遊戯王ARC-V Rーe:birth   作:深海の破壊大帝

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ARC―Vの貧乏描写って中途半端なんですよね。
シンジはちゃんとしたライダースーツ着てますし、なぜかクロウの家の常備食がカビが生えやすく割と高い食パンですし、一斤を4人で3、4日かけて食べたら・・・う~ん、普通に栄養失調でアウトのような気がする・・・何食べてたんだろ?
お菓子も保存食になるクッキーとかも全部食べてましたし・・・

お久しぶりです。
納得いかずにリテイクばっかりしてたので、時間がかかっていました。
フレンドシップカップへの中継ぎ話です。



白からの依頼

 『クロウ・ホーガン』

 遊戯王第三作、遊戯王5D’sの主人公、不動 遊星の幼馴染にして親友

 OCGにおいても一世を風靡した超速シンクロデッキ、ブラックフェザーデッキの使い手

 無鉄砲なところはあるが子供好きでお人よし、その所為かいろいろと苦労する場面もあったキャラだ。

 

「あぁ!?クロウ!お帰り!もう!心配したんだよ!!」

 

「あぁ、すまねぇな。アマンダ・・・」

 

 褐色肌の赤髪の女の子、アマンダがクロウに抱き着く

 まぁ、話を聞いてみれば昨日の夜から帰ってなかったみたいだしそりゃ心配するよな・・・

 

「あぁ!!クロウ!」

 

「お帰りクロウ兄ちゃん!」

 

「フランクとタナーも、心配かけちまったみてぇだな・・・ごめん。」

 

 緑髪の生意気そうな顔をした少年、フランクと水色の髪をした他の二人よりも幼そうな少年、タナーも家から出てきて、クロウに抱き着いた。

 子供好きで世話好きなのは変わらずか。

 

「あれ?クロウ、そいつ誰?」

 

 フランクが一足先に冷静になったのか、俺に気付いた。

 

「あの人がクロウの探していた人?」

 

「いや、あいつはロゼ、ちょっといろいろあってよ。

 この街に来たばかりらしぃんだが、泊るところないっていうんで連れてきたんだ。」

 

「あぁ、またクロウのいつものか。」

 

「よく拾ってくるよねぇ~?」

 

 俺は猫か。

 

「お初に、俺はロゼ

 ちょっと人探しにこの街に来ているデュエリストだ。」

 

「私、アマンダ!」

 

「僕、タナー!」

 

「フランクだ。

 なぁ、お前、デュエリストってことは強いのか?」

 

「ん?まぁ、クロウに勝てるぐらいにはな。」

 

 大分ぎりぎりだったけど

 

「えぇ~クロウ!?人探しに行ったんじゃなくてデュエルしてたの?」

 

「ち、違うって、人探しで疲れて倒れた俺を介抱してくれたんだよ。

 で、助けたついでにデュエルしろって言われたからさ。」

 

「で、負けちゃったの?」

 

「嘘だぁ~クロウ兄ちゃんが負けるはずないじゃん。」

 

「だったら俺とデュエルだ!

 クロウに勝ったのが本当か、確かめてやる!!」

 

 慕われているねぇ~まぁ、勝ったのは事実だし、どうしようもないんだけど

 こういう負けん気は嫌いじゃない。

 

「いいだろう。だが、その前に・・・」

 

 ザリガニの下処理からだな。


「首尾は?」

 

「駄目だ。一般に出回っている以上の情報がどこにもない。」

 

「そうか・・・」

 

 スラム街の一角、誰も使うことがなくなった廃ビルの中で零児、ユート、黒咲が会合していた。

 融合次元の関係者であろう治安維持局の長官、ジャン・ミシェル・ロジェの情報を集めていた。

 

「だが、どうなっているんだこの街は!

