反逆の魔女。
それは、トータス史に記された、1人の少女のこと。しかし、今この場で語るのは、聖教協会によって運命を捻じ曲げられた、1人の聖女の物語である。
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この世界の管理人と名乗った謎の人物から自分の前世と呼べるであろう人物の話を聞いた少女は、その日の夜に自身の寝床の中で、今日聞いた話について考えていた。
自身に、別の世界で聖女と呼ばれた女性の力が宿っていること。その力を手にした者は、聖女となる運命を定められていること。そして、聖女と呼ばれた女性の最期。
正直なことを言うと、聖教教会の間違いを正すだけの力を自分が持っていることは嬉しかった。彼女の脳裏に浮かぶのは、王国に命じられるままに公爵が村から徴兵したために戦争に参加し、その中で死んだ若い男性。自分に優しく接してくれた彼らが、皆悲惨な姿で運ばれてきた。中には、首から下が無かったり、両目が潰れているなど、損傷が激しい遺体もあった。そして、変わり果てた息子を見て涙を流す女性。息子を失った悲しみから心が壊れ、ただひたすら虚空を眺める以外の行動をしなくなってしまった夫婦。戦争によって心身に傷を負った村の人たちの顔。それらが次々と浮かんでは消えていく。
それらを一通り思い起こした後、彼女は一つ、決意を固める。すなわち、聖教教会の宣託を信じないという道を。
もう二度と、自分の知り合いが傷つくことの無いような世界にするために。誰もが笑い、戦争の恐怖に怯えなくても済むような世界を作るために。彼女は、狂った神、エヒト神への反逆を決意した。
しかし、エヒトに反旗を翻すということは、同時に、世界中を敵に回すということでもある。なぜなら、エヒトを信仰する聖教教会は、各国に存在し、信仰者の数も生半可ではない。ハイリヒ王国ほど狂信的ではないが、エヒトへの信仰をしている者は多い。
自分一人だけでは、どうにもならない。少女が一人でできることなどたかが知れている。
しかし、それを可能にするのが彼女の身に宿った聖女としてのカリスマ性である。彼女は知る由もないが、彼女の体に宿った聖女としての力は、生前の彼女と同等の能力を持っている。ことカリスマ性においては、この世界に適応したことで飛躍的に上昇している。故に、彼女が一度それを願えば、周りの人間は彼女のオーラに惹かれ、導かれる。
導くと言うと、従う側に強制的な力が働いていると思いがちだが、聖女の能力は全く違う。彼女のカリスマは、世界の理に干渉し、世界において正しい解答を出し、人々にその解答を示すものだ。ある種、啓示と言えるものだ。エヒトのように紛い物でもなく、のちに現れる勇者(笑)のように偽善的でもない。
彼女の決意に答えた聖女としての能力は、瞬く間に村全体に広がり、彼らに正しい道を示した。
彼らは、その道に沿って歩き始めた。ただひたすらに、自分たちの平穏な生活のために。
彼らの行動は広がりを見せ、近隣の村々に広がり、彼女の決意から一か月も立たないうちに、領主である公爵の元まで届いた。
これを見た公爵は原因を特定。既に神子として中心人物になりつつあった少女を招き、話を聞くことになった。
その場には、村民代表として少女とその父親。各村の代表者が出席。対して、公爵側は公爵本人のみ。護衛もいるにはいるが、扉の外で待機している。
彼女たちの村のある地域を管理していた公爵は、幼少期のころから戦争にいい感情を持っていなかった。さらに、領民を思いやることのできる人物だった。話し合いは順調に進んでいく。
三日後、今後は領民をハイリヒ王国の要請があったとしても、駆り出さない。公爵の口からこのことを伝え、従軍しない代わりに、生産物などを少し多めに差し出す方針が決まり、その場は解散。
後日、公爵の口から王国に伝えられ、国王の許可を得ることに成功した。
