仮面ライダーレンゲル☘️マギカ   作:シュープリン

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第17話 "colorful"

 「つまりまとめると、だ」

 

 仮面ライダーインペラーとの戦いから3日経ったその日、晴人と睦月は空の教室で、の戦闘で得た情報の確認をしていた。

 

 「俺たちとは違うライダー達は神崎士郎って奴に命令させて俺たちと魔女を消そうとしている。そしてその魔女はこの世界に10体存在していると、そういうわけだな?」

 

 「あの佐野が言ってたことを信じるとだけどな。あいつは魔女の事を“10の怪物”と呼んでいた。とすると―、」

 

 「この世界紛れ込んだ魔女は後6体、もしくはそれ以下ってことになるな」

 

 晴人が引き継いで言った。別の世界から来た魔女。その魔女はこの世界にやって来た時は10体存在していた。睦月と晴人が今まで4体倒したから残りは6体。しかし、他のライダーが既に倒しているかもしれないのでその数はもっと少なくなる可能性がある。

 

 「あいつらが倒したってなるとグリーフシードが心配だ。無くしたり、壊されたりしないかってのもそうだけど、“侵入者”と呼ばれて指名手配されてる俺たちに対して素直に渡すかっていうのも疑問だ」

 

 「なぁ、それについてなんだけどよぉ、そもそも“侵入者”ってのは何なんだ?」

 

 「えっ?そりゃ、俺たちの事なんじゃないのか?元々この世界にいたライダーは鏡の怪物をある程度付き従えることができる奴で、それ以外は別の世界から来たってお前が言ったんだぞ?」

 

 「いや、ふと今回の戦いでふと思ってな。いや、正確に言えば何度も漠然と考えていたことと言った方がいいかな?」

 

 「どういうことだ?」

 

 「昨日のライダーが言った事を考えると、あいつらはこの世界に紛れ込んだ“侵入者”と“10の怪物”と呼ばれる魔女を倒せと言われている」

 

 睦月は黙ってうなずいた。

 

 「その言い方からすると、“侵入者”っていうのは、魔女をこの世界に連れ込んだヤツっていう見方ができないか?」

 

 「連れ込んだヤツ?」

 

 「そ、そしてそれが俺が漠然と考えてたことの一つだ」

 

 晴人はそう言って人差し指を一本立てた。

 

 「いいか、俺たちは簡単に魔女は異世界から来たと言っているが、本来パラレルワールドを移動するっていうのはそう簡単じゃない。莫大なエネルギーが必要なはず。だが、今まで戦ってきた魔女にはそこまでのエネルギーを秘めているようには感じなかった。とすると、魔女をここに連れてくるように手引きした奴がいるっていうことじゃないのか?」

 

 「ちょっと待て。だとすると、この事態を起こした黒幕がまだいるってことなのか!?」

 

 「今の考えだとそういうことになるな。今にして思えば、このベルトがこの世界に来たのもそれに反応したからなのかもしれないなぁ」

 

 「どういう意味だ?」

 

 「魔女が現れたとされるのは5月22日。だが、お前の所にベルトが現れたのは5月15日。そして15日の晩にお前の夢に魔女の存在をほのめかす言葉を残した奴が現れた。とすると、5月15日から22日の間、この間に魔女が現れる出来事が起きて、このベルトはそれに反応して現れたんじゃないかってな」

 

「いや、それだとおかしくならないか?」

 

 睦月はふと思ったことを指摘した。今にして思えば魔女が異世界からやって来たと聞いた時点で気付くべきだったのだが。

 

 「俺たちのベルトは、あのライダー達とは作りが違う以上、別の世界から来たってことになる。だけど、それはなぎさちゃんの反応を見るに魔女の世界じゃない。魔女とこの世界、二つの世界の異変に全然関係ないもう一つの世界が関与するっておかしくないか?」

 

 「そう、それが俺の考えてたことの二つ目だ。お前も気づいたか」

 

 そう言って晴人は指を二本立てた。

 

 「普通なら、二つの世界で何らかの異常が起きているときに別の第三者の世界が干渉してくることはない。だけど、関係があったとしたらどうだ?」

 

 「関係がある?」

 