 台の上のビル街や、その下のスラム街はまだしも、さらにその下に闘技場やごみ処理施設があるとはどういうことだ!?」

 

「あぁ、闘技場はあのバイクに乗ったデュエルで賭け事をしていたようだが、ごみ処理施設の方は酷かったな。

 ただ、掘って作っただけの空間で延々とごみ処理を続けさせられている人々・・・

 あれでよく崩落しないな・・・」

 

「そのごみ処理施設は、軽犯罪者の流刑地らしい。

 崩落しようとかまわないということなのかもしれぬな。」

 

 ロジェを引っ張り出す方法が見つからないので、この街について話し合う三人、だが誰も来ないはずのこの場に近づくものがいた。

 

「ホ、ホ、ホ、見てくれはあれじゃがアレは結構頑丈に造っておるのじゃよ?」

 

「「「!!?」」」

 

「おぬしたちかの?ユーゴについて調べてまわっておるのは?」


「うめぇ~!!」

 

「うん、美味しい!」

 

「ちょ~ウマだよ!」

 

「はい、お粗末さん。」

 

 帰りの途中で何を買ってんのかと思えば、玉ねぎとケチャップなんかの調味料と小麦粉

 川で大量にとってきたザリガニとで何を作るのかと思えば、エビチリ、いやザリチリ?

 それとブラックバスの骨をあぶったやつや玉ねぎの皮を炒ったやつで出汁を取ったスープに、水、小麦粉、塩だけで作った簡単なクレープ

 いつもの缶詰買ってきて、パンに挟んで食べるのとは大違いだ・・・

 

「ありがとうな。飯まで作ってもらって。」

 

「いいさ、一宿の恩ってやつだ。」

 

「ロゼ、お前すげぇな、デュエルは強いし、料理もできる。」

 

「そうそう、うちのクロウとは大違い!」

 

「それはどういうことだゴラァ!」

 

 まったく、にしてもホント変わったやつだぜ。

 こんな食えそうにないものを、うめぇ料理にしちまうなんてよ。

 

「あぁ、なにしろ俺にはよく山籠もりに行く親友がいてね。

 それに付いて行って、よくキャンプしたりしたんだよ。

 料理上手な奴とか、釣り上手な奴とかも巻き込んでな。

 で、そんな奴らと苦心して、取ったモノをうまい料理にするためのレシピを考えたんだよ。」

 

 変わった奴の親友も変わった奴だな・・・なんだよ、山籠もりって・・・

 

「どうしてそこまでするんだよ?」

 

「ん~せっかくだから、うまいものが食べたいっていうのが第一だな。

 まずいもので腹膨らましても疲れるだけだし、美味しく食べる方法があるならちょっと手間がかかってもその方がいい。

 それにこのザリガニだってそうだが、淡水の水生生物には大体寄生虫がいるからな。

 安全に食べるためにも、手間は惜しむべきじゃない。

 後は栄養が取れれば万々歳だ。」

 

 栄養、俺たちコモンズにそんなもん考えている暇はない。

 パンなんかは安く売られたり、配給されたりするが、基本的には食うもんに困っているありさまだ。

 だが、こいつは街に流れる川で取ったモノでうまくて腹が膨らむモンを作っている。

 

「普通の料理に使わない野菜の皮とかにも栄養があるから、きんぴらにして食えるようにしたり、出汁やらにしてスープに溶かし込んだら無駄がないし、丈夫な体になるにはいろいろ食うのが一番だ。

 まぁ、野食をするときは捌いたりなんかの下処理も、有毒物を避ける知識もいるから知らずに何でも取って食うのはお勧めしないけど。」

 

 知識、俺たちコモンズにそんなものを求められてもな・・・

 さっきだって買ってきた小麦粉と水で作れる、うどんだとかフライパンで焼けるパンだとかのレシピを貰った。

 ありがてぇが、今までこういうことをしなかった俺が情けないぜ・・・

 

「この時期ならセミが捕まえやすくて、下処理とかが面倒なく食べられるからおすすめだな。

 キノコには絶対手は出さない方がいい、野草とかも見た目がよく似ている毒草とか結構あるから、絶対これだとわかるもの以外は食べるなよ?

 このスープに入れたセリとよく似たドクセリっていう植物があるからな。

 まぁ、ドングリなら問題なく食べられるから拾ってみたらどうだ?」

 

 ドングリぃ~?そんなものも食えるのか?でもよぉ・・・

 

「ぬぅぅ・・・知らないことばっかで、頭がこんがらがって来るぜ・・・」

 

「我慢しろ、食っていくのに知っていかなきゃいけないんだ。

 この子たちだって将来、何かしらの仕事をしていくんだから、親代わりであるあんたがいろいろと教えていかなきゃな?」

 

 こいつらの将来・・・

 

「君たちは何かやりたいことはないのか?」

 

「う~ん、俺たち、今はクロウにくわせてもらうだけで精いっぱいだし・・・」

 

「家のことはやれるけど・・・」

 

「将来とか言われても、わかんないよねぇ~」

 

 フランクたちの言葉にロゼは呆れたように、窓に歩き出す。

 

「なんだよ、子供のくせに夢のない奴らだなぁ?

