HUNTER×HUNTER世界にキングクリムゾンとキラークイーンを加えてゾルディック家で料理した話。色々と許せる人向け。

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1話

 サヘルタ合衆国の金融街。

 多くの成功者が歩く、世界の資本主義の中心地の1つでその華麗なる暗殺は行われる。

 正しく白昼堂々の犯行。

 最近経済界で頭角を現して来ている実力派の若社長を標的とした暗殺は、さる筋が伝説の暗殺者一族ゾルディック家に依頼したモノだ。

 その依頼を受けたゾルディック家。

 そして、動いたのは最強の念能力者とも言われる長男の【レイ=ゾルディック】

 跡取りという立場でもある彼は、一族の者からゾルディック家開闢以来の天才と称される程の実力者である。

 

 これから暗殺されるなど、露程にも考えていない標的は護衛も無しに街の一角に在るカフェで忙しそうに書類やPCを広げていた。

 そんな標的の直ぐ近くの席に座るレイ。

 珈琲を飲みながら音楽を聴き、一般人に紛れながら標的を観察する。

 傍から見れば絵になるカフェの一幕だが、其処には標的と暗殺者が紛れ込んで居るのだから、お世辞にも平和な絵とは言えないだろう。

 それから数分後に事態は動いた。

 とは言え、急転直下では断じてない。暗殺は誰にも感知させず静かに行われた。

 レイはカフェ内に念能力者が居ない事を既に感知しており、だからこそ誰にも暴かれる事なく安全に自身の念獣を顕現させる。

 

 念獣の殆どは基本的に放出系に属する。

 それは即ち、非念能力者には見えないという事。

 レイの2つ有る念獣の内の1つ。

 薄ピンクの人型で拳や肩に髑髏のマークが有るその念獣の名はキラークイーン。

 その能力はキラークイーンが触れたモノを爆弾に変える。その爆弾の威力も自在だ。

 念能力者からしても脅威だが、非念能力者には絶望だろう。見えない何かに触れられたが最期、爆弾に変えられてしまうのだから。

 正しく暗殺向きの念獣。

 徐に席を立ったレイは、キラークイーンを標的へと動かし標的に触れさせた。

 

 その瞬間、途轍もない寒気を感じた標的は辺りをハッと見回す。

 本来なら有り得ない感覚だが、生物としての動物的な勘で知覚出来ない異常を知覚したのだ。

 しかし、念能力者でもない標的にその異常を解決する手段は無い。レイはカフェを後にすると、標的から十分に離れた場所に立つ。

 そして、キラークイーンは爆弾の威力を調整して起爆させた。

 瞬間ーカフェ内で轟音が轟く。

 後に残ったのは、数秒前まで人間だったモノ。

 この日から数日間は、新聞やテレビを若社長の怪死という知らせが賑わせた。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 仕事を終えたレイは、サヘルタ合衆国を後にし飛行船でパドキア共和国に戻ると、山頂のゾルディック家の邸宅へと帰宅していた。

 帰宅後に1番に出迎えたのは執事のツボネ。

 数多居るゾルディック家の執事の中でも古株中の古株で、レイの父親である【シルバ】に直属で仕える執事だ。

 レイはゾルディック家の跡取りであり、シルバの帰宅と同様にツボネが態々出迎えるのである。

 既に陽が落ちかけている夕方。

 いつもと同じく自分を出迎えてくれるツボネに、レイは優しい笑顔を浮かべた。

 暗殺者ではない1人の青年としての笑顔。その笑顔に応じる様にツボネもまた笑顔で出迎える。

 

 「お帰りなさいませレイ様」

 「ああ。いつもありがとなツボネ」

 「いえ。これも執事としての務めです故」

 

 レイの感謝にそう返答するツボネ。

 レイ本人は知らないが、ツボネもまたレイに強く感謝していた。長年執事としてゾルディック家に仕えているツボネは理解している。

 それは、レイの一族に於ける重要さ。

 イルミの性格やキルアの甘さ、極めつけはアルカが内に飼う異常なナニカの存在。

 一見平和に思えるゾルディック家は、実はこれらの爆弾と言う懸案事項を常に抱えている。その爆弾はいつ爆発するか分からない。

 そして、それらを上手く処理しているのが他でもないレイなのだ。

 弟達に慕われているレイだから出来る。

 それに、レイもまた弟達を、家族を愛している。だからこそ部屋へ戻るより先にツボネへ尋ねた。

 

 「弟達の様子はどう?」

 「ええ。皆様お変わりありませんよ。イルミ様は仕事で、ミルキ様は自室、キルア様とカルト様は当主様の下で訓練を受けて居られます」

 

