遊戯王ARC-V Rーe:birth   作:深海の破壊大帝

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書いている途中でいいサブタイトルが思いついたので変更しました

遊矢と素良の後日談と名前しか出なかった遊勝の出る過去編です。
書くにあたって、遊勝のデュエルを見返してみましたが
あれって、ユーリが言っていたようにだんだん腹立ってきそうなんですよね


嘘つきたちの夜

 デュエルアカデミア

 「遊戯王デュエルモンスターズGX」に登場するデュエリスト養成校である

 世界各地に姉妹校があるが物語の舞台になる本校は、絶海の火山島に建っており、いわくつきの場所が多々あるという場所だ

 「遊戯王ARC―V」でも4つの次元世界の1つ、融合次元に存在するがそこはGXとは違い、生徒に洗脳教育を施しアカデミアに絶対の忠誠を誓わせ、少年兵に仕立て、各次元へ侵攻している侵略者の本拠地

 

 そして、俺の隣を歩いてる、この紫雲院 素良はそのデュエルアカデミアの兵士

 

 素良とデュエルし、家へ持ち帰る粗方の資料をまとめた俺は素良を連れて家へ向かっていた

 

「ねぇ、遊矢?僕の泊まる場所を用意するって言っていたけど、それってどこなの?

 僕、君に付いてこいとしか言われてないんだけど?」

 

「ん?あ~俺の家だ。」

 

「はぁ?」

 

「家には今、母さんと俺、それから犬や猫しかいないからな

 部屋が余りまくっているんだよ。」

 

「へぇ~っていうか、僕が泊まるってお母さんには説明したの?」

 

「一発でOKだとさ。

 心配しなくても結構広い家だし、家事とか手伝えとも言わないから、ゆっくりしてくれ。」

 

「そうさせてもらうよ・・・・・嫌なもの思い出しちゃったし・・・・・・」

 

「ん、なんか言ったか?」

 

「なんでもない。

 そういえば、遊矢のお父さんって」

 

「あっ、ここが俺の家だ。」

 

 2階建の一軒家、広いが素良が何か動いた時にはすぐに気付けるだろう

 この世界の素良が本当にアカデミアの尖兵なのか、漫画版の様な望みの未来のために戦っている使者なのかは不明だ

 ただ、デュエルの際に見せた最後の表情、あれは何か嫌な物を思い出してしまった表情だ

 いや、嫌な物を自覚したと言った方が正しいか・・・とにかく、こいつには性格とは別の秘密がありそうだ

 

「ただいま、母さん。」

 

「お~お帰り、遊矢、その子が話の子かい?」

 

 切れ長の目をしたオレンジ交じりの金髪の女性『榊 洋子』

 昔は伝説と呼ばれたスケバンデュエリストだったらしいが、その時に榊遊勝と出会い、結婚したらしい

 ぶっちゃけ、見た目だけなら俺の記憶があるときから、ほとんど変わっていない

 一体何歳なんだと聞きたいが、怖いので聞いてない

 

「あぁ、旅のデュエリスト、紫雲院 素良っていうんだ

 うちの塾の子達に、いろいろ教えてもらおうと思ってスカウトしたんだ。」

 

「よ、よろしく・・・」

 

「へぇ~どんなゴツイのが来るのかって思ってたけど、可愛い子じゃないかい。

 よろしくな、素良君

 自分の家だと思って、ゆっくりして良いからね。」

 

「は、はい、ありがとうございます・・・」

 

 うん?ぶりっこするかと思ったけど、なんか、たじたじだな

 

「さぁー!腹減ったろ?

 ご飯出来ているから、手を洗ったらテーブルにきな。」

 

 そう言い残し、母さんはキッチンに向かう

 まぁ、この後もいろいろ仕事が残ってるし、早く食べるか

 

「ん?どうしたんだ、素良?上がらないのか?」

 

「あっ、いや、ほら僕ってずっと旅してたからさ、こういうの久しぶりで・・・」

 

「ふ~ん、お前も随分可愛いとこあるじゃん。」

 

「失礼だな、僕は何時だって可愛いよ!」

 

「自分で言うか、普通・・・」

 

 あっ!そういえば、素良って・・・


「うん、洋子さん、これ美味しいよ!」

 

「あ・・・うん・・それはよかった、御代わりもして良いからね。」

 

「うん、ありがとう!」

 

 うわ~塩じゃけにチョコソース、みそ汁に練乳、煮物に蜂蜜、ご飯にカスタード・・・

 昼のスウィーツ・パラダイスといい、見てるこっちが胸焼けしてくるな

 いつの間にか、素良の調子戻ってるし、さっきまでのは糖分不足か?

