~母港~
帰投してきたミッドウェー攻略艦隊は鎮守府に残っていた艦娘から盛大なお出迎えがあった
「皆、お帰りなさい」
出迎えに来た艦娘の中から白い軍服に身を包んだ男が一人出てきた。
(この服装、旧海軍の少将、今の時系列なら海上自衛隊じゃないのか?)
この鎮守府に入港する前に海上自衛隊の護衛艦が停泊しているのを確認していた。まあ、このご時世で海上自衛隊が機能しているかと言われれば否だが
「提督!無事だったか」
各々の艦娘が空襲で(剣の中ではほぼ死亡と同等の)行方不明だった提督との再開を喜んでいる。金剛は飛び付いていった
「長門、僕の居ない状況で良くやってくれた。それに赤城達空母組も大活躍したみたいだね。それに秘蔵っ子の大鳳も少しの訓練でいきなりの大規模作戦投入、大変だったろう。それに良く分からない新鋭艦群も凄い性能と活躍だったと報告を受けている。まあ1隻大変な事をしてくれた艦が居るみたいだけどね。例の鹵獲艦は君かい?」
「・・・」
手取は剣の後ろに隠れている。
「手取、お前人見知り性あったっけ?」
「戦闘の時は別だ」
「じゃ提督、俺から軽く紹介しとく。こいつは手取、元深海棲艦重巡洋艦リ級」
「手取君、これからよろしく頼むよ」
「尋問でもするんじゃないのか?私を」
「実はねぇ、君の事は黒姫や十勝のような海域邂逅艦として処理してあるんだよ。つまり書類上は艦娘なのさ」
「書類上はいいのだが鹵獲したと言う事実は上層部に報告したはずだぞ、提督」
「長門の疑問にお答えしよう。空襲から身を隠して居た時に暇だったから色々手を回しておいたのさ。因みに本来のリ級はトラックで暴れて剣に処分された事になっているから」
「なんか知らない内に俺捕虜殺害の犯人にされてんだけど。あっ、でも今さら一人や二人殺した位で変わらないか」
「まあ、手取君の処遇の話は終わり。皆疲れているだろう。損傷した子は入渠して傷を癒してくれ。作戦成功の祝賀会はまた後日やろう」
この戦闘でほぼ全ての艦が大小傷を負っている。それに疲労も溜まっているし、鎮守府が復興したわけでは無いのだ
「後報告を偽造したから表向きは問題無いと言っても、話だけは聞かせて貰うからね。剣」
「あ、やっぱり?」
~どっかの地下室~
殺風景な部屋の壁はコンクリート打ちで薄暗い部屋には机一つと対面式に置かれた椅子、その部屋には剣とここの提督だけが座っている
「さて、君の行動について色々聴かせてもらおうか」
「めんどいから帰っていい?腹の風穴の処置したいんだけど」
「良い訳無いだろう。トラック泊地での敵巡洋艦隊の迎撃だけは多めにみるつもりだった。勿論その過程で捕虜にしたリ級の事もだ」
「うん。これから怒られる内容大体分かるから直球でどうぞ」
「ソロモン海への無断出撃に捕虜の艤装修復と装備の無断使用、更にその捕虜を連れてのミッドウェーへの無断出撃、何でこんなことをしたのか説明してもらおうか」
「面白そうだったから」
反省の色は無い
「ふざけるな!きっちり証拠も残してソロモンの敵の殲滅・・・どれだけ処理が大変だったことか」
「なんだ。手取の時みたいに情報握り潰せば良かったじゃねえか」
「それが出来れば苦労はしない。1つの一大拠点の敵を壊滅させたらバレもする。上層部から圧力と疑問の声が轟々だ」
「そりゃご苦労なこって」
「いや、これはどうでもいい。君は一体何なんだ?何の目的でここに居る?」
「艦娘の亜種みたいなもんだろ。んで目的に関してはなんの事やら」
自身の体が何故自分だけ男なのかは剣も分からないのだ
「とぼけるな。僕は少なくても無能ではない筈だ、君の姉妹が色々手回しをしていたのも知っている」
「あらら、あいつら隠密行動失敗してんじゃねえか。第一目的は既に達成したよ少将。それにあなたも同一目的だったみたいだし」
「第一目標?」
「史実の改変。太平洋戦争の結末を好き勝手に弄くり回す事。第一目標はミッドウェー海戦の勝利だ」
「なるほど、君も太平洋戦争の事を知っていたのか」
少将は疑問が府に落ちたらしい
「でも何で僕がそれをしていると思ったんだい?」
「疑問を持ったのは駆逐艦吹雪の戦線投入だ。まず前提としてはウェーク島攻略作戦の日付が変だったこと、そして珊瑚海戦だな。まあ黒姫、鞍馬、大雪、十勝、石狩が頑張ってなんとかなったみたいだけどな。だがミッドウェー海戦が成功裏に終わった以上、これから先どんなことになるか予想がつかないのが本音だ。ソロモン方面はソロモン方面で俺があんな事したからどうなるかわかんない」
「つまり完全に不透明ということだね?」
「そう言うこと。見立てではソロモン・・・南方はそこまで変わらないんじゃねえの?」
「何故そう思うんだい?」
「なんか歴史を修復してかかろうとする『何か』があるっぽいから、その『何か』の最終目的は日本の敗北だろうしいくら太平洋中部に駒を進めていても資源が無ければ戦争はできん」
「・・・ソロモン海は未だに制海権が曖昧な海域だ。辛うじて防衛に成功しているがソロモン海が深海棲艦の手に落ちたら南方資源地帯が落とされる。ってことだな?」
「ああ、ここまで史実通りに進もうとしてたら嫌でも気付く。後さっさと傷治療してきていい?艤装は整備に出したけど体の傷は応急処置で止血しただけだから。さっさと折れた左腕と腹の風穴を塞ぎてえ」
「ソロモンの時にはほぼ無傷で敵を殲滅したと聞いたけど」
「弱い奴は幾らでも斬れるんだよ。それに大混乱の中暴れた。同士討ちも結構してたし。今回は柄にも無く敵の新型戦艦と真正面から殴り合いしたからな」
「そうだ。その敵の新型戦艦についても報告を纏めておいてくれ」
「へいへい。んで入渠はどうすればいい?」
「ああ、そうだね・・・しばらくはドラム缶でも良いかい?」
「傷直せるからどうでも良い」
「工廠には適当なドラム缶用意しておくよう僕から頼んでおくよ。取り敢えず話はこれで終わりだ」
「あと一つだけ。書類上艦娘と言え手取はどうするんだ?」
剣は軽く手取の今後についても聞いた。以後も監視は続行する。そして監視は引き続き剣が担当する事になっていた。そして手取はトラック泊地で魔改造した艤装の改修をしているらしい(元の装備は壊れていない物だけ事前に鎮守府に搬送済み。なおレーダーは壊れてた事にして剣がかっぱらったまま)
そして剣は部屋から出ていった
(さてと、彼はこれからどうするつもりなのか、見物だね)