1つ 角無千翼の体がオーキッドアンデッドに乗っ取られた!
2つ 天野小夜がラウズアブゾーバーを使って仮面ライダーギャレン・ジャックフォームに変身した!
そして3つ 天野小夜、角無千翼が自身が魔女であったことを知った!
今睦月は、一つの運命の境目を迎えていた。8月3日。今日がこの日だ。鬼が出るか、蛇が出るか。睦月は震える指で、封筒の封を切った。そして、中にある書類を一つ一つ確認していきー、
「単位、落としてなかった~」
無事、留年という運命から回避した。
ちょうどその時、睦月の部屋のドアが開いた。
「よ、睦月、久しぶりだな。単位は大丈夫だったか~?」
晴人だった。
「晴人!お前、今までどこ行ってたんだよ?」
「ん?あぁ、実家帰ってた」
「え!?あの空気で!!?よく実家帰ろう思ったな!」
「しょうがねぇだろ?元々予定してたんだから。ほうほう、なんだ、単位ちゃんと取れてんじゃん。良かったな」
「ナチュラルに人の成績見るな!」
バッと手を出して成績表を奪い返す。
「でも、GPAなら俺の方が上だな」
「うっせ!」
「でもま、しょうがねぇか。今やお前は、元魔女被害者の会の方で忙しいからな」
「変な名前付けんなよ…」
「で?あれからどうだったんだ?小夜は結局どうしたんだ?やっぱライダーは辞めてダイヤはおじゃんか?というか、その元魔女の子達はどこ行ったんだ?」
「その呼び方止めろ。ハァ…お前が居ない間、色々大変だったんだぞ」
オーキッドアンデッドの一件からちょうど一週間が経とうとしていた。その間に、クインテットでは新しい習慣が生まれていた。
「頑張れ~!小夜ちゃん!もう少し!」
「ファイトなのです~!」
「後1メートル…よしゴール!凄いよ小夜!また新記録!」
小夜は疲れて木陰に座りながら軽く微笑んだ。
「小夜、お疲れ様」
「ん、ありがとうなぎさちゃん」
小夜はなぎさからタオルを受け取って汗を拭く。それはひんやりとしていてとても気持ち良かった。
新しい習慣、それは、小夜のトレーニングだ。彼女がギャレンとしてこれからも戦うと決心したその次の日から申し出た。「足手まといになりたくないから」そう言って。
そして、そのトレーニングは舞花が主体で行うようになった。運動神経がずば抜けて良かったからというのもあるが、それ以上に彼女自身が強く希望したからだ。彼女は小夜の体力に合ったメニューを作るなど、名コーチ振りを発揮し、彼女を影から支えようと頑張ってる。
小夜もそんな舞花の期待に応えようとトレーニングを一生懸命頑張っていた。あれから二人は格段に仲良くなった。そんな気がしていた。
「お、いたいた」
「あ、睦月!単位は大丈夫だったのですか?」
「あぁ、平気だったよ」
「俺よりも悪かったけどな」
「言うな」
そして晴人は小夜に近付いた。
「は~、まさかこのままライダー続ける事に決めたとは思わなかったな~。千翼とかなら分かるが」
「あんまり小夜を見くびらない方がいいわよ。この子は私を助けてくれたんだから。私なんかよりも、この子の方がずっと強いんだから!」
「あぁ、話ならさっき睦月から聞いた。俺も、お前の事はちょっと見くびってたみたいだな。凄いじゃないか」
「いえ、そんな…」
小夜は照れくさそうに笑った。
「そんなお前にご褒美だ」
晴人はニヤっと笑って言った。
「今夜はバーベキューと行こうじゃないか」
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「焼肉、焼肉~♪」
外でのバーベキューと聞いて買い物の道中、舞花はずっとスキップを弾んでいた。最年少のなぎさですらやってないというのに、これではどちらが子供なのか。
「にしても、本当に良かったのか?お前入れて6人分全員の代金を持つなんて」
「実家にいた時、ちょっと割のいいバイトをしてな。金にかなりの余裕があるから大丈夫だ。俺はお前と違って後で請求するようなことはしないさ」
一言余計だ。
「言ったわね~、だったら、私、ガンガン食べちゃうわよ~」
「おう、ガンガン食え。面白い」
「やた!皆、聞いたわね!?今日はお腹が切れるまで食べつくすわよ!」
そう舞花が宣言した時だった。ふと小夜は足を止めた。
「ん?どした?」
「睦月さん…この気配…」
「えっ?」
キーン キーン キーン キーン
スキップをしていた舞花も足を止める。