 

「お前、よくそんな食べ方できるな?」

 

「ええ~良いじゃん、別に」

 

「まぁ、いいけどさ・・・・病気になるぞ?」

 

「僕は、これの方が美味しいからいいの!

 あっ、さっきは聞きそびれたけどさ

 遊矢のお父さんの榊遊勝って、どんな人?」

 

 父さん?なんでこいつが・・・って、まぁ、塾の名前になってるしな

 

「父さんはね、素敵な人だったよ。

 いっつも、デュエルで人を笑顔にすることばかり考えていた。

 そして、あたし達もそんな榊遊勝の姿を見るのが大好きだった。」

 

「デュエルで、笑顔に?

 そういえば、あの塾のポスターの所にエンタメデュエルって書かれてたけど、あれってなんなの?」

 

 あ~休憩室に張っている古いポスターか

 今の遊勝塾は生徒が溢れかけなんで、宣伝用のポスター廊下ぐらいにしか張ってないんだよな

 モンスターが書かれているだけの地味な奴だけど

 あの古いポスター結構でかいから、それで興味持ったか

 

「あ~言ってしまえば、ショープロ用の魅せデュエルだな。」

 

「魅せデュエル?」

 

「勝ち負けよりも、お客を湧かせるような派手な演出やプレイングをするやり方だ。

 物語になぞらえてプレイしたり、効果的な使い方よりもソリッドビジョンの動きに重点置いたりしてな。」

 

「へぇ~でも、それってデュエルしている方は本気じゃないってこと?」

 

「そうだな、大抵ショープロの人はもっと実力が高い人が多いな。

 好きでやってる人もいるし、普通にやったらランキングに載れないから、仕方なしにやってる人もいるけど。」

 

「でも、榊遊勝は違った。

 華麗なプレイングと巧みな話術、そしてモンスターと共にフィールド内を駆け巡る躍動感

 まさに、アクションデュエルの革命児だったのよ!それでね」

 

 あ~また始まったよ、母さんの惚気話

 確かに榊遊勝がアクションデュエルの革命児だったのは間違いじゃない

 だけど、俺は別にあの人を尊敬しているわけじゃない

 いや、怒りすら覚えているのだ


 あの3年前の王座防衛戦の前夜の事だ

 

「こんな所に居たんだね、父さん。」

 

 思いつめた顔で土手に座り込む壮年の男性

 赤い奇術師風の衣装に身に纏った俺の父さん『榊 遊勝』だ

 

「遊矢か、どうしてここに?」

 

「探し物は得意だからね。」

 

 そう言い胸のペンダント、羽根の様な装飾の付いたクリスタルで出来た振り子を見せつける

 

「父さんこそ、どうしたのさ?

 夜中にこんなところで座り込んで、明日は大事な試合なんでしょ?」

 

「あっ・・あぁ・・・・そうだな。」

 

 歯切れが悪い答え、聞かなくてもわかる、いや、俺は知っている

 赤馬零児に赤馬零王の事を聞いたんだろう

 『赤馬 零王』レオ・コーポレーションの元社長にして、融合次元のデュエルアカデミアの支配者、プロフェッサーだ

 このスタンダード次元にリアルソリッドビジョンを作り出した大天才であり、父さんの親友

 

「どうしたのさ、思いつめた顔をして、明日の試合の事?」

 

「い、いや、実はだな、遊矢

 お父さんの親友が何か事件に巻き込まれたみたいなんだ。」

 

 巻き込まれたんじゃなくて、巻き起こしている方だと思うけど

 

「えっ!?大変じゃん!」

 

「あぁ、大変みたいなんだ。

 お父さんも彼の力になりたいんだが、そうするとしばらく戻れなくなってしまうかもしれなくてね。」

 

「えぇ~いやだよ、俺、父さんと離ればなれになるの

 事件って言うなら、警察に任せておこうよ~」

 

 赤馬零王によるアカデミアの乗っ取りと次元侵略

 それは父さんが一人向かったところで止められるものじゃない

 それどころか、貴方が動いた結果、そのしわ寄せは他の人たちに降りかかるだろう

 

「それに父さんはチャンピオンなんだよ?

