仮面ライダーレンゲル☘️マギカ   作:シュープリン

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 白、白、白…。天井も床も壁も雪のように白い。清潔感を出すために、大半の病院はそうなっているが、彼にはそれが死後の世界の様に思えてどうも好きになれなかった。階段を上って奥の病室。そこに彼女は眠っている。長い間。ずっと。

 今でも、彼が見た彼女の最後の光景が目に焼き付いて離れない。


鏡から出て来た大きな黒い翼を持つ怪物。そいつによって彼女は大きな悲鳴を上げて倒れた。彼女の悲鳴も、今でも耳に強く残っている。

 崩れ去った研究室の中で一人立っていた男は、静かに彼の目を見つめると、

 「俺を殺すか、それとも戦い続けるか、好きな方を選べ」

 そう言って、カードデッキを差し出した。


 あの日以来、彼女はこうして眠り続けている。彼は、首から提げていたチェーン、そこに通していた三つのリングを握りしめた。

 「恵理、俺が必ず、お前を救ってみせる」




第44話 こいつは絶対おかしいよ

 仮面ライダーベルデ。その変身者である高見沢グループの総帥、高見沢逸郎。彼が密かに所有している別荘内の一つ。その地下室。

 

 いくつもの機械が並び、床はコードとそれを固定するテープが散らばり、ほとんど足の踏み場が無い。

 

 その中には、グリーフシードをセットする棚のような装置もあった。そこにセットされているグリーフシードは2つ。岩の魔女と、香川研究室にあった箱の魔女のグリーフシードだ。さらにその前には1台のベッドが置かれていて、そこに一人の少女が横になっていた。徳山愛矢。かつて希望を守る魔法少女であったが、絶望を運ぶ魔女になり、三葉睦月によって当時の体を手に入れたが、今は新たな自分になるために剣持晴人率いるパラディに与している。

 

 彼女の体には今、全身のあちこちにパッチの付いたコードが繋がれている。

 

 グリーフシードが設置された棚も含め、それらは部屋中に置かれた機械を経由し、魔女の力を自在に使えるアイテム、ウィッチバイザーが置かれた台まで届いていた。

 

 「それじゃ、行くぜ」

 

 晴人はその側に置かれたノートパソコンの前でそう言った。

 

 愛矢はこくんと頷く。その面持ちは、緊張しているようだった。

 

 それを見た晴人はEnterキーを押した。

 

 その途端、グリーフシードは白い輝きを発した。棚にセットされていたメーターの針は全て振り切っている。グリーフシードから魔力が抽出され、それがコードを通じてウィッチバイザーにへと吸収されていく。

 

 「・・・・!」

 

 それは愛矢も同じだった。痛くは無い。しかし、体が内側から火照り、良い感じはしない。熱が出たときの感覚に似ている。何度やっても慣れる事は無いだろうと思う。

 

 「よし、終わりだ」

 

 20分程経った時、晴人がそう言ってスクリーンに映ってる停止ボタンをクリックした。

 

 「――――――」

 

 魔力の抽出を止めると、体の火照りがスーッと引いていった。

 

 「具合はどうだ?」

 

 「ダルい…」

 

 晴人の問いかけに愛矢は全身の力を抜いたまま答えた。熱は引いたが、代わりに現れたのは、その火照りによってずっと隠れていたもの。全身が重い感覚。起き上がる事すら出来ない。口を開くのでさえ辛い。熱は消えても、風邪の様な感覚は続いていた。

 

 「そこそこの魔力を吸い上げちまったからな。無理ないか。ちょっと寝てろ」

 

 「ん…」

 

 愛矢は短く返事をするとすぐに眠った。そんな彼女を置いて、晴人は地下室を後にする。

 

 「終わったのか?」

 

 リビングに入ると開口一番に高見沢からそう聞かれた。

 

 「取り敢えずはな」

 

 晴人はウィッチバイザーを見せながら答えた。

 

 「愛矢は?」

 

 「下で寝てる」

 

