ありふれた世界で一方通行   作:双剣使い

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一か月以上投稿できなくてすいませんでしたッ!
何とか書きました。
ですが、注意があります。今回は全くと言っていいほど本編に関係がありません。長くなりそうだったので半分にしただけですし……読まなくてもいいかなって思われても仕方ありません。それでも読んでくださる方だけ画面を下にスクロールしてください。


囚われの聖女~前編~

 とある一人の少女の話をしよう。

 

 

 彼女は、ハイリヒ王国の領土に程近い公爵領のドンレミという村の村長の娘として生まれた。彼女を長女とし、父と母、二人の妹の五人で暮らしていた。

 

 当時、公爵領はハイリヒ王国に属してはいなかったが、交易を行うなど、それなりに友好な関係を築いていた。必然、ハイリヒ王国が他国と戦うことになれば、公爵は兵を連れて参戦した。当時、王国はエヒト神への信仰を広めるという名目で、周辺諸国へと兵を送り、各地で争いを起こしていた。後に、聖教教会が聖戦と名付ける戦いだ。

 

 彼女が生まれた村でも、若い男が公爵軍の兵士として駆り出され、戦争に参加した。戦死して帰ってこなかった者も多くいた。

 彼女の父親は、村長であったことと、生まれたのが娘三人だったこともあって、戦争には参加しなかったが、村長であった父は、戦死した若者を一人一人、丁寧に弔った。彼女は、その儀式に何度も出席した。家族、村の知人を失った悲しさから、終始涙を流し続けた者がほとんどだった。また、愛する人を失ったことで、心が壊れてしまった女性、後を追うように自ら死を選んだ者もいた。もともと、感受性が豊かで、他人の感情の変化に敏感だった彼女が、喪失感に苦しむ村の住人を見て、胸を痛めたのは当然と言えるだろう。彼女は、もしかしたら村長であった父よりも、村の住人に心を寄せていたかもしれない。

 故に、彼女の心では、村の若者が王国のために公爵の軍に加わり、戦場で命を散らしていることに対する疑惑が生まれる。なぜ自国の利益のために、関係のない人々が犠牲になるのか。他国の領土を奪うのではなく、交易によって自国の利益を上げることはできないのか。彼女は、最低でも公爵領からの犠牲者を出したくないという思いから、一時は公爵に直々に訴えることも考えた。

 

 しかし、この公爵領は、王国との交易で得た利益によってなんとか治められている。戦いにおいてハイリヒ王国と共闘しないことになれば、王国側から今後の交易が行われなくなるかもしれない。そうなったら、王国との交易で続いている公爵領は、すぐに荒野と化すだろう。彼女も、それは痛いほど分かっていた。そのため、直談判することはなかったが、彼女のその思いは、胸の中にくすぶり続けることになる。

 

 しかし、彼女の心の内など知ったことではないと、ハイリヒ王国は戦火を広げ、多くの国へと進行していく。必然、彼女らの村を含む公爵領から多くの若者が徴兵されていき、村には老人と女性、子供だけになった。男手がなくなったことで、力仕事を行うものが少なくなり、老人や女性、さらにはまだ十歳にもなっていない子供も手伝わなければいけなくなってくる。

 村長であった父は、戦争に行かない代わりに、若者がいなくなって畑を耕すことのできなくなってしまった家に行き、手伝いをするようになった。彼女の父親は、どちらかと言えば、戦争を肯定していたから、村長だという理由で徴兵されないので、村人に顔向けできないと考えたのだろう。しかし、彼のおかげで、作られないだろうと思われていた作物が実り、村は食糧難に陥ることはなかった。

 

