これからも質を落とさないペースで頑張っていこうと思います。
あと今回はさっき仕上げたばっかなので誤字がメチャクチャあると思います。ごめんなさい。
「今までの非礼を詫び申します! どうか、どうか我等に恩情を頂けないでしょうか!」
オッス、オラ酒呑! 無理難題突き付けられたから自棄飲みして気付いたら強面の鬼に土下座されてなぁ!! オラ、なんだかワクワクすっぞぉ!
…………あー……何があった?
「貴女様が憤るのも無理はありません。それだけの事を我々はしました。儂等の命をどう扱おうと構いやしません……ですが、どうか大将の角だけはご勘弁を!! 酒呑様!!」
もうおじいちゃんって言ってもいいくらい高齢の鬼の方が恥も外聞もなく土下座している。てか、よく見たら最初に賭博場の門であった門番の鬼じゃん。
いつから居たんさ。
「や、止めてくれ豪児様!」
「アンタは何も悪くねぇってのに!」
あ、門番の鬼の方は豪児って言うのね。
てかなんだこの光景。三文芝居か何か? お涙頂戴みたいな展開になってるけど、ついて行けてねーし。てか、何に対して謝ってるの? 角折るか目ぇ潰すかについて謝ってるの?
いや、許すわけねーだろ。メチャクチャ怖かったんだからな!? お前ごときが謝ったところでなぁ? 私の恐怖は薄れねぇーんだよ!! 謝罪の気持ちがあるなら酒待ってこい酒ぇ!!
「黙れ貴様ら!!!」
はいごめんなさい調子に乗りました許してください!!
………あ、私に言ったんじゃなくて周りの鬼達に言ったのね。それならそうと言ってよ。
ま、まあ許してやらないでもないかな。その代わり私のこと殴らないでね? 本当に。まじで頼む。謝るから。
「貴様等、この方をどなたと心得ている!」
豪児さんの怒声に、ビビって黙っていた鬼達の身体がさらに震え上がる。私も一緒にビクビク震える。
恐ぇ……。
「貴様等の目の前にいるのはかつて地上にて我々鬼を束ねていた酒呑童子様だぞ!!」
ちょ、鼓膜破れるからそんな怒鳴らないでよ。本当になんで鬼はこう、すぐ怒鳴るかなぁ……。
ん? まって?
いま、なんて言った?
「貴様等が罵倒すれば、それは返って儂等が大将を冒涜するも同じ! 恥を知れ!!」
いや、まてって。
私は知らんぞお前等みたいな存在。なんの話をしているのさ。
見なよ、他の鬼の人達も怖がるのも忘れてポカーンとしてるよ。え? この弱っちそうな女が? みたいな顔してるから。止めて一人で勝手に盛り上がって妄言吐くの。私も恥ずかしいから。
「……そ、そういえば聞いたことがある」
おっとここで怒られてた鬼の中から声が上がったぞ。
なんだ? 否定でもするのか? いいぞ言ってやれ!あの妄言吐き散らかした鬼を黙らせてやれ!!
「黄金に輝く髪に二本の角……それに、常に右手に持った不気味な瓢箪…………知恵の神・八意思兼神すらも超える頭脳と、武神・須佐能乎命を捩じ伏せる最強の鬼がいるって………まさか!」
お、おおう………なんだその合ってるようで結局肝心な所がまったく合っていない伝説は。知恵は娘の華扇に負けるし、力では勇儀の足下どころか爪先にある埃にも及ばない底辺中の底辺に定評のある私がどうしてそうなる?
