料理全然得意じゃ無いんでそれ用のサイト色々見たり知り合いに聞いたりしてこの話を作るのにはまぁまぁ苦労しました(笑)
「はい、どうぞ」
睦月はなぎさと愛矢の前にオムライスの乗った皿を出した。
「記憶が無くて不安なのは分かるけど、だからこそ栄養を付けて思い出さないと。遠慮しないでたくさん食べな」
「ありがとう・・・。いただきます」
そう言って愛矢は食べ始めた。
「いただきますなのです」
なぎさもそれに続いて食べ始める。
思い出さないと・・・。望んでいないことを口にしたことに睦月は罪悪感を覚えた。真実を伝えるべきか、隠すのが正解なのか、伝えるとしたらどのタイミングがいいのか。昨晩からずっと考えていたのだが、答えは出なかった。
~一日前~
「愛矢・・・。徳山愛矢・・。」
睦月は大学に現れた魔女と戦い、グリーフシードを手に入れた。そして♧10 REMOTEの力で元の少女に戻した。彼女は自分のことを徳山愛矢だと名乗ったが―、
「私・・・ええっと・・・・・・」
「混乱しているのかな?じゃあ俺の質問に答えてくれないかな?」
睦月は助け舟を出した。愛矢は小さく頷く。
「まずは学校。どこの学校に通っていたか言える?」
「学校・・・あれ? どこだっけ? 思い出せない・・・・」
「いや、いいんだ。無理しなくて。それじゃあ、」
と、睦月はその後もいくつか質問したのだが明確な返答はかえってこなかった。彼女は自分の名前以外の全ての記憶を無くしているようだった。当然、自身が魔法少女だったことも、その末に魔女になったことも。
「ごめんなさい。折角助けてもらったのに、私、何も・・」
「謝ることじゃないよ。記憶が無くなったのにはきっと、何か理由があるんだよ」
そう言うと、睦月はある提案をした。
「どうだろう? 何か思い出すまでここに住んでみないか? 君が倒れてた場所からも近いし何か思い出すかもしれない。部屋なら余ってるから気にしないでいいから」
愛矢はそれに同意した。
睦月はその後なぎさだけを呼び出して言った。
「内緒に・・・ですか?」
「うん。彼女についてはなぎさちゃんとは違う。自分の名前以外家族も友達も覚えていない状態だ。そんな時に自分が魔女だったなんて知らされたら混乱すると思うんだ。だから、しばらく彼女に魔法少女については言わないでくれるかな?」
なぎさはしばらく返事はしなかった。
「なぎさちゃん?」
「愛矢に・・嘘をつくということですよね? 何か思い出すかもしれない手掛かりを知ってるのにそれを隠すのは良いことなのですか?」
「それは・・・」
なぎさは幼いながら、いや、幼いからだろうか、たまに鋭いことを言う。もしかしたらその言葉に今の自分と重ねているのかもしれない。
なぎさの記憶も、完全では無い。彼女は、自分が魔法少女になり、その末に魔女になったことは覚えているが、彼女の家族や友達の事、また魔法少女になった理由など所々が抜け落ちていたのだ。だから、記憶のない恐ろしさを誰よりも理解しているのかもしれない。そして―、
「でも、睦月の言うことも少しは分かるのです。・・・なぎさも、魔女だったことを思い出したときは怖かったですから」
魔女になった時の記憶を持つ怖さも。
なぎさはそう言うと小刻みに震えた。それを右腕で抑えようとする。同じ魔法少女だった彼女にそれを言うのは酷だったかもしれない。そう思い始めた時、
「分かったのです。しばらく、愛矢には魔法少女のことは言わないのです」
なぎさは何とか同意した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして次の日の朝、睦月となぎさと愛矢の3人で朝食を食べている。その間も睦月は、彼女に真実を伝えるべきか、そのことをずっと考えていた。
記憶を無くすというのは怖いに決まっている。辛い記憶だけでなく、幸せな記憶も失ってしまったのだから。だけど、その辛い記憶というのが問題だ。自分が怪物だったという真実を本当に彼女は欲しているのだろうか。なぎさから魔女についての話を聞いた今となってはそれは正しいことだと胸を張って言える自信が無い。