 「っていうか、あなたは何をやってたんですか?」

 

 横から佐野が口を挟んだ。

 

 「戦う準備。戦力増強だよ」

 

 そう言って晴人は再度ウィッチバイザーを掲げる。

 

 「こいつは魔女の攻撃を出せるだけじゃない。力を混ぜ合わせる事だって出来るんだ」

 

 「力って、魔女の魔力ですか?」

 

 「あぁ、何せ俺らは世界を根本から変えようとしてるんだ。最終目標を倒すのにも、膨大な力と要るだろう?」

 

 「それで今まで魔女の捜索をほとんどやらなかったんですね」

 

 「そう言うことだ」

 

 しかしそっちは、単純に魔女を完全に見失ったからってのもあるがなと、晴人は付け加える。

 

 「だがまぁ逆に良かった。お前も見ただろう?使い魔が人間に取り憑いて新たな怪物を生み出したんだ。魔女の方も何かが変わろうとしている。ならばこそだ、こっちも変わらなきゃいけない」

 

 ちなみに、魔女探しは主に芝浦淳が行っていた。今もパソコンで情報を収集中だ。

 

 「その一環が魔力を混ぜる事か。だったら何で天野小夜を殺した?」

 

 高見沢が訝し気に尋ねた。

 

 「高見沢さん、それは言わないでくださいよ。だから言ったでしょ?あれは事故だったって。まさかあそこで飛び込んで来るとは思ってなかったんだよ。あれは俺も計算外だった。ま、その埋め合わせは考えとくよ」

 

 今は全然思い付いてないけどな、と、晴人は付け加える。

 

 「小夜といえば、」

 

 佐野が思い出したかのように口を開いた。

 

 「徳山愛矢。あの子よく俺たちの所にいますよね。しかも協力的だ。魔力を吸い上げるなんて、あいつにしちゃ一大事じゃないんですか?仮にも友達を殺したってのに。もう怒ってないんですかね?」

 

 「そりゃ怒ってるだろ」

 

 晴人はあっさりとそう答えた。

 

 「これは洗脳じゃねぇんだ。俺たちといるからって、俺たちへの怒りが消える事は一生ねぇよ」

 

 睦月の手によって魔女から人間に戻された娘達は人の姿をしているが人ではない。血液も、内臓も、細胞も、全てグリーフシードに蓄積されてた魔力から生まれたモノだ。魔力を吸い上げるという行為は、命を吸い上げるのと等しい。体への負担も大きい筈だ。

 

 「それだけあいつが渇望してるって事だ。あらゆる感情を無視してでも、新しい世界ってヤツをよ」

 

 その時、芝浦淳がガチャっと部屋に入ってきた。

 

 「剣持さん、ようやく見つけたよ。逃げた魔女の手掛かり!」

 

 そう言うと、芝浦は晴人達に自身のノートパソコンを見せた。インターネットの記事で、火災について載っていた。火災状況もかなり似ている。

 

 晴人はニヤっと笑った。

 

 「ナイスタイミングだ。よし、行くぞ!」

 

 晴人らはデッキを持って部屋から出ようとした時―

 

 「待て」

 

 と、高見沢が晴人を呼び止めた。

 

 「晴人、前々から疑問だったんだが、魔力を集めるとか混ぜ合わせるとか…それはどこで学んだんだ?」

 

 「………」

 

 何も答えない。晴人はただただ不敵に笑うだけだった。

 

 「まぁ、色々予習してたからな」

 

 少しの沈黙の後、晴人はそう言った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 芝浦淳は、インターネットの記事から魔女がいるかもしれないポイントを見付けた。

 

 インターネットは、特定の個人に限らず、ユーザー全てに同様の情報を与える。

 

 睦月となぎさも芝浦と同じ記事に目をつけ、その場所の周辺に立っていた。

 

 「なぎさちゃん」

 

 「分かってるのです」

 

 なぎさは目を閉じて意識を集中させる。そして―

 