そして曲がり角にあるカーブミラー、そこからモンスターが現れた。それも続けざまに3体。
ギガゼールが2体と、メガゼールが1体だ。
「こいつらは…」
「あのライダーが使ってたヤツだな」
この3体は無作為に襲おうとしてる感じではなく、3人のライダーに狙いを定めていた。明らかに仮面ライダーインペラーの刺客だった。
「あのライダーも近くにいるはずだ。警戒しながら行くぞ!」
「おう!」
「私も!」
「お?お前も参戦か」
「て、お前はまだ…」
トレーニングしてるとは言ってもまだ1週間だ。まだ戦わせる訳には…そう思っていたが、
「小夜!特訓の成果、見せちゃって!」
「はい!」
小夜も、そのマネージャーもやる気満々だ。舞花もそうだが、彼女も一度こうと決めたら最後まで突っ走る一面がある事を知った。だから、無理に止めないで代わりにこう言った。
「小夜、無茶するなよ」
「はい!」
「「「変身!!!」」」
『Turn Up』 『Open Up』 『Turn Up』
3人はブレイド、レンゲル、ギャレンに変身し、それぞれのラウザーを構えた。
「行くぞ!」
そしてブレイドはギガゼールの1体に、レンゲルはメガゼールに向かって突っ込んで行った。
ギャレンは動かずに、ギガゼールの1体に狙いを定めた。
ギガゼールが二又の槍を構えて突っ込んで行った。その瞬間を狙い、ギャレンは発砲。唐突な攻撃に多少は怯んだようだったが、すぐに槍で銃弾を弾き、彼女の攻撃に対応した。
「小夜!カード!」
「はい!」
ギャレンは発砲したままラウザーを開き、カードを1枚取り出した。
『♢9 GEMINI』
するとギャレンは二人に増えた。向ける銃弾の数は一気に2倍になり、ギガゼールは途端に対応出来なくなった。
「よし!手応えあり!」
ギガゼールがダメージを受けている様子を見て千翼は小さくガッツポーズした。
これが、舞花と小夜で考えた戦法である。睦月や晴人と同じ接近戦では、女の子で実戦経験の無い小夜は勝ち目は無いし、それを極めようとすると時間が掛かる。ならば、ラウザーである銃を最大限に使った戦法にすればいい。遠距離にだけ戦法を絞るのだ。
そう決めてから、二人はずっと基礎トレーニングと並行してその戦法を極めていた。射撃の訓練はもちろん(近所の廃工場を勝手に利用した)、カードの効果を暗記、銃撃しながら正確なカードをスラッシュする練習などだ。
多くの銃弾を受けたギガゼールはとうとう膝を付いた。
「小夜、今!」
「はい!」
『♢ ABSORB QUEEN』 『♢ FUSION JACK』
小夜はギャレン・ジャックフォームに強化した。
「あれがジャックフォームってヤツか。羽も生えて割とカッコいいじゃん」
晴人はギャレンの姿を見て感心したように言った。
それに見とれてる隙にメガゼールの槍がブレイドをー、
「ほい、残念」
襲う事は無かった。ラウザーで切り裂き、ギガゼールを後ろに仰け反らせた。
「凄い…小夜、ちゃんと戦えてる」
疑ってた訳ではないが、実際に目の当たりにすると衝撃的だった。少し前はモンスターに対して恐怖心を抱えていたのに、今でも恐怖はあるだろうに。しっかりと地に足を付けて勇敢に戦う姿は戦士そのものだ。
「俺も負けてられないな、よっと!」
レンゲルはラウザーとギガゼールのクワガタのハサミのような剣とでつばぜり合いをしていたのだが、それを蹴りで一蹴した。空いた懐にすかさずラウザーの突きを何発も食らわせ、最後の一撃でモンスターの体は後ろに吹っ飛んだ。
「「「次で決めるぞ!」るぞ!」ます!」
『♧5 BITE』 『♧6 BLIZZARD』
『ブリザードクラッシュ』
『♤5 KICK』 『♤6 THUNDER』
『ライトニングブラスト』
『♢2 BULLET』 『♢4 RAPPID』 『♢6 FIRE』
『バーニングショット』
3人が各々の必殺技を出し、それをまともに受けたモンスターは3体共爆発四散した。
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「さて、いい感じで焼けたぜ」
「「「「「いただきま~す!!!!!」」」」」
その夜、バーベキューパーティが開かれた。どうせなら屋外でやろうという話になり、バーベキュー用のグリルを引っ張り出して(部屋の鍵と同様にアパートの物置の鍵も預かっており、その中から引っ張り出した)キャンプ気分で肉を焼き、食べて、ジュースやお酒を飲んで、ん?お酒?