 どこかに行っちゃったら、ファンの人たちが悲しんじゃうよ。」

 

 常に「デュエルで笑顔を」と言っているこの人なら、ファンの人のことを持ち出せば心が動くはずだ

 

「そ、そう・・・だな・・・・」

 

「そうだよ。

 ほら、明日は試合なんだから早く寝てよ。

 チャンピオンが寝不足で実力が出せませんでしたなんて、恥ずかしいだろ?」

 

「あぁ、分かった。

 遊矢、先に戻ってなさい。

 父さんはもう少しここに居るよ。」

 

「うん、じゃあ、お休み、父さん。」

 

「あぁ、お休み、遊矢・・・」

 

 これが俺が父さんを見た最後の記憶

 

 翌日の朝、俺の部屋の机の上に手紙が置いてあった

 

「 遊矢へ

 

 最初に謝っておこう、昨日の話は嘘なんだ、すまない

 本当は父さんの親友が大きな事件を起こそうとしているみたいなんだ

 でも、もしかしたら、父さんと話せば押し留まってくれるかもしれない

 彼が事件を起こせば、多くの人が悲しむことになるだろう

 

 だから、私は行くことにした

 もしかしたら、もう2度と会えないかもしれないが、私は必ずお前たちの下に帰ってくる

 それまで母さんをお前が守ってくれ、頼んだぞ、遊矢

 

                                    父さんより 」

 

―ドンッ!

 

 俺は手紙を読み終え、拳を壁に叩きつける

 赤馬零王は貴方が何か言ったところで止まるような相手じゃない

 相手は失ったものを取り戻すためには何でもやる狂人なんだぞ

 いくら親友が、いや、赤馬零王にとっては貴方すらも、ただの張りぼてにしか見えてないかもしれないのに

 

――うぐ・・・・ぐす・・・・・

 

 怒りを抑えた俺は一階に降りた、すると泣き声が聞こえてくる

 誰かなど考えるまでもないだろう

 

「・・・ゆう・・・・・や・・・・・・」

 

 母さんだ

 いつもの気丈な表情はどこへやら、子供の様に泣きじゃくっている

 その手元には手紙が握りしめられていた、内容は俺のと似た様な物だろう

 

「お・・・父さん・・・が・・・うぐ・・・・」

 

「うん、俺にもあったよ、父さんからの手紙が・・・・」

 

「どうして・・・あの人は・・・・うわ・・・ん・・・」

 

 泣きながら俺を抱きしめる母さん、安心させるため俺も抱きしめ返そうとするが・・・

 

 一瞬それを躊躇する

 

 俺にその資格はあるのか?

 愛するものが離れてしまった悲しみで泣いている、この人を

 本当の息子ではないこの俺が・・・

 その悲しみを受け止めることが出来る・・・いや、していいのか?でも

 

「うわああぁぁぁぁぁぁん!」

 

 あぁ、父さん、貴方は「デュエルで笑顔を」なんて言う資格はないよ

 貴方のエンタメデュエルを見るのを待っている、多くのファンの人も

 今日この日、貴方と戦うことを待ち望んだ王者への挑戦者であるストロング石島も

 そして、なにより・・・

 

「うわ・・・ぐっ・・・・わああぁぁ・・・」

 

 貴方を最も愛してくれる人を悲しませるなんて・・・

 

「・・・泣かないでよ、母さん。」

 

「うぐ・・・・」

 

 俺は母さんの肩に手を置き、互いの顔が見えるようにする

 

「父さんが言ってたじゃないか、泣きたいときは笑えって・・・

 母さんがそんなに泣いていると、俺まで泣きたくなっちゃうよ。」

 

「・・・・・・・」

 

「それに手紙に書いてあったんだ、必ず戻るって

 だからさ、父さんがいつ戻ってきてもいいように笑顔でいよう?」

 

「うぐ・・・そうだね・・・・息子に諭されるなんて、あたしもヤキが回ったね・・・」

 

 涙をぬぐって笑顔を作る母さん、悲しみを押し殺した悲しい笑顔だ

 

「うん、その方が母さんらしいよ・・・」

 

 俺は湧き上がる感情を押し殺して笑顔を作る

 その感情は悲しみじゃない、怒りだ

 

 あの晩、父さんを無理にでも止めておけば・・・

 俺に、自分の秘密を話す勇気があったら・・・

 

 母さんにこんな笑顔をさせないで済んだのに・・・

 

 起こるかもしれない未来、それを知っていてどうなるっていうんだ!

 結局何も変えられないじゃないか!!

 

 自分への怒りが俺の中を駆け巡る

 もしかしたら、その怒りがいつしか世界を焼き尽くしてしまうかもしれないけど

 

「さぁ!朝ごはん作るわよー!

 お父さんが食べられないのを悔しがるくらい豪華なの作っちゃうからねー!!」

 

 俺は母さんを悲しませないために、良い息子を演じるために、今は笑顔でいよう


 

「ねぇ~?なんで、僕が遊矢の部屋になんか、行かなきゃなんないの?