 「見付けた。こっちなのです!」

 

 なぎさが駆け出し睦月もその後を追う。そして、辺りの景色が歪なモノにへと変わっていく。

 

 睦月となぎさはすぐにライダーに変身した。

 

 「入ったな」

 

 「だけど、この魔力の感じ、恐らく使い魔なのです」

 

 「つまり、追い掛ければ魔女に会える」

 

 「そうなのです」

 

 「よっしゃ、だったら―」

 

 「待って!睦月!」

 

 目の前にいる植物の芽のような使い魔を追い掛けようとした時、それをなぎさが止めた。

 

 「どうした?」

 

 「あれ!」

 

 なぎさが指差す方向。そこに、一人の男性の姿があった。男性は地面を見つめながら、ゾンビのようにふらつく足取りで使い魔の後を付いてきている。使い魔に囚われている事は明確だった。

 

 「作戦変更だ。あいつを倒してあの人を助けるぞ」

 

 「了解なのです!」

 

 睦月はラウザーを構えると使い魔に向かって跳躍。そのまま使い魔を打ち付けようとした、その時だった。

 

 『HOLD VENT』

 

 横からの攻撃によってそれは阻まれ、睦月の体が地面に落ちる。

 

 「睦月!」

 

 「危っね~な~おい。せっかく魔女に会える手掛かりを見付けたってのにさ」

 

 そこにいたのは、オルタナティブ・ゼロ、ガイ、インベラー、そしてバイドワインダーを持ったベルデの四人だった。

 

 「お前ら…」

 

 睦月は立ち上がりながら言った。

 

 「佐野は予定通り使い魔を追え。高見沢さんと芝浦は睦月を、俺はあの子の魔力を吸収する」

 

 「了解」

 

 佐野、もとい仮面ライダーインベラーは使い魔の方へと駆け出した。

 

 『STRIKE VENT』

 

 バイドワインダーとメタルホーンを持ったベルデとガイは睦月へ向かっていく。

 

 突きだしたメタルホーンをレンゲルが受け止めながら言った。

 

 「こんな事してる場合じゃないだろ!一般人が巻き込まれてるんだぞ!」

 

 「知らねぇ。願いが無限に叶う力が手に入った後であの人生き返らせりゃいいでしょ?」

 

 「そういう問題じゃねぇだろ!」

 

 睦月は改めて知った。パラディは自分の目的の為なら手段を選らばない事を。願いが無限に叶うを免罪符にあらゆる犠牲を許容している事を。

 

 「喋ってる余裕は無いぞ」

 

 「!」

 

 死角からバイドワインダーが飛んできた。衝撃でバランスを崩した所にインベラーがガゼルスタッブを打ち込んで来る。

 

 その攻撃に睦月は地面に倒れる。

 

 「カッコいい事言ってる所悪いが、ライダーなんてそんなもんだよ」

 

 バイドワインダーを振り回しながらベルデは言った。

 

 「例え超人的な力を手に入れたとしても、人間の本質は変わらない。自分かわいさで、あらゆる犠牲を許容する。他人を蹴落としてでも、自分の都合を優先する。俺たちが特別だとでも思ったか?ライダーだろうと所詮は人間だし、人間は皆ライダーなんだよ」

 

 そして、バイドワインダーを構えると最後に言った。

 

 「お前も、いずれ分かるさ」

 

 

 「さて、手っ取り早く行くぞ」

 

 「・・・・!」

 

 オルタナティブ・ゼロと対峙する斬月。なぎさは急いで銃口を晴人へ向けた。

 

 「やる気満々だね~」

 

 「・・愛矢は、愛矢はどこですか?」

 

 「あいつは今日は来ねぇよ。ちょっとおねんね中だ」

 

 「何を…何かしたんですか!?」

 

 「別に無理矢理何かやるとかはしてねぇよ。ただちょっと魔力をな、拝借しただけさ」

 

 「・・・えっ?」

 