 俺の幼馴染は見てくれる人みんなをデュエルで笑顔にしたいって言ったり、道場の跡取りだから自分も師範になるために頑張ってたりしてるんだぞ?

 一生このスラム街で腹すかせているつもりか?

 どうせ夢なんだから、見るならでかい夢でもいいじゃないか。自分がなりたいもの、例えば・・・」

 

 ロゼは窓を開けて、街に照らし出される男を見上げた。この街の象徴『キング』

 

「あそこに赤く輝く星とかさ。」

 

――ジャック・アトラス

 

「ジャック・・・」

 

「ジャック?はんっ!誰があんな裏切り者なんかに・・・」

 

「裏切り者?」

 

「よそ者のあんたは知らないだろうけど、ジャックは元々このスラム街出身なんだ。」

 

「でもフレンドシップカップって言うライディングデュエル大会で3年前に優勝して、そこからずっと王者の座を守り続けているの。」

 

「でもジャックって、トップスの連中とつるみ始めてから、僕たちコモンズを見下す、ちょ~嫌な奴になっちゃってさ!」

 

 そうだ、ジャックは変わった、あいつがいなくなった時から・・・

 シティは勝者にあらゆる富が集まる街、フレンドシップカップで勝ちまくるあいつに、トップスの連中はすぐに食いついた。

 金も名声も何もかも手に入れたあいつは、俺たちコモンズのことを呆れた顔で見下し始めた。

 俺たちコモンズの絆なんて最初からなかったって言っているみてぇに・・・

 

「・・・俺にはちょっとジャックの気持ちが分かる気がするよ。」

 

――えっ?

 

「俺は明日早いから、もう寝させてもらうんで、お休み。」

 

「おっ、おい!」

 

 ジャックの気持ちって、なんだよ・・・


「ほらよ、これが修理屋ユーゴが住んでいるガレージの場所だ。」

 

「ありがと、じゃあ報酬だ。」

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!モノホンだぁ!

 すげぇよ、すげぇよ!!」

 

 ブラマジガールのフィギュアでここまで大泣きするとは・・・

 

「い、いや、それとついでに聞くけど、治安維持局長官ジャン・ミシェル・ロジェについて何か知ってるかい?」

 

「治安維持局長官?

 いや、あいつは3年前くれぇに、ふらっとこの街に来て、それからとんとん拍子に長官になったってことしか知らねぇぜ?

 さすがの俺でもセキュリティに目を付けられたら、まずいからな。」

 

 ふらっと現れて、そのまま長官にか・・・

 

「まぁ、この街じゃよくあることさ。

 勝者となったやつが、どんどん上に昇っていくのはな。

 そういえばそんくらいの時からかなぁ~この街が止まっちまったのは・・・」

 

「止まる?」

 

「あぁ、昔はコモンズだって負けん気が強いやつがいて、どうにかして這い上がろうってやつが結構いたのさ。

 そんときゃぁ、トップスの連中も今ほど風当たりが強いことがなかったんだ。

 まぁ、そんな奴らがいなくなっちまって、今じゃトップスの連中と付き合いがあるのは俺たち商売人くらいさ。」

 

「へぇ~それは貴重な情報だ。」

 

「おっと、こいつにお代はいらねぇぜ?

 俺のただの昔話だ、それにこいつに対する料金にはまだ達してねぇからな。」

 

「ふっ、ありがとうよ。」

 

「へっ、御贔屓に。」

 

 さて、情報は貰ったし、昨日窓辺に刺さっていた、日影からの指定場所に向かうとするか

 

「にしても、なぜにカフェなんだ?」

 

 しばらく歩いてシティの中層エリア、トップスもコモンズも利用できるエリアの一角のカフェ

 呼び出し人は零児から、ロジェについてなにか進展があったのだろうか?

