─戦艦寮 剣、手取部屋────
この部屋に集結したのはチーム砲煙の艦達だ。このメンバーが集まったのは予想外のトラブルが起こったからである。因みにこのトラブルが浮かび上がったのは剣と大和の雑談だった。
─戦艦寮、黒姫の部屋────
暇でこの部屋に集まった剣、黒姫、手取、大和の四隻
「剣ってたまに変な事口走りますよね」
「お兄様が可笑しいのはいつもの事ですわ」
「えぇ?そうなの?」
「よく史実がどうとか呟いてるじゃないですか」
「あー・・・この際大和ならいっか。手取も一応聞いといてくれ」
「いいんですの?話てしまって」
「構わんだろ。いつでも俺らが影で動けるとは限らんからな。さて大和『太平洋戦争』『大東亜戦争』って聞き覚えない?」
「太平洋戦争・・・ですか?」
「うん。めんどいから黒姫、概要説明よろしく」
「そこで丸投げは予想外でしたわ・・・太平洋戦争と言うのは文字通り太平洋を舞台とした日本対アメリカ、イギリスの戦争です。日中戦争で資源不足に陥っていた日本は石油等の資源を求めて南方資源地帯を手中に収めようとしていました。私達の世界の太平洋戦争はミッドウェー海戦で主力空母四隻を失い大敗、そのあとは南方海域で少しずつ戦線を後退しつつアメリカ艦隊を撃滅して行きまして、痛み分けに近い形で停戦しました。まあこの後が大変だったんですが」
「因みに俺らの世界線の大和の戦後は俺ら剣型と一緒にソビエト連邦の海軍牽制したりソマリア行って海賊への対処したり色々してて退役したら呉で記念艦になった」
「大和さんが退役したのは1993年ですわ」
その他海戦で自分たちが何をやらかしてきたのかをできるだけ詳細に語った
「なんでしょう、何か自分の中で引っ掛かッ!」
突然大和が頭を抑え苦しみ悶え始めた。まるで何かに憑りつかれたかのようだ
「おい、大和大丈夫か?大和!」
「お兄様、大和さんを今すぐ工廠の夕張さんの所に運んでください。手取ちゃんは提督へ報告をお願い」
「ヨイしょっと。工廠までの道のりは・・・廊下の窓から倉庫の屋上伝いが最短だな。手取、報告頼んだぞ」
剣は大和の背中と足に手を入れ持ち上げる(お姫様抱っこ)そしてそう言い残し廊下に脱兎の如く駆け出した。開いていた窓から倉庫(三階→二階相当の建物の屋上)へ飛び工廠を目指す。
手取も手取で部屋の窓から飛び降りるというアグレッシブな移動方法で提督がいる執務室の向かい、黒姫は普通に工廠へ向かう
─工廠────
工廠の開いてる窓から飛び込んだ剣、飛び込んだ部屋には調度良く夕張が休んでいた
「えちょっ、誰!」
「えっと、お前誰だっけ・・・夕張!急患だ」
既に頭も抑えておらず体はぐったりとしている大和。見ただけでもヤバいのは伝わる
「そこのベッドに寝かして!私は道具持ってくる!」
抱えてきた大和を丁寧にベッドにのせ、大和を観察する。もう頭を抑えてはいないがかなり顔色も悪く辛そうな表情をしている
「大和に一体なにが・・・」
「剣さん、後は任せて下さい」
「大和の事、任せたぞ」
何気にこの鎮守府で一番大和と付き合いが長いのは剣である。戦闘時はほぼ無意識に狂っているが平時は普通()なのだ
「お兄様、大和さんは?」
「いま夕張が診察中だ。しかしどうするよ、原因絶対俺らの話だろ」
「ええ、仮説自体へ有りますけれど、少々こじつけが」
「俺も仮説は立てた。だがピースが足りなくて説明できんが」
「私の仮説通りなら、艦娘の記憶は意図的に封印されている可能性が高いですわ。ミッドウェーの件での裏工作でそれは確信いたしました。私が意図的に伝えていない情報も何故か話していたから、後で十勝等に聞いてもそんなこと言って居ない。と言われまして、きっかけがあれば恐らくその封印は解かれるのなら筋は通ります。ですが今回の大和さんもその類いではないかと」
「あー、筋は通って居るがそれだと頭痛の原因が分からんな。同様の症状が赤城やらに出てないとおかしい。だが封印ってのはいい線行ってそうだよな。んで黒姫の仮説でピースがいくつか埋まったから話すと、一種の拒絶反応みたいなもんじゃねーの?」
「拒絶反応ですか?」
「ああ、まずこの世界は本来俺たちがいる筈のない世界なんだ。当然大和、いや大和に限らずともこの世界での歴史があるわけで、そして太平洋戦争の歴史を大和に教えて封印が解かれた。までは行かなくても綻びはしただろうよ。そんな脆くなった状態でこの世界とは別の歴史を認識させてしまったから記憶の衝突が起きたんじゃないか?」
「記憶の衝突と言っても私達の世界の大和さんの記憶をこの世界の大和さんが持っているのもおかしな話じゃありませんか?」
「それもそうなんだよなぁ。取り敢えず大和が起きたら話を聞くしかないな」