔忍者、日影の両名との共闘はあったものの・・・ほぼ一人で倒しました・・・」
・・・・・奴はいったい何者なのだろうか・・・
彼を最後に捉えた映像は無限ループによって30人のアカデミアを一瞬の内に殲滅する姿
その姿はまさに圧倒という他に言葉はないだろう。
楽しませようとする気など一切ない容赦のなさ、それなのに目を奪われるほどに・・・
「いや、私にそんな・・・」
「どうかいたしましたか、社長?」
「何でもない。中島ここは任せる。」
「社長はどちらに?」
「生き残った戦士たちにねぎらいの言葉をかけてやらなければな。」
始まってしまった以上、もう引き返せないのだ。
この世界を守るために彼らの力を借り、アカデミアを殲滅する。
そのために私はこの4年を生きてきたのだから
「大丈夫でござるか、権現坂殿。」
「あぁ、問題ない。」
「だから俺一人でもやれるって言っただろ!柊 柚子似の女!!」
「その呼び方をやめろ!私はセレナだ!!」
レオ・コーポレーションの玄関前の広場にて、バトルロイヤルに参加していたメンツは集まっていた。
ユーリに負けた後、
黒咲とユートを医務室に運び込んだ沢渡とセレナが再びアカデミアを倒そうと出てきたところで鉢合わせになったのだ。
「これは・・・勢ぞろいでござるな・・・」
「おぉ!!兄者!!無事でござったか!!
ん?その背の御仁はどうしたのでござる?」
「あぁ、なんというか・・・」
勢ぞろいしたこの場にデニスを背負ってやってきた日影は月影からの質問に困っていた。
騒がれると面倒だからと遊矢に気絶させられたままのデニスであるが、遊矢がなぜそのようにしたのか意図が分からなかったからである。
ただ直感で、遊矢がデニスに何かしらの警戒心を抱いていることを見抜いていたために、口ごもったのである。
――ゴオォォォォォ!!
――ん?
空から聞こえる轟音、それに目を向けるとそこにいたのは厄災の魔竜
もちろんそんなものに乗ってくるのは
「遊矢!」「「遊矢殿!」」「榊 遊矢!」
「やぁやぁ、皆の衆、無事で何より・・・」
魔竜を消して下りてきたのは、いつものふざけた調子の遊矢
その彼に一人、イマイチ状況をつかめていない権現坂が質問する。
「遊矢、いったいどうなっておるのだ?
ミエル殿に言われるがままにお前とよく似たやつと戦ったが、俺は状況をよくわかっていないのだ。」
(俺とよく似たやつって・・・ユーリか・・・
この感じからすると負けたみたいだが、ミエルが何とかしてくれたみたいだな。
よかった。)
「あぁ、どうもな」
「それは、私が説明しよう!」
声のした方に全員の注目が集まる
そこにはいつの間にか、レオ・コーポレーションの玄関に手を腰にやり、赤いマフラーをたなびかせる赤馬 零児が立っていた。
「君たちのデュエル見せてもらった。
よくぞ、侵略者たちを退け生き残ってくれた。
君たちこそ、『ランサーズ』の名にふさわしい。」
「「ランサーズ?」」
まったく意味の分からない権現坂と、怪訝な顔をする遊矢
それを見越して、零児は説明を続ける。
「私は4年前、偶然にも次元転送装置を使いこの世界とは違う次元世界、融合次元へと渡った。
そこでは私の父、赤馬 零王が多次元への侵略のための軍隊を作っており、私はこの世界、スタンダード次元を守るため、対アカデミアのための部隊、Lance Defence Soldiers、略してランサーズを組織し、攻勢に打って出ることにした。
そして、昨日、融合次元からそこにいる少女、セレナが訪れたことにより、アカデミアの来襲を予期した私は、ジュニアユースクラスの3回戦をトーナメントから街中でのバトルロイヤルに変更し、君たちの力で敵を撃退しようと考えたのだ。」
「へぇ~なるほど、だからバトルロイヤルのルールがあんなに“雑”だったわけだ。」
――ピクッ
「君たちはアカデミアの撃退に成功した。
まさに対アカデミアのデュエルの戦士『ランサーズ』の名に、ふさわしい力を示したというわけだ。」
遊矢の物言いに頬を引くつかせながらも、ランサーズに迎える面々を賞賛する零児
だが困惑する権現坂の隣の遊矢はあきれ顔だ。
「なぁ、社長?
