仮面ライダーレンゲル☘️マギカ   作:シュープリン

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Ep48 止まった時間 2002

 龍騎とゲイツの二人は結界の奥へと進んで行った。青い羽衣を纏った怪人、ブルーヒートはそれを黙って見送る。彼らには攻撃しない。元々二人には興味が無かったのだ。否、仮面ライダーレンゲルこと三葉睦月以外は全く眼中に無いと言っていい。

 

 これは、使い魔にはあるまじき事だ。使い魔の使命は女王蟻を守る働き蜂のごとく、魔女の為に尽くす事。ある時は人を攫い、またある時は魔女を倒しに来た魔法少女を相手に護衛の役割をする。使い魔にあるのは魔女への絶対的な忠誠心のみ。そこに使い魔の意思は存在しない。だから、使い魔は全員全く同じ姿をしている。人間の様に外見に個性を持たせる事に意味を見いだせないからだ。だから、使い魔に憑りつかれた人間も、人間と言う新たな媒体を手に入れたので多少姿は変わるが、それでも基本は同じ。「人間に憑依していない使い魔」と、「人間に憑依した使い魔」に分類されるだけ。

 

 では、レンゲルの目の前にいる怪人、ブルーヒートはどうだろうか?分類的には「人間に憑依した使い魔」に区分される。姿は人間に憑依した使い魔の進化体、ヒートと同じだが、色は違う。これはつまり、「人間に憑依はしているが、それでも止められなかった思考が残っている」事を意味している。人間に憑依した使い魔がその繋がりをより顕著にするために利用した感情、恨み。その恨みが強大過ぎた故に生まれた、魔女に絶対の忠誠を誓う使い魔のイレギュラー。そのイレギュラーは結界の防衛よりも睦月の殺害を優先する。

 

 「見つけた…今度こそ…お前を殺す…」

 

 使い魔ですら抑えられなかった恨み。その恨みが今レンゲルに襲い掛かる。

 

 青い炎を纏った拳を思い切り突き出した。レンゲルはそれを後退して躱した。

 

 『♧7 GEL』

 

 自身の体を液状化させ接近。接近してくる対象を撃破しようと手のひらから青い火の玉を連射するが、それを液状化した体で受け流し、正面からラウザーを…と見せかけて後ろに回り込み腰にラウザーを打ち付けた。間髪入れずに一発二発と打ち込んでいく。ブルーヒートは何とか受け止めようとするが液状化した相手を上手く掴む事が出来ない。今の仮面ライダーレンゲルは言わば水だ。水を掴むなどいくら怪物といえども土台無理な事。ブルーヒートの体を上手くすり抜け死角からラウザーを打ち込む。正面から拳が飛んできた。レンゲルはそれを躱さずに受ける。いくら強い攻撃でも当たらなければ意味は無い。胴体を貫かれたが液体化しているレンゲルにはダメージは無い。そのままラウザーで頭部を突く。

 

 このまま畳みかけて短期決戦を…と思ったが、相手も馬鹿では無かった。打撃が無理ならと大きく広げた掌から爆炎を吹き出し、液状化した体そのものを吹き飛ばした。

 

 ダメージは無い(もしも液状化していなければ良くて重傷、最悪死亡だっただろう)、しかし、連続攻撃が止まってしまった。

 

 『♧2 STAB』

 

 ならばと威力を上げたラウザーをぶつけようとしたが、

 

 「なっ!?」

 

 いくら威力を上げても、当たらなければ意味がない。体に当たるより前にラウザーを掴んで防いだ。

 

 「(時間切れ…)」

 

 掴んだ掌から炎をだし爆発。その爆発で体制を崩した隙に青い炎を纏った脚による蹴りをレンゲルに食らわせた。

 

 「ガハッ!クッ…!」

 

 あまりの威力に睦月は思わず咳き込む。この数分間、♧7にどれだけ助けられていたか、身をもって理解した。

 

 無双タイムは終了。ここからは力とテクニックのぶつかり合いだ。

 

 ブルーヒートはレンゲルに接近し拳を振り上げた。レンゲルは咄嗟にそれを躱す。

 

