仮面ライダーレンゲル☘️マギカ   作:シュープリン

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~二日前~

 「あ~あ~、ひでぇ顔してやがる」

 ウィッチバイザーから発してた黒い霧が消え、愛矢の姿を見た晴人はそう言った。

 「予定とは少し違うがこれはこれで上々。一体何を見たのやら」

 晴人がセットしたグリーフシードは、香川らが倒した魔女のモノだ。彼らは出会った魔女の能力をレポートにまとめており、研究所襲撃の際に晴人はそれを手に入れていたためその能力を知っていた。

 愛矢は、拘束されていることなど気にも留めてない様子で、ただ目を見開き、自分が今見た光景にただただ驚いているようだった。

 そんな愛矢に、晴人は近づくと言った。

 「その様子だと、お前はとんでもないモノを背負い込んじまったみてぇだな。全く、可哀想に。だけど、俺たちなら、その苦しみから解放してやれる」

 特に反応した様子は無かったが晴人は続けた。

 「お前らが度々巻き込まれたミラーワールド。あそこでは、生き残った一人に何でも願いを一つ叶えるといううたい文句でライダー同士の戦いを誘っている。この世界に元々いたライダーは皆その願いのために戦っていた。だが、それはこのバトルを仕掛けた神崎士郎ってヤツの嘘だった。本当は、ライダー同士で戦わせて強い命を手に入れ、それを妹に渡すことを目的に作られた舞台だったんだ。まぁ、蠱毒ってヤツだな。つまり、あいつははなから願いを叶えるつもりなんて無かったって訳だ」

 そんな言葉にも愛矢は上の空。どうでもいい。だから何だと言うんだ。

 「だが、見方を変えればミラーワールドにはそんな、常識じゃ不可能なことを可能にするだけの力があると言える。そして、俺の予想では、それは世界の一つや二つ、自由に書き換えられる程の膨大なエネルギーだ。それこそ、お前の過去を全て、無かったことにすることもたやすくできる程にな」

 その言葉に、愛矢の表情が微かに変わったのを晴人は見逃さなかった。

 「お前らは知らないだろうが、今、そのミラーワールドはかなり不安定な状態にある。つまり、その力を横取りする最高のチャンスな訳だ。だから俺はこの組織を作った。既に計画も出来上がってる。どうだ?お前もその計画に加わらないか?もし、お前が俺たちに協力するというのなら、お前の過去全てを消し去り、新しく生まれ変わらせる事を約束しよう」



第32話 The past should have given us despair

 目の前にいる愛矢は、別人のように暗い表情をしていた。全身をぴったりとフィットさせる戦闘服で身を包み、口をへの字に曲げ、暗い瞳で、軽蔑するかのようにこちらを見下ろしていた。

 

 「愛矢、お前…」

 

 そんな愛矢に睦月は掛ける言葉を失っていた。

 

 「さぁ、愛矢、お前の初陣だ。存分に戦え」

 

 「……………」

 

 愛矢は無言で一歩前に出ると、腰につけているバックルを開いた。そして、後ろからバッタ状に加工されたものを取り出した。

 

 「変身」

 

 『HENSHIN』

 

 「なっ…」

 

 愛矢がそれをセットすると、ベルトを中心に、体が変化していった。それはまるで、緑色の、バッタのような出で立ちだった。

 

 『CHANGE KICK HOPPER』

 

 「ラ…ライダー…?」

 

 「面喰らってる場合じゃねぇぞ」

 

 「がぁ!」

 

 気がつくと、レンゲルの顔面に蹴りを加えられた。

 

 「ぐぅ…愛矢…何で…?」

 

 倒れるレンゲルを踏みつけようとしたのを何とかラウザーで防いだ。だが、キックホッパーはベルトのホッパーゼクターのバッタを右にスライドさせた。

 

 『RIDER JUMP』

 

 「グッ!!」

 

 すると、踏みつけの力が一段と強くなり、コンクリートにひびが入った。そしてキックホッパーはゼクターを再度左にスライドさせた。

 

 『RIDER KICK』

 

 ラウザーを巻き込みながら、サッカーのように大きく蹴り上げた。

 

 「ぐあぁぁ!!」

 

 レンゲルはコンクリートを削りながら地面を転がっていった。ラウザーで防いでいたが、彼女の脚から発せられる衝撃だけでもかなりの威力があった。

 

 「仮面ライダーキックホッパー。お初にお眼にかかるだろう?お前が変身に使っているカード。A以外にも変身ができるカードがあるのではという考えから生まれた新しいライダーシステムさ。このライダーの中にはスペードのカテゴリー6のエネルギーが入っている。レンゲルやブレイドのように他のカードをスラッシュできる武器は無いが、カテゴリー6の力は常時100%引き出すことが出来る。単純な戦闘力で言えば、レンゲルよりも上さ」