 なぎさは、銃を持つ手が少しだけ緩んだ。仮面で隠れていたが、なぎさは確かに顔を青ざめていた。

 

 「魔力って…晴人、何をやったか分かってるのですか!!?」

 

 「あぁ?何かって…」

 

 ここで晴人は、なぎさの反応が変わっていた事に気付いた。そして、今の彼女の姿を見てからベルトに目を向ける。

 

 「お前、まさか…」

 

 「・・・!」

 

 晴人が一歩近づいたのを見て、なぎさは再び銃を強く構える。その銃口から、銃弾も、使い魔も飛び出す事は無い。なぎさは引き金を引いてはいなかった。なぎさは一歩後ろへ後退する。

 

 「お前さ、さっきから何で撃たねぇんだよ?」

 

 そんななぎさの行動に晴人は眉をひそめる。

 

 「・・・」

 

 銃を持つなぎさの手は小刻みに震えていた。

 

 「フッ」

 

 晴人は鼻で笑うとゆっくりカードをスラッシュさせる。

 

 『ACCEL VENT』

 

 オルタナティブ・ゼロは高速で動き、斬月の懐に拳をぶつけた。速さの乗った打撃になぎさの体は吹き飛ぶ。

 

 「佐野の時はまぁまぁ戦ってたのに、俺には撃てない。ハハッ!ま~だ仲間意識持ってた事に驚きだよ。俺はお前らの友達を殺したってのにさ。言っておくが、俺はそんなの無いから容赦しないぜ。例え相手が女の子でもな。と言っても魔力の塊だからな、それも違うか」

 

 晴人はウィッチバイザーに付いているボタンを押しながら近付いて行った。

 

 「んじゃ、ちょーーっと痛いけど我慢な。魔力いただきま~す」

 

 晴人が、倒れてるなぎさにウィッチバイザーを触れさせようとした―――。

 

 その時だった。

 

 ズンッ。

 

 結界全体が小さく揺れた。オルタナティブ・ゼロもベルデもインベラーも思わずその手を止める。

 

 ズンッ。

 

 先ほどよりも大きく揺れた。睦月も思わず辺りを見渡す。使い魔を追い掛けていたインベラーも足を止めた。

 

 ズンッ

 

 また、さらに大きく揺れた。

 

 「何だ?地震?」

 

 「ここは結界の中だぞ?地震なんてあるのか?」

 

 ズンッ

 

 仮面に隠れて表情が見えない。それが災いした。最初の揺れからずっと、百江なぎさはこれまで感じた事が無いほどの強い恐怖を感じていた。

 

 ズンッ

 

 今この場にいる人達は辺りを見回すだけで誰もその事に気付かない。

 

 ズンッ

 

 魔女やモンスターとは比べ物にならない程の強い魔力だった。魔法少女だった頃を入れても、こんなの感じた事が無い。

 

 ズンッ

 

 「皆逃げて!!!!!」

 

 なぎさが恐怖を押し殺し叫んだ。

 

 その瞬間―――、

 

 バリィィイイィイイイィィィ!!!!

 

 鼓膜が破れるかもと思うほどの大きな音が結界に響き渡った。と同時に、結界の一部が歪み、そこから長く赤い脚が伸びた。

 

 さらに、結界を巻き込みながら顔、胴体。全身が結界へ。

 

 「QR*W!!!!」

 

 『それ』が大きく吠えた。

 

 『それ』は、長い四本の脚で動く四足獣だった。全身真っ赤で、魔女に匹敵するレベルで大きい。しかし、胴体に見合わず、顔は人間の顔程度の大きさしかなく、その不格好さが還って不気味さを引き立たせていた。

 

 常に口は口裂け女の様に大きく横に開いていて、唾液がボタボタと垂れている。

 

 明らかに魔女やモンスターとは異質の存在だった。

 

 「QR*W!」

 

 『それ』は片脚を挙げると、足首に当たる部分が四方向に裂けた。それが、歯車の様に回転するとそのまま睦月達のいる方向へ投げつけた。

 