ランサーズって槍機動部隊とかいう意味かな?」
「そうだ、ランサーとは馬を駆り、槍を掲げて敵陣へと突っ込む槍騎兵のこと。
アカデミアを殲滅をすることを目的とした最強の部隊だ。」
「・・・なぁ、まさかとは思うが、そのランサーズってここにいる奴らだけだったりしないよな?」
「いや、この戦いで負傷したエクシーズ次元からのデュエリスト2名に加え、私の弟、零羅も加わる。」
ここにいるのは遊矢と零児を含め8人、さらにそれに加えて3名で11人である。
「・・・ほかに現地での支援部隊とかは?」
「・・・ない。」
零児もばつの悪そうな顔をしているが、遊矢はかなり冷ややかな視線を彼に送っている。
「話にならないな。
槍騎兵ってただの突撃部隊のことかよ。しかも支援なし?
ふざけてんのかよてめぇ。」
「ぐっ!?」
「いいか?まず戦争する気があるのなら一番大事なのは兵站だ。
食料、拠点、移動手段、その他もろもろ要るのに何もなしはないだろぉ?
さらに言えば、槍騎兵っていうのは、弓とか投擲とかの支援の後、混乱している敵に突っ込んで陣形を崩させ、そのあとに白兵戦ができる部隊が掃討することで勝ち筋が見えてくる業種なんだ。
それを11人、うち一人は小学生ときた。無茶を言うなよぉ。
混乱していない敵に真正面から突っ込んだら、長槍で串刺しにされるか鉄砲で撃たれるか、敵の中に入って孤立したら横槍につかれて死ぬか、馬がやられて落とされた後に袋叩きにあう。
っていうか、そもそも敵より速い馬っていうのはあるんだろうな?」
「・・・・・・」
「ないみたいだな。
兵站書どころか、歴史の教科書を読み返した方がいいんじゃねぇの、天才さん?」
まくしたてる遊矢に権現坂、日影、月影は同感していた。
4人とも歴史好きで各好きなジャンルは違うものの、ネット掲示板で話し合うことがあったからだ。
なお、沢渡とセレナは話についていけていない。
「・・・我々には・・・アクションカードが、アクションデュエルがある。」
「はぁ?アクションデュエル?」
言われるがままの零児が絞り出した反論がそれだった。
「アクションデュエルは、他の世界にはないこの世界の独自のモノだ。
そして、君が発現させたペンデュラム召喚、それを組み合わせれば『そんなことで勝てると思っているのか?』
「「「「「「「!?」」」」」」」
零児は遊矢の真紅の瞳に見つめられている。
その視線の中にあるのは侮蔑と軽蔑、そして怒りだ。
その怒りに当てられた面々は、知っているものなら戦々恐々として、知らぬものは恐怖する。
「俺に相手がよくわからないルールで戦えというのも気にくわないが、それ以前にアクションデュエルは相手もアクションカードが使えるということを忘れているのか?
手品みたいに、タネさえ分かってしまえば、誰でも使えてしまうものをどうしろっていうんだ?
肝心な時に回避だの、奇跡だの連発されてしまえば、リスクを負うのはこっちだぞ?」
「ぐぅ・・・」
「おまけにどれだけペンデュラムを信用しているんだ?
あいつらも融合を使えるから強い、エクシーズを使うから弱いとか、うだうだ言っていたけどさぁ?