 僕は早く休みたいんだけど~」

 

「講義に必要な資料を渡すだけさ。

 明日、いきなり渡されるよりましだろ?」

 

 僕の前を歩く男、榊 遊矢

 アカデミアの生徒でもないのに融合召喚を使いこなして、本気の僕を倒した

 このスタンダード次元では考えられないくらい、異常な強さを持ったデュエリスト

 そして・・・僕の本性を知って受け入れてくれた、変な奴

 

「ほら、入りな。」

 

「うん、うわぁ・・・」

 

 所狭しとファイルの並んだ本棚

 パソコンやプリンターやコピー機なんかが並んでいる机

 デッキレシピやコンボパターンの書かれたメモ

 学生の部屋っていうより、教師や研究者の部屋みたいだ

 

「すぐにまとめるから、座って待っててくれ。」

 

 そういうと、遊矢はパソコンを起動させ何かを打ち込んでいく

 手持無沙汰になった僕はふと、さっき洋子さんに言われたことを思い出す

 

――自分の家だと思って、ゆっくりして良いからね

 

――きゃああぁぁぁぁぁぁ!!

――お父さぁぁぁん!お母さぁぁぁん!!

――この子だけは!この子だけは!どうか、命だけは!!

 

 それと同時に頭の中に響く、悲鳴

 

――これからよろしく頼むよ、同僚

 

――助けてくれえぇぇー!!

――よくも俺の友達をおおぉぉぉぉ!!

――お前だけは!お前だけでもおおぉぉぉぉぉ!!

 

 遊矢に昼間言われたことも思い出すけど、それが頭の中に響いた恨み言にかき消される

 僕はそれを飲み込むために、飴玉を口に入れる

 

 今日まで、その悲鳴が心地の良いものだった、壊すのが面白かった

 

 でも、今は、それがとても不快で頭から離れない

 黙っていると、その不快な悲鳴が響いてくるので遊矢に話しかける

 

「ねぇ?洋子さんは、あぁ言ってたけどさ

 遊矢はお父さんのこと、どう思ってるの?」

 

 遊矢はこちらを向かず、パソコンに打ち込み続ける

 気にはなった、遊矢は「魅せデュエル」というものに大して興味はない

 それは遊矢のデッキを見れば明らかだ

 なのにどうして、お父さんの開いた遊勝塾で講師をしているのか

 それにあの塾で、エンタメデュエルを教えていたのは過去の話になっているのも

 

「恨んでるよ。」

 

 帰ってきた答えは一言だった

 

「勝手にどっか行って、いろんな人に迷惑かけて、母さんを悲しませて・・・

 あの人は一晩でいろんな人の笑顔を奪っていったんだ。

 だから俺は、あの人を許せない。」

 

 淡々とした声、感情を押し殺している感じだ

 

「でも、まぁ、潮時だったのかもしれないな。」

 

「えっ?」

 

「実は父さんのデュエル、飽きられてきてたんだ。

 父さんのデッキってさ、手品をモチーフにしているんだけど

 長く愛用しすぎて、種が割れちゃってさ。

 それに、デュエルで笑顔をっていつも言ってたけど、対戦相手はそうじゃなかった。」

 

「えっ?どういうこと?」

 

「素良、お前の好きな物や人が見世物のダシに使われたら、どう思う?」

 

 遊矢の質問、そんなの答えは決まってるじゃないか

 

「ムカつくよ。」

 

 神聖な融合召喚やアカデミアが見世物になるなんて、僕には耐えられない

 なぶり殺しにしたくなる

 

「そうだよな・・・父さんのデュエルはまさにそんな感じだった。

 相手の行動の全ては自分のショーの一部や一幕にすぎない、って感じで

 だから、対戦相手やそのファンからは受けが元々よくなかったんだ。

 父さんの本心は別にして、相手も最初の数ターンは驚かされていたけど、だんだん腹立ってくるみたいでさ。

 まぁ、ショープロが本気でぶつかり合おうとする相手にいつもの調子でやったら、そうなるよな。」

 

 遊矢と真逆だ、遊矢のデュエルは本気で相手を叩き潰そうとしてくる気概を感じられた

 なのに僕は・・・

 

「別に父さんは本気を出さなかった訳じゃないんだ

 ショー風になるのも、父さんの言い回しや相手を自分のペースに乗せていただけで

 ただ、対戦相手やそのファンはふざけていると思った人も多かった、それだけさ。」

 

