長い沈黙が流れた。いや、本当は一瞬だったかもしれない。しかし睦月にはその沈黙は何時間も続いていると思うほどに長く感じた。
やがて、晴人は口を開いた。
「・・・なるほど。つまりお前は、俺が全部知ってた上でお前に近付いたと考えた訳だ。俺がライダーに変身するために仕組んだ事だと」
「そこまでは言ってねぇよ。ただ俺h…」
「正解!」
―――――――――――――――――――――――――――何?
「おいおいおいおいお~い、俺が隠してた事をこうも簡単に言い当てるとは恐れ入ったぜ。すげぇなお前。探偵かよ?」
「いや、え?あえ?」
「ん?どうした?そんな顔して?お前が言った事だろ?」
「いや、そうなんだけど…」
正直予想外だった。しらばっくれるかと思っていたのにまさかそんな明るい口調でそれを認めたから。
「いや~すげぇな!どこで分かったんだよ?やっぱ戦闘シーンか?さすがに無理があったかな~」
「嫌、それだけじゃねぇよ」
何とか状況を頭に入れ、晴人のペースに流されないように話した。
「あのOREジャーナルの写真、あれから何となくおかしいと思ったんだ。戦闘はかなり詳細に写されていたのに、あの時俺は戦闘が終わってからすぐ変身解除をしたにも関わらず、それ以降の写真は一枚も無かったから」
「・・・・・・・・・」
「それに、そもそも今日お前がこの辺りにいたって時点で怪しいんだよ。俺は2年近くここに住んでるが、その間、お前がこの辺りまで来た事は一度もないしな」
「おいおいおいおい何から何までだな。ご名答。正解も正解。満点だよ」
「じゃあやっぱお前は全部知ってたんだな!?俺の事も、ライダーの事も、なぎさちゃん達の事も!」
「おい待て、勘違いするな。魔女については本当に知らなかった。お前を初めて見かけた時、そのなぎさって娘に怪物じゃない的な事を話してたから普通の女の子じゃないって事は薄々感じていたがな」
あの話も聞かれてたのか…。
「何が目的だ?俺の正体を知ってて隠してたんだから、何か狙いがあったんだろう?」
「狙い?それならとっくに叶ってるぜ」
晴人はそう言うと目の前にブレイドバックルをかざして続けた。
「俺の目的は、ライダーに変身して怪物と戦う事さ」
「・・・・・は?」
「俺はよ、ずっとこういう戦いがしたかったんだよ!やっぱ武士の血がそうさせるのかねぇ?とにかく、命懸けの戦いっていうのがしたかったのさ。ちなみに、俺がカメラをやり始めたのも、戦場カメラマンなら命懸けな事が出来ると思ったからさ。そんな時、偶然駅の近くの高架線を通り掛かったら、お前が怪物と戦ってるのと出くわしてさ、これだと思ったね。少しでも気を緩めれば命を落とす。しかし、それを切り抜ければ現実では得られない満足感を感じられる世界。そんな世界に足を踏み入れたいと思ったんだ。だから俺は敢えて最初にOREジャーナルに写真を送り、それをきっかけにお前に接触しようと思ったんだ。同じサークルだったのは本当にラッキーだと思ったぜ!」
・・・・・・・・・・
「つまりお前は、戦いたいが為にライダーになったということか?」
「まぁ、噛み砕いて言うとそういうことになるかな?だから、一緒に戦おうぜ?協力プレイと行こうじゃねぇか」
晴人の望み、それは大方理解した。しかし、だからこそ―、
「嫌、ダメだ。ベルトを返せ」
「ハッはぁ!?何でだよ?俺の戦い見ただろ?強かっただろ!?お前だって、俺がいなかったら今頃死んでたんだぜ!?」
「今日の事についてはお礼を言う。本当にありがとう。だけど、これからも変身してほしいっていうなら話は別だ。動機が気に入らねぇ。そんな気持ちでライダーになんてなってもらいたく無いんだよ。ほら、ベルトを返せ」
「なんだよ。お前だって変身して間もないっていうのにもう先輩風かよ?だったら俺の写真ばらまくぜ?」
「なっ…」
「だってそうだろ?俺が黙っているのは変身して戦う為だ。それを奪うってんなら黙ってる理由が無くなるんだからなぁ?」
「グッ…」
脅しだ。完全に。
「まぁ仲良くやろうや。見ての通り、俺はかなり強いんだからな!」
「・・・・・・・・・」
何も言えないでいると、
「睦月~!」
なぎさと愛矢が駆け寄ってきた。それを見た晴人は、
「そんじゃ、今日はお暇しますわ。じゃあまたな。明日作戦会議しよう。多分、俺の考えてることは、お前の目的にきっと役に立つからな」
そう言って晴人は公園を後にした。
「? 睦月?どうしたのですか?」
「ん・・まぁちょっとな。外ではちょっと・・・家で話すよ。じゃあ、帰ろうか」
睦月もまた、二人を引き連れて公園を後にした。
睦月の背中を見ながら、愛矢は別の事を考えていた。
「(さっき晴人さんが話してた目的って何?怪人を倒すこと?でもそれって極秘事項なんじゃ・・・何でそれを晴人さんが知ってたの?もしかして、睦月さんの言ってる事って・・・)」