 元々、村はそこまで裕福ではなかったし、村長であった彼女の家も、贅沢な食事など滅多になかった。そのためか、一番下の妹は、普段よりも豪華な食事ができるとあって、大喜びだった。もう一人の妹も、表情にこそ出さなかったが、喜んでいただろう。少女も、父親が戦争に行かない代わりに、村で畑仕事をやることに賛成だった。少なくとも、父親が戦場で死ぬことはないからだ。戦場で肉親が死ぬことはどうしても避けたいからだ。しかし、戦争に向かった村の若者たちを止められないことが、彼女の大きな悩みだ。それでも、家族全員で食べる豪華な食事は、何よりも家族を大切にする彼女にとって、癒しとなっていたのは間違いないだろう。死んでしまった若者たちのことを考えると不謹慎だが、この時だけは、自分の家族に誇りを持っていた。

 

 しかし、運命は、そんな彼女の想いをあざ笑うかのように、最悪な方向へと進んでいく……。

 

 

 

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 戦争に参加した若者が尊い命を無為に散らすことに違和感を覚え、より一層彼女が深い悲しみを覚えるようになって、七年ほどが経った。

 

 ハイリヒ王国はいまだに戦争を続けており、村から従軍する若者の数は増える一方だった。一度は無事に村に帰れたとしても、次の戦いが始まればすぐに徴収される。こんなことを繰り返していれば、精神的にも来るものがある。特に、親しかった者が、目の前で殺されるのを見てしまったなら、心が現実を受け入れまいと、そのことを忘れようとするだろう。それだけならまだいいが、心を壊してしまうこともある。そうなってしまった者は、公爵の判断で、村に返された。しかし、彼らは自分の意思で動くことはできなくなってしまっているため、一日中、部屋で呆けていることしかしないため、働き手は増えず、食べ物の消費量が増えるだけだった。

 

 村の状況はかなりひどくなっていき、小さな子供まで畑仕事を行うようになった。彼女や、姉妹も時間を見つけては手伝いを行うが、あまり芳しくない。戦火が広がるにつれ、軍に渡す糧食や日々の食事で、食料が底をつきかけていた。

 

 彼女が、「主」の声を聴いたのは、そんなころだった。

 

 その日、彼女は、村の老夫婦の手伝いに来ていた。その老夫婦には二人の息子がいたが、長男は戦地で死に、弟は未だに従軍していたため、力仕事を行うには少々無理があった。二人が四苦八苦しながら農作業をしているのを見た彼女は、居ても立っても居られず、手伝いをしていたのだ。

 

 一人で大丈夫だと言って、農作業をしていた時だった。

 

 頭の中に、声が響いてきたのだ。

 

 知り合いに呼ばれたのかと思って辺りを見回したが、誰の姿も見られなかったので、作業に戻ろうとしたところ、再び声を掛けられる。

 

 よく聞いてみると、その声は自分の頭上から聞こえてきていた。

 

 慌てて頭上を確認すると、まばゆいばかりの光が目に入ってきた。おもわず、目の前に腕をかざす。姿は見えないが、声を掛けてきた人物は、光に包まれているのだろう。

 

 何かしらの魔法が使われているのだろう。姿は見えないが、声だけは聞こえてくる。

 

 何者なのか。少女はそう問いかけた。

 

 光の奥の人物はこう言った。自分はこの世界の本当の管理人だと。

 

 この世界を統べる主神は、聖教教会が崇めているエヒト神ではないのか。彼女はそう訊ねた。聖教教会は、エヒト神が唯一の神だとし、国民や近隣諸国にもそう言っている。ハイリヒ王国は一番にエヒト神を主神とし、崇めている。現在起きている戦争も、ハイリヒ王国、正確には聖教教会が、エヒトの威光を広めるためのものだからだ。

 そう思っての発言だったが、それは正しくないことだと、光の奥の人物は言った。

 

 彼(彼女?)が言うには、もともとこの世界は別の神が管理していたらしい。それが今目の前にいる人物だという。

 

 ではなぜこの世界にはエヒトなる神が信仰されているのか。

 