 「おいおいおいおい!!!」

 

 ベルデとガイはギリギリでかわす。睦月もその場を転がってしのいだ。

 

 三人がいた場所には一直線の切れ込みが入っていた。

 

 「トカゲかなんかかおい?」

 

 飛ばした足はズリュっとたちまち再生した。

 

 「H。DEH。DE!!!!」

 

 怪物はつんざく程の奇声を発すると、背中がグニグニと煮えきるマグマの様に蠢くと、背中から六本もの腕を生やした。

 

 「姿が変わった…?」

 

 晴人が驚いていると、今度はその六本の腕を回転刃にして無作為に投げ出した。

 

 その内の一枚がなぎさと晴人のいる方向へ―

 

 「なぎさちゃん!!!」

 

 ガイとベルデの元から離れた睦月は間一髪、なぎさの手を取って引き戻した。

 

 晴人は別方向へ跳んでかわした。

 

 「ただ暴走してるだけか?ったく、面白い!」

 

 晴人は怪物に向かって跳躍しそのままカードをスラッシュさせた。

 

 『Accel VENT』

 

 オルタナティブ・ゼロの落下速度を速め、スラッシュダガーを怪物へ叩き付けようとした。しかしー、

 

 「グッ!?」

 

 怪物の足に新たに生えた回転刃によって簡単に防がれた。火花が辺り一面に飛び散る。

 

 「ぬぅおおおおおおお!!!!」

 

 それでも無理矢理突破しようと刃を進めるが、

 

 「剣持さん、後ろ!!」

 

 「チッ!」

 

 佐野の声で、後ろから別の脚に付いた回転刃が迫ってるのに気付き、逆に力を緩め回転刃の勢いに巻き込まれる形でそれをかわした。

 

 「っつああああ背中痛ぇ~」

 

 晴人は背中をさすった。

 

 畳み掛けようとさらに"怪物"がオルタナティブ・ゼロに迫る。

 

 「クソッ!やってくれたな!」

 

 晴人はウィッチバイザーに付いていた赤いスイッチを押した。

 

 『Release』

 

 すると、取り付けていた腕を伝い、エネルギーがスラッシュダガーへ流れ込んだ。スラッシュダガーを核にし、エネルギーが徐々に形成されていく。それは、大きな鉤爪だった。

 

 「ほぅ。これが愛矢の力か!」

 

 晴人は大きく真一文字に切り裂いた。

 

 "怪物"は無様に悲鳴を上げ、その場に倒れ込む。

 

 「(いくらめちゃくちゃ強くても、これは有効って事か)」

 

 

 また、この急襲には結界の主である使い魔にも変化を与えた。

 

 ただ逃げるだけだった芽のような使い魔。それが急に回れ右をし、追い掛けていたインベラーを飛び越え捕らえていた男性の体に自身の根を纏わせた。

 

 「こいつは…」

 

 そして、ヤジロベエの様な姿に変えると、両腕を振り回し、火炎弾を倒れている"怪物"ぶつけた。結界をこれ以上壊されない様にと逃亡ではなく応戦にスタイルを変えたようだった。

 

 火炎による爆発に反応し、立ち上がった"怪物"の視線がヤジロベエに向けられた。

 

 「おいおいおいおい勘弁してくれよ!!」

 

 ヤジロベエは火炎弾をぶつけ続けた。しかし、体が頑丈なのか、相手は怯む様子が無く、体の表面が少し黒ずんでるだけだった。

 

 "怪物"は片足を上げて踏みつけにした。ヤジロベエは自身の体を回転させる事で威力を殺したが、完全に防ぐ事はできず弾き飛ばされた。

 

 そして、すぐ横にいたインベラーに視線を向けると、同じように踏みつけにしようとした。

 

 「おいおいおいおい!!」

 

 インベラーはジャンプでそれをかわした。

 

 「ナイスだ!佐野!俺もそっち行くぜ!」

 

 その隙に態勢を整えた晴人が"怪物"を追ってその場を離れた。

 