 

「あれ、閉まってる?」

 

 かけられたクローズの札

 おかしいな?場所はここで合ってるし、店名も合ってるのに・・・

 

「おや?君、赤馬 零児さんのお知り合いかね?」

 

「あっ、はい、ロゼと申します。

 あの、彼はここに?」

 

「あぁ、もう待っておるよ。さぁ、お入り。」

 

 店の扉を開けてくれたのは、結構歳の行ったおじいさん

 閉まっているのに待っているって、貸し切りにしたのか?

 どこからそんな金が?

 

「おぉ!遅いじゃねぇか!さか!?あぁ・・・ロゼ!」

 

 いつもの調子で沢渡が声をかけてこようとするが、途中で思い出して偽名で呼ぶ、この馬鹿!

 見れば、忍者兄弟以外のランサーズ全員が勢ぞろいしており、各々が何かしらを飲み食いしている。

 アメリカンスタイルの小洒落たカフェ、結構高そうなんだが・・・

 

「おい、権現坂、デニスの稼ぎってこんなにいいのか?」

 

「いや、これはあちらの御仁が奢ると言って聞かぬので仕方なしに頼んだのだ。

 沢渡やセレナは遠慮なしだがな・・・」

 

 あちらの御仁?

 権現坂が目で示したテーブルには零児と見覚えのないアロハシャツにサングラスをしたしわの深い老人

 えっ、誰?

 

「おぉ!おぬしはこっちじゃ、こっち!」

 

 謎の老人に手招かれて、席に着く

 ん?よく見たら、サングラスの横から出ているの髪の毛じゃなくて眉毛だ。

 長い眉毛・・・老人、まさか!?

 

「さぁ、何でも注文するとえぇ

 さっきお主が聞いた通り、ここはわしのおごりじゃ。」

 

「おごりと言って、後から請求するのはやめてくださいよ?

 シティ最高評議会議長、ホワイト・タキ殿?」

 

 あまりにもイメージとかけ離れた姿だったため結び付かなかったが、この声は間違いなく昼行燈議長だ。

 ばれてしまったものは仕方ないとタキ氏はサングラスを取る。

 

「おぉ!もうバレてしもうたわい。

 う~む、もっといい変装方法はあるかの・・・」

 

 いや、全然わかんなかったよ!っていうかイメージが違いすぎ!?

 こんな陽気なじいちゃんじゃなかったろ!?

 

「それで何を頼むかの?なんでもえぇぞ?」

 

 やけに注文を促してくるな。

 これはあれか、こちらの遠慮を誘って話を有利に進めようとかそういう魂胆か?なら・・・

 

「マスター、注文をお願いします。」

 

「はいはい、何にしますか?」

 

「ブルーアイズ・マウンテン。」

 

「かしこまりました。」

 

「ほう・・・」

 

 この店に入った時から、いいコーヒーの臭いがするから絶対にコーヒーはうまいだろう。

 そして、豆は挽き済ではなく、注文を受けてから挽くようだ。

 これほどのこだわりなのだから、ブルーアイズ・マウンテンも美味しいはずだ。

 あれは苦みと酸味が強くうまく淹れるのが難しい豆だからな。

 

「ここのコーヒーは注文を受けてから挽いて、ハンドドリップじゃから時間がかかるぞ?」

 

「ちょうどいいでしょう?話し合いをするには。」

 

「ホ、ホ、ホ、そうじゃのう。

 じゃあ、話をするとするか・・・」

 

 ここまで零児は無言、っていうことは自分との話は既に終えて、後はこちらの判断待ちか。

 いったい何をやらせる気なのやら・・・

 

「まずは本題と行こうかの、おぬし等にフレンドシップカップに出てもらいたい。」

 

「フレンドシップカップ?

 あれは、シティの融和大会でしょう?よそ者の俺たちが出てもいいのですか?」

 

「別に、この街に住む者限定というわけではない。

 フレンドシップカップはわし等、評議会と治安維持局、それと一般希望者の中から何人か選出してトーナメントを組んでおる。今年はそれぞれから3人ずつじゃがのう。

 街おこしの一環じゃ、外からプロを雇うこともあるわい。」

 

 筋は通っている。

 だが、こちらとしては時間が惜しい。この大会は拘束される恐れがあるからな。

 

「ほう、フレンドシップカップに出場して負けた人間は二度と日の目を見れない場所に行かされるとか聞きましたが?」

 

「はぁ~誰じゃ、そんな噂を流しおったのは・・・

 それは単純にエントリーした者の中に軽度な犯罪歴がある者がいることもあるのでな。」

 