 それについても管理人は答えた。

 元々、エヒトは他にもいる管理者たちの中では下級で、それほど力も持っていなかった。しかし、彼は野心にあふれていた。多少なら大丈夫だが、彼のそれは異常だった。自分よりも上の階級の管理者たちが持つ世界を手に入れるためには手段を選ばなかった。エヒトが何故そこまでの野心を持っていたのかは分からない。しかし、実際に今はエヒトが管理しているこの世界は、本来は予定されていない路線へと進んでいた。繁栄へと進んでいたはずが一転、滅亡へと変わってしまった。

 故に、誰かがエヒトを止めなければならない。

 

 ならば、元々の管理者であったあなたがやればいいのではないか。彼女はそう訊ねた。

 

 しかし、管理者はそれはできないと言う。確かに自分ならエヒトを止めることはできるだろう。しかし、それでは意味がない。その世界の住民が間違った繁栄を正し、自分たちで道を切り開いていくからこそ、素晴らしい世界になるのだそうだ。だから、管理者は手を出すことはしないらしい。そのかわり、世界をあるべき方向へ導けるであろう存在に声を掛け、頼むのだと言った。

 

 この話を聞いた彼女の頭の中に浮かんだのは、世界を救おうとか、エヒトをどうにかしなければいけないとか、そういうことではなかった。彼女の頭の中を占めたのは困惑だった。なぜその話を自分にするのか。訳が分からなかったのだ。

 当然だ。彼女は何の力も持っていないただの村娘だ。しいて言うなら、村長の娘だということぐらいで、大国や、世界を統べる神のような存在に比べたらあまりにもちっぽけだ。このように世界の命運を左右するような話を彼女にする意味はないはずなのだ。

 

 それが顔に出ていたのか、管理者はその訳を話し始めた。

 

 少女の身には、ある特別な力が宿っている。それは、こことは別の世界で、「聖女」と呼ばれた女性の能力で、少女は、その女性と同じ能力を持っているというのだ。

 

 驚きを隠せない少女に、管理者は話し始めた。

 

 

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 「聖女」と呼ばれた女性は、戦争の時代に生まれた。百年戦争と言われる、自分の国が大国と争っていた時代だ。村娘として生まれ、その村で二十年近く暮らしていたある時、女性はその世界で神とされている、「主」なる人物から神託を受けた。「主」なる神が言うには、女性の国は近いうちに攻め滅ぼされる。しかし、女性が最前線に立って戦うのであれば、勝利するだろうとのことだった。村娘だった女性は、戸惑いながらもその言葉に従い、神の描かれた旗を掲げ、兵士として最前線に立った。当時、自国の主要都市が大国に包囲されていたが、女性は軍を率いてその場に現れ、包囲網を打ち破った。その後も、国王の直属として数々の戦地を駆け巡り、勝利を収めた。すべて、神の神託の通りだった。

 

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 その話に少女は素晴らしさを感じた。「聖女」と呼ばれたその女性は、自分と同じ村娘という境遇から、多くの人々に慕われる存在になった。確かに、自分も村の人に頼られるときはあるが、彼女とは規模が全く違う。期待を背負い、毅然とした立ち振る舞いをする姿が想起できた。

 同時に、逸る気持ちを抑えられなかった。自分とは違い、祖国のために戦う彼女のその後の人生が輝かしくないわけがない。続きを聞きたいと思っていた。

 

 しかし、管理者はこう言った。彼女の活躍は認められることはなかったと。

 

 

 

 

 

 

 

 




 読了ありがとうございます。
 ……ここまで読んでくださった方が居るとは思えませんが……。
 今回は本当にひどいです。本編は進まない。全く関係が無いことを書き連ねる。一話にまとまらないなどなど。本当にすみません。
 後編はなるべく本編に絡ませられるようにします。不定期ですが、なるべく早く書き上げたいと思います。気長にお待ちください。

 ではまた次話でお会いしましょう!

ヒロイン強化アンケート~雫Ver.~ 期限は、勇者一行がベヒモスを倒すまで

  • 直死の魔眼
  • 聖遺物「緋々色金」
  • 鬼呪装備:阿修羅丸
  • 七天七刀

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