「・・・・・・」

 

「そして、王座防衛戦で失踪したことで父さんの株は大暴落

 アクションデュエルのパイオニアとして伝説にはなったけど、同時に卑怯者の代名詞にもなった

 っと、ほら、これが資料だ。」

 

 渡される紙の束、結構いろいろ書いてるな

 でも分からない、デュエルって・・・・

 

「ねぇ、遊矢?」

 

「ん、なんだ?」

 

「デュエルってさ、勝つのが楽しいんじゃないの?」

 

「それは『勝って、楽しかった』っていうんだ。

 それだけで満足しているんじゃ・・・デュエルの楽しさの半分くらいしか、解っていないな」

 

 

――翌朝

 

 「デュエルの楽しさ」そのもう半分ってなんだろう?そんなことを考えながら眠った次の日

 

「おぉ~素良君、おはよう!」

 

「おはようございま~す。」

 

 あくびをかみ殺し挨拶をする、あれ?洋子さんが先に食卓に座っている?

 

「おぉ~素良、起きたか。」

 

 エプロン姿の遊矢がキッチンから顔を覗かす、何してんの?

 

「素良君、今日はねぇ~遊矢が朝ごはん作ってくれたのよ。」

 

「えっ?」

 

 テーブルに並んだ朝食、トマトソースのかかったオムレツに付け合わせ

 何かが練り込まれたパン、コーンがいっぱい入ったスープ、これを遊矢が?

 

「じゃ、じゃあ、頂くね。」

 

 僕はとりあえずパンに、はちみつをかけようとしたが遊矢に止められる

 

「まった、一回それ、何もつけずに食べてくれないか?」

 

 また説教か、でも作ってくれたお礼代わりにパンを少しかじってみる

 

―甘い

 

「えっ?なにこれ!?」

 

 もう一齧りする、やっぱり甘い、菓子パンってわけじゃないのに

 それに砂糖やチョコレートみたいな甘さじゃないし。何か独特のにおいがする

 

「お~口に合ったみたいだな。

 それは玉ねぎ練り込んで作った、オニオンブレッドだ。」

 

「玉ねぎ!?玉ねぎってこんなに甘いの!?」

 

「まぁ、物は試し、全部1回そのままで食べてくれないか?」

 

 いわれるままにトマトソースのかかったオムレツを食べてみる

 さっきと違った爽やかな甘さが伝わってくる

 スープも飲んでみると一緒に口に入った粒コーンを噛んだら、優しい甘さが飛び出す

 

「うまくいったか

 オムレツにはフルーツトマトのソースを、そのスープに入っているコーンも糖度の高い品種だ。

 ポタージュにしようと思ったけど、朝からは重いからコンソメスープにした。」

 

「おぉ~本当においしいねぇ~

 でもさ、遊矢?何で全部、甘めの味付けなんだい?」

 

「なに、昨日の素良を見て、甘味以外あまり感じてないんじゃないかなって思ってさ。」

 

「!?」

 

 確かにそうだ、僕はアカデミアの訓練の中ではクッさい、レーションしか支給されなかった

 唯一違ったのは、嗜好品として支給される飴玉ぐらいだ

 だから、僕はいつしか甘いもの以外、美味しいと感じなくなっていた

 

「えっ!?そうなのかい・・・」

 

 洋子さんは心配そうな目で見てくる

 なんで、昨日会って、突然転がり込んできた居候なのに、なんでそんな目が出来るの?

 

「まぁ、何があったとは聞かないけどさ

 食べるっていうのは人を良くすることって良く言うじゃん?

 出来るだけお前がうまいと思うものを作ってやるよ

 お前のこと知り合いに話したら、専用メニューいっぱい考えてくれるってよ。」

 

「えぇ~遊矢、ミッチーと昨日、話したのかい?ずっるーい!!」

 

「母さん、そうやってがっつくから、未知夫が苦手意識持つんだよ・・・」

 

 やっぱり僕は君のことがわからないよ、遊矢

 でも、僕はこの騒がしい食事の時間が、今が楽しいと思った、それだけは確かだ

 




さぁー!次はカードに愛されたグレェーィトな俺!沢渡シンゴの活躍だ
なに、LDSの人間が襲われている?犯人はエクシーズ使い?
そんなの俺が軽くひねってやるよ!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『暗躍する反逆』
って、お前は・・・榊遊矢!?

「CC」カード群の効果について

  • 制作したものをそのまま使用
  • 後付け効果を削除
  • メインに入るカードの後付け効果のみを削除
  • EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
  • 完全にアニメカードそのまま

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