仮面ライダーレンゲル☘️マギカ   作:シュープリン

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仮面ライダーレンゲル(睦月サイド)
<前回の3つの出来事>

1つ キャンプ場に魔女が出現
2つ 本性を表した剣持晴人
そして、3つ―



EPISODE29 融合

 どうやって帰って来たのか、全く覚えてない。

 

 クインテットに帰ってから、24時間が経った。

 

 クインテット。それは五重奏の意味。一階に二部屋、二階に三部屋あることからその名は付けられた。高見沢グループが大学の近くに学生向けの安い寮を建てて以来、ずっと睦月一人で住んできたが、5月から思わぬ形で人が増えていき、最後には5人が住むという、クインテットの名に相応しい形になった。

 

 睦月と、なぎさと、愛矢と、舞花と、そして、そして…

 

 一昨日までは、確かにそこにもう一人いた。自分に自信が無いようだったけど、誰よりも優しく、誰よりも芯の強い女の子が。だけど、今は―

 

 「何で、こんな…」

 

 帰り道、一言も口にしなかった睦月がようやく漏らした声がそれだった。

 

 普通に、魔女になった子を救うだけだったのに。皆で夏の旅行に行くだけだったはずなのに。皆が笑顔で、楽しかったって言いながら思出話に花を咲かせるはずだったのに。

 

 「俺の、せいだ」

 

 皆でキャンプへ行く事をもっと強く止めていれば、あの時、もっと早く調子を取り戻していたら、もっと早く晴人が敵だと気付いていれば、そして、もっと自分が…強ければ。

 

 「ごめん…小夜…」

 

 全部自分が悪い。睦月はそう考えていた。気が付く点はいくつもあった。何故、仮面ライダーインベラーは、自分の行く先行く先で出くわしていたのか、何故あのバーベキューの日に現れたゼール軍団の中に、インベラーはいなかったのか。少し考えれば分かる事じゃないか。そんなの、誰かが指示していたからに決まってる。自分では無いし、別の世界から来た彼女達でも無いなら、一人しかいないじゃないか。今にして思えば、初めに晴人がOREジャーナルにレンゲルの写真を投稿していた時から全ては始まってたんだ。あれは、自分たちに近づくための口実に過ぎなかったんだ。今まで話したことも無い人がいきなり側に行くのは難しいから。

 

 そんなに前から、晴人の計画の上で転がされていた。そう考えると悔しくて悔しくて悔しくて、ただただ情けなかった。だから―

 

 「このまま、終わらせない」

 

 睦月は涙を拭うとすっと立ち上がった。そして、玄関の扉を開けると

 

 「!」

 

 「睦月…」

 

 目の前に、目を真っ赤に腫らした舞花の姿があった。

 

 「あなた、どこに行くつもり?」

 

 多少面食らったようだが、全てを察した上でそう聞いてきた。

 

 「晴人を探す。このままじゃ終われない。あいつをこのままにはさせておけない」

 

 「だったら、私も連れてって」

 

 舞花は睦月の目を真っすぐ見て言った。

 

 「舞花…」

 

 「あの子の仇を取るの!あいつをぶん殴ってやらないと気が済まない」

 

 「それはダメだ。絶対にダメだ!」

 

 そう来ると思っていた。当然だ。小夜が居なくなって、一番辛く悲しい想いをしているのは舞花だから。親友がやられて、黙っていられるほど舞花は弱くない。だけど、だからこそ彼女を連れていくわけにはいかなかった。危険すぎる。敵はパラディ。晴人のブレイドの力は小夜によって無力化できたが、それでもまだベルデとインベラーがいるし、モンスターも入れたらその数は計り知れない。そんな危険な所へ連れて行って、もしものことがあれば小夜に顔向けできない。

 

 「睦月の言いたいことは分かるわ。だけど、それはもう覚悟してる!あいつに一泡吹かせられるなら、死んだって構わない!」

 

 「!!!!」

 

 その言葉に睦月は激昂した。そして千翼の胸倉を掴むと、そのままドアに体を押し付けた。

 

 ドンという大きな音がして、それに気づいたなぎさと愛矢が部屋から出てくる。

 

 「死んだっていいとか、勝手に言ってんじゃねぇよ!あいつは、小夜はお前を死なせるために助けたんじゃないんだよ!あの子は、俺や、なぎさや愛矢や、舞花に、もっと生きて欲しいと願って死んだんだ!その命を軽々しく捨てるっていうのは、小夜への冒涜だ!お前それで、小夜に顔向けできるのかよ!」

 

 その言葉に千翼はハッとした。そして、長いような短いような沈黙が流れたのち、千翼は俯いたまま小さくごめんと言った。

 

 「だけど、それでも、一緒に行きたい。だって、あの子は命がけで私たちを助けてくれた!命を繋げてくれたのよ!なら、この命は小夜が出来なかった事の為に使いたい。晴人の計画を阻止するの!あいつが何かやろうとしてることくらい、バカな私でも分かるわ。あいつを見つけて、ぶん殴って、計画を邪魔してやるのよ!だって私は、あの子のバディだから」