あれか、嫌味か。いや、私が皆んなから勘違いされてるのは知ってるけど、それでも誇張され過ぎじゃない? そういうのは、それこそ鬼一の知恵を誇る華扇や力こそ正義の勇儀。戦いになれば常勝無敗の透花とか、個人戦力最強のチート能力のある萃……香……
あ、萃香じゃんそれ。
「あの……それってもしかして萃香のことじゃ────」
「なっ!? 萃香様を呼び捨てだと!? や、やはり伝説の鬼!!??!?」
うん、五月蝿ぇ。話を遮るんじゃねぇ。
んー……でも今の反応で大体わかったわ。確定だね。
やっぱその伝説の鬼、萃香のことだ。
金の髪に二本の角。加えて常に手に持つ瓢箪。知恵も力も最強のチート鬼。
それに、私以外に酒呑童子を名乗っていた鬼って言ったらあの子以外いないし。
そもそもの話。酒呑童子って名乗り始めたのは私からじゃなくて勝手にそう呼ばれ続けたからそうなっただけだし。皆が酒呑童子様、酒呑童子様って呼ぶから仕方なく名乗ってただけで、私の本当の名前は酒呑だもん。
もともと酒呑童子を一番最初に名乗ってたのは萃香だから。
懐かしいなぁ。なんでか知らないけど幼名だった萃香って名前を改名して酒呑童子になってから暴れ始めたんだよねあの子。萃香が
そりゃぁ紛らわしいよね。だって、普通は酒呑と酒呑童子って同一人物だと思うじゃん。誰だって思うじゃん。
実際萃香はマジで強い。ルール有りな決闘とかなら透花に軍配が上がるんだろうけど、ルール無用の死闘なら十中八九萃香が勝つ。なにせ萃香は個人戦力最強だからね。
かつて萃香が私達妖怪の山に攻めてきた時、彼女は一人で戦い抜いたんだ。
それこそ並み居る鬼や、四天王には満たなくても大妖怪クラスの鬼の数名、現四天王の華扇や勇儀に加え………。
四天王と同等の天魔や、鬼に及ばなくても群れとして強い精鋭の天狗達。
それら全てを相手に萃香はあと一歩のところまで追い詰めたのだ。
そりゃあ、伝説になるよ。
この鬼達は、そんな萃香が気まぐれか何かで一時期配下にした残党なんだろう。それで捨てられたと。
あの子は放浪主義だから仕方ないね。
「なるほど……つまり、貴方達はかつての酒呑童子の配下だと仰るのですね」
「はい。思い出して頂けたでしょうか?」
豪児さんが地に頭を付けて応える。私を元酒呑童子の現伊吹萃香だと勘違いして。
なるほど。全てを理解したよ私は。
これは使える(ニヤァ)。
「ならば尚更許せませんね。いくら賭博を仕切る側だと言えど……いや、むしろ仕切る側だからこそ貴方達は責任ある立場の筈。なのにこの体たらくとは………呆れて物も言えません。私が仕切っていたなら絶対にしないでしょう」
彼等にはずっと勘違いしてもらおうじゃないか。そっちの方が都合がいい。
いや、別に騙そうとしてるわけではありませんよ? 嘘だって吐いてませんしぃ? ただあっちが勝手に勘違いしてるだけだからね。
私は悪くない(断言)。
「私はあなた方などまったく知りません。故に、落とし前を付けるのになんの躊躇いもない」
高い立場に胡座をかいて相手を脅す事の何と気持ちいいことか。やめられないね。
山の大将って立場は仲間や家族を騙しているみたいで気が引けてたけど、私を酷い目に遭わせてた奴らが平伏すのは見ていて楽しい。
見ろ。土下座している豪児さんなんか地面に額を付けながらブルブル震えている。他の鬼達も彼の姿を見て顔を青くして慄いている。
あー楽しいなー。
「そうですね………私ももしかすれば角を失っていたかもしれませんからね………ここを仕切る鬼さんには落とし前として角でも折って────」
風が私の顔面を叩き、何かの破片が私の頰を掠める。
切れた頰から血が垂れるのを感じ取りながら、私は目の前で土下座する男を見る。
彼は先ほどと同じ体勢で土下座しているが、その頭が先程より地面にめり込んでいた。よく見れば手に付いた床もその力に耐えられず木の板が砕けている。
ひぇ……。
「────は、冗談だとしてそうですねここの場を貸し切って宴会場にするってのはどうですかうん」
やっぱ自分がされたら嫌な事を相手に押し付けちゃ駄目だよね。それが仮に怖い思いをさせられた相手だとしても。やっぱり、誰かが折れなきゃ負の連鎖は終わらないんだなって。
「皆さん聴いてましたか? 宴です………私の奢りですので、どうぞ楽しんでってください!」
強引に話を進める為に傍観者に徹している他の妖怪達に声を掛ける。
するとただ酒を飲めると聞いたせいか、静まり返っていた賭博場が少しずつ色めき立ち、気付けばその盛り上がり様はもはや収拾のつかない状態になっていた。