「犯罪者が紛れている大会?いくら融和と自由を謳う大会でもそれは・・・」

 

「酔って暴れたとかその程度じゃよ。コモンズにはよくおる。

 さすがにすぐに独房行になるようなものなど出させぬわい。

 まぁ、反省ついでに負ければ大会が終わるまで強制労働させておるがな。

 おぬしらの様な客人にそんなことはせん。」

 

 あぁ、そういえば、アニメだとランサーズのほとんどがお尋ねもの状態だったか・・・

 

「まったく、自業自得じゃというのに変な噂を流しおって・・・

 それはさておき、どうかの?もちろん報酬は払おう。」

 

「・・・解せませんね。」

 

「何?」

 

「確かに俺たちはデュエリストだ。

 それを零児から聞いたというのは納得がいく。

 だが、街おこしの大事な大会で、なぜプロではなく無名の俺たちに依頼するのです?

 強いか弱いかわからないのに。」

 

 後ろで騒ぎだしそうなやつを権現坂やデニスが抑えているが、これは聞かねばならない。

 何かしらの弱みを握られているなんて目も当てられないからな。

 

「勘、と言っても納得はしてくれんじゃろうな。

 まぁ、なんじゃ、わしはこの街に新しい風を入れたいんじゃよ。」

 

「新しい風?」

 

「そうじゃ。

 トップスは現状に満足して、コモンズは天に唾を吐くだけで何もせん。

 坊主、あぁ、君らが捜していたユーゴのことじゃが、そいつの様な奴はたまにいるんじゃがのう。」

 

 ホワイト・タキとユーゴが知り合い?

 トップスの中のトップとでもいうべき人物とコモンズの修理屋にどういうつながりが?

 

「自由という言葉を自分の都合のいいように解釈して、新しいことにチャレンジしようとする者がいなくなってしまった。

 外からくる人間も、いつの間にかトップスとコモンズのどちらかの枠に入って落ち着いてしまう。

 でも、おぬしらはユーゴの知り合いなんじゃろう?

 だったら、この街に新しい風を入れこんでくれる。そう感じたんじゃよ・・・」

 

「・・・ユーゴとあなたの関係は?」

 

 ホワイト氏は、憧憬に思いをはせて、ただ一言言った。

 

「なぁに、ただの腐れ縁じゃよ。」


 ロゼが出て行ってから、大分経つな。

 この街にいる間はここで泊ってけとは言ったが、また虫取りしてるんじゃねぇよな・・・セミとか言ってたし・・・

 なんて考えてたら、家の前にDホイールが止まる音が聞こえた。

 外で掃除をしていたアマンダが、誰が来たかを伝えてくれる。

 

「ク、クロウ・・・トニーとデイモンが来たけど・・・」

 

 あいつらか・・・

 このゴーストライダー騒ぎに便乗する気だな・・・

 

「あぁ、フランクもタナーも外に出てくるなよ?」

 

「あぁ。」

 

「うん。」

 

 撥ねっ返りのフランクも悪戯好きのタナーもあいつらが来たことに意気消沈している。

 無理もねぇ、元々あんまりガラがいい方じゃなかったが、あいつがいなくなってシンジの奴がセキュリティにとっ捕まった時から酷くなってる。

 

「よぉ、クロウ!」

 

「会うのは久しぶりだな。」

 

 赤鼻で太めのトニーと、トカゲが張り付いたような髪形をした細身のデイモン

 2人とも、トップスの連中がでかい顔をしているこの街の現状が気にくわないからと活動してる奴らだ。

 

「おう。」

 

「例のゴーストライダー、お前も知ってんだろ?」

 

「お前あいつが誰だか知ってるか?」

 

「いや、知らねぇ

 仮に知ってたらどうするつもりだったんだよ?」

 

 俺のその言葉に奴らは何を言っているんだって顔で、ニヤつく

 

「どうするも何も、お前も見ただろ?

 セキュリティのデュエルチェイサーをあんなに簡単にひねれる実力!

 ゴーストライダーが仲間になってくれれば、こんなクソみたいな世の中をひっくり返せる!」

 

「そうだ!今がチャンスなんだ!