そんなもの関係ないだろ?使わなくても強いやつは強いし、肝心なのはそのカードを、デッキをどれだけ使いこなすことができるかだ。」
「だったら・・・」
零児に、もはや反論できることはなかった。
彼は強者であるがゆえに、臆病になることができなかったのだ。
ゆえに目の前の
「だったらどうしろというのだ!
このまま指をくわえて、滅ぼされるのを待てというのか!!」
彼は4年もの間をこのために費やしてきた。
だが、その期間では他次元のデュエリストに対抗する人員を育てるには短すぎたのだ。
彼が元々のランサーズの候補としていた制服組や講師たちでも、ユートと黒咲に対抗できるものはほんの一握り
ゆえに精鋭を別に募る必要があったし、新たな戦術とカードにすぐに適応できた一騎当千のデュエリストを求めたのだ。
「じゃあ、お悩みの社長に良い手を提案してやろう。
打って出るってことは、次元を移動する手段があるんだろう?
だったら、世界中の爆弾をかき集めて融合次元の月を爆破して破壊してしまおう。」
「・・・はっ?」
零児は遊矢の言ったことで一瞬フリーズした。
遊矢が提案したのは戦うことではなく、滅ぼすこと
慈悲も何もない、悪魔の所業である。
「月を爆破して、その破片が地上に落ちれば大惨事
なまじ生き残りが出たとしても、環境が変わって人の住めない星になる。
おまけに月の重力がなくなれば計器や電子機器にも異常が出るはずだから、おそらく次元転送装置で他の次元に逃げることもなく全滅させられる。」
淡々という遊矢に唖然とする面々だが、一人怒りに燃えるものがいた。セレナである。
「キサマ!!それ以上の妄言は私が許さんぞ!!」
遊矢の胸ぐらをつかみ、激昂するセレナであるが遊矢は表情一つ変えない。
「妄言?違うな。
俺は確実かつ、こちらに被害が出ない形で、そこの社長の言う殲滅できるプランを提案しただけだ。」
「なっ!?」
「というか俺が思うに、もはや融合次元は後腐れがないように、滅ぼすしかないレベルになってしまっていると思う。」
「なん・・・だと・・・!?」
「ユートから聞いた範疇の話だが、アカデミアはエクシーズ次元に対して金や労力では賄いきれないレベルのことをしている。
この次元戦争が収束しても、エクシーズ次元には禍根と怒りが残り、今度はエクシーズ次元側から融合次元に対しての戦争が始まるだろう。
そっから先は泥沼だ。互いが互いを恨み合う戦争が始まる。」
人は皆が聖人ではない。
そして許すことができるものよりも、許すことができないものの方が多いのだ。
「それに融合次元の・・・いや、アカデミアの感性がイカレている。
人間っていうのは同族を殺すことに対して多大なストレスを覚えるから、殺すことにためらいを覚える。
だが、あの仮面の連中とユートの話に出てきた連中は嬉々として人を襲っている。
おおかた、そういう風に教育されたんだろうな。
だとすればだ、戦争が終わった後、そいつらはどういう行動をとると思う?」
「どういう行動、だと?」
セレナに学はない。
もとは孤島の漁村の孤児であり、もとより簡単な教育しかされておらず、アカデミアに入ってからも箱入りにされていただけだ。
ゆえに、戦争が終わった後の狂人の行動など予測がつかない。
「そういう輩がどういう行動をとるかは2パターンだ。
自分の行いに罪悪感が芽生えて、陰鬱になるか
殺しの、あ、いや、人をカードにする快楽が忘れられずにまた人を襲うかだ。」
「なっ!?」
「融合次元内でそういう輩が量産されているなら、赤馬 零王がいなくなった途端そいつらが爆発する。
そうして、融合次元内で人をカードにしたい連中と、まともな人間の間で戦争が始まる。もしくはまた他の次元に対して戦争をし始める。
かといって、超個人的な理由で戦争をしているであろう赤馬 零王は〆ないとこの戦争は止まらない。」
融合次元において、独裁者である赤馬 零王は今やストッパーだ。
それを外してしまえば、融合次元に未来はない。
だが、赤馬 零王を止めるには叩き潰すしかない。
赤馬 零王のしでかしたことは、融合次元自体も危険な状態にしてしまっている。
「あぁ、でもユートやユーゴのいい人が囚われてるんだっけか?
