仮面ライダーレンゲル☘️マギカ   作:シュープリン

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 俺は三葉睦月。ある日魔女に襲われ、その正体が魔法少女だと知ってからは、助けるため、仮面ライダーレンゲルになって戦っている。全てを思い出したなぎさちゃんはこれまでの過去を全て後悔し、罪悪感に苛まれていた。だけど俺は、それも含めて全てを受け入れる決意をし、二人で頑張る事に決めたんだ!

残された魔女は…後2体。



第41話 襲撃!私の恨み!

 大成野原は情に熱い人物である。感動系のドラマや漫画、小説の登場人物にすぐに感情移入してしまうし、ドキュメンタリーを見ようモノなら涙ダラダラで泣く。

 

 そんな人物だったから、困っている人を放っておくなんて事は出来ず、あちこちに出掛けてはその人の為になる事をこれでもかとやる。

 

 大人になってからはそれは海をも越え、発展途上国に井戸を掘ったりしているのだから彼女の人助け精神は凄まじい。

 

 そんな彼女の側に、小さい頃からずっといたから、睦月も魔女にされた娘達を放っておく事が出来なかったのではとも思うが、それは別の話だ。

 

 とにかく、そんな人助け精神に溢れる彼女だったからこそ、百江なぎさの境遇を聞いて何もしないなど出来るはずもなく、、、

 

 9月16日火曜日。敬老の日が明けて、睦月の長い長い夏休みは終わり。今日から大学で後期授業が始まる日。百江なぎさにも、新しい日々が始まった。

 

 「じゃ~~~~ん!!」

 

 そんな掛け声と共に、朝ごはんを食べていた睦月の前に現れたのは脚が生えた赤いランドセル、、、ではなく、赤いランドセルを背負った百江なぎさの姿だった。

 

 そう。百江なぎさが学校に行くことが決定したのだ。

 

 転校という形で学校へ行くらしい。

 

 小学校に行くためには、住民票とか在学証明書とか、そういう細々とした書類が必要だから、別の世界から来たなぎさにはそれは不可能だと思っていたのだが…。一体どうやったのか、実行者の大成野原に聞いても、

 

 「色々頑張ったのよ」

 

 と、教えるのが面倒なのか、言えないような事をしたのか、そう言ってはぐらかされた。

 

 でもそれでも構わないと睦月は思っていた。どんな手を使ったにせよ、それでなぎさは学校に行けるようになったんだ。あんな得意気そうな笑顔も、見ることは出来なかっただろう。

 

 「助ける」というのは、命を救う事だけではない。その後も、普通の生活を何不自由なく過ごせるようにしてやっと、助けるという事になる。

 

 普通の生活とは、その年の人が当たり前のようにやっている事を当たり前のように出来るようにさせること。

 

 なぎさの年で言えばそれは、学校に行ける事だ。

 

 それを可能にするなら、必要悪っていうのがあっても良いんじゃ無いかなと思った。そう考えると、その当たり前をようやく与える事が出来る現状に、睦月は無意識に微笑みを浮かべた。

 

 「睦月、どうしたのですか?」

 

 「いや、かわいいなと思って」

 

 睦月の称賛になぎさはまた笑みを浮かべる。

 

 「ほら、早く行かないと遅刻するよ?」

 

 「あっ、いけない!行ってきま~す!!」

 

 「「行ってらっしゃい」」

 

 靴を履いて、ドアに手を掛けようとした時、サッと振り返る。そこには、クインテットがまだ名前負けしていなく、ちゃんと5人揃っていた時の写真が立て掛けられていた。

 

 「(小夜、行ってきます)」

 

 なぎさは心の中でそう言うと、再びドアに手を掛けた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 大学が始まったと言っても、なぎさと違って睦月の日常はそう変わらない。

 

 講義を受けて、日によっては課題になっていたレポートを提出するだけ。なぎさと出会う前と出会った後、そして今とで何かが大きく変わる訳では無い。

 

 だから、睦月はなぎさ以上には新鮮味を感じる事は無かった。

 