初めてなぎさと出会った時の事を思い出す。彼女は自分が怪物だったことを知り、心に深い傷を負った。彼女にもその傷を負わせるのが果たして彼女のためになるだろうか。
そんなことを考えながらオムライスを黙々と食べていた時だ。
同様に何口か食べていた愛矢の手がふと止まった。そして目を大きく見開いていた。
「どうしたのですか?」
それに気づいたなぎさが声をかける。
「違う」
愛矢はそうつぶやいた。
「えっ? もしかして、美味しくなかった?」
「あっ、いや、美味しい。美味しいです。だけど、これじゃない」
「これじゃない?」
「私はこれとは違う味のオムライスを食べてたのよ」
「食べてた? もしかして愛矢、記憶が―」
「睦月さん、お願いがあるの。私にオムライスを作らせて」
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今日は土曜日で大学は休みなので3人は昼頃に近所のスーパーへ出かけた。
愛矢は必要な食材をどんどんかごに入れていった。卵、玉ねぎ、ウインナー、生クリーム
「何で生クリームなのですか?」
なぎさが尋ねた。
「生クリームを入れた方が後で卵がふわってなるのよ」
「へ~」
他にも彼女はコンソメキューブや赤ワイン、マッシュルームなどもかごに入れた。
「これは?」
「デミグラスソースの材料よ」
「デミグラス? ケチャップでも良いと思うんだけど…」
「ケチャップも十分美味しいけど、何でかしらね。デミグラスのオムライスを作りたいのよ」
その言葉に彼女の凄いこだわりを感じた。彼女がここまで言うのだから、そのオムライスは何かの思い出だったに違いなかった。それを記憶ではなく体で、そして感覚で作ろうとしている。
正直睦月は彼女がオムライスを作ることが、魔女の記憶につながるような気がしていたので、気は乗らなかった。
だけど、愛矢のそんな姿を見て、少しだけ賛成して良かったと思った。記憶を取り戻すことが絶望だけでなく希望も与えてくれると、彼女が楽しく買い物をする姿を見てそう感じることができたから。
「あら、三葉さん?」
「あっ森さん。お疲れ様です」
そんなことを考えていた時、ふと声を掛けられた。それは、初めてなぎさと買い物に行った時に声を掛けて来たあのパートのおばさんだった。
「なぎさちゃんと一緒に買い物かい?ん?そちらは・・・」
「えっと、彼女は徳山愛矢と言って、えっと、その、なぎさの友達です」
「あぁ、お友達。愛矢ちゃんはここに来たの初めてよね?少なくとも私は会ってないから。だってこんなかわいい子が来たら忘れるわけないもの。これからもよろしくね」
「はぁ、よろしくお願いします」
愛矢はすっかり森さんの勢いに面食らってしまったようだった。
と、そこに
「森さん、レジお願い」
「あっ、はーい」
他の従業員が声を掛けて来て、森さんがそれに応じる。
「忙しそうですね」
「そうなのよ。今月急に3人も辞めちゃったからこっちは人手不足で、って、あなたを責めてるわけじゃないのよ。なぎさちゃんを一人にさせるわけにはいかないしね」
申し訳なさそうな表情を浮かべた睦月を見て森さんは睦月を庇うように言った。
睦月は少し前までここのスーパーで生活費の足しにしようとアルバイトをしていた。しかし、一日中なぎさを一人にしておくのは心もとないので、辞めたのだった。仕方ないとはいえ、森さんたち従業員には申し訳ないと思っていた。
「人手がない分は私たちの知恵と力で乗り切ってるんだから。それじゃね」
森さんはそう言って去っていった。
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その後、他のモノも手早く買い、3人は帰郷に着いた。
「あの、今さら何だけど今晩の夕食はオムライスで良かったの? 今朝食べたばっかなのに…」
「なぎさはオムライスは大好きなので全然問題ないのです」
「今回はデミグラスでもっと美味しいモノを作ってくれるんだろ? だったら大丈夫だよ。その代わり、期待してるからな」
「うん。ありがとう。頑張るよ」
それにー、と睦月は心の中で考える。今朝の愛矢は記憶が無いことへの不安やクインテットに泊まる事への遠慮から元気が無かった。