 いつの間にか先生と生徒の授業みたいになってるなと思いつつ睦月は訊ねた。

 

 「くしくも俺たちは、ライダーの力と魔女の力に繋がりがあるという根拠は何度も目にしている」

 

 「えっ?何が?」

 

 変身して何度も戦ったが、そんな繋がりを感じたことは無かった。

 

 「リモートだよ」

 

 晴人がそう言った。

 

 「リモート?」

 

 「いいか、カードっていうのはラウザーにスラッシュするだけで特定の効果を得る事ができる。サンダーをスラッシュすれば雷の効果が得られるようにな。同様に、リモートにもそういう効果がある。お前が試した事を見ると、それはカードの中にいた怪物を解き放つ事であり、本来はそれ以外の効果を持つ筈が無いんだ」

 

 「あっ!」

 

 ここまで言われて、睦月も気付いた。

 

 「そう。しかし、実際にはそれでグリーフシードから人を解放させることが出来た。これはつまり、リモート自体がグリーフシードの事を他のカードと錯覚しているとも言えるんだよ」

 

 「そうか、二つは全く別のものだと思ってたけど繋がりがある。だとすると―」

 

 「必然的に魔女とあの鏡の世界についても繋がりがあるって事になるわけだ。その根拠はまだないが」

 

 「いや、ある」

 

 睦月には思い当たる節があった。見た目が似ているとかそういう曖昧なものじゃない。もっと確実な、レンゲルやブレイドとこの世界に元々いたライダーに繋がりがある根拠が。

 

 「前に、サイのようなライダーと戦った事を話しただろ?あの時にあったことだ」

 

 睦月は仮面ライダーガイと戦った時の事を詳細に語った。特に重要なのは、STABのカードをスラッシュした時にガイの行った行動だった。彼はあの時『CONFINE VENT』というカードを使う事でこちらのカードの力を無効化した。もし、あのカードの効果が本来はガイの使ってるのと同じカードの無効化なのだとすると晴人の言い方だとそれは睦月のカードをそれだと勘違いしたことになる。

 

 「なるほどな。これははっきりした証拠だな。やはり、この3つの世界には繋がりがあったわけだ」

 

 魔女、鏡、そしてレンゲル。一見すると関係ないと思われる3つの世界。しかし、実際はそうでは無かった。これら3つに、どのような繋がりがあるのだろうか。

 

 「それがわかりゃ、原因何てすぐに分かるんだろうけどよ、そこまではまだ分からんな。さて、そろそろ帰るか」

 

 腕時計を見た晴人はそう言った。時計は17:30を差していた。

 

 「そう言えば、あの子はうまくやってるのか?天野小夜(あまの さや)って言ったっけか」

 

 帰り支度中、ふと思い出したように晴人は聞いた。

 

 「いや、まだ馴染むのに時間が掛かるかな。何せ、彼女の場合は少し事情が違う」

 

 「ま、そうだな」

 

 晴人は納得したようだった。

 

 あの日、グリーフシードから解放した少女は、自分の名前も覚えていなかったが、彼女が持っていた生徒手帳から名前が天野小夜だということが分かった。しかし、それからというもの彼女の反応は曖昧。話し掛けてもまともな返事は返ってこなく、硬い殻の中に閉じこもっているような感じだった。愛矢や千翼の時みたく、料理やスポーツをやれば気が紛れるかと思ったが、彼女は思ったより不器用で野菜は満足に切れない、卵を割ろうものなら殻までたくさん入ってしまい、火を使えば焦げると言ったようにどれも失敗。スポーツも、お世辞にも上手いとは言えなかった。

 

 元々の性格もあるかもしれないが、それ以上に自分の名前すら覚えていないと言う事実に不安があるのだろうと思う。呼ばれれば振り返る。名前とは言わば、自分という存在を表現する原典のようなものだ。それを忘れるということは、自分を表す言葉が無いということ。自分が呼ばれていると分かっていても、名前に自覚がない以上チグハグ感が出る。そんな状態で元気になれというのが無理な話なのかもしれない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「ごちそうさま」

 

 「あれ~?小夜、もう食べないの?昨日もあんまり食べて無かったじゃん」

 

 「小夜ちゃん、私の料理・・合わなかった?」

 

