主人公も登場しますよ。
第1話 夢を見ていた、ような・・・・・
気が付くとそこは、どこかの公園のようだった。どこにあるのかは分からない。だけど俺は、この場所を知っていた。以前にも来たことがあった。
目の前に広がる道の真ん中に、一人の男が立っていた。その男は、見た目20代後半から30くらいのおじさんで、頭に青いバンダナを巻いていた。俺は、この男のことを知っていた。少し前、俺を暗闇から救ってくれた、感謝してしきれない大恩人だ。あの時も俺はこの公園で出会ったんだ。
「やぁ、久しぶりだね。睦月君」
そう俺に呼びかけ、優しく微笑む。
まだ分かれて数年なのに、もう何十年も会ってなかったかのような懐かしさを感じる。
しかし、その懐かしさは彼が深刻そうな表情に変えた時に一気に消えた。
「君に、話があって来た。君に頼みたいことがあるんだ。使命を終えたのだから、今さら君の前に現れるのも気が引けたが、これは、君にしか頼めないことだ」
そして彼は続ける。
「こうして話していられる時間も長くないから、単刀直入に言う。今この世界で、いや、他の全ての世界に危機が訪れている」
―危機?まさか、また、アンデッドが現れたのか?―
「アンデッドではない。もっとたちの悪い存在だ。アンデッドを遥かに凌ぐ力を操る、災厄と呼ぶにふさわしい存在。そして、それを退け、全ての世界を救えるのは睦月君、君しかいない」
―アンデッドよりも強いのに、俺が?無理だ。だって俺は、ライダーの中では一番弱かったし、あの時だって、結局剣崎さんが全て何とかしてくれて、俺は何もできなかった。それだけ強大なら、橘さんの方が・・・―
「いや、君にしかできない。心の闇を知ってる君が必要なんだ」
―心の闇・・・?それが、どう関係してー
「君こそが、絶望に囚われている子達を解放することができる唯一の存在なんだ」
―・・・・・―
正直戸惑いの方が強かった。アンデッドが相手でも遅れをとっていた俺が、今度は一番前に立って戦うなんて。だけど、この人は、俺を信じて頼んだ。そして俺は、この人には大きな恩があった。だったら、やらなくちゃいけない。第一、世界の危機なんだ。無理だからと決めつけて逃げたらライダーじゃない。この世界を救うためにひたすら走った剣崎さんに顔向けできない。だから、俺は頷いた。そして、そんな俺の表情を見た彼もまた、満足そうにうなずいた。
「君なら、そう答えると信じていた。苦しくつらい戦いになるだろうが、自分の力を信じなさい。全てを一人で抱え込まず、抱えきれなくなったらそれを人に分ける勇気を持ちなさい。幸運をいのる!」
そして、三葉睦月は目を覚ました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
彼の名前は三葉睦月(みつば むつき)。大学で社会学を専攻している2年生、つまり19歳だ。将来は、ニュースキャスター、もっと大雑把に言えば、情報を発信できる立場になりたいと考え、日々勉強している。
その一貫として、彼は写真サークルに入っていた。活動内容はシンプルで、みんなをあっと言わせる写真を撮って、それを皆に発表するというもの。睦月はサークル活動で撮った写真を発表に出すと同時に適当な雑誌に投稿もしていた。理由は単純。スクープ写真を撮ってそれを提供すれば名前が売れて、就活で少しは有利になると思ったからだ。写真サークルに入ったのは、人の写真を見て構図などを勉強して、自分のものにするため。
それ以外のことについては全く興味が無かったので、時々サークルで行われる飲み会などには一切参加したことがなかった。別に普段孤立しているとか、そういうことではない。最低限の付き合いはするし、睦月本人も別に暗い性格でもない。むしろ行動的で明るい性格だ。だけど、遊びには参加しない。魅力を感じないからだ。別に馬鹿にしているわけではない。写真の技術については皆素晴らしく、勉強になる部分が多いのだが、人として心が躍る人はいなかった。同じ組織に所属する人ではあるけれど、仲間でも友達でもないという感じ。なぜそう思うのかは自分でもよく分からないけれど。
この日もスケジュールとしては特に変わったことは無かった。朝7時に起きて大学へ行き、講義を受けた後サークルに顔を出し写真を撮る。そして夜はスーパーでバイト。そして家路に急ぐ。