記憶への手掛かりになるかもしれないのはもちろんだが、なぎさや睦月に馴染む為にもオムライス作りは丁度良いと思っていた。
そんな事を考えていたとき、ふと、なぎさと愛矢の足が止まった。
「どうした?買い忘れか?」
そう訊ねた時、二人は突然耳を押さえ始めた。
「どうした!?二人とも」
「睦月は聞こえないのですか?この音!」
「何なの?これ…。頭に響いて来るような」
二人の尋常ではない様子に睦月は辺りを見渡した。しかし、二人が感じている音に睦月は感じることが出来なかった。
「ダメ…、どんどん大きくなってる…」
「これは、あの時の音と、同じなのです」
あの時という言葉に睦月が反応した時だった。
キーン、キーン、キーン、キーン…
睦月にもようやくその音が聞こえた。
「この音、まさか…」
その時、近くの車の窓から"あるモノ"が飛び出してきた。
「危ない!」
睦月は反射的に二人を抱えて屈ませた。それは、両腕に剣を付けたシマウマのような怪物だった。
ミラーモンスター、ゼブラスカル ブロンズ。
「キャァァァァァ!」
咄嗟の事に愛矢は叫んだ。
「大丈夫。大丈夫だから」
睦月はそれを宥めながら、真っ直ぐにゼブラスカルを見つめた。
「なぎさちゃん、愛矢を頼んだよ」
「了解なのです」
睦月はレンゲルバックルを取り出し、
「変身!」
『♧Open Up』
仮面ライダーレンゲルに変身した。
「うぉぉぉぉ!」
睦月はラウザーを叩きつけた。それをゼブラスカルは剣で受け止める。そして今度はゼブラスカルが剣で斬りかかって来た。睦月はラウザーで何とか押さえる。受けては攻撃、防御しては反撃とそんな一進一退の攻防が続く。二人の武器の腕はほぼ互角だった。
「くっ、強い。このままだとスタミナ負けだ」
と、睦月は一旦距離を取り、カードを一枚取り出した。
『♧4 STAB』
そしてラウザーを思い切り突いたーのだが、
「なっ…」
ゼブラスカルはそれを思わぬ形でかわした。体をバネのように伸ばし、ラウザーが体に当たらないようにしたのである。
睦月は突然の事に驚いた。そしてその隙をゼブラスカルは見逃さなかった。そのまま腕を振り上げ。睦月の背中を斬り付けた。
「グハッ!」
その攻撃で睦月は地面に倒れ、その顔をゼブラスカルは蹴る。
何とか立ち上がったが、ダメージで怯んでしまい、そこをゼブラスカルの斬撃が襲った。何発も何発も。そして止めに剣を突き、睦月を大きく吹き飛ばした。
「グオォ…」
「睦月!」
なぎさが思わず叫んだ。愛矢もまた、突然の事に言葉もなく固まってしまっている。
ゼブラスカルはジリジリと接近していた。
「大丈夫だよ。こんな攻撃位で俺はやられない」
「家に帰ったら愛矢が美味しいオムライスを作ってくれるんだろ? それを食べれると思うと、力が出てくるんだよ」
睦月は安心するように言った。その言葉に愛矢も睦月を見つめる。そしてー、
「作る。作るから、頑張って。睦月さん」
「おう!任せとけ!」
そう言うと睦月は臨戦態勢を整えた。それを見たゼブラスカルは走って接近していった。
睦月はカードを一枚取り出し、
『♧6 BLIZZARD』
ラウザーを突きだした。ゼブラスカルはまた体をバネ状にしてかわす。しかし、今回はそううまくはいかなかった。突きだしたラウザーから冷気を噴出させ、モンスターの下半身を凍らせたのだ。これでゼブラスカルは体をバネにしたまま元に戻れなくなった。
「止めだ!」
『♧5 BITE』
睦月は大きくジャンプし、両足を挟み込むようにモンスターを蹴った。
ゼブラスカルの体は大きく吹っ飛び、そのまま爆発四散した。
「ふぅ」
睦月はホッと一息つき、変身を解除した。
「睦月!」
と、なぎさが駆け寄り抱きついてきた。睦月は彼女の頭を撫でた。
「だから言っただろ? 安心しろって」
そして愛矢の方を見て、
「愛矢も、大丈夫だったか?」
「あっ、はい。どこにも怪我は無いですし、あの、睦月さん、今のは…」
「あぁ、詳しい話は後でするけど見たまんまさ。俺は悪と戦うヒーローって事さ」
「は、はぁ…」
愛矢は何とか飲み込もうとする。まぁ、家に帰ったらレンゲルについて話しておこう。