 トップスの連中の鼻を明かしてやれる、絶好の機会なんだ!」

 

「だからって!どこの誰かもわからねぇ奴を、俺たちの事情に巻き込めっていうのか!!」

 

「言ってる場合かよ!

 あいつの力を借りれば、セキュリティのデュエルチェイサーなんて軽くひねれるんだぞ?

 それにもしかしたら、あいつは本当に・・・」

 

 何気ないトニーのその言葉が俺の鶏冠に来た!

 

「なら猶更だめだ!あいつはシティが一つになれることを信じてたんだ!

 革命なんて望んじゃいねぇ!!」

 

 もともとあいつはトップスだった!

 両親が死んで、俺たちの孤児院に流れてきたけど、元トップスだってことを鼻にかけずに俺たちに接してくれて、いろんなことを教えてくれた!

 今俺たちがDホイールを触れんのもあいつのおかげじゃんか!!

 

「クロウ、お前ももうわかっているだろ?限界なんだよ俺たちは!!

 シンジだって助け出さなきゃならねぇし、セキュリティがゴーストライダーで混乱しているときが今なんだ!!」

 

「お前だって、この上っ面の平等社会にうんざりしてるんだろ?

 子供たちにもっといい未来を与えてやりたくないのか?」

 

「それは・・・」

 

 ガキどもの未来・・・夢を見れる未来を与えてやれる・・・

 

『気に入らないな、子供を出しに使うなんて。』

 

「「「!?」」」

 

 物陰から出てきたのは黒い帽子とマフラー、そして軍服を着た赤目の男

 

「あぁ?誰だてめぇ?」

 

「俺はロゼ、ロゼ・ジェスター、ただの旅行者だ。

 縁あってここに世話になっていてね。

 で、その世話になっている家の裏でテロの勧誘なんてもんを見つけたから出てきたというわけだ。」

 

 ば、馬鹿!俺たちの問題に首を突っ込むんじゃねぇ!! 

 

「テロだと?俺たちをそんなもんと一緒にするんじゃねぇ!

 これはこの街に住む、俺たちの問題なんだ!よそ者は黙っていろ!!」

 

「いや、黙ってられないね。

 お前たちが誰かを悲しませようとしているなら、俺はそれを止める。」

 

 それは覚悟が決まった目だった。

 誰かの悲しみは見たくないからと、ただそれだけの理由であいつはここに来た。あいつみてぇに・・・

 

「ロゼ、やめろ!デイモンも・・・」

 

「うるせぇ!生意気な奴は、こうやって黙らせりゃイイんだ!」

 

 喧嘩っ早いデイモンが容赦なくロゼに叩き込もうとする。

 

「へぇ~早速暴力か・・・どうせ、さっきから言っている革命とやらもそうやるつもりなんだろう?」

 

 だが、ロゼはデイモンの拳を跳びあがって躱すと、そのまま一回転して背中に踵をたたき込む。

 

「実に野蛮だ。」

 

「ぐわっ!?」

 

「デイモン!?こ、この!!」

 

 デイモンがやられたことに怒ったトニーが、ロゼに拳を振うが、ロゼはそれを軽く反らすと同時に肘鉄をトニーの顎に入れた。

 

「ぐっ!?うぅ・・・あぁ・・・・」

 

「顎に入ったんだ、脳震盪でしばらく動けないだろう。

 そっちも、肺に衝撃が入っただろうから、息がしにくいんじゃないか?」

 

「がっ・・・は・・・」

 

 あっという間にトニーもデイモンも倒されちまった・・・

 

「ふぅ~で、クロウ、こいつらの言っている革命ってなんだよ?」

 

「あっ、あぁ・・・お前も見たからわかると思うが、この街はトップスの勝ち組がすべてを手に入れ、コモンズは毎日の食事にも困っているありさまだ。

 だから、こんな社会をひっくり返そうと・・・」

 

「ひっくり返す、ははっ、それはお笑いだ。

 つまりこの体制を変えずに、そっくり自分たちコモンズとトップスの立場を入れ替えると?馬鹿馬鹿しい。」

 

 ロゼはそう吐き捨てると、まだしゃべれるトニーを起こして、質問をぶつける。

 

「おいお前、お前たちの仲間に政治に詳しいやつとかいるのか?」

 

 はぁ?