平凡な一日。だけど、頭の中はそうでは無かった。なぜかあの日の朝見た夢の内容が気になった。バイト終わりの帰り道なんかは特にそうだ。睦月はその夢に現れた男を知らないし、会ったこともない。もちろん公園のことも知らない。だけど、全て知っているような気がする。そんな矛盾の感情、デジャヴに戸惑いを覚えていた。
そして、さらに奇妙なことが朝起きてすぐに起こった。起きてふとベッドの横を見ると、机の上に見慣れないバックルが3とカードが置いてあったのだ。一つは全体を銀でコーティングされていて、バックルの中央部は赤く、その真ん中に金のスペードが印字されていた。もう一つは基本の構造はスペードのバックルと同じだが、中央部は緑、そしてダイヤのマークが金で印字されていた。そしてひと際目立っていたのが金色のベルトだ。構造もスペードやダイヤと異なっており、中央部にマークの印字はなく、紫でコーティングされているだけだった。そして、何か横開きの門のような形をしていた。カードは、トランプのようだったが、古代文明の壁画に描かれたもののような神秘さを宿った絵柄が描かれてあった。一つ妙だと思ったのがハートの2だけが無かったことだ。辺りを少し探してみたが、どうしても見つからなかった。
見覚えのないモノが置いてあったのだ。気味が悪いと思った。しかし、どうしても捨てる気にはなれず、金色のバックルとトランプを常に持ち歩くようになった。持ち歩けば、何か分かるかもしれないと思ったから。だけど、あれから一週間、特に分かったことは無い。やはりこれは、ただのオモチャなのだろうか。
自分が覚えてないだけで知らない内に買ったのだろうかと思いながら帰っていた時、何かを感じた。突然、周りの空気が重くなったのだ。そして次の瞬間、自分は全く見覚えのない場所にいることに気付いた。
「ここは・・・」
そこはまるで、おとぎ話にでてくるようなお菓子の世界だった。周りはチョコレートの壁に覆われていて、所々にクリームがたっぷりのカップケーキが置かれていて、ぺろぺろキャンディの風船が浮いていた。睦月は自分がどうなっているのか分からなかった。自分は確かにいつもと同じ道を通って帰ろうとしていた。しかし、今は周りにそんな平凡な道はなく、明らかにおかしな空間に自分はいる。夢でも見ているのか?
目の前に、てすりが付いた通路があった。睦月は進んだ。気が付くと、何かの建物に入っていた。天井にはクッキーの箱がぶら下がっている。何かが動いている気配があるが、見渡しても何もない。それが逆に怖かった。一つの部屋を見つけた。入ってみると、そこにはスポンジケーキで作られた椅子、そして、カーテンで区切られてベッドが規則正しく並べられていた。それぞれに番号が振られている。まるで病院だと睦月は思った。
部屋を出て、さらに奥に進む。しばらく進むと、また開けた場所に着いた。奥には同じような建物の入り口がある。まるで渡り廊下だ。周囲にはお菓子の他に、カプセル薬が浮いていた。いや、静かに下に降りていき、突如光の玉に変わった。それ以外は特にない。お菓子だらけの世界に薬があったので、異質だと思ってつい見てしまっただけだ。さらに先へ進む。そして一番奥まで行った。そこは、「手術中」と書かれており、手術室のようだった。恐る恐るドアを開けると、そこは今まで通った道以上にお菓子であふれかえっているホールのような部屋だった。天井はマシュマロのように真っ白で、所々にジェリービーンズが埋め込まれており、床はタルトでできていた。そこにはピックに刺さり、その上にはドーナツやチョコレートが置いてあった。
「ここは・・・ホール?」
睦月が部屋に目を奪われていた時、「何か」が睦月に向かって飛んできた。睦月は反射的にそれをよけた。それは、生き物だった。しかし、動物園にいるような動物ではない。体は黒く赤い水玉が装飾された球体でできていて、そこから細い足が3本伸びている。そして、顔には目や鼻のようなモノはなく、ただぐるぐる模様が描かれてるだけ。そこから長い耳が延びていて、看護師の帽子のようなものをかぶっている。異質な姿だった。
そしてそれは一体だけでは無かった。睦月は気付いた。自分はいつの間にか囲まれていたのだ。この異形な生き物に。
次の瞬間、その生き物が一斉に睦月に向かって飛んできた!
出口は、無い。
続く
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字、その他質問等あれば遠慮なくお書きください。
次回も多分来週のこの辺りに投稿すると思うのでよろしくお願いします。