納める税の量が多少増えたが、戦争の恐怖を感じなくてもよくなり、村に活気が戻ってきた。村民は、彼女の行動をたたえ、感謝を述べた。誰が言ったかは知らないが、「聖女」と彼女が呼ばれるようになるのはすぐだった。
しかし、平和な日々は続かなかった。
彼らの行動を耳にした聖教教会の高位神官たちが批判を始めたのだ。彼らは、「エヒト神の加護を受けて生活している者たちが、主なる神の啓示である戦争に参加しないのはおかしい」と王国に訴えた。当時から王国に強い影響を与えていた聖教教会の言葉を無視することもできず、国王は公爵との約束を破棄。その後、異端者を取り締まると言う名目で、王国から公爵領に軍が送られた。これも、教会の働き掛けによるもので、公爵領の民は反逆罪を企てたとして処刑することになったのだ。
公爵が報を受けたのは軍が領地目前に迫ってからだった。彼は急いで私兵を集め、兵を留めようとしたが、数の差は歴然だった。公爵の軍は壊滅。公爵自身も捕縛され、その場で首を斬られた。
それからの領内は地獄だった。
侵入した王国軍は、各村で民家を焼き払い、住民を捕縛。奴隷として利用できる成人男性や子供は売られ、女は兵士たちの性の捌け口として扱われ、年寄りは利用価値無しとして殺された。
そしてそれは、彼女の住む村にまで及んだ。もともと、ただの農民だった彼らが戦う術を持っているはずもなく、次々と殺されていった。
目の前で殺されていく村人を前に、彼女は何もできず、ただ見ていることしかできなかった。
教会側の指示で、中心だった「聖女」だけは生かして連行してくると言う指示だった。縛られ、地面に転がされた彼女の前で、兵士たちは見せつけるかのように残虐な行為を行った。
老人の首を一人一人はね、流れ出した血だまりの上で女を犯した。当然、彼女と同い年の友人も目の前で何人もの兵士の相手をしたことで自我を失ったし、全身が血と汚液に塗れていた。さらに、彼らは彼女の二人の妹まで犯した。泣き叫ぶ彼女の前で、兵士たちは欲望の限りを尽くし、女が意識を失えば首を跳ねた。男は散々痛めつけて反抗できなくした後、奴隷として連れて行った。
彼女の心は既に折れてしまった。
知っていた。管理者を名乗る人物から話を聞いたとき、自分は「罪」という炎に焼かれながら死ぬものだと思っていた。しかし、家族や友人までもが尊厳を汚された。人一倍責任感が強い彼女にとって、何よりもつらかった。自分のせいで妹は凌辱された。自分がくだらない正義感で手を出したからだ。
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王国の教会に連れてこられた彼女は、毎日拷問を受けていた。正確には受ける寸前だった。最初の一日目こそ、神官たちが並ぶ部屋で裁判にかけられ、死ぬまで牢屋で性奉仕することを言い渡されたからだ。
判決を言い渡されてから、既に一か月が経過した。しかし、未だに彼女は純潔の証を守っていた。
なぜなら、彼女の体の内に宿る「聖女」としての権能が、兵士たちが彼女に触れることを許さなかったからだ。
彼女の中に宿った、「聖女の劫火」。魔女裁判にかけられ、火刑に処された聖女の祈りが力となったもので、宿す人間の肉体をあらゆる障害から守り抜く。
そのため、手足を枷で拘束された彼女に多くの下種な思考を持った男が近づいたが、誰一人として彼女に触れることはできなかった。
彼女の身に宿った守護の炎は、彼女に触れようとする者たちを悉く焼き尽くしたのだ。少女の拒絶の意思に反応し、男たちの身を焦がした。ならば、寝ているときなら大丈夫だと襲い掛かった男も、彼女が起きた瞬間、その身を劫火に包まれて焼死した。
そのため、今となっては誰も彼女に触れることはなくなった。教会の高位神官たちですら、彼女をどうするか決めあぐねていた。
ある時、一人の神官が会議の場でこう言った。
「彼女は、永久封印にしたらどうだろうか」
そこからの話は早かった。封印場所にはオルクス大迷宮が選ばれた。現在の最高到達階層に、そこそこ大きな部屋があるため、そこに封印することになった。