 だから、授業を話半分に聞きながら、睦月は別の事を考え、それをメモの様に文字で整理するという作業を行っていた。

 

 もちろんそれは魔女の事、晴人や愛矢がいるパラディ、そして、今後の自分たちの動きについてだ。

 

 あの夏祭りの日から数日後、睦月はなぎさと“炎のビル”と噂されている場所を訪れた。しかし、中はもぬけの殻。魔女の気配も感じられなかった。

 

 ニュースでも、放火事件が取り沙汰される事が無くなり、代わりに指名手配されていた男と被害者男性の一人が見つかったとニュースで言っていたので、既に誰かが倒したのではないかと思ったが、なぎさは、

 

 「それなら、行方不明になった人たちは全員帰って来てるはずなのです」

 

 と否定。確かに、見つかったのはその二人だけで、他にも放火事件で行方不明になった人たちはまだ見つかっていないとニュースで続けられていた。だから、誰か他のライダーが魔女に攻撃を仕掛けたが、途中で逃げたのだろうと結論付けた。

 

 それは、晴人達なのだろうか、それとも…。

 

 「(思えば、俺はこの世界に元からいたライダーについて、ほとんど知らないんだな)」

 

 忘れそうになるが、睦月は普通の大学生である。不思議な夢を見た日に突然手元にベルトが現れた人を普通と定義するにはいささか抵抗はあるし、疑問の余地もあるが、少なくとも三葉睦月は普通の男子大学生として日々を過ごしてきたつもりだった。魔女や、この世界に元からいた怪物、ミラーモンスターとの出会いは本当に偶然であり、数ヶ月前までは存在すら知らなかった世界だった。

 

 故に、知識に偏りがあるのは当然の事であり、そもそもこの世界にライダーが何人いるのかも知らなかった。

 

 「(今分かっているのは、カメレオンみたいなのとサイみたいなのとガゼルっぽいヤツか…)」

 

 共通のバックルとベルトを使っていたのはその三人。元からいたライダーは彼らが使っているベルトのヤツだろうと睦月は推理した。

 

 そして、そんな事を考えている内に講義の終了を告げるチャイムが大学に鳴り響いた。時刻は午後4時。今日の講義はこれで全てだ。睦月は早々に帰り支度をして、教室を後にした。

 

 

 

 だから、睦月は気付かなかった。その少しあとに、睦月を訪ねに講義室へやってきた一人の女性の存在を。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 大学からアパートまでは片道一時間。帰宅は17時過ぎ。なぎさも帰っている頃だ。初めての学校はどうだったかな。そんな会話を楽しみにしていた時だった。

 

 水の流れる音。その音に睦月は歩みを止めた。

 

 近くに川は流れていない。近頃は雨も降っていないから水たまりでも無い。だとするとその音の正体は―。

 

 睦月は咄嗟に自分が立っていた場所から離れた。その数コンマ後に、そこから伸びる触手。そして、体が浮かび上がった。

 

 それは、紫と黄色の体色をしているクラブのカテゴリー7、ゼリーフィッシュアンデッド。少し前に睦月がREMOTEで解放し、晴人が開発した魔女の力を扱えるウィッチバイザーという武器によって本能が解放されてしまったアンデッドだった。

 

 「まさかこっちから来てくれるとは。探す手間が省けた」

 

 睦月はバックルにAをセットし腰に巻いた。

 

 「変身!」

 

 『Open Up』

 

 睦月はレンゲルに変身し、ラウザーを構えて特攻した。このアンデッドとは一度戦ってるし、自分も魔女との戦闘でこのアンデッドの力を何度か使ったから、能力は分かる。

 

 「(こいつの厄介な所は地面でもどこでも自由に泳げる所だ)」

 

 だからこそ泳ぐ隙を与えない。ラウザーを一発でも多く叩き込んで弱らせる。睦月はラウザーを自在に振り回し、全身にこん棒による打撃を打ち込んだ。それは的中。アンデッドは反撃する間も無くただただ打ち込まれるだけだった。

 

 そして、最後の一突き。それが胸部に当たり、その体はもろに吹き飛んだ。

 

 「とどめ」

 