 愛矢が不安そうに聞いた。

 

 「いえ、そんな。美味しかったです。ただあんまり、食欲無くて」

 

 「何よ、もったいない。愛矢、おかわり!」

 

 「もう終わりよ」

 

 「え~!まだ二杯しか食べてないのに~!!??」

 

 「舞花がバグバグ食べるからすぐ無くなるのです」

 

 なぎさがぽつりと言った。

 

 「それに、一人増えたんだから、これからの費用の事も考えないといけないしな。とりあえずは親からの仕送りを何とか言って増やしてもらうつもりだけど・・・それができるまではこれからはおかわり禁止だ」

 

 「え~!!?ぶ~~~」

 

 舞花は口を尖らせた。

 

 「あの、前々から気になってたんだけど、睦月さんのご両親っていうのは・・・」

 

 「あぁ、不動産のグループ会社の経営をしてるんだよ。高見沢グループ程じゃないけど、中の上位の中小企業だよ」

 

 「えっ?お坊ちゃまだったのですか!?」

 

 「いや違うって」

 

 なぎさの反応に対して睦月は即座に否定する。

 

 「不動産って言っても、扱ってるのはこのクインテットみたいに古くなった物件ばっか。最近改築系の会社を吸収してようやく軌道に乗ったくらいで・・・」

 

 そこまで話した時、ふと睦月の声が小さくなった。

 

 「睦月?どうしたのですか?」

 

 心配になったなぎさが尋ねた。

 

 「いや、何でもない」

 

 睦月はそう言って否定した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 深夜。皆が寝静まる中、睦月はノートを広げて勉強をしていた。来週から始まる期末試験のためだ。昼間は大学やバイトがあるし、家に帰ればなぎさや愛矢達がいるから、この時間帯しか集中できる時間が無いのだ。

 

 ふと、後ろから物音がしたので振り返ると、そこには小夜がいた。

 

 「おう、小夜。トイレか?」

 

 「睦月さん、こんな時間でも勉強をしているのですか?」

 

 「ハハハッ、いつもやってるわけじゃないよ。もうすぐテストだからな。それだけさ。昼間は千翼やなぎさちゃんが元気だからな~。今じゃないと集中はできないんだよ」

 

 「そう・・・」

 

 小夜はそれだけ言うと部屋を出た。やはり、まだ遠慮があるようだ。ゆっくりと、接していかなきゃなと思った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 気が付くと睦月は机に伏せって眠っていた。時計を見ると、もう午前3時だ。もう寝ようかと思い、水を飲みに台所に行った時だった。

 

 テーブルの上に見知らぬ紙があることに気付いた。

 

 「これって・・・」

 

 『短い間でしたけど、ありがとうございました 小夜』

 

 「! あの馬鹿!」

 

 睦月は急いで飛び出した。

 

 右へ左へ。とにかくあてもなく探した。何で勝手に出ていくんだよ! お世話になりましたって言ったって、まだ三日じゃないか!何でそんなにすぐに決めつけて―

 

 その時―、

 

 「嫌ぁぁぁぁぁ!来ないで!」

 

 小夜の声だった。急いでその場所に向かうとそこは狭い路地。そこで小夜がモンスターにちょうど詰め寄られている所だった。

 

 バクラーケンとよく似た見た目をしているが、今度は全身が青みがかっていて、手には槍のような武器を持っていた。

 

 ミラーモンスター、ウィスクラーケン

 

 「変身!」

 

 『♧Open Up』

 

 睦月はレンゲルに変身すると、小夜に向けられていた槍をラウザーで受け止めた。

 

 「大丈夫か・・・?小夜ぁ・・・」

 

 力で槍を抑えながら睦月は訊いた。

 

 「睦月・・・さん・・・?」

 

 「うぉおりゃあ!」

 

 睦月は一瞬の隙をついてウィスクラーケンを蹴った。さらにラウザーを何度も打ち付けて追撃をする。最後はラウザーを横に打ち付け、モンスターの体を反対の壁にぶつける。

 

『♧6 BLIZZARD』 『♧3 SCREW』

『ブリザードゲイル』

 