 睦月となぎさだけが残された。今やパラディの興味は完全に"怪物"に向いているように見えた。

 

 「なぎさちゃん、今のうちだ。俺たちはさっき見つけた人を助けて逃げるぞ!」

 

 「あれは良いのですか?」

 

 なぎさは"怪物"に目を向けながら言う。

 

 「相手はパラディ四人だ!そいつらが相手してくれてるし、何よりもあいつがやられたら標的はまた俺たちだぞ!!」

 

 睦月も"怪物"を見ながら続けた。

 

 「あれが何なのかは分からないけど、あいつが来たのは好機だ!一度結界を出て態勢を…」

 

 「そうは行かないよ」

 

 『ADVENT』

 

 「!なぎさちゃん!!」

 

 睦月はとっさになぎさを押し倒した。しかし自身は回避が間に合わず、メタルゲラスの突進を正面から受けてしまった。

 

 「睦月!!」

 

 「相手は四人?違う違う。二人だ」

 

 「くっ…!」

 

 仮面ライダーベルデとガイだった。睦月は立ち上がりながら二人を睨み付ける。

 

 「俺たちは変わらず、百江なぎさの捕獲と三葉睦月の討伐だ!」

 

 ガイはそう言うと睦月にメタルホーンを突き出した。レンゲルは何とかラウザーで受け止める。

 

 「今はこんな事してる場合じゃ…」

 

 「クエストでも、突然の乱入はよくある事さ。だけど、本来の任務は変わらない!」

 

 「い!」でそのまま突き出され、レンゲルは後ろに後退する。

 

 「そうかよ!だったら…」

 

 『ABSORB QUEEN』

 

 睦月はクイーンのカードをアブゾーバーにセット。アブゾーバーの横の部分が開き、二枚のカードが顔を出した。

 

 『CONFINE VENT』

 

 睦月はジャックのカードを取り出しスラッシュ。しかし、何も起こらない。

 

 「えっ?」

 

 「パワーアップなんかさせるか」

 

 勝負では一瞬の隙が勝敗を分ける。ジャックフォームになれないことに同様し、メタルホーンの攻撃を防げなかった。

 

 「ぐわぁ!!」

 

 その衝撃で手に持っていたカードとアブゾーバーに入れていたカードが宙を舞い、ガイがそれをキャッチした。

 

 「これでお前は強化できない」

 

 ガイがジャックとキングのカードを見せびらかしながら言った。

 

 「睦月!」

 

 「お前はこっち」

 

 睦月に注意を向けた瞬間、なぎさの体はベルデのバイドワインダーによって巻き付かれた。

 

 「捕獲完了」

 

 「お前ぇぇぇ!!!」

 

 睦月は急いでベルデの元に行こうとしたが、その行く手をガイが遮った。

 

 「ジャックが無いお前は敵じゃあ無い!」

 

 レンゲルが振り回すラウザーをガイはメタルホーンで全て受けきる。

 

 「高見沢さん、今の内になぎさを」

 

 「待て!!」

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 その時、睦月のすぐ真後ろに、オルタナティブ・ゼロが飛んできた。

 

 「あんの野郎、なんつー体してやがんだ…」

 

 晴人は後頭部をさすりながら起き上がる。その晴人目がけて、“怪物”は足に付いた回転刃を三本投げつけた。

 

 「ヤバ!!!!」

 

 それはもちろん、直線上にいたレンゲルやガイにも届く訳で。

 

 「チッ!!」

 

 ガイは急いでその場を離れ、レンゲルの行く手を遮るものが無くなった。

 

 『♧3 SCREW』

 

 睦月はこれはチャンスだと、回転刃を躱すと、すぐにベルデに風の回転が掛かったラウザーを打ち付けた。その衝撃でベルデの体は離れ、斬月の拘束も解けた。

 

 「なぎさちゃん、大丈夫か!?」

 

 なぎさは小さく頷く。

 

 「良かった。とにかく、急いでここを」

 