「おい晴人!お前未成年じゃ・・・」
「あ?何言ってんだ?俺もう23歳だぞ?」
「え!!?お前、俺とそんなに年違うのか!?大学辞めたとは聞いてたけどそこまで・・・てことはお前大学3年で辞めたのか!何で!?」
「いいだろ?そんなのは、色々あんだよ。ん・・プハ~やっぱいいねぇ!ビール最高!お前もどうだ?」
「俺は19だぞ。犯罪は止めろ」
「ちぇ~かわいくね~な~。ふぅ、にしても小夜、お前凄いな。怪物相手に叫んでた頃とはえらい違いだ!」
「いえいえそんな、私なんか・・・」
「当然でしょ!?私と小夜で考えた戦法なんだから!あんたも、もっと誇らしくしなさいよ!最高だったわよ!今回の戦い」
「あ・・ありがとうございます」
「ほら、どんどん食べて!これからトレーニングはもっと厳しくなるんだから!体力付けないと!」
そう言って、小夜の紙皿には牛、豚、焼き鳥、シーフードなどなどが山盛りに乗せられる。うん、体力はいいが、これは食い過ぎだ。
「ほら!焼きそば、できたわよ!」
タイミングがいいのか悪いのか、愛矢がプレート一杯に焼きそばを作って持ってきた。
「ん~♪やっぱ愛矢の料理は最高なのです」
「フフッありがとう。それにしても立派なプレートね。これ使って他のも作りたくなってきちゃった」
「これは、大家さんの物なんだよ。世界を旅するならこういう道具も必要だろうと当時の最高級品を買ったんだと。聞いた話だと、これ使って炭火のホットケーキとか、そういう物も作ってたらしい。香ばしくなって旨くなるとか」
「そう言えば、愛矢ってスイーツは作らないですよね?」
「ん~そう言えばそうね。今までは体の思うままに作ってた感じだったから、多分記憶失くす前の私はスイーツを作ってなかったのね」
「せっかくだし、近いうちに作ってみたらどうだ?」
「え?」
「ちょうどいい機会じゃないか。お前が作るスイーツなんだ。絶対プロ級の出来に仕上がるって!」
「なぎさもお手伝いするのです!」
「えっ、え~」
「何何?何の話?」
舞花が横からひょっこり顔を出した。
「愛矢がスイーツを作るって話だよ」
「えっ!?お菓子!!?作れるの!!??」
舞花のセンサーが反応し、誰よりも目をキラキラさせて詰め寄った。その圧力にちょっと困った表情を見せる愛矢、予想通りの反応に笑う睦月となぎさ。健気にも小夜が乗せた肉山盛りの皿(+焼きそば って舞花!それも乗せたのか!)を頑張って完食しようとする小夜とそれを応援してる晴人ってそれは止めろ!!!
皆笑顔でワイワイ騒いで、今日この日は、とても充実した時間だった。
一番楽しかった思い出は何と聞かれたら、皆恐らくこの日のバーベキューと答えるだろう。だってこの時はまだ、後にあんなことが起こるなんて、誰も予想していなかったんだから。
それを回避するチャンスは何度もあったはずなのに、睦月はその機会に気付くどころか疑問にも思わずに今日まで過ごしてしまっていた。
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「どうだ?データは取れたか?」
「あぁ、佐野が撮影したこのビデオでばっちり分析出来たよ。驚いたよ。リーダーは本当に勘が鋭い。まさかこんな面白いデータが取れるなんて」
そう言って芝浦淳(しばうら じゅん(仮面ライダーガイ))は二枚の紙を高見沢逸郎(たかみざわ いつろう)に渡した。
「一枚目は、少し前に俺が戦った、あの金色のライダーのデータ。その次が剣を持ったライダーのデータ。そして三枚目が、銃を持ったライダーのデータだ」
そのデータを見た時、高見沢は目を見開いた。
「これは、こんなことが・・・」
「俺もまさかと思って、他の女の子たちも調べてみた。映像にはほとんど映っていなくて正確とは言えないんだが、これだ」
そう言って芝浦は印刷したばかりの用紙を高見沢に見せた。
「あのライダーに比べたら弱いが、同じような結果が出た。これは映像の粗さを差し引いてもあり得ない結果だ」
「じゃあ、彼女たちは・・・」
「あぁ、彼女たちがどういう存在かは分からなくなったが、一つ結論が出た」
そして一口コーヒーを啜ると言った。
「彼女たちは、人間じゃない」
第二章 魔女編 完
遂に第二章完結です。
ここまでで起承転結で言うところの「起」にあたる部分なので、ようやく物語の基盤が整ったという感じです。
それはつまり、ここからが本番だという事。ここからが本当の『仮面ライダーレンゲル♧マギカ』です。
週一連載が難しくなり更新ペースは遅くなりますが、これからも書き続けるので応援のほどをよろしくお願い致します。