 

「答えろ・・・お前たちの中に明確にこの街を今よりもっといいものにできるプランを考えている奴はいるのかと聞いているんだ。

 まさか、本当に暴力に訴えて立場を入れ替えるとしか考えていなかったわけじゃないよな?」

 

「う・・・ぐぅ・・・」

 

「はぁ~どうやら本当にそうみたいだな・・・

 ぶくぶく太っているわ、そっちの奴は髪形気にしてるし、金に困ってるっていうよりは、ただ怠けたいから金が欲しいだけじゃないか。

 なによりこいつらから酒とたばこの臭いがする・・・折角のうまいコーヒーの残り香が台無しだ!」

 

 酒にタバコだと!?こいつら・・・

 

「向上心がないくせして、そんなことやってもすぐにまた追い抜かれるだけだろうに・・・

 これならギャンブルやらしている奴の方がましだな。」

 

 追い抜かれる?

 

「どういうことだよ、ロゼ。」

 

「トップスの人間は多かれ少なかれ、勝者でいられるための努力をしているってことだよ。

 仕事したり勉強したり、それができないならすぐに格落ちしてしまうからな。

 それを努力もしないやつが、ただ上の地位に就いたってすぐに元通りになるだけだろう?その地位にしがみつく能力がないんだから。

 コモンズの扱いをよくして貰いたいなら、まずはどこかで働いたり、共同図書館で勉強したりして見たらどうだ?」

 

「ぐぅ・・・ふざけるな・・・誰が、トップスの奴らなんか・・・グッ!?」

 

 しゃべれるようになったデイモンが、ロゼに不満を漏らすが、その口はすぐにふさがれる。

 

「ふざけるな、はこっちのセリフだな。

 一人で何でもできる天才じゃないんだろ?

 成功できる能力がないなら、成功者に学ぶ、当たり前のことだ。

 

 それにコモンズ発祥のライディング・デュエルをトップスが見世物にしているとかいう理由で忌避しているらしいな?

 トップス、コモンズ関係なく楽しめるものがあるなら、もっとそれを盛り上げようと思わないのか?

 ライディングデュエルは楽しい、だから一緒にやろうぜみたいな気持ちになれないのか?」

 

≪俺たちのライディングデュエルが、風が、俺たちのシティを一つにしてくれる。

 そういう未来を俺は夢見ているんだ。≫

 

 !!?

 あぁ・・なんで俺は忘れちまってたんだ・・・あいつの夢・・・

 

「お前たちはDホイーラーなんだろ?

 だったら堂々と、ライディングデュエルができる舞台で戦ってみたらどうなんだ!

 あそこに分かりやすい目標はあるだろ!!」

 

 ロゼが指差すのは、立体投影されたジャックの姿、このスラムからこの街の象徴へとなった男

 

「ジャック・・・ジャックだって!ハンッ!

 誰があんな、トップスにこびへつらうような裏切り者みたいなんかに!」

 

「そうだ!俺たちコモンズの仲間を、絆を捨てて行った奴なんかに!!」

 

絆を言い訳にするな!!

 

「「「!!?」」」

 

「絆とは捨てようが、断ち切ろうが、いつの間にかついて回る者だ!

 トップスだとか、コモンズだとか、そんなもの程度でなくなるならそれは最初から絆じゃない!!

 ただの負け犬の傷の舐め合いだ!」

 

 俺たちはここで寄り添って生きてきた。

 それが俺たちの絆だと信じて、あぁ、だけど最初から分かっていたさ。

 もう失うことが、挫折することが怖くて、ただ逃げていたって・・・

 

「お前たちはそうやってドブの底から這い上がった勝者すら蔑むのか!!

 負け犬として生まれたのなら、負け犬として生きていろとそう言いたいのか!!」

 

 俺たちはコモンズという枠に他人を勝手に当てはめていただけ、それから外れたやつを勝手に裏切り者呼ばわりして・・・

 

「ジャックはそんなもので縛られたりしない!自分の道は自分で切り開く信念を持った男だ!」

 

 あぁ、そうだ、ジャックは昔からそうだったじゃないか

 傲慢で、自分勝手で、わからんちんの大馬鹿野郎だったじゃねぇか!

 

「だからジャックはきっとこういうだろう!

 

 『俺の道を阻むものがあるのなら、それが絆であろうと、俺は蹴散らしてゆく!!』」

 

 ははっ!そうだ、あいつはそういうやつだった!

