非普遍的日常
私は目の前にいる銀色の集団を見据えて走り出していた。いったい何のために私はここにいるのだろうか、そんな考えはとっくの昔に忘れた。
ただ今は、手に持った獲物を振るうだけ。
「ツイントマホォォォォォク!ブゥゥメラァァァァン!」
連結した二本のハルバードを銀色の集団に向けて勢い良く投擲する。ツイントマホークブーメランと言ったのはいいが、そもそもトマホークじゃなくてハルバードだし、ブーメランなのに戻って来ないことには目を瞑るしかない。
投擲したハルバードは面白いように銀色の集団をズタズタに切り裂いていく、しかし投擲したハルバードは手元に戻ってくることはない。
私は目の前にホログラムディスプレイを表示する。画面には武器などの残弾数やパワードスーツの状態が表示されている。
「(損傷は軽微、でもまともな武器が単分子短刀と・・・・・・これだけか。いったん下がった方がいいかもね。)」
私はすると突然空から人が落ちてきた。
「ぶべぇっ!」
カエルが潰れたときのような声が聞こえたが、多分大丈夫だろう。
「あー、生きてるー?・・・・・・生きてるならここ200秒持たせて、補給が済んだら撤退の支援ぐらいはできるかも」
オートバランサーの機能で無理やり立ち上がったようだが、肝心の人間は顔を青ざめ、手足をプルプルと震わせていた。しかし、出撃前にあれだけ騒いでたあいつなら大丈夫だと信じて私はこの場を離れることにした。
「変な夢だった・・・」
私の名前は
朝から鳴り響く目覚ましのアラーム音、実はこれ3回目である。布団から手だけを伸ばし、携帯を手に取る。
手にした携帯には7時46分と示されていた
「んぁ、・・・やばぁ、寝過ごした・・・やっべどうしよ・・・」
「(休みたいけどなぁ、)」
そんなこと考えながらうっかり生卵を電子レンジに入れ、爆散
生卵は命名しがたきものへとクラスチェンジを果たした
「・・・・・・Oh」
そして私はなけなしのお金でパン買い、ついでに学校へと向かった。
「あーあ、誰だよコンビニに火炎瓶投げ込んできたやつ・・・、不味い、やっぱ合成食品はおいしくないなぁ。」
まさか街の外からの武装した集団が無差別に街を襲撃するとは思ってなかった。
まぁ、私の敵じゃないんですけどね。襲ってきたお前たちが悪い。
学校についたのはいいが、
しかし私のいない間に返却されたテストの結果が目を瞑りたくなるようなものだったのでババアからの
「夢未さん、貴方また赤点ですよ、いくらこの学校が防衛軍への近道だとしてもこの成績だと将来自分の首を絞めることになりますよ?」
「じゃあもっと分かりやすく授業で解説してくださいよ、私のおつむじゃわからないので。」
「ハァ・・・」
「はいはいわかりましたよ、次のテストからは頑張ります」
更年期ババアの
「あっ、しまったお昼・・・」
件の暴徒共のせいで何も買えなかったことを思い出した、いずれ豚箱から二度とお天道様を見上げられないようにしてやる。
私は空腹を抱えながら考えた。考えて考えて一つの答えを導き出した、
「そうだお昼ご飯を誰かから恵んで貰おう」
しかしながら現実は非常に残酷である、皆口をそろえて「ごめん今日はちょっと」
「くっそぉぉ・・・いや、まだ、まだあの二人なら」
やむなし、二人がいると思われる場所へ私は向かった、
そして私は二人の男子学生の前で土下座をした、潔く、醜く、そして見た者全てが感動すら覚えるであろう綺麗なフォームで
「土下座とはな・・・金持ちのボンボンだったであろう者が、底辺にいる私たちにいったい何の用で」
貴族のボンボンじゃなくって悪かったな
「おいヒロト、その言い方はどうかと思うが・・・」
話しかけ来たのはヒビキ・タナカ、カラテをやっていたが反則ばかりを取っていたので大会から出禁を食らったらしい、あと純日本人らしいけど名前は気にしてはいけない。
そうだぞ、権力はなくなったけど、今は腕力で貴様を屈服させるぐらいはできるんだぞ?
「ジョーク、ジョークだよそこまで気にするなかれ。」
左手にはタブレット端末を持ち、右手でホワイトボードにマーカーで何かを書いている男子学生は
「そんなことよりも、何か、お昼ご飯を恵んで下さい・・・」
「そういやさ、他人に飯を求めるロイヤリティ様や」
ロイヤリティってなんだよ
「さっき聞いたがお主現代史テストで赤点じゃったろ?今からそこのホワイトボードに主要な部分を書いて行くから覚えなされ」
「それ以上口を動かせば黄金の右手が貴殿の顔面をぶち抜くぞ?」
喋ればいつもこれである、さすがに今回のは私が悪い気がするが、そろそろマジでぶん殴ってもいい気がする。
「夢荘」
ヒビキが私の肩を叩いてきたので、そちらを向くと、ヒビキがポケットからスティック状の何かを取り出した。
「食べてみな、飛ぶぜ」
ヒビキが夢荘に手渡した物のパッケージに書かれている商品名が「糖分チャージYOU
「なにこれ?ふざけてるの?」
「これは良い物だ、食べたら頭が冴えてくるんだ「・・・あー、まさか知り合いが法を犯すとは・・・」待て待て待て、別にアブナイ白い粉とかじゃないんだよ、いや砂糖は中毒性が高いけど、けどね、僕だって適度に摂取しているんだよ!・・・一日に数本タベルケド」
・・・だめだ、お腹空きすぎてイライラしてきた
「何でもいいから、最悪賞味期限ちょっとすぎてるパンでもいいから、なんかくれ」
「ちょっと賞味期限切れてるけど、0ーソンのメロンパンでいいか?」
「それでいい、とりあえず満腹感を得られれば。」
「夢荘・・・お前金持ちのボンボンなのに・・・それでいいのかよ・・・」
弘人はカバンの中からレジ袋を取り出し、私に投げつけた
「金持ちのボンボンだったのは昔の話ですよーだ」
レジ袋からメロンパンを取り出すが・・・
「「「あっ、」」」
が、しかしそのメロンパンは無惨にもペチャンコに潰れていた
「「「・・・・・」」」
私は言葉を失った、フォローのためか、ヒビキの悪意はないが無慈悲かつ無意識な口撃を放つ
「だ、ダイジョーブだろ、こんなの
次の瞬間、私の中で何かのスイッチが入る音が聞こえた。
「おっと、ワッチは逃げまっせ・・・・・・」
弘人は何やら後ずさりをしているようだが
「けっ・・・・・・だかッ・・・・・・ら・・・・・・・」
ヒビキの顔が茄子のような色に変色していく
「死に晒せッ!糞野郎!」
気づけば私は、ヒビキの首を絞めていた。