 

 「――――」

 

 一緒だと思った。舞花も、小夜の死が悲しいはずなのに、それでも前へ進もうとしてる。その想いは、睦月のそれと一緒だ。このまま舞花を置いていったって尾行してでも付いて来るだろう。今の彼女は小夜と同じ、ライダーとして自分のするべきことを必死で考えて答えを出したんだから。後ろを振り向くと、なぎさと愛矢も、涙の跡が残った目で、真剣な表情で睦月を見ていた。

 

 睦月の考えは決まった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 早速4人は行動を始めた。まずは晴人の人物を探る為に大学へ行き、写真サークルの人から話を聞いた。そして、彼が理工学部を専攻していることを知った。すぐに、同じ学部の人に話を聞いたが、

 

 「知らない?」

 

 「あぁ、あいつがどこかの大学を辞めて来た事は知ってるが、それくらいだ。あいつ、6月頃からさっぱり来なくなっちゃったからな。何考えてんだか」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「ハズレ…ね」

 

 「あぁ、あいつ、魔女が現れてから、いや、俺の写真を撮ってからずっと裏で動いていたってことだ」

 

 つまり、やはり、晴人の言葉の通り、自分達の事は一度も仲間と思っていなかったという言葉の裏付けになってしまい、睦月はさらに、情けない気持ちになった。

 

 「何か…無いのか?あいつの手掛かりになりそうな事…」

 

 あいつが始めから仕組むつもりで近付いていたとしたら、自分達が今まで気付かなかっただけで絶対何かを残してる筈なんだ。ずっと、ボロを出さずにいることなんてあり得ないから。

 

 『俺、昔は物理で空間について研究してたんだよ』

 

 階段の魔女の時、晴人が言った事だ。彼は、一度編入して睦月と同じ大学に来た。バーベキューの時、晴人は自分は21だと言った。と言うことは最短で大学3年初めの時に編入したと言える。約2年在外していた大学に行けば何か分かるかもしれないが、それについては誰も知らなかった。言ってなかったのなら、その場所に何かあるような気がしてならないがー、

 

 「せめて、あいつの家が分かれば…」

 

 「晴人が言ってた寮は、デタラメでしたからね…」

 

 ふと、舞花となぎさがそんな事を呟いた。それの何かが睦月の琴線に引っ掛かった。最初は何かと思ったがすぐに分かった。

 

 電撃を受けたように立ち上がると、睦月はすぐに部屋からパソコンを持ってきて起動させた。

 

 「睦月?」

 

 「ナイスだ、二人とも。あったよ。あいつに繋がる手掛かりが」

 

 そう言って睦月が出したのは、岩の魔女が自身の結界内に人を誘い込むのに使っていた自殺支援サイト、Killだった。

 

 「あいつはここに書き込みしたら、結界までの正確な道順を書かれたモノが返信されたと言っていた」

 

 睦月はすぐに上へスクロールして、問題の書き込みを表示させた。

 

 「だけど、この道順を逆に辿っても、ここには辿り着かないんだよ。つまりー」

 

 「そうか!あれは晴人が書き込んだから、スタート地点も晴人がいた場所、つまり住所になってるってことね!」

 

 「そういうことだ、愛矢。ここに行けば、何か分かるかも」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 睦月たちはすぐに準備を始めた。

 

 「…無い」

 

 そんな中、睦月はハートのデッキが無くなっていることに気付いた。タイミング的に、パラディの誰かが盗んだ可能性が高い。この時、睦月の中に一つの考えが浮かんだ。もしかしたら―、

 

 「睦月、どこ行ってたのですか!?」

 

 「ちょっとね、ごめん。行こう」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「こっちだ」

 

 4人は一歩ずつ進んでいった。もうすぐ、もうすぐ着く。と、そこへー

 

 「睦月さん、左!」

 

 愛矢の声と同時に、左の家の窓からモンスターが現れた。

 

 赤い体に胸の辺りから突起のような角が生えたモンスターがいきなり突進してきたのだ。

 

 ミラーモンスター、ワイルドボーダー。

 

 いきなりの突進。耳鳴りを聞く事は無かったが、愛矢の咄嗟の叫びで、何とか直撃は免れた。

 

 ……………ふと、睦月は思った。

 

 「(今、明らかに耳鳴りを聞く事無くモンスターが現れた。だけど愛矢は、ここからモンスターが現れるのを察する事が出来た。思えば、今までだって、モンスターが出る事を察知出来たのは、彼女達の方が先じゃ無かったか…?)」

 

 奇襲に失敗したが、モンスターは帰ることなく再び突進してきた。

 

 「考えてる暇も無いのかよ。変身!」

 

 『♧Open Up』

 

 モンスターをオリハルコンエレメントで吹き飛ばした睦月は仮面ライダーレンゲルに変身した。

 

 尚も突進してくるワイルドボーダー。レンゲルはそれをラウザーで応戦したが、硬い体に攻撃が上手く決まらず、逆に突進に競り負けてしまった。

 