 「睦月!!!!」

 

 なぎさが悲鳴に近い声を発した。遅れて睦月は自分のいる場所が影になっている事に気付いた。上を見上げると、いつの間にか来ていた“怪物”が回転刃の付いた足を振り下ろそうとしている所だった。“怪物”にもちろん躊躇は無い。もう逃げる事はできなかった。

 

 「なぎさちゃん!!」

 

 無駄だと分かっても睦月はなぎさに覆いかぶさる。その刃が二人に届かんとした。

 

 その時だった。

 

 『BLAST VENT』

 

 突然の突風にあおられ、“怪物”がバランスを崩し倒れた。お陰で刃の軌道も逸れ、二人に当たる事は無かった。

 

 見ると、大きなホイールの付いたコウモリのようなモンスターが空を飛んでいた。そして、そのさらに向こうから、三人のライダーの姿があった。

 

 一人は赤を基調としたスーツに鉄仮面。一人は青を基調とし、西洋の騎士を彷彿とさせる姿、一人は赤と黒を基調とした鎧に顔に書かれた「らいだー」という文字が特徴のライダー。

 

 見たことも無いライダー。敵か味方かも分からないが、睦月は三人に心から感謝した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 芝浦淳は、インターネットの記事から魔女がいるかもしれないポイントを見付けた。

 

 インターネットは、特定の個人に限らず、ユーザー全てに同様の情報を与える。

 

 その情報はもちろん、同じく魔女に出くわしていた龍騎、ナイト、ゲイツにも届いていた。

 

 しかし、予想外の光景に三人は呆気にとられていた。

 

 「あれが魔女か?前に見たのとは違うようだが」

 

 龍騎が“怪物”を指さし言った。

 

 「いや、どうにも雰囲気が違う。どうなってるんだ?」

 

 「それに、他にもライダーがいるぞ!」

 

 彼が見る限り、今いるライダーは龍騎、ナイト、ゲイツ以外に六人。内四人は以前に結界内で出くわした者達だった。残りの二人は何と龍騎らとは別のベルトを使っていて、彼を驚かせた。

 

 「(また、別の世界のライダーか…?)」

 

 訝し気にしていると、倒れた怪物が再び起き上がった。

 

 「QR*W!!!!!!!!」

 

 怒りによる奇声を発しているのはすぐに分かった。標的は完全に龍騎ら三人に向いていた。

 

 「こっちに来るぞ」

 

 ナイトサバイブがダークブレードを構えた。

 

 「分かってる!!」

 

 龍騎はデッキから一枚のカードを取り出した。その瞬間、辺り一面の空気が変わったのにゲイツは気付いた。彼が取り出したのは、神崎士郎から受け取った翼の描かれたカード。炎が、陽炎が揺れている。

 

 彼のドラグバイザーが炎に包まれると、龍の頭を模した、銃のような物に変形した。開いた口に、龍騎はカードをセットした。

 

 『SURVIVE』

 

 すると、今度は彼の体全体が炎に包まれた。鉄仮面に金色のラインが増え、全身の鎧も赤くなり、ゲイツにはそれがサバイブを出した時に感じた炎が内に秘めているように思えた。

 

 「QR*W!!!!!!!!」

 

 “怪物”は回転刃の付いた足を振り下ろした。

 

 『ADVENT』

 

 龍騎はドラグランザーに、ナイトはダークレイダーに乗って躱した。ゲイツはドライブアーマーに変形し、その機動力で回避した。

 

 「!あれは…」

 

 ゲイツは、先ほど“怪物”に飛ばされたヤジロベエの怪物を見つけた。

 

 ゲイツはすぐにヤジロベエの元に向かった。

 

 『NASTY VENT』

 

 ダークレイダーが超音波を発した。その音に“怪物”は悶え苦しむ。

 

 『SHOOT VENT』

 

 ドラグランザーは“怪物”の正面に立つと、その小さな顔にドラグランザーとドラグバイザーツバイ、二つから発した火炎球をぶつけた。

 