 『♧9 SMOG』

 

 レンゲルはラウザーから紫色の煙幕を噴射。ヒートの基本は体術による接近戦だ。視界を奪い、距離を取ればチャンスは来る、そう思った。しかし、

 

 その煙幕から飛び出してきたのは青い火の玉。それがレンゲルに当たり彼の体は大きく転がった。忘れていた。ブルーヒートは先ほどまで戦っていたのとは違う。拳をただ振り回すだけのヤツとは違う。臨機応変に能力を使いこなす。煙幕ならば確かに、接近戦よりも遠距離が有効だ。煙から少し離れ、より濃い方向を見つければ後はそこに火の玉を撃ちだせばいいんだから。

 

 戦闘の為に生まれ、圧倒的な力を持つ使い魔と、感情と知性を併せ持つ人間。これら二つが上手く組み合わさっている。

 

 これでは最早、怪人と言うよりライダーだ。モンスターと言う圧倒的な力を、知恵でより効率的に使いこなすライダー。

 

 「お前は、何者なんだよ…」

 

 立ち上がりながらレンゲルは問う。

 

 「・・・・・・・」

 

 しかし、ブルーヒートは答えない。答えられないのか、それとも答えたく無いのか。

 

 しかし、これでは―、

 

 「言ってくれなきゃ分かんねぇだろ…」

 

 納得がいかない。何故なら、本当に身に覚えが無いから。誰かを殺したとか、裏切ったとか、そんな事は一切ない。どこにでもいる普通の大学生だ。そんな人間に対して、知らず知らずのうちに使い魔と言う強大な力を以てしても完全に支配できない程の恨みを持っている人間がいると誰が想像できるのだろうか。

 

 「何であろうと、こっちも殺られる訳にはいかないんだよ」

 

 納得がいかないので謝罪はしない。だから、ヤジロベエやヒートとやる事は変わらない。ブルーヒートを倒し、使い魔を引き剥がす。ただそれだけだ。

 

 レンゲルは一枚のカードをスラッシュさせた。

 

 『♢9 GEMINI』

 

 すると仮面ライダーレンゲルが二人になった。

 

 「・・・・・!?」

 

 「行くぜ」

 

 二人のレンゲルがブルーヒートへ接近した。一人のレンゲルがラウザーを突き出した。それは彼女の腕で押さえられ、懐には届かない。しかしその隙にもう一人のレンゲルがブルーヒートの後ろに回り込み、背中にラウザーを突き出した。

 

 ラウザーを背中に押し付けたまま上へ向け、そのまま投げ飛ばす。

 

 『♢4 RAPID』

 

 一人になったレンゲルはさらに新たなカードをスラッシュ。

 

 ズババババと超高速でラウザーを突き出せるようになり、何発、何十発と威力が低いながらも確実に攻撃を食らわせる。

 

 液状化能力が切れていて、強化フォームもない。ならば手数を増やせばいい。昨日は四人で挑んでようやく追い出せた程度だった。たった一つの策だけで挑むほど睦月は愚かでは無い。

 

 力で敵わないなら、さらに手数を増やしてカバーする。

 

 威力の低い連続攻撃に慣れたのか、怯みは無くなり、ラウザーを掴んで攻撃を止めた。もう片方の手に力を溜め、炎を噴出しようとする。

 

 『♧3 SCREW』

 

 それよりも前に新たなカードをスラッシュ。ラウザーに高速の回転風が加わり、掴んでいたブルーヒートは回転に巻き込まれ吹き飛ばされた。

 

 『♢5 DROP』 『♢6 FIRE』

 「バーニングスマッシュ」

 

 レンゲルはジャンプすると、赤い炎を纏った足でドロップキック。

 

 これで終わらせるつもりだった。しかし、ブルーヒートがそれを左手で止めた。それは先ほど攻撃をしようと炎を溜めていた方の手だった。途中まで溜めていた青い炎を吹き出すことで威力を半減。さらに腕を爆発させる事で、攻撃から逃れた。

 

 青い爆風に吹き飛ばされレンゲルは地面に転がった。

 