 睦月は右手から吹雪を出し、尚も向かってくるウィスクラーケンの体を凍らせた。

 

 「止めだ」

 

『♧6 BITE』

 

 睦月は両足に力を込め、その場でジャンプし、ウィスクラーケンに向かって両足を挟み込むように蹴り上げた。

 

 ウィスクラーケンは衝撃で吹っ飛び、その体は鏡をすり抜け、ミラーワールド内で爆発四散した。

 

 「危なかった…」

 

 変身解除し、睦月はホッと一息ついた。小夜は腰が抜けたのか、その場でへたっと座り込む。

 

 睦月は小夜を睨んで詰めよって言った。

 

 「どうして黙って出ていったんだよ!!?お前は記憶喪失なんだろ!?行く宛も無い癖に勝手にどっか行くなんて無謀にも程があるだろ!!」

 

 「ご…ごめん…なさい」

 

 小夜は掠れた声でそう言った。

 

 「何で?何で勝手に出ていったんだよ!!?」

 

 「…迷惑かなって思ったから…」

 

 「迷惑?」

 

 「私、愛矢さんみたいに料理できないし、千翼さんみたいに皆とおしゃべりできないしなぎささんみたいに皆を和ませられないし…。私、何も出来ないのに睦月さんの所にいるなんて…それだと迷惑じゃないですか?自分の時間を犠牲にしてまで私の事を…」

 

 「迷惑だなんて思ってないよ!」

 

 そこまで言われて睦月は気付いた。小夜はきっと、さっき睦月が言った、「今となっては勉強は深夜しかできない」という言葉を気にして家を出ていってしまったのだ。だから、そんなこと全然気にしてないと言葉で伝えた。

 

 「俺は、ただ居場所を与えたい想いでお前家に連れてきたんだ。俺がただそうしたいからやっただけなんだ。だから、お前がその辺を気にする事なんて無い」

 

 「だけど、私、他のみんなと違って全然何も覚えてないし、何も取りえないし、睦月さんみたいに戦えないし・・私、睦月さんたちにできることが何も・・」

 

 「そんなことないって!」

 

 「えっ・・・?」

 

 「何も取りえない?何も覚えてない?だから何だってんだ。上等じゃねぇか。これはつまり、小夜はこれから何でもできる可能性が無限大にあるってことだろ!?だから、自分にしか出来ないことがきっと見つかるって!だから、それを一緒に探そう!さ、立てる?」

 

 そう言って睦月は手を差し出した。

 

 小夜の心の中にあるキャンパスはまだ真っ白だ。名前も、得意なことも、苦手なことも、親しくしてた人とか家族がどうだったかとかそういうのも全く覚えていない赤ちゃんと同じでゼロからのスタートだ。だけど、だからこそ何色でどんな絵を描いても許される。ならば、自分の好きなように描けばいい。いざとなったら頼れる人に描くのを任せばいい。一人の少女の未来は無限大なのだ。

 

 そんな想いを感じ取ったのか、小夜は目一杯に涙を貯めたまま睦月の手を取った。

 

 帰り道、小夜の事を横目で見ながらずっと思っていたことを言った。

 

 「小夜はさ、さっき自分には何も取柄は無いって言ってたけど、俺はそうは思わない」

 

 「・・・?」

 

 小夜は眼鏡を通して睦月の顔を見た。

 

 「小夜は、他の誰よりも優しくて一生懸命なのがいい所なんだよ。料理やスポーツだって、できないからって投げ出したりふざけたりしないで最後まで一生懸命頑張ってた。それに今回だって、俺の事を思って家を出ようとしたんだろ?その行動には感心しないけど、お前の俺たちに対する優しさ、それはしっかり伝わってるよ」

 

 小夜は眼鏡一杯に目を見開いた。そして、睦月から目をそらすと小さな声で、だけどはっきりと言った。

 

 「ありがとう」

 

 根拠は無いけど、今回の出来事でようやく小夜の想いがはっきりと睦月の心の中で形作られたように感じた。

 

 小夜の目からは一筋に光るものが静かに流れた。

 

 小夜は今、クインテットの仲間としての一歩を踏み出したのだった。

 

 

続く




遂にメインヒロイン全員登場!

次回から睦月は夏休みです
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