 

「ロゼ、もうそこまでにしてくれないか?」

 

 こいつらとのけじめは俺がつけなきゃいけねぇんだよ

 

「クロウ・・・わかった。後は任そう。」

 

「おう、おい、よく聞けおめぇら!

 俺はな、ガキどもの未来を守りたいと思っているが、お前らが言うような革命だのなんだろうには興味ねぇ!!

 この街を泣かすような真似をしたら、おめぇらであろうと容赦しねぇからな!!」

 

「なっ!?」

 

「クロウ!お前も裏切るのか!!?」

 

「裏切る?裏切られたのはこっちの方だぜ!

 あいつの願いを汚すような真似しやがって・・・楽しておまんま食えねぇなんざ当たり前だろうが!

 いい暮らしがしたいなら、仕事でも探しな!」

 

 俺が言えた義理じゃねぇけどな!

 

「ほう、クロウ、そう言うからには何かやるのか?」

 

「おう!俺はフレンドシップカップに出場する!」

 

 俺の宣言を聞いた、トニーとデイモンが驚いた顔をする。

 

「なっ!?クロウ!お前!?」

 

「トップスの奴らの見世物になるつもりか!?」

 

「見世物?上等じゃねぇか!俺たちのライディングデュエルは最高だって!堂々と見せつけてやんのさ!

 そんでもって、あの不貞腐れた顔をしたキング様の顔面に一発入れてやんだよ!

 見限ってんじゃねぇ!俺だってやれんだよってな!!」

 

 ジャックは俺たちを裏切ったわけじゃねぇ、俺たちはジャックに見限られてたんだ。

 誰もがジャックを勝手に羨望して、失望して、ジャックを追い抜かそうとする奴なんていなかった。

 きっとジャックは、あいつみてぇな奴が来ることを待ち望んでいるに違いねぇ!

 だから俺が、この鉄砲玉のクロウ様があいつの分まで羽ばたいて見せる!

 

「へぇ~クロウ、本当にフレンドシップカップに出る気なんだな。」

 

「おう!といっても、いつ出場できるかはわからねぇけどな・・・」

 

 あの大会の一般枠なんて少ねぇし、抽選にあたって運よく出場できるのがいつになるのかわからねぇが・・・

 

「それはよかった、説得する手間が省けたよ。」

 

 ロゼは懐から1枚の封筒を俺に差し出してくる。

 

「なんだこれ?」

 

「何って、フレンドシップカップの出場招待状。」

 

「はっ!?何でお前がそんなもん!?」

 

「一般枠って、どうしようもないやつを参加させて盛り下げないために抽選より推薦の方が優先されるんだってさ。

 すでに参加が決まっている選手からの。」

 

 推薦!?じゃあ!?

 

「俺もフレンドシップカップに出場するのさ。評議会枠でな。」




日影さん!!

うぉっ!?忍者だ!忍者がいる!!
って、あんた前会ったか?

それは弟の月影でござるな、拙者は兄の日影でござる。

やっぱり、遊矢たちもここにきてたのね!

うむ、だが、その・・・今、柚子殿が遊矢殿に近づくのは、待ってもらえないだろうか?

えぇ!?ちょっと何でよ!?私なにかした!?

いや、柚子殿というより、柚子殿がしているブレスレットが原因のようなのでござるが・・・
大会中に出場者が2人も消えたら、まずいでござるし

えっ!?大会?

うむ、この街のライディング・デュエル大会、フレンドシップカップに遊矢殿たちが参加することになったのでござる。
おまけに、エキシビジョンを遊矢殿が行うよう話を取り付けたとかで

なっ!?フレンドシップカップだって!?
それにエキシビジョンを自分から!?

ど、どうしたのユーゴ!?

どうしたのじゃねぇよ!エキシビジョンのデュエルっていえば、キングへの生贄だぜ?
『絶対王者 ジャック・アトラス』へのな。
あっ!やべっ!?タイトル先に言っちまった!?
じ、次回 遊戯王ARC―V R-e:birth 『絶対王者 ジャ

ちょっと、ぐだぐだじゃないの・・・

はい、すいません・・・

「CC」カード群の効果について

  • 制作したものをそのまま使用
  • 後付け効果を削除
  • メインに入るカードの後付け効果のみを削除
  • EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
  • 完全にアニメカードそのまま

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