「さて、帰ろうか」
そう二人に呼び掛けた時だった。
「あの、睦月さん…」
「ん?」
「それが、さっき睦月さんが飛びかかって来たときに…卵が…」
「あっ」
卵が全てきれいに割れていた。
「ご、ごめんなさい。私、睦月さんよりも早く気付いていたのに」
「いやいや、何で謝るのさ。卵位、新しく買い直せば良いだけでしょ。それに、二人に怪我は無かった。それだけで充分なんだからさ」
「さて、卵を買いに戻るか」
「うん!」
愛矢は笑顔で応えた。
卵を買い直した3人はアパートに戻り、愛矢は調理を始めた。彼女の調理は手慣れていた。頭ではなく体で、自信に備わった感覚で調理をしている感じだった。
そう言えば、彼女が出てきた魔女に洗脳された人々は自身に味付けをし、魔女に食べてもらうことに喜びを感じているようだった。なぎさにも詳しく聞いてないのではっきりとしたことは言えないが、もし魔女の形や行動が魔法少女だったころの記憶と関係しているのなら、彼女は料理が趣味の女の子だったのかもしれない。睦月はそう思った。
「さぁ、出来たわ」
愛矢はそう言って、3つのオムライスと付け合わせのサラダを食卓に並べた。
「「うわぁぁ」」
二人は感嘆の声を上げた。
チキンライスが綺麗なドーム状になっており、その上に半熟にとろけた熱々の卵がチキンライスが見えないほど覆い被さっていて、デミグラスソースにはマッシュルームがたっぷり入っていて、それが湯気と共に食欲をそそる香りを放っていた。
付け合わせのサラダも、ただ野菜を入れただけでなく、レタスとスプラウト、ミニトマトは見栄えの良いようにきちんとトッピングされていた。まるで洋食のレストランだ。
「凄い凄い、凄いのです!」
「冷めない内に早く食べましょう」
「「「いただきま~す!!!」」」
3人はスプーンでオムライスを掬い、一口食べた。
「!」 「!」 「!」
「美味しいのです~!」
最初に声を発したのはなぎさだった。
「凄く、美味しい。自分が今まで作ってたモノがバカみたいだな、これは」
続いて睦月が自身の料理を卑下しながらそう言った。
「それは言い過ぎよ」
愛矢は謙遜してそう言った。だけど、その表情はとても嬉しそうだった。
サラダとオムライスをぺろりと平らげ、夕食は終わった。結局愛矢は、レンゲルの姿を見ても―彼女には食後、この町には怪物が住んでいて、自分はそれを倒すように警察に密かに依頼された特殊部隊の一員なのだと告げた―オムライスを作っても彼女の記憶が戻ることは無かった。だけど、この日一日を通して、愛矢は睦月やなぎさにすっかり馴染み、満面の笑顔を見ることができた。それだけでも今回の出来事に意味を持たせるのには十分だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その日の深夜、なぎさと愛矢は睦月の部屋の隣に布団を敷いて横になっていた。既になぎさは眠っていて、静かに寝息を立てている。しかし、愛矢は嬉しくて眠れなかった。
自分が作ったモノを食べて、笑顔で美味しいと言ってくれた。オムライスを作らせてと睦月に頼んで正解だった。やっぱり料理は楽しい。本当に楽しい。料理を作れば、皆の笑顔が見られるから。あの子の言っていたことがようやく分かったような気が―
あれ―? あの子って、誰だっけ?
そこまで考えた時だった。
「痛ッ!」
突然頭に妙な激痛が走った。そして、頭の中に見たことがない情景が流れてくる。
『ねぇ、愛矢。私と一緒に何か作ってみない?』
『大丈夫よ。あなたならできるわ。私を信じて』
あれ―? 今何かとても大事な事を思い出したような―。あの子は、誰だっけ?
愛矢の意識はそこで途切れた。
続く
<キャラクタープロフィール①>
徳山 愛矢(とくやま あや)
年齢:16歳
身長:152.1cm
体重:42.6kg
血液型:AB型
性格:純粋
将来の夢:カフェを経営すること
好きな食べ物:オムライス
趣味:料理
好きな場所:レストラン
好きなモノ:フライパン
※魔女になる以前のプロフィールで、第九話現在では名前以外の全てを忘れているのが現状です。