「ッ…………やはり、貴方様はかつての酒呑様だ。きっと貴方様を見れば儂らの大将もお喜びなされる」
豪児さんが何かブツブツ呟いていたが怖いので無視した。
なんか色々あったけど取り敢えず揉め事は終わった。
豪児さんは弥助とか言うあの鬼をこっ酷く叱り、今は宴の準備の為に色々な妖怪達に指示を出している。
私と言えば待っていろと言われたので只今待機中だ。本当は準備なんてどうでも良いから早く酒飲ませろと言いたいのだけど、流石に後が怖いので言うのを控えている。
あ、そう言えば今更だけど……パルスィちゃんは大丈夫かな? 自分の事に必死すぎて忘れてたけど、あの子もさっきまで鬼達に押さえられていた筈だ。
キョロキョロ辺りを見回して探せば、ちょっと離れたところで一人ポツンと立ってる彼女の姿を見つけた。周りが忙しなく動いているのですぐにわかった。
見た感じ特に怪我とかも無さそうだ。彼女の安否が確認できたので、巻き込んでしまった事を謝罪するために彼女の方に寄る。
「パルスィさん」
「酒呑…………貴方一体、何者なの?」
「勘違いされやすい放浪鬼ですよ。それより、先程は申し訳ありませんでした。貴女を巻き込んでしまって……」
「それはいいのだけど………いえ、それより────」
「酒呑様! 宴の準備が出来ました! どうぞこちらに………む、貴様はパルスィ。そういえばお前さんはこの方の友人であったな…………ならば、お前も一緒に来るがいい」
パルスィさんから謝罪を受け入れる言葉を貰えれば丁度よく宴の準備が終わったらしい。
待ってたぜ。もう我慢の限界だったんだ。
私はパルスィちゃんの腕を取って与えられた席に向かう。
さぁ、宴の幕開けじゃい!
「ほう。このお酒は美味しいですね」
「あ、男は近付かなくて結構です。むさ苦しいんで」
「え? もう少しペースを落としたらどうだ? 問題ありませんね。私、まだ1ミリも酔ってないので。それよりも貴女、美しいですね。お名前はなんと?」
宴だ宴だぁー!
美酒に美食に美女! これぞ贅沢の極み! 酒池肉林とはこのことだね!!
はっはっはっ。美味い飯を食べながら美女にお酌をしてもらった酒は美味えぜ! これだから宴は止められないのだよ………。
「ゲスね」
あーあー。キコエナーイ。
っていうかパルスィちゃんだってちゃっかり私の分のご馳走食べてるじゃん! むしろ私のお陰でこうして美味しいもの食べてるのにそんなこと言うのは酷いんじゃない!?
まあ、私も下衆だと思ってるけど。
「わかってませんねパルスィさん。こうして最高のシチュエーションで飲むお酒が一番美味いんです。全ての欲が詰まったようなこの瞬間を肴に、お酒を呑む…………んく、んく…………ぷはぁ。止められませんよ。もっとお酒の飲み方を知った方がいいですよ。
ところでパルスィさん。そこにあるお酒、注いでくれませんか?」
「 」
一瞬パルスィちゃんの顔が般若みたいになったのは気のせいだろうか? い、いや気のせいだろう。あの可愛いパルスィちゃんが鬼みたいな顔で私のことを睨むはずないもんね…………自分で注ぐか。
「まあ酒呑殿。お酒が欲しいなら妾達に言ってくだされば……いつでも注ぎますわ」
「ん。ありがとうございます」
伸ばそうとした手は酒に届くことなく誰かの掌に遮られてしまった。
とは言えそれは悪意があっての事ではなく、酌をしてくれる為だったので素直にお礼を述べる。
目の前にいるのはこの地底に住む歓楽街の遊女達。豪児にめいれ………お願いしたら呼びつけてくれた。
流石は遊女達だ。お酌の仕方も上手いし、お酒を飲ませるのが上手い。彼女達に乗せられてどんどんお酒が私の胃に収まっていく。
「ふう……」
お酒を一気に煽り一息吐いてから周りを見渡す。
こうして見ると宴会場と化した賭博場には沢山の妖怪達で溢れていた。鬼は当たり前として、土蜘蛛や蛇女、がしゃ髑髏に珍しい鶴瓶落としなんかもいる。
種族問わず皆が楽しそうに騒いでいるのは何度見ても飽きることはない。結局、みんな仲良くが一番なのだ。平和が一番いい。
そんな時。感慨深く周りを見ていたからか、私はこちらに食事を持ってくる蛇女の少女の姿を捉えた。
彼女に特別何かあるわけじゃない。ただ、華奢な体格では持ち運ぶのがキツイだろう量を手に持ってフラフラと近付いて来るものだから気になったのだ。
それでもなんとか私の下までやって来て、後は配膳するだけ。私の心配は杞憂に終わりそうだった。
が。
蛇女の少女は突然身体を固めたかと思えば、手が滑ったのか手に持った食事を私の目の前の床にブチまけてしまったのだ。
皿が次々に割れる甲高い音が宴会場に響く………響く?