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家に帰り睦月は、事のあらましを説明した。
「「ライダーだってバレてた!?」」
「あぁ、それを知ってた上であいつは近づいたんだ。そして、スペードのライダーになりやがった」
「まさか自分も戦うために睦月に近づいたなんて驚きなのです」
「でも、ある意味良かったんじゃない?二人になれば、その分楽に戦えるし」
「まぁ・・・そうなんだけど・・・」
睦月は言葉を濁した。
「?どうしたのですか?」
「いや、何となくな。あいつの、戦いたいからライダーになるっていうのは何か違うんじゃないかなって思ってな。だからつい反対しちゃったし」
「睦月さんは、戦いたくてライダーになったんじゃないの?」
「何言ってんだよ。そんなわけないでしょ。本当だったら戦いたくないよ。俺はただ、人が怪物に殺されるのを防ぐために、人を守るためにライダーになったんだよ」
そして、君たちみたいに魔女にされた人たちを救うために、と心の中で呟いた。
「だからまぁ、反対しちゃったんだよ。意地というか、価値観の違いだな」
「ふーん・・」
なぎさも愛矢も完全には納得していないような様子だった。無理もないだろう。睦月自身も、なぜ反対したのか、よく分からないのだから。自分は人を、特に魔法少女を守るために戦うことを決意した。戦いたいという動機でも、魔法少女を救う過程が魔女と戦うことである以上、結果的に魔法少女を救うことに繋がるではないか。そう考えてる自分がいるからだ。いつか、この疑問に対する答えが見つかる日が来るのだろうか。
それはともかく、これからは晴人との付き合い方を考えないといけないなと思った。晴人が写真を握ってる以上ベルトを手放せることはできない。しかしだからといって、彼は自分とは考え方が違うだけで別に悪い人には見えない。助けてくれたのも強いのも事実なんだから。とりあえず行動を共にし、様子を見ることが賢明だろうと思った。
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次の日、睦月は晴人に呼び出されて、大学の空教室にいた。
「じゃあ、これからの作戦会議を始めようか」
「作戦?何の?」
「決まってんだろ?魔女を探す為の会議だよ」
「! そんなことが出来るのか!?」
驚く睦月に対して晴人は得意そうに話を進めた。
「お前が今まで会った2体の魔女を見れば大体の傾向が分かるからな」
「傾向…?」
「お前が始めて会った魔女、あれの住む空間は、一本道からのばかでかいホールってので間違いないな?」
「あぁ」
「そして大学に現れた魔女は集団を洗脳させていた」
「そうだけど…それがどうしたんだ?」
晴人が何を確認しているのかが今一ピンと来ない。
「分かんねぇか?つまり、魔女の目的は出来るだけ多くの人間を補食することだ。それも洗脳まがいな事してな。だったら話は簡単だ。最近起こった洗脳のような出来事、そしてその背後に存在する不審死、それらを追えば魔女にたどり着く可能性が高い」
「ちょっちょっと待てよ。それはいくらなんでも飛躍し過ぎじゃないか?洗脳みたいな事をした魔女は大学の奴だけで、初めて会った奴はそんなことは無かった。第一最近って具体的にはいつ頃の話だよ?」
「お前が始めて魔女に会ったのはいつだ?」
「えっと…あの日はバイトだったから…5月22日だと思うけど…」
「じゃあ5月22日以降だ。それで調べるぞ」
「いやいやいや、ちょっと待てよ!」
いい加減頭が痛くなってきた。何で俺が始めて魔女に会った日が基準になる?何でこうサクサクと話が進む?こいつは一体何を考えている?
「何だ何だ?もう混乱してきたか?ヒントだったら今までたくさんあっただろうが。魔女とは別にいる鏡の中の怪物、それを従えるライダー、そのライダーが言った"侵入者"という言葉、そしてお前が始めて会った魔女がしなかった集団洗脳」
何故今まで話に挙がらなかった鏡の怪物が出てくるのか。睦月はさらに分からなくなった。
「あ~あ~あ~あ~ダメだな~ったく。だからお前のgpaは低いんだよ」
gpaは関係ないだろ。というかそもそも俺のgpaなんて知らないだろと心中で突っ込みを入れる。
「分かったよ。じゃあお前にも分かるように簡単に言ってやる。いいか?魔女は恐らくこの世界の生き物じゃねぇ。5月22日かそれより少し前にやって来た別の世界の生き物だ」
続く
お仲間も一人増え、遂に魔女の根幹の謎に迫っていきます。
ここから、少しずつ「魔法少女」と「仮面ライダー」との繋がりが深くなっていきます。
お楽しみに!