 「EQE!!QR*W」ZG!!!!!!!」

 

 “怪物”が今までにない悲鳴を上げた。そのまま“怪物”は二人に背を向けると、ジャンプし、結界の壁に突撃して無理矢理そこを抜けた。

 

 『FINISH TIME!DRIVE!』

 

 『ヒッサツ!タイム・バースト!!!!』

 

 ゲイツはドライブアーマーの肩に付いていたタイヤを発射。火車、スパイク、手裏剣状のタイヤを次々にぶつけ、ヤジロベエの怪物は爆発。使い魔が人から離れ、そのまま消滅した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「(凄い…)」

 

 睦月となぎさはただただ見入っていた。あっという間だった。超音波を発したと思ったら、その隙に赤いライダーが火炎球を発射。それは、ヤジロベエの怪物が出していたモノを明らかに超えていた。

 

 さらに、そのヤジロベエの怪物の正体にも二人は驚いた。それは、睦月達が探していた一般人だったから。使い魔が憑りついていたのだ。

 

 「なぎさは、使い魔があんな事するなんて知らないのです…」

 

 なぎさは静かにそう呟いた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 使い魔が消滅した事で結界も無くなり、景色は薄暗い路地に戻った。しかし、皆変身は解かない。全員が全員他のライダーを警戒していた。

 

 「さっきのあれは、魔女だったのか?」

 

 沈黙を破ったのは龍騎だった。

 

 「いや、あれは突然現れたヤツだ。魔女では無い。まぁ、全く関係ないとは言えんだろ」

 

 晴人は大きなため息をついた。

 

 「止めだ止めだ!帰るぞ」

 

 晴人は全員に背を向けた。

 

 「おい!魔女は探さなくて良いのか?なぎさも!」

 

 ガイが驚いて訊いた。睦月は急いでなぎさの前に立つ。

 

 「状況が見えてねぇのか?こんな状況でどう探せと?それに、あの“怪物”の事もある」

 

 晴人は、睦月となぎさ、ゲイツを順に見た。

 

 「どうやら、この世界は俺が思ってる以上におかしくなってそうだからな」

 

 晴人はそう続けた。

 

 睦月はただ晴人を睨みつけるだけだった。ジャックとキングのカードは取り戻せていない。しかし、帰ってくれるならそれでも良いと思っていた。命には代えられない。

 

 「あっ、そうそう―――」

 

 数歩歩くと、オルタナティブ・ゼロは急に立ち止まった。

 

 「戦力は必要だ。お土産は貰って行くからな」

 

 「えっ?」

 

 「やっぱりなぎさを!!!」

 

 睦月は急いでラウザーを構えた。

 

 「あ~違う違う。お前じゃなくて、もう良いぞ。こっちに来い」

 

 「はっ?」

 

 睦月には訳が分からなかった。その時、

 

 『NASTY VENT』

 

 「!!!!!!!」

 

 突然、鼓膜が破れるような音を聞いた。レンゲルは、斬月は、龍騎は、ゲイツは、その音に耐えきれずその場に崩れた。その隙にナイトは、ダークソードを龍騎に斬りつけた。

 

 「ぐわぁぁぁ!!!」

 

 龍騎は悲鳴を上げ、傍からグリーフシードが二つ飛び出した。それをナイトがキャッチする。

 

 「蓮…お前…」

 

 真司は驚き、耳を抑えながら蓮を見つめた。ナイトはうずくまる四人の側を通り、オルタナティブ・ゼロの元へ。そして、二つのグリーフシードを晴人に手渡した。

 

 「・・・・・・・・・」

 

 その表情は、鉄仮面に隠れて見えなかった。

 

 「今日の所はこれで勘弁してやる。なぎさ、お前はまた別の機会だ!あんま変身すんなよ!」

 

 晴人は側にあった鏡へ入っていった。残りの四人もそれに続き、後には蹲った敗北者四人が残った。

 

 

続く

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