だったら、まずはそいつらを攫う算段と・・・ついでに素良もつれてこなくっちゃなぁ~」
遊矢は囚われのお姫様と約束をした友をどうやって連れ出すかを考え始めるが、他の融合次元の住人に対しては諦めてしまっている。
どうやっても戦争の火種にしかならないのなら、文字通り殲滅するしかないのだ。
「まぁこれは極論で、あくまで最終手段だ。
でも、とりあえず、赤馬 零王は最低さらし首にでもしないとエクシーズ次元の住人の溜飲が下がらない。
異常な性癖を開花させてしまった連中は、処分しないと閉じ込めるにしてもオープンにするにしても危険だし、戦後のことを考えるときりがない。
戦争っていうのはゲームみたいに悪いやつを倒してハイ終わりっていうわけにはいかないんだよ。」
零児もセレナも、赤馬 零王を倒せばこの戦争は止まると考えていた。
そしてその後のことなど考えていなかった。
のちの禍根を絶たねばならぬことなど考えていなかったのだ。
だが、小心者で心配性な遊矢は、常に最悪を想定する。
「なぁ、榊 遊矢。
俺に小難しいことは分っからねぇが、ムカつくやつをそのままにしておくわけにもいかねぇってのはわかる。
でもよぉ、お前にそこまで言わせるナニカが奴らにあるのか?」
沢渡は遊矢との付き合いは比較的短い方だが、普段と違いやたらと攻撃的であることに違和感を覚える。
「さすっが、察しがいいな沢渡さん
まぁ、言葉でいうよりも実際見た方がいいだろう。
ミエル!どっかにいるんだろ?出て来いよ。」
「お呼びですか?我がマジェスティ。」
遊矢の背後からニュッと出てきて傅くローブの少女、あまりにも唐突に出てきたので初めて見る面々は驚愕する。
だが遊矢にとってはいつものことなので、特に驚きもせずに要求を言う。
「お前が捕えているアカデミアの蟲どもをここに出せ。」
「仰せのままに。」
――パチンッ!
ミエルの指パッチンの音に反応して、レオ・コーポレーションの前の遺跡のレンガのように見えるソリッドビジョンが無数の赤黒いミミズ、
(あれは、ユーゴと共闘した謎のデュエリスト!?
榊 遊矢の関係者だったのか・・・!?)
ドームが崩れ、
遊矢はその内、最も端で倒れているオベリスクフォースに近づく
「これが理由だ。」
――ガッ!・・・・コンッ・・コン・・・
遊矢はオベリスクフォースの被っている仮面を蹴飛ばす。
すると、そのオベリスクフォースの体は痙攣しだして
「う・・・が・・あああぁぁっぁぁぁ――キシャアアアァァァァァッァアッァァァ!!
「「「「「「「!!?」」」」」」」
何だあれは!?
いや、あれはさっきも見た。
オベリスクフォースの仮面の下から覗いていた触手だ。
オベリスクフォースの顔を覆うようにして顕現する長い尾の生えた赤いダニのようなモンスター
それは、苦し紛れに遊矢へととびかかるが
「フンッ!!」――グシャァ!
遊矢によって蹴りつぶされる。
「今のは・・・いったい・・?」
赤馬社長が困惑とともにその言葉を吐き出す。
それは僕だって聞きたい。
「ソリッドビジョンを使った寄生虫、いや洗脳装置ってところか?
