この作品は、古代神話をもとに書いていますが、物語の展開の都合上一部の設定が異なる場合があります。はじめにご了承ください。
「だめです…。ツリーは反応しません」
「そんなわけあるか!もう一度やってみろ!」
「はい…。駄目です!何回やっても反応はありません」
「ふざけるな!そんなこと、あってはならないのだ!私の息子だぞ、国王の息子だぞ!」
昔々ある国にある王様がいました。王様はもともと戦士として幾多の戦いに参加しました。この国では、一番強いものが王になることが決められていました。次の王を決める時、真っ先に名前が出たのが王様でした。今までの戦いで多くの人が彼の雄姿を見てきたからです。こうして王様となった彼は戴冠式でこのように話されていました。
「民衆よ。われは矛となりて道を開きこの国を導く。我は盾となりてあらゆる災いからこの国を守る。お前たちは我の後ろからついてくるがいい。我、クロノスの後ろから」
やがて王様はレアーという女性と結婚しました。二人は互いに愛し合い、その愛から三人の赤ちゃんが生まれました。一人目の子供はハーデスと言い、非凡な才を有していましたが、あまり社交的ではなく、周りと壁を作っていました。二人目はポセイドンと言い、彼も非凡な才を有していましたが、非常に攻撃的で、常に誰かに傷をつけていました。二人は全く正反対の性格でした。しかしこの二人には共通点がありました。それは“自分の才に誇りを持っていること”でした。
この世界には「神力」というものがあります。まさしく「神」から与えられた「力」。これを有するか否かで人生が決まります。有する者は集団の長に、クロノスのように国の長になるものもいます。ないものは只々平民です。「神力」を有しているかは生後すぐに判断することができます。木の形に添って掘られた巨大な一枚岩、通称「ツリー」。「ツリー」の根元に「神力」を有しているものが手を触れると、根元が発光し、その光が幹に伝わり、そしてある枝に到着します。枝は一つ一つが、「神力」の性質を表しており、何十種類もあります。光が止まった枝が、つまり「神力」の性質となります。どうして光るのか、ましてや誰が創ったのかはわかりません。
王様、そして二人の子供には「神力」が、それも強大な力を有していました。王様は非常に満足していました。さらに、妻のお腹にもう一人赤ちゃんがいることがわかると、多くの期待を寄せました。しかし、生まれてきた赤ちゃんが「ツリー」を触れても、光は現れませんでした。
王様は絶望しました。それはしかし、期待を裏切られたというよりも、王家としての体裁に対しての不安でした。王家を支えるのは強さです。「神力」がないものは弱さの象徴です。この矛盾はあってはならないことでした。王様は三人目の息子を殺そうとしました。しかし、母親であるレアーは必死に夫を止めました。結果、赤ちゃんは殺されずに済みましたが、その赤ちゃんを王家から追放しました。世話を、住み込みで働くメイドにさせました。実は王様の愛人で、その間にできた三歳の女の子がいました。女の子の名前はマイアと言いました。
三人目の赤ちゃんはそれでもすくすくと育ちました。しかし、彼は学校に行かせてもらえず、「神力」はおろか、字の勉強までさせてもらえませんでした。だから、彼にとっての先生はマイアでした。彼女は学校で学んだことを、彼にやさしく教えてくれました。彼にとってマイアは姉であり、先生でもありました。マイアも彼のことを弟のように可愛がりました。マイアはあるとき、彼にこのようなことを言いました。
「私たちは血はつながってないかもしれない。でも家族なのよ。気持ちの問題。あなたが私を家族だと思い、私があなたを家族だと思っているならそれはもう家族なのよ。私はあなたを助ける。こんな息苦しい生活から出してあげる。だから何かあったら、
私を助けてね、ゼウス」