 

 晴人は長々と自身の開発したシステムについて説明していたが、睦月は半分も聞いていなかった。そんなことはどうでも良かった。それよりも、愛矢が自分に攻撃を仕掛けた、その事実が信じられなくてただただ戸惑っていた。

 

 「愛矢、お前、本当にどうしちまったんだよ!!?晴人に何かやられたのか?何か脅されているのか?言ってくれ!俺が何とかするから!」

 

 「何とか…ねぇ」

 

 ようやく睦月に対して口を聞いたが、それは今までの愛矢とは比べものにならない程冷めきった声だった。

 

 「最初に言っておくけど、私は別に晴人に洗脳されたとか、そんなのは一切無いから。私は、自分の意思でここに入ったの。まぁ強いて言えば、本当の事を思い出させられたっていうのが晴人にやられたことね」

 

 「本当の…事…?」

 

 「私ね、思い出したのよ。魔法少女になる前の事、なってからの事、そして何故魔女になったのかも全て」

 

 「えっ…」

 

 「そして、私に新しい目的ができた。それを叶えるためには晴人の力が必要だった。それだけのことよ」

 

 意味が分からなかった。愛矢は元々穏やかで自分よりも人の幸せを大切にする優しい女の子だった。それなのに、今目の前にいる彼女はほんの少し前まで一緒にいた相手に刃を振るい、自分の目的のために全てを擲つ女の子に、全く真逆の存在へと変わっていた。

 

 「愛矢!お前、自分が何を言っているのか分かっているのか!!!?そいつらは、俺たちを騙して、小夜を…殺した張本人なんだぞ!!?仇を取るために、一緒にこいつらを追ってたんじゃ無かったのかよ!?」

 

 「あぁ、そんなことも言ってたわね。だけどさ、こうは考えられない?私たちは元々魔女で、一度は死んだ人間だった。小夜は自分があるべき場所へ還っただけだから殺人ではない。むしろ死ぬ前にこの世で楽しめたんだから、万々歳なんじゃないかってね」

 

 「やめろ」

 

 愛矢のその言葉に睦月の怒りが頂点に達した。

 

 「あれで万々歳だと?ふざけるな!小夜の死を、愚弄すんじゃねぇぇ!!!!」

 

 「どっちが愚弄してるんだか」

 

 『RIDER JUMP』

 

 キックホッパーは高く飛び上がり、睦月のラウザーを躱した。

 

 『RIDER KICK』

 

 そしてキックホッパーは両足をレンゲルに向け、彼の胴体に思い切り蹴りを加えた。

 

 「があああああああ!!!」

 

 レンゲルの体は大きく吹っ飛び、ジャックフォームが解け、通常フォームに戻ってしまった。

 

 「ほう、変身解除まで持ってけるかと思ったが、さすがジャックフォームと言ったところか。さて…」

 

 「「睦月!!」」

 

 なぎさと舞花は急いで睦月の側へ行こうとしたが、

 

 「さっさと俺は、こっちの仕事を済ませますか」

 

 目の前に晴人が立ちふさがった。

 

 「あなた、愛矢に一体何をしたのですか!?」

 

 「あ?話聞いて無かったのか?あいつは、自分からこっちに付いてきた。俺はあいつを洗脳したりなんかしていない。真実を見せてやっただけさ」

 

 「真実?」

 

 「お前らが失くした記憶の事さ。そいつを見せたら、あっという間にあの様子さ。何を見たのかは知らないが、本来の徳山愛矢っていうのは、あんな感じだったって事だろ」

 

 「嘘なのです!!愛矢は、そんなことする子じゃないのです!」

 

 「そんな子じゃないって、どうしてそんなことが言える?お前らが知ってるのは、記憶を失くしてからの愛矢だろ?記憶を失くす前も料理好きで穏やかな人だったってどうして言える?記憶喪失の優しい青年が実は最悪の殺人鬼で、記憶を取り戻した瞬間にその本能も目覚めたなんてのはお決まりのパターンだろ?あれと同じことだよ」

 

 「違う!!!!!」

 

 「強情だな。じゃあ、お前らも体験してみろよ」

 

 そう言うと晴人は、ウィッチバイザーから岩石の魔女のグリーフシードを外し、箱の魔女のグリーフシードに入れ替えた。

 

 「何をするつもりだお前ぇぇぇぇ!」

 

 「させない」

 

 晴人の元に駆け寄ろうとする睦月をキックホッパーの蹴りで抑え込む。

 

 「安心しなさい。彼女達は殺されない。ただ、あなたに出会う前の自分を見せるだけ」

 

 「さぁ、お前らはどう育つかな?」

 