疑似体感システムの微弱電流を悪用したものだろう。」
疑似体感システム
それはモンスターからの攻撃や効果によるダメージを疑似再現するために微弱電流を流して脳に錯覚を覚えさせるシステム。
デュエルモンスターズのソリッドビジョンのシステムには必ずついて回るモノだ。
それを使って洗脳?・・・アカデミアが!?
「アカデミアが・・・そんな・・!!赤いの、後ろだ!!」
セレナが声を上げると彼の後ろのオベリスクフォースたちの仮面がさっきの蟲へと変化して、その触手を全身へと伸ばしていく
――ザガギyヴヤ、マザzzズ・・・
――ミラrrエタ・・ミナゴロジ・・・
言葉になっていない言葉を呟きながら、さっき仮面を蹴り飛ばされたのと焼け焦げている3人以外のオベリスクフォースだったものが次々に立ち上がる。
「見られたら皆殺し・・・やっぱり見られちゃまずいものだったみたいだな。」
「お手伝いしましょうか?我がマジェスティ。」
「いや、後ろの連中を頼む。」
――キシャアアァァァァァァぁぁッぁぁx!!
「準備運動にはちょうどいい!!」
一番前にいた奴が遊矢に殴りかかるが、遊矢はそれを受け流し、手首をつかんで背後にあった石柱にその拳を叩きつける。
石柱にはひびが入り、それに勢いのまま叩きつけられた拳は無事ではすんでいないが
「ギャアアァァァァァァァァ!!」
そんなことはお構いなしに血濡れの拳で遊矢へ再び殴り掛かる。
「宿主のことはお構いなしか!質の悪い!!オラァ!!」
遊矢は身をかがめてその拳を躱し、足払いでそいつを宙へ浮かせると回し蹴りで迫っていた他のオベリスクフォースへと蹴り飛ばす。
「召喚!
何を思ったのかデュエルディスクを起動させ、剣のような魚のモンスターを召喚するとその魚は本体を除いてオベリスクフォースたちと同じ数、35匹へと増殖し、増殖した魚たちがオベリスクフォースたちへと突撃、その肩や足へと突き刺さる。
――ギャアアァァァァァァァァ!!?
「なるほど、デュエルモンスターズの力の方が効くみたいだな。
それなら、ペンデュラムゾーンにスケール3の相克の魔術師とスケール8の
手札を2枚捨て2枚ドローし、来い!
ロングフォーン・ブル「ブモオォォォォ!!」
二本足で立つ青い水牛がラリアットをしながらソード・フィッシュが突き刺さった苦しみで悶えていたオベリスクフォースたちを跳ね飛ばす。
「ロングフォーン・ブルの効果でデッキから
現れろ!レベル6、
ミス・ディレクター「はっ!」
オッドアイズP「ギャオオォォォォォォ!!」
流星に乗って現れる女ディレクターと異虹彩の赤い竜
「ミス・ディレクターの効果で墓地のレベル1モンスター、
出撃だ!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」
――ドドドドドドドドドドドドドッ!
光の中から現れた黒い戦闘機が、立ち上がろうとするオベリスクフォースたちを機銃でかく乱し
「さらに墓地の貴竜の魔術師の効果でオッドアイズのレベルを3つ減らし特殊召喚!」
貴竜の魔術師「はっ!」
「レベル4となったオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンにレベル3の貴竜の魔術師をチューニング!
現れろ!オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!」
オッドアイズM「ギュオオォォォォォォ!!」
「メテオバーストの効果でペンデュラムゾーンのドクロバット・ジョーカーを特殊召喚
そして、ダーク・ダイブ・ボンバーの効果でメテオバーストをリリースしてそのレベル×200ポイントのダメージを相手に与える!」
赤い竜は星の炎を身に宿して、慌てふためくオベリスクフォースたちを炎で焼いてゆく
――ギャアアアアァァァァァァ!!