うん? おかしいな。さっきまであんなに騒がしかった場が、今はすごく静かだ。
ううん……それよりブチまけられてしまった食事を先になんとかしないとだ。少女も呆然とした表情で私の方を向いて…………いや、みるみる内に悲壮感溢れる表情に変わっていく。多分、粗相をしたせいで自分が怒られるって思ったのかも。
大丈夫だよー。わざとやったわけじゃないって知ってるから。そもそも悪いのはこんな小さい子にこんな大量の物を持たせた奴だ。誰だこんな小さい子に無理強いした奴。
前のめりになってブチまけられた食事達の具合を見てみる。
汁物系は駄目そうだけど、固体物はいけそうだ。そもそも大江山を仕切る前はよく拾い食いしてたからね、私。忌避感なんてこれっぽっちも無い。
悲壮感漂う少女を安心させるために、私は彼女に顔を向けた。
そこで彼女が私ではなく私の背後を見て怯えていることに気づいたのだ。まるでこの世の終わりを見たかのような、そんな絶望の表情をしている。
誰か私の背後にいるのだろうか? もしかして、この子にこんな量の食事を持たせた責任者か? だとしたらこの子が怯えているのもうなずける。多分、というか絶対鬼だろう。
この子に変わって文句言ってやるか。
私は思いっきり振り返った。
「…………?」
振り返れば…………しかし、そこには想像していた筋骨隆々な鬼の身体は無かった。
どころか華奢で、それでいて私をも超える丸みを帯びた二つの大きなお山が…………衣服を押し上げる女性の胸が目の前に飛び込んできたのだ。
「??」
予期せぬ事態に、私は思考が付いて来ないながらも目の前の正体を知るために顔を上げる。
柔らかそうな唇。意志の強そうな目。凛々しくも整った顔立ち。
そして、額から伸びる星の模様が散りばめられた角………って。
「ああ。勇儀じゃないですか」
私の頼りになる大事な家族の一人、星熊勇儀がそこにいた。
いや。勇儀がいた、じゃねぇわ。お前どこ行ってたんや。
「ここに居たのですね。まったく、酷いですよ。起きたら誰も居ないから、一体どうしたのかと………」
まったくぅ! 起きたら全然知らない場所で一人ポツンと居たんだから寂しかったんだゾ! プンプン!!
や、冗談じゃないんだけどね。割とガチで命の危機を感じました。マジで起きたら知らない場所とか恐怖以外何物でもないから。
まあ、勇儀一人の責任じゃないのはわかってるけどね。うん。これは皆の責任だ。勇儀一人の責任じゃなくて、私が寝ている間に移動していることに気づかなかった妖怪の山みんなの責任だ!!
「でも丁度良いところに来てくれました。ちょっと人手が欲しくて、一緒に手伝ってくれませんか?」
取り敢えず一緒にこの散らかった食事をどうにかしてくれたら許す。
「かあ……さん?」
「はい。そうですよ?」
「そんな……だって、ありえない」
そう思って声を掛けたのだけど……勇儀の様子がおかしい。
メチャクチャ私の事をガン見してくる。こんな所で会うなんて思ってなかったのかな? いや、私もこんな地底世界で勇儀に会うと思ってなかったんだけど………てか私に黙って賭博場で何してんのさ!!
でも、そんな冗談を挟める余裕は無かった。
だって勇儀の表情が…………まるで、二度と会えない人に出会ったかのような、驚きと悲しみが綯い交ぜになったような顔をしていたから。
私が拉致されたことを相当心配してくれた事がありありとわかってしまった。
「あー……勇儀?」
「ッッ!!」
彼女らしからない、怯えたような反応。顔も私が覚えてるより窶れていて、心底疲れ切ったような様子は以前あった覇気のカケラもない。
私の事を相当探してくれたのだろうか…………。
私も驚いたけど、みんなから見たら私が突然居なくなったんだもんね。心配するよね。こんな……どれくらい離れてるのかは知らないけど、見知らない地底まで探しに来てくれたんだから。きっと、沢山探してくれんだろう。
とても、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
それなのに……私は一体何やってたんだ。
起きてみんなが居ないことに気付いたのに、私は秘蔵の酒が無くなったことに悲しんで………可愛い少女の家からお酒をクスねて…………挙句の果てにこんな、賭博して遊んで宴を呑気に楽しんで…………。
私は何をやっていたんだ!! うぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!