 そう言うと晴人はウィッチバイザーから黒い霧を出した。

 

 「あぁぁ…」

 

 「くああぁぁぁぁ…」

 

 「なぎさ!!舞花ぁぁぁ!!!」

 

 

 二人の体はたちまち黒い霧に包まれていき、見えなくなった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 黒、黒、黒…一面に黒い空間が広がり、ついには隣にいたお互いの存在も見えなく程闇は深くなった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 舞花は見た。

 

 順調だった自分が突如どん底に突き落とされた光景を、そこに現れた白い生き物の存在を。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 なぎさは見た。

 

 近くのスーパーでチーズを選び、それから病院へ向かった自分を。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 舞花は見た。

 

 願いによって取り戻した楽しい日々を、見て見ぬふりをしていた自分を。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 なぎさは見た。

 

 自身に見せたお母さんの表情を、願いを決めた自分を。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 そして、そして、そして…

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 舞花は見た。

 

 体育館前の階段、そこでの会話と、自分についた嘘と、その結果起こった―――――

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 そして、そして、そして…

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 なぎさは見た。

 

 

 

 チョコレート、クッキー、シュークリーム、ビスケット、タルト、プリン、マカロン、アイスクリーム

 

 

 ここにもそこにもあそこにも、お菓子がいっぱいお菓子がいっぱい。でもあれだけが見つからない。大好物なのに見つからない。どこどこどこどこ私のチーズ。

 

 

 探して見つけたのはチーズじゃなくて、世にも珍し動くお菓子。

 

 

 チーズでは無いけれど、おいしいのかな?いただきます。

 

 

 バリバリボキボキバリバリボキボキ

 

 

 あぁ、なんだ。

 

 

 チーズよりもおいしいじゃないか

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

 

 少女の声が辺り一面に響いたその時だった。

 

 「!」

 

 「!」

 

 「これは…!」

 

 今、この場にいた一同が同じ気配を感じた。重い空気に強い瘴気。全細胞が本能的に危険だと判断する程の異様な気配。

 

 魔女はいないし、もちろん結界が現れた訳ではない。先ほど取り逃がした使い魔が戻ってきたわけでもない。しかし、魔女の結界の中に居るような、そんな錯覚を味わった。

 

 その時だった。

 

 ヒュンッ!

 

 「ぐわぁ!」

 

 「なっ、何だこれは!?」

 

 突然自身にぶつかってきた"モノ"によって、晴人はウィッチバイザーから発する黒い霧を止めた。

 

 「これって…使い魔!?」

 

 突如、辺り一面に魔女の使い魔が現れ、敵味方関係なく暴れだした。その使い魔に睦月は唖然とした。ぐるぐるのうずまき顔に小さく細い手足がついた姿。それは、睦月が初めて戦った魔女、シャルロッテの使い魔そのものだった。

 

 使い魔は、無作為に攻撃をしているように見えたが、その実、なぎさがいた場所を中心に、彼女を守るようにして生まれ、広がっていっていた。それは、シャルロッテの結界の奥で見た光景を彷彿とさせた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 チョコレート、クッキー、シュークリーム、ビスケット、タルト、プリン、マカロン、アイスクリーム

 

 

 ここにもそこにもあそこにも、お菓子がいっぱいお菓子がいっぱい。でもあれだけが見つからない。大好物なのに見つからない。どこどこどこどこ私のチーズ。

 

 

 探して見つけたのはチーズじゃなくて、世にも珍し動くお菓子。

 

 

 チーズでは無いけれど、おいしいのかな?いただきます。

 

 

 バリバリボキボキバリバリボキボキ

 

 

 あぁ、なんだ。

 

 

 チーズよりもおいしいじゃないか

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「イヤァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 

 そして、再度上げる彼女の叫びと共に使い魔が一斉に襲いかかってきた。

 

 「なぎさちゃん!!」

 

 「おいおい、すげぇな、おい!この使い魔が、なぎさの叫びと同調している!やっぱりだ。俺の予想は間違ってなかった!お前らは、人間じゃ無かったんだ!」

 

 「黙れ!」

 

 興奮した晴人に怒りの声をぶつけながら、睦月は降りかかる使い魔を次々と倒していた。

 

 「なぎさちゃん!どうしたんだ!?俺の声が聞こえるか!聞こえるなら返事をしてくれ!」

 

 しかし、睦月の声が届いた様子は無かった。なぎさは両手で頭を抱えながら蹲り、カタカタと震えていた。周りで何が起こっているのかにも気づいてない様子だった。

 

 ふと、なぎさの側でうずくまっていた舞花がよろよろと立ち上がった。

 

 「嘘よ…そんな…私…」

 