 睦月はカードを取り出した。その時だった。

 

 レンゲルのちょうど右方向。そこから、大量のコウモリが飛んできて、睦月の体を包み込んだ。爪で引き裂かれ、睦月はそれから逃れようともがく。

 

 さらにそこから、一回り大きな爪がレンゲルの体を切り裂いた。肘から広がる大きな翼、大きな耳。明らかにコウモリを思わせる出で立ちの怪人だったし、睦月も見たことがある姿だった。それは、睦月がREMOTEで放出した怪人の一人。ダイヤのカテゴリー8のバットアンデッドだった。

 

 「見つけたぞ。ライダー」

 

 更に、妖艶な声が聞こえた。それは、ジェリーフィッシュアンデッドでもバットアンデッドから発せられた声では無い。バットアンデッドの後方にいる、黒髪の長髪に黒いドレスを纏った女性からだった。

 

 「カリスでは無いけど、まぁいいか」

 

 そう言うと、女性の姿が怪人にへと変わっていった。髪は蛇に変わり、それが自身の腕や肩に巻き付き、顔も真っ白になり頬こけ、口からは長い牙を出して蛇のような姿になった。

 

 その姿も、睦月はよく知っていた。それは、ダイヤのカテゴリーQのサーペントアンデッドだった。

 

 「行くわよ」

 

 アンデッドは、右腕から鈍器を出すと、レンゲルへ向かって行った。それを振り回し、レンゲルを左肩から斜めに切り裂いた。それに加えてバットアンデッドの爪が。バットアンデッドは、完全にサーペントアンデッドに協力しているようだった。

 

 『この世界』の三葉睦月は知らない事だが…。サーペントアンデッドがしようとしている事は復讐だった。自分を封印した事への。本命はそれをやった張本人、ハート型の面をつけ、仮面ライダーでありながら自分と同じ種族で、ハートのカテゴリーAの姿をしている者。ジョーカーこと仮面ライダーカリス。しかし、彼女が考えている復讐はそれだけでは無い。自分と同じアンデッドをことごとく封印し、バトルファイトを乱した者全員が対象だった。

 

 当然、クラブのライダーである仮面ライダーレンゲルも例外では無い。

 

 二体のアンデッドに便乗するように、ジェリーフィッシュアンデッドも攻撃に参加してきた。自身の触手でレンゲルにダメージを与えていく。

 

 「(これは…ちょっとヤバいかも…)」

 

 睦月は何度目か、また危機感を感じていた。

 

 3 vs. 1。こちらから攻める隙が無い。このままでは変身が解除されるのも時間の問題だ。

 

 「グッ…!」

 

 睦月はとうとう力尽き、ガクッと膝をついた。

 

 「こんなモノだったのか。つまらん。ジョーカーの方がまだ強かったぞ。こんなのがジョーカーと同じ力を持っていて、私の復讐対象の一人だったとは…」

 

 サーペントアンデッドは呆れるようにため息をつき、

 

 「まぁいいか」

 

 と、すぐに開き直り、鈍器の付いた腕を持ち上げた。

 

 その時だった。

 

 「それ」は何の前触れもなく突然やって来た。

 

 「それ」は、バットアンデッドを静かに侵食していく。

 

 あまりの苦しさにうめき声を漏らし、足も多少おぼつかせたが、2体のアンデッドは気付かない。

 

 一体は復讐対象を注視し、もう一体にはそもそも知性が無かったからだ。

 

 それが裏目に出た。

 

 サーペントアンデッドの横から長い爪が飛んできた。

 

 突然の事だったから、サーペントアンデッドは受身を取る間もなく地面に転がる。

 

 もちろん、レンゲルが攻撃したのではない。それは、バットアンデッドの攻撃だった。

 

 「なっ!?お前、何故…?」

 

 驚くサーペントアンデッドをよそにバットアンデッドは彼女の蛇髪を持ち上げるとさらに拳による打撃を加える。さらに、後方から近づいたジェリーフィッシュアンデッドも蹴りで引き離した。

 

 「離せ、この野郎!!!」

 