「まだだ!レベル4のロングフォーン・ブルとドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ!
現れろ!竜魔人クィーン・ドラグーン!!」
クィーン・ドラグーン「ふんっ!」
混沌から現れる半竜半人の女王
その力は、眠る竜を呼び起こす。
「オーバーレイユニットを1つ使い墓地より、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンを特殊召喚!
そして、レベル7のダーク・ダイブ・ボンバーとメテオバースト・ドラゴンの2体とランク4のクィーン・ドラグーン1体でそれぞれオーバーレイ!
現れろ!オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!旋壊のヴェスペネイト!!」
オッドアイズA「グオオォォォォォ!!」
星の炎を身に宿した竜は絶対零度の冷気を身にまとう竜へと変化し、竜人の女王は巨大な機械の蜂へと変わる。
「さて、そろそろ締めるか、フンッ!!」
遊矢は手に持ったソード・フィッシュをオベリスクフォースへと投げつける。
「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンの効果!
オーバーレイユニットを1つ使い、ソード・フィッシュの攻撃を無効にする。」
投げられたソード・フィッシュはその前に現れた氷柱へとぶつかり、空へと弾き飛ばされる。
だが、そこには大量のソード・フィッシュがオベリスクフォースたちを捉えていた。
「その後、墓地のオッドアイズモンスター、メテオバースト・ドラゴンを特殊召喚
そして、ソード・フィッシュの効果により、俺の特殊召喚した回数につき600
12回の特殊召喚に成功したので、はじめと合わせて7800ポイントお前たちの攻守は下がる。」
星炎の竜が再び顕現したのを皮切りに、無数のソード・フィッシュたちがオベリスクフォースへと突貫、全身へ突き刺さる。
――ぎゃああアアァァァァァァッぁぁァAAA!!
「これで決まりだ。
アブソリュート、メテオバースト、ヴェスぺネイトで攻撃!!」
アブソリュート・ドラゴンが絶叫を上げるオベリスクフォースたちの全身を凍らせ
ヴェスぺネイトが巨大な削岩機へと変形し、それをメテオバースト・ドラゴンが炎を吐き出して飛ばす。
星の炎を纏って、進撃する破壊の螺旋は凍り付いた蟲を粉々にし、オベリスクフォースのかぶっていた仮面が砕ける。
ここにアカデミアの誇る精鋭部隊オベリスクフォースは本当の意味で壊滅した。
「ゲームクリア、って、ところか
さて、アレは無理やり洗脳で動かしている感があったが、一般兵に関してはあの蟲で思考誘導されているだけだと思うから、あの蟲を除去しても性格が治らない。
もしくは・・・」
「ぐっ!!・・・あぁ?・・・・あぁ・・・・・・・」
遊矢は倒れ伏したオベリスクフォースの一人を起こして気付けをする。
だが、そのオベリスクフォースの男はここが何処なのかわかっていない、いや、自分が何なのかわからないといった様子で、虚空を見つめてうめき声をあげている。
言葉すら忘れてしまったようだ。
「はぁ~長い間、脳みそいじくりまわされていたら、こうなるわな・・・」
「どういうことだ?」
セレナが青い顔で質問する。
当事者としては当然の反応だ。
「あの蟲を使って脳内麻薬を調節してたりしてたんだろうけど、この調子を見ると記憶もいじくられているみたいだな。
人間らしい生活は二度とできないだろう・・・」
「そんな・・・!?」
「これほどひどくはなくても、頭がパーになっている可能性が十分ある。
社長さん、こいつら全員の面倒見れるか?言っておくが、世界全体かもしれないぞ?」
「・・・・・・」