 「うおっ!」

 

 すぐにUターンして再び突っ込んできたが、ラウザーではそれを受けきる事が出来ず、ただ流すのが精一杯だった。

 

 「くっ…」

 

 流した瞬間、巨体の遠心力で足がもつれてバランスが崩れる。そこに、再びUターンしたワイルドボーダーが突っ込んできた。

 

 「がぁ!!」

 

 「睦月さん!」

 

 「くそっ!だったら!」

 

 『♧5 BITE』 『♧6 BLIZZARD』

 『ブリザードクラッシュ』

 

 「このまま力で押しきる!」

 

 レンゲルはワイルドボーダーの胸に狙いを定めて、冷気を纏った蹴りを繰り出した。だがー、

 

 「ゴゥヘェ」

 

 「ぐわっ!」

 

 それも、両者の相討ちで終わった。

 

 「そんな…これで互角!?」

 

 さらに、モンスターの方が立て直しが早かった。硬い体のお陰でダメージが軽減されていたのだ。

 

 突進してくるモンスターを何とかジャンプでかわし、背中に張り付いたがすぐに振り落とされる。そしてすぐに突進してきたが、かわす為の距離がほとんど無かった為、ラウザーで防御するしか無かった。

 

 「がぁ!!」

 

 もちろん、それで勢いを殺せる訳がなく、レンゲルの体は大きく吹っ飛んだ。

 

 「睦月!」

 

 「睦月さん!」

 

 そこで、三人が声を上げてしまった。それに反応したワイルドボーダーが、狙いを変えてしまった。

 

 そして、三人に向かって角を構えて一直線に向かって来た。

 

 「キャァァァァァ!」

 

 「させるかよぉぉ!!」

 

 そこに、レンゲルが飛び乗り、渾身の力を込めて、方向を変えた。それに逆上したワイルドボーダーがレンゲルを振り落とし、再び突っ込んでくる。

 

 『♧2 STAB』

 

 それをラウザーの突きで応戦。相討ちに終わったが、勢いを殺す事が出来た。

 

 「………こいつらだけは…なぎさは、愛矢は、舞花は、絶対にやらせない!」

 

 小夜が、文字通り命懸けで救った命だ。それだけは絶対に傷付けさせない。一緒に晴人を追うと決めた時、そう誓っていた。

 

 レンゲルはあるものを取り出した。

 

 「睦月!それって…」

 

 「借りるよ。小夜」

 

 それは、小夜が付けていたラウズアブゾーバーだった。

 

 『♧ABSORB QUEEN』 『♧FUSION JUCK』

 

 目の前にゾウの幻が見えたと思えば、それがレンゲルの体に吸収されていった。それと同時に、レンゲルの体はより大きくなっていった。胸にはゾウの紋様が刻まれ、両腕はよりがっしりと太くなり、肩にはクローバーの紋様が入ったゾウのキバのような装甲が付けられた。ラウザーもより太く、大きく変形し、左手にはモーニングスターも付けられていた。

 

 仮面ライダーレンゲル ジャックフォーム

 

 「ぐっ!何だこれは…」

 

 途端に体が重く感じた。その重さに少しよろける。

 

 ワイルドボーダーがその隙にすかさず突進してきた。かわす事は不可能と判断したレンゲルはやむ無く片腕で防御。当然吹っ飛ばされると思ったがー

 

 「ぐっ!」

 

 数十センチ程後退するだけで事なきを得た。痛みも全然無い。それどころか、突進してきたモンスターの方が逆にダメージを負ってるようだった。

 

 「(そうか。これがレンゲルのジャックフォームか!)」

 

 レンゲルはデッキから二枚のカードを取り出した。

 

 『♧6 BLIZZARD』 『♧3 SCREW』

 『ブリザードゲイル』

 

 レンゲルはラウザーを再び突進してくるワイルドボーダーに向け、冷気を発した。それは、いつものブリザードゲイルよりも遥かに強力で、モンスターだけでなくラウザーを向けた直線上を一気に凍らせた。

 

 突進の勢いをそのままに、凍ったモンスターは氷の道を滑りながら一直線にレンゲルへ向かっていった。

 

 レンゲルはモーニングスターを構えて、大きく横に振った。ワイルドボーダーに直撃し、その体は跡形もなく砕け散った。

 

 睦月は変身を解除すると、再び変化する体重に睦月はしりもちをついた。

 

 「睦月!」

 

 すかさず、なぎさ達が駆け寄った。

 

 「睦月さん、あなた、大丈夫なの?」

 

 「今のって…」

 

 「大丈夫。大丈夫。いきなりの変身だったから、体が慣れてないだけだ」

 

 睦月は笑って言った。

 

 ジャックフォーム。レンゲルのそれは、スピードは下がるものの、他は大幅に強くなっていた。これがあれば、きっと、三人を守れる。

 

 「(見ててくれよ、小夜)」

 

 そっとラウズアブゾーバーに手を添えながら睦月はそう思った。

 

 

続く




久しぶりに一週間以内に投稿できました!

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