決定から一週間後、少女はその身をオルクス大迷宮の五十階層に封印された。
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少女が封印指定にされてから百年ほど経ったときだろうか。
その間、彼女は十字架に縛り付けられたまま過ごした。当然、食料などないのだが、「聖女の劫火」には、身を守るだけでなく、傷を癒したり、生命力の維持などが効果としてある。少女は知らないことだが、神結晶という石も同じような効果がある。彼女は、身体自体が神結晶と同じなのだ。
拘束されているために、特に何をするでもなく只々ジッとしているだけである。常人であれば精神が崩壊しているだろう。しかし、彼女はそうはならない。未だに自分の信念を捨てていないからだ。自分がやっていたことは無駄だと思っていない。ただその思いだけで生きている。
既に時間の経過や日にちなど分からなくなっている。ただ自分が長いことこの場所にいることしか分からない。自分の力では拘束を外すことはできないし、体力も残っていない。
今日もただ時が過ぎるのを待つだけだと思っていた。だが、そうはならなかった。
突然、目の前が光った。眩しさに目を閉じる。
光はすぐに消えた。長いこと光を見ていなかったせいか、目を開けることができない。
少しづつ目を慣らしていこうとした時だ。声が聞こえた。
目の前に立っていたのは、彼女に道を示した管理者を名乗る人物だった。
百年前に自分に道を示してから、一度も姿を見せなかった人物が目の前に立っている。誰もが自分をこんな目に合わせた人物に文句を言うだろう。しかし、彼女は恨み言ひとつ言わなかった。逆に、外の世界がどうなっているかを、言葉を発するのが久々のために咳き込みながらも問うた。
管理者は一言、すまなかったと謝罪をした。彼(彼女?)は少女が囚われの身となったことを知るや否や、失望し、見限ったのだ。もし彼女を奮い立たせたのが自分だと分かれば、エヒトの手が及ぶと考えたのだ。故に、彼女が囚われの身となっても助けることができなかった。百年ほど経過して、ようやくエヒトの目をごまかすことに成功したため、世界の情勢を見たところ、ハイリヒ王国の神官らによって、別の世界から勇者たちが召喚された。
しばし観察していたところ、集団の中に特異な人物を二人発見。気になり、観察を続けたところ、パーティーメンバーに裏切られて、ここオルクス大迷宮の奈落へと落ちていくのを見た。しかし、彼らには勇者としての力がある。しかも、彼ら二人なら、エヒトを倒すことができるかもしれない。
そのため、少女を少年たちの元へ転送すると言うのだ。かつて世界を救おうとして失敗したが、彼女の中の聖女の力は健在だ。勇者たちと力を合わせればエヒトにも届く刃になりうる。
それを聞いた少女は最初、首を横に振った。あの時、家族を守れなかった自分に、再び戦う資格があるのか。また同じように彼らも消えてしまうのではないか。
しかし、少女の力は彼らにとって必要なものだと、管理者が何度も言うので、渋々了承。それを見た管理者は一つ頷くと、彼女を拘束から解放し、真オルクス大迷宮の最下層に転送すると言った。
彼女はそれを受け入れ、自分を包み込む白い光に身をゆだねた。
南雲ハジメと榊悠聖が奈落の底に落ちてから一週間後のことである。彼らが、最下層の反逆者の住処にて出会うのはもう少し先の話である。
読了ありがとうございます。書いてる内容はぐちゃぐちゃだし、何を言いたいのかさっぱりだと思われます。私自身「ナニコレ」と言いたくなるぐらいひどいです。それでも読んでくださった方、ありがとうございます。
先日より、大学が長期休暇に入ったので、執筆の時間が多く取れるようになりました。三月末までは投稿ペースを速められるよう頑張ります。駄作ですが、これからもよろしくお願いします。
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