零児は何も言えなかった。
もはや彼の頭では目の前で起こったことへの処理が追い付かなかったのだ。
「とはいっても、柚子も俺もアカデミアから狙われている以上、潰すことは確定だ。
だがぁ、赤馬 零児、お前の下につくのはごめんだね。」
「なんだと?」
「だって当たり前だろ、お前の作ろうとしているランサーズとやらだが、その中に・・・」
遊矢は足首だけで跳び、地面をすべるようにして移動する。そして
「ネズミが沸いている。」
デニスを蹴り飛ばす。
「ぐわああぁぁぁぁぁ!!」
デニスの懐にあったデュエルディスクは砕け散り地面に散乱し、デニスもゴロゴロと転がる。
「ぐぅ・・どうして・・・」
「分からいでか、さっきから気絶した振りしてるくせにチラチラ見やがって、大根役者が。
それにそこのセレナと同じ、青い顔してたしな。」
「はは・・・やっぱり・・君には・・・かないそうに・・ないな・・ぁぁ・・・」
突然の裏切り者の発覚、そしてそのデニスを運んできた日影が遊矢に声をかける。
「遊矢殿、彼は・・・」
「まぁ、ユートの話からしてアカデミアが間者を送り込んでいることは十分予想ついていたからな。
そしたらこいつ、バトルロイヤル中、ずっと俺についてくるし、友達になろうとか言っている割にギラギラしたゲスい目をしてたからな。
まったく、ゲスは1人で十分だっつうの。」
あっけらかんと言う遊矢であるが零児の心境は芳しくない。
自分の作ろうとしていた精鋭部隊にアカデミアの間者がいたのだ。
ともすれば、次元を渡った先で後ろ玉で全滅していたことだろう。
「駄目じゃないか、精鋭っていうなら経歴ぐらい調べなきゃ
それで二つ目の理由だが・・・まぁ、これは俺の個人的なものなんだが・・・」
そこから先の言葉は零児にとっての禁句だ。
零児自身が分かっていても気づきたくなかった事実だ。
「赤馬 零王と同じ思考をしている、お前が信用できない。」
「なん・・だと・・・!!」
私があの男と同じ・・・?何をふざけたことを!!
「だってそうだろ?
お前が社長になってから3年ぐらいたつが、その間に海外含め、多数のデュエル塾の買収
そのころから、いや、それ以前からランサーズの構想があったというなら、それはランサーズに足るデュエリストを育てるため。
戦争のための兵隊を子供を使って作ろうとしてたんだ、それが赤馬 零王のアカデミアという組織構造と何が違う?」
「!!?」
「なんだぁ?わかってなかったのか?
それに3年以上かけた計画のわりに、兵站も支援も一切ない行き当たりばったり、戦争が終わった後のこともまったく考えてない。
そのあたりも赤馬 零王と一緒だ。
行き当たりばったりの私的な目的のために、世界を巻き込んでいる狂人となぁ?」
榊 遊矢は赤馬 零王が私的な目的のために次元戦争をしていると予想している。
そんな奴と私が同じ・・・
「兵を使い潰す可能性のある将がいる部隊なんぞ、絶対にごめんだ。
俺はここに転がっている連中と同じ末路を辿りたくないからな。」
榊 遊矢の周りに転がる死屍累々のアカデミアの兵士たち
うめき声をあげ、虚空を見つめ、その手足をじたばたとあてもなく動かしているところを見るに体の動かし方すら忘れてしまっている。
自分が何者かを失い、言葉をなくし、立つことすらできない彼ら・・・これが私の生み出すモノ・・・
「ちがう・・・私はただ、世界のために・・・」
「こいつらも言ってたよ。
アカデミアは世界のために、正義のために戦っているってな。」
・・・ちがう
「いい言葉だよなぁ?
そんな綺麗言をほざいていれば、何をやっても許される免罪符になってくれる。」
ちがう・・・
「お前は赤馬 零王の辿った道を後ろから付いて歩いているだけだ。
そんな奴が、奴の前に立ちふさがれると思っているのか?