「ごめんなさい」
「えっ………」
気付けば、謝罪の言葉が漏れ出てしまった。
ごめんね勇儀。苦労かけてごめんなさい。貴女が私を探してくれてる間、呑気に遊んでてごめんなさい。宴を満喫しててごめんなさい。お酒の絡み酒が怖いとか思っててごめんなさい。こないだ美味しいお酒が飲みたいからって隠してた勇儀のお酒、勝手に星熊杯に注いで呑んだの黙ってたのも許して。ごめん、ほんとごめん。
そんなに窶れて……頑張って探してくれただろうに。いつも大切にされているのに、わたしから貴女になにも返せなくて……貴女に見返りが無くてごめんなさい。
「私が不甲斐ないばかりに迷惑を掛けてごめんなさい」
「そ、そんなことはない! 母さんはいつだって正しかった! 迷惑を掛けたなんて、そんな……」
「いいえ、そんなことはあるのです。私は何があったのか詳しくは知りませんが…………貴女がそんなに疲れ果ててしまうくらいには、大変だったんでしょう? 貴女をそうまで追い込んでしまったのは私の落ち度です」
私の言葉に勇儀はハッとした表情で己の顔を触った。気付いて無かったんだろうか?
1日2日そこらでこんなになるわけがない。相当、根気よく探してくれたんだ。自分の体調も気づかないくらい頑張ってたんだ。
それなのに私ってやつは………。
私ってやつは………。
一体何日間爆睡していたんだよぉぉぉ!!!
アホか私! 拉致されてんのに呑気に寝てた挙句、そこから何日も爆睡してたってことでしょ!?
こんなのバレたら………私は呆れられるだろうか? 見捨てられるだろうか?
いや………失望されてしまうかもしれない。
嫌じゃぁぁ! 見捨てられたくない! ギクシャクした関係になりたくない!!
「おいで、勇儀。頑張りましたね」
うん。誤魔化そう。ここはどっぷり落ち着いた様子で、待ってましたとばかりに勇儀を迎え入れよう。そうしよう。
と思ったんだけど、どうしたんだろう? 勇儀が俯いて私の方によって来てくれない。いつもなら私の背骨を折らんばかりの勢いで抱きついて来るはずなのに………。
「……勇儀?」
「………ごめん。ごめんよ母さん…………私は、それに応えられるような立場では無いんだよ」
あう……やめて。そんなに自分を責めないで。私のために頑張ってくれたのにそんなこと言われたら……相対的に何もやってない私がクズになるじゃん。
もう許して。自分の存在そのものを嫌いそうになるから許してあげて、私を。
「私は、ダメな奴だよ。母さんが思ってくれてたような、自慢出来る鬼じゃ無かったんだ」
うんうん。やっぱり、落ち込んでると自分を卑下しちゃうよね。でも大丈夫! 鬼の才能でいったら私なんて勇儀の万分の一にも満たないから! むしろ、勇儀が自分を否定するたびにミジンコな私が可哀想になってくるから!
「私のせいで母さんが大切にしていた物を……台無しにしちまったッ。私は、取り返しのつかないことをしちまったんだッ」
あー……まあ、たしかにどれもこれも一級品以上の、私の大切な秘蔵のお酒達が台無しになったよね(絶望)。中には一滴も口を付けずに消滅した物まであるし…………うー(血涙)。
でもそれも勇儀のせいじゃないよ! 私を攫った人達が悪いのさ! だから気にしないで!!
「母さんが命を懸けて守った、託してくれた妖怪の山を守れなかったんだ! 私のせいで妖怪の山が壊滅しちまったんだよ!!」
そうかそうか。守れなかったかぁ。壊滅しちゃったのかぁ、妖怪の山。まあ、仕方ないよ、うん。それも勇儀のせいじゃないさ。
それにしても無くなっちゃったんだ妖怪の山。それは悲しいねぇ…………。
えっ?
………
………………
うぇ!!!?!?!?
無くなっちゃったの妖怪の山!!?? はぁ!!?!?