 舞花もまた、周囲で何が起こっているのかが見えていない様子だった。目を見開き、今まで見たことが無い表情を浮かべ、息を荒くし、小さくそう呟きながら、右手で頭を抑えてフラフラと歩きだした。

 

 「舞花!?お前、どうしたんだ?どこへ行くんだ?おい!」

 

 そんな睦月の声はなぎさ同様届く事は無かった。そこに、シャルロッテの使い魔の何匹か舞花に狙いを定めた。

 

 「舞花!!」

 

 『♧10 REMOTE』

 

 レンゲルは咄嗟にゼブラアンデッドを解放し、舞花に降りかかる使い魔を退治した。

 

 しかし、舞花はアンデッドと使い魔との戦いを背に、どんどん睦月やなぎさから離れて行った。そして、細い路地に入ると、壁を這ってつかまり立ちしながら、その奥に入っていき、遂に見えなくなった。

 

 「舞花! グッ!」

 

 睦月は追おうとしたが、行く手を使い魔に阻まれた。気が付くと周囲には使い魔が溢れかえっていた。倒しても倒しても減らない。使い魔の生産スピードが、討伐数の何倍も上回っていた。

 

 『RIDER KICK』

 

 キックホッパーが回し蹴りで周囲の使い魔を一掃した。しかし、すぐに別の使い魔がやって来て、愛矢を襲った。

 

 「そうか、これが…」

 

 「あっ…あぁ…あ…」

 

 なぎさは変わらずブルブル震えて縮こまっていた。恐怖、驚愕、その他色々な感情が入り混じり、彼女の頭はパンク状態になっていた。

 

 「――――――なぎさちゃん、ごめん!!」

 

 睦月は、なぎさの近くにいたゼブラアンデッドに自身の意思を伝え、なぎさの首の真後ろを叩かせた。強力な刺激を受けて、なぎさの意識は吸い込まれ、その小さな体は地面に倒れた。

 

 意識を失わせ無理矢理自身の感情と断絶させたことで、使い魔が存在した空間、そして使い魔自身の存在も揺らいだ。

 

 睦月はその隙になぎさの元まで大きくジャンプした。そして、なぎさを抱えると、

 

 『♧9 SMOG』

 

 ラウザーから黒い煙を噴出させて、その場を離れた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「逃げたか」

 

 使い魔が全て消滅した時には、睦月達の姿は完全に無くなっていた。

 

 「どうする?追う?」

 

 「いや、その必要は無い。既にやりたいことも知りたい事も済ませたからな。後は、あいつらがどう動くかだ」

 

 「ふーん」

 

 「それよりも魔女だ。佐野は魔女本体の所に着いただろうか。すぐに合流する」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「・・・・・・・・」

 

 今回起こった一連の出来事、実は彼らの他にもこっそり見ていた者がいた。タイムジャッカ―のウールだ。

 

 晴人らが立ち去ったのを見て、ウールもその場を離れた。REMOTEで解放された人たちがただの人間では無かったのも驚きだったが、それ以上に驚きだったものがある。

 

 「(仮面ライダーキックホッパー…)」

 

 晴人は、そのライダーはアンデッドの力を基に作ったと言っていたが、実際はそのライダーは対ワーム(ネイティブ)用に作られたマスクドライダーシステムの中の一つであり、アンデッドの力云々は全く関係ないはずだ。だが彼は、アンデッドの力で創ったと言っていた。過程は異なれど、同じ姿のライダーが存在している。

 

 『なるほど。ライダーの事については分かった。そして、一つの仮説が生まれたよ。もしかすると、仮面ライダーは―』

 

 ウールは、以前キュウべえが話していた内容を思い出していた。彼の話、自分が2002年で行った事、その直後から2002年からどの時間へも行けなくなった異常、そして出自の異なるキックホッパー。これらを組み合わせると―

 

 「新しい歴史の創造、いや、編集か…」

 

 そうウールは呟いた。

 




 晴人達の元を離れた睦月は、クインテットに戻った。また襲撃される可能性があるが、他になぎさを安心して眠らせる場所が思いつかなかった。先ほど出したモールアンデッドとゼブラアンデッドを見張りに立たせ、(ウィッチバイザーでまた制御不能になるかもしれないが、そうなれば騒ぎ声で異常が分かる)なぎさをベッドに寝かした。

 「なぎさちゃん…」

 なぎさは酷くうなされていた。睦月は彼女の両手を握った。

 「えっ…?」

 ふとなぎさの顔を見ると、その顔が少しだけ変形して元に戻った。ちらりと見えたその顔は白い顔に黄色い丸目、赤と青のペイントを頬にしたピエロの化粧を思わせる顔だった。お菓子の魔女、シャルロッテを彷彿とさせる顔だった。



脱落者 0名
新規参入ライダー 1名
戦闘可能総数 16名


続く

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