いや、立ちふさがれても後のことも先のことも、失敗することも考えてないようでは、止めることなんてできはしない。」
ちがう・・ちがう・・ちがう・・・
「正義の味方を気取って戦争ごっこをしているだけのお前には、何も守ることはできない。」
違う!!
「違うんだあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
零児の絶叫がこだまする。
「零児・・・」
「「赤馬殿・・・」」
「社長・・・・」
「赤馬 零児・・・」
その見せたことがない弱弱しい姿にその場の全員が絶句する。
零児は常に真っすぐ、正しいと思った道を生きてきた。
だが真っすぐすぎた彼は父親のしいた道の上から抜け出せず、知らず知らずのうちにその道の上を歩き続けていたのだ。だが
「僕は母さんを悲しませる、あいつを絶対に許さない!!
優しかった母さんを!変えてしまったあいつを!絶対に!!」
そう、それが零児の本音
ただ、優しかった母を取り戻したいがための子供らしい願い。
「それがお前の心の闇か・・・」
もはや、零児が被っていた強者の仮面は剥がれ、そこにいたのはただ母を悲しませる父が許せないと駄々をこねる子供だった。
それを聞いて遊矢は
「ふふふ、ははは、あーはっはっはっ!!」
笑った。
「いいねぇ!いいねぇ!正義だの、世界だの言いだすエゴイストよりよっぽど信用できる!」
「えっ・・・?」
「どちらにせよ。
赤馬 零王に一発かまさないといけないのは変わらないし、柚子を迎えに行かなくちゃならないんだ。
最初からお前が持っているであろう、次元転送装置を使わせてもらう予定だったけど、いいぞ!お前の言う部隊に入ってやる!」
遊矢にとって大事なのは自分とその周りである。
ゆえに害するものには容赦がないし、害ある可能性を持つものは排除しておきたい心配性の小心者である。
世界のためとか、正義のためとか、そんな自分にとってどうでもいいことでは彼の心は踊らないのだ。
「あぁ、傭兵の代金としてお前の会社の持ち株15%を前金としてもらおうか?」
「なぁっ!!?」
「何を驚いているんだ?
兵にはちゃんとした見返りを払ってこその軍だろう?
もっとも、お前の下についてお前の命令を聞くかは別問題だが。」
「くっ!だったら・・・」
どうしろと続けようとした零児だが、それは遊矢によってすぐに提示される。
「デュエルしろよ。
赤馬 零児、お前の本当の本気、全力をぶつけてこい!
あぁ邪魔が入らないよう、スタンディングデュエルでな?
お前が勝ったら、俺は潔くちゃんとお前の部隊の一員として働こうじゃないか。ただし俺に勝ったらの話だがぁ?」
それは安易に負ける気がないから好き勝手やると言っているようなもので、あからさまな遊矢の挑発である。
だが、散々言われ続けて、隠しておきたかった弱い自分をさらけ出されてしまった零児はついにプッツンした。
「いいだろう!さんざんの暴言!!
その減らない口を縫い付けてやる!!」
「ははっ、糸と針の準備はできているかぁ?」
『『
ただいまぁ~あれぇ?プロフェッサーいつもそばでイヒイヒ言ってる気持ち悪いやつはどうしたの?
ユーリか・・・ドクトルなら、突然全身に剣が刺さったような痛みに襲われたあと、凍傷とやけどが全身にできて治療中だ。
へぇ~何があったんだろうね?
分からん。だがどうせあいつのことだ。
変な実験をして、副作用でも出たんだろう。
で、柊 柚子は連れてきてくれたのかい?
いや、見失ったから、帰ってきた。
後、例のオベリスクフォース全滅したよ?
なにっ!?
そこまでショックを受けることかなぁ~
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『顔をなくした道化』
さて、どうやって榊 遊矢とデュエルしようかなぁ~
「CC」カード群の効果について
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制作したものをそのまま使用
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後付け効果を削除
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メインに入るカードの後付け効果のみを削除
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EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
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完全にアニメカードそのまま