 激昂したサーペントアンデッドは右腕の鈍器を大きく横に薙ぎ払い、バットアンデッドを一蹴した。ジェリーフィッシュアンデッドも巻き込んで。

 

 それが間違いだった。

 

 アンデッドとは、生物の祖先で、互いに別のアンデッドと戦い自身の種族の繁栄を第一に考えている怪人だ。最後の一人になるまで戦う事を宿命づけられている。故に、本来であれば他のアンデッドは敵同士。仲間など生まれる訳が無い。だから、一度の攻撃で、全てが崩れてしまう。共通の敵と戦うという薄い同盟関係が。

 

 ジェリーフィッシュアンデッドも反撃とばかりにサーペントアンデッドとバットアンデッドを攻撃し始めた。ライダーと言う共通の敵を倒すために生まれた連携は完全に途切れていた。

 

 こんな好機を睦月もただ黙って見ている訳もなく。

 

 『ABSORB QUEEN』 『FUSION JACK』

 

 体勢を立て直したレンゲルはジャックフォームにへとその姿を変えた。

 

 3体のアンデッドはその光に反応したがもう遅い。レンゲルはさらに二枚のカードをスラッシュさせた。

 

 『♧6 BLIZZARD』 『♧3 SCREW』

 『ブリザードゲイル』

 

 三体のアンデッドに向かって強力な冷気を吹きかけ、足元を、さらに彼らが立っているアスファルト道路を凍らせる。

 

 レンゲルはそこをスケートのようにして滑り、彼らの前に大きな拳を突き出した。

 

 「(まずい!)」

 

 サーペントアンデッドは咄嗟に他二体のアンデッドを自身の前に引き寄せた。

 

 「おりゃぁぁ!!」

 

 「ああああぁぁぁぁ!!!」

 

 二つの拳は二体のアンデッドに完全にヒット。サーペントアンデッドは直撃は免れたものの、完全に勢いを殺すことはできず大きく吹っ飛んだ。

 

 バットアンデッドとジェリーフィッシュアンデッドの腰に付いてるバックルが割れたのを確認すると、レンゲルは二枚のカードを投げ、その体を封印した。

 

 残りは1体と顔を上げたが、既にサーペントアンデッドの姿は無かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 今回は本当に危なかった。

 

 変身を解き、家路に着く中、睦月は先の戦いをそう評した。

 

 たまたま相手の連携がくずれたから良かったものの、もしもあのまま押し切られていたら完全にこちらが負けていただろう。

 

 もっと強くならなくちゃ…。

 

 自分が死にたくないのはもちろんだが、それだけでは無い。

 

 あの子と一緒に戦うと決めた以上、あの子を守れるような、安心して背中を預けて貰えるような、そんな存在にならなくちゃいけないのだ。

 

 その為にも、もっと強く…。

 

 燃えるような夕日の中、睦月はそう強く誓った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 それにしても―。と、睦月は先ほど封印した二枚のカードを眺めながら思った。

 

 「(何であの時、あの怪人はあいつを攻撃したんだ…?)」

 

 元々敵対していたのを彼女が恐怖でねじ伏せていて、それが爆発した?いや、それなら自分を倒してからでも遅くは無いはずだ。あの場で攻撃が決まれば、一瞬で決着がついたんだから。そう、睦月はあの時のタイミングも気になっていた。自分に止めを刺そうと思った時に突然の謀反。いや、あれは本当に謀反だったのか?睦月を倒そうとしてた時にその相手を攻撃した。

 

 「(それだと、俺を守ってくれたみたいじゃないか…)」

 

 睦月は一瞬そう思案したが、それは無いかと思った。睦月は今回の戦いの前にも何度か、カードに封印されていた怪人と戦った事がある。全員戦意まる出しだった。

 

 その戦意が、あの時たまたま他の怪人に向いただけなのだろう。肩がちょっとぶつかっただけで喧嘩を吹っかけてくるヤンキーと同じような…。あのコウモリ怪人はそんな面白い程にベタな喧嘩野郎だったのだろう。

 

 睦月はそう結論付けた。

 

 

続く

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