 最後に【アルカ】だが、彼は兄達に遊んでもらえない為不貞腐れているらしい。

 アルカの様子を想像して苦笑しながら、弟達の状況を聞いたレイは皆に特に変わりが無さそうで心の底から安堵していた。

 暗殺の仕事の他にも、レイが抱えている仕事の関係で久し振りに家に帰宅したレイは、部屋に戻り直ぐに弟達に会おうとする。

 ツボネ以外の執事達とも話しながら、自室を後にしたレイは先ずシルバの下へ向かう事にした。

 【キルア】と【カルト】はシルバの監督下で念能力の訓練の最中らしい。

 場所はゾルディック家の訓練場だ。

 

 広大なゾルディック家邸宅を歩いて訓練場へと着いたレイは、扉を開けて念能力の訓練に励む弟たちと1週間振りに再会した。

 レイに最初に気がついたのはシルバ。

 シルバは、訓練場に来たのがレイだと分かると声を掛けキルアたちの訓練を休止する。

 ただいまとシルバに応じながら、レイが来てくれた事に気がつき喜んで駆け寄るキルアとカルトの頭を優しく撫でてやる。

 レイは2人のオーラを見て、1週間という期間でも以前よりかなり成長したなと感嘆した。

 

 「お帰りレイ兄!」

 「お帰りなさい兄さん」

 「ああ。ただいまキルアにカルト。それにしても、2人とも大分成長したな」

 

 嘘偽りの無い素直なレイの賞賛に、2人は子供らしく喜びを露にする。

 特にキルアは、自分が成長している事を自覚していたのか直ぐにレイ兄を追い抜かしてやると中々に不敵な言葉を放つ。

 そんな元気の良さに笑みを湛えながら、今度は激しめにキルアの頭を撫でた。

 久し振りの兄弟の会話に花を咲かせつつ、レイは訓練を監督していたシルバに2人の成長具合について尋ねる。

 シルバに拠れば、キルアはオーラを電気に性質変化させる能力が更に向上し、カルトは操作系として自分の発即ち能力を創れたようだ。

 

 それを聞いて更に2人を褒めたレイだが、キルアとは対照的にカルトは何処か不満気。

 どうやら、カルトは自分が操作系である事が嫌らしい。シルバやキルアと同じ変化系かレイと同じ放出系を望んでいたのだとか。

 操作系には操作系の強みがある。

 特に他の系統よりも、条件を満たせば相手を詰ませられる詰み性能の高い系統だ。それをカルトに伝え何とか不満を和らげたレイ。

 すると、キルアがレイにあるお願いをした。

 それはレイの能力である2つの念獣を見たいというモノだ。

 

 「見せてくれよレイ兄の念獣」

 「ボクも久し振りに見たい」

 「ん?ああ。良いよ」

 

 意外な事にキルアだけでなくカルトも同調して来たので、特に渋る事もなく了承する。

 レイの念獣はその能力の強さも然る事ながら、見た目も独特でカッコイイ。これは意図せずではなくレイがある記憶から意図した。

 その話は置いておくとして。

 キルア達の要望通り、レイは念獣の1つキングクリムゾンを顕現させた。

 赤と白の網目模様の人型で常に怒り顔。

 その能力は凶悪で、確定した未来を予知し時を消し飛ばす事で未来を改変出来る。消し飛ばした時の中ではレイだけが動けるのだ。

 2人は念獣をキラキラした目で見る。

 

 「俺もヒソカみたいにレイ兄と闘ってみたい」

 「……ボクも」

 

 どうやら2人は、訓練だけでなく実戦もしてみたいようだ。なまじ才能が有る2人だから、実戦経験を積ませるのもアリではある。

 とレイは一瞬考えるが、まだまだヒヨっ子の2人と実戦は無理だろうと考え直す。

 レイがシルバの方をチラリと見遣ると、シルバも同じ考えなのか首を横に振っていた。やんわりと2人に断るレイ。

 ちなみに、キルアの言うヒソカとは【イルミ】の友人(本人は否定するが)で極稀にだがゾルディック家にも遊びに来る奇術師の事だ。

 戦闘狂のヒソカに付き合う形で、レイは幾度となく彼と殺り合っている。

 

 「ごめんな。でもその代わりに明日の訓練は父さんと一緒に俺も見てやるよ」

 「マジで!約束だかんな」

 「ボク頑張るよ」

 

 レイの言葉に嬉しそうにする2人。

 そんな兄弟の微笑ましい掛け合いを、父親であるシルバは笑みを浮かべながら見ていた。

 これは、帝王と女王のスタンドを有するゾルディック家の長男レイの物語。



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