 しかし、ブルーヒートもただでは済まなかった。昨日、龍騎とゲイツを振り払うために使用した緊急回避技だ。バーニングショットのダメージも相まって、ブルーヒートは反動で地面に倒れる。

 

 「(やっぱり…強い…)」

 

 仮面ライダーレンゲルは多彩なカードを利用したトリッキーな攻撃が強みだ。それを拡大させる為にダイヤのデッキも利用したが、それでももう一押し足りない。

 

奇襲だったとはいえ、やはり4対1で戦えていた実力は伊達じゃないと思った。

 

 「やっぱり…」

 

 「(そう上手く行かないか)」「そう上手く行かないわね」

 

 「!?」

 

 一瞬、心の声が漏れたのかと思った。あまりの強さについ口に出してしまったのだと。

 

 しかしそれは違った。

 

 耳に入った声の主は、レンゲルの真正面で、今体を起こそうとしているブルー・ヒートから出された声だった。

 

 ブルー・ヒートはさらに続ける。

 

 「あなた一人位、あっという間に殺せると思ってたのに、これは想像以上だったわ」

 

 「お前…やっぱり…」

 

 話せたのか。レンゲルは立ち上がりながら言った。

 

 ブルー・ヒートは腰に手を当ててハァーと大きなため息をついた。

 

 「何かもう白けちゃった」

 

 「?」

 

 「本当はあんたが何も知らない内に終わらせたかったんだけど、簡単には行かないって分かったから、ちょっと趣向を変えてみるわ」

 

 そう言うとブルー・ヒートの頭部が異変が起きた。怪人顔の皮膚が崩れ、徐々に人の顔が現れていく。

 

 睦月が一番感じていた疑問、ブルー・ヒートの正体が遂に明かされる。

 

 顔さえ分かれば動機も分かる。そう思っていた。

 

 使い魔ですら扱いきれない程の憎しみを抱えた人物だ。ここに来て「お前は…誰だっけ?」の様な一昔前のギャグ漫画的展開にはならないだろうと。

 

 ブルー・ヒートの顔面の皮膚が剥がれた。黒髪のショートボブ、使い魔が憑依している影響なのか、両目から涙の様な青いラインが三本ずつ伸びている。そんな彼女の顔は―、

 

 「……はっ?」

 

 まさかのギャグ漫画的展開だった。見たことも無い女性だった。一瞬、目の前にある顔も怪人が作ったモノなのではないかと思った。もしくは彼女がとんでもない人違いをしているのでは無いかと。

 

 「三葉睦月、あなたを殺す。私から大切な人を奪ったあなたを…」

 

 人違いの可能性は消えた。

 

 「お前、マジで誰なんだよ?」

 

 彼女は、冷たい視線を睦月に向けながら、真顔で淡々と名乗った。

 

 

 睦月は誰かを殺したとか、裏切ったとか、そんな事は一切ない。どこにでもいる普通の大学生だ。そんな人間に対して、知らず知らずのうちに使い魔と言う強大な力を以てしても完全に支配できない程の恨みを持っている人間がいると誰が想像できるのだろうか。

 

 しかし、睦月はほんの1年前に体験しているではないか。例え自覚が無かったとしても、とてつもなく深い憎しみをぶつけられた事が。

 

 無菌室にでもいない限り、人は他人から知らず知らずのうちに様々な感情を向けられる。「一緒にいて楽しい」とか、「こいつと話すと疲れる」とか。そしてそれは、お互いに名前すら知らない間柄ですら成立する。お互いの肩がぶつかれば不快感を持つだろうし、席を譲られれば嬉しい気持ちを相手に持つ。

 

 憎しみ・殺意だってそうだ。憎い人の親族と言うだけで殺意が沸くと言うのはざらだ。三葉睦月だって、自分の家族をめちゃくちゃにした人の息子と言う事でターゲットにされたのだから。

 

 家族、友達。人は生きている限り、誰かと繋がっている。

 

 

 「橋場 望(はしば のぞみ)。あなたが殺した、多摩 堀之(たま ほりの)の婚約者よ。人殺し」

 

 人が繋がっている限り、憎しみもまた繋がる。

 

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