宇宙戦艦ヤマト2193 ー火星絶対防衛戦線ー   作:Oデュパン

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まさか再編集にこんなに時間がかかるとは、


絶望の宙

 

西暦2193年 7月1日 

太陽系火星沖、

国連宇宙海軍連合宇宙艦隊

金剛型宇宙戦艦「キリシマ」艦上、

 

 

「キサラギ轟沈!!!」

 

「バルチモア被弾、航行不能、」

 

「下部アンテナ損傷、予備レーダー大破、」

 

「第七ブロック、応答せよ、繰り返す、応答せよ...くそっ、隔壁閉鎖。」

 

飛び交う怒号、悲鳴のような報告のどれにも状況を好転させるものはない。

深紅の陽電子ビームが三重の強化ガラスの向こうで煌めくたび、モニター上の友軍艦艇を示すマーカーが一つ、また一つと消えていく。

非常電源の赤い省電力ライトに照らされた艦橋は薄暗く、浮足立つ兵士たちの顔を不気味に浮き上がらせた。

 

「隊列を崩すな、全艦現進路を維持‼!」

 

重い決意を滲ませた声が揺れる艦橋に響く、崩れかかる隊列を叱咤して支える指揮官は威厳ある白髯を蓄えた初老の男だった。

 

国連宇宙海軍第二艦隊司令長官、沖田十三は地球圏でも屈指の名将の一人として知られている、その戦歴はかつて火星と地球の間で起きた地球人同士の内乱である内惑星戦争まで遡り、数十年の間数々の死線を乗り越えてきた歴戦の勇者だ。

その彼をしても、この絶望的な撤退戦の趨勢は如何ともし難い状況だった。

彼の率いる地球艦隊は今、異星文明「ガミラス」の猛攻に晒されてるのだ。

 

「残存友軍艦艇七隻、艦隊損耗率55%。」

 

索敵手の報告の次の瞬間、ひときわ大きな爆光が閃き、衝撃波がキリシマの艦体を揺さぶった。

計器に縋って衝撃をやり過ごした沖田はグッと艦外を睨む。

ーーあと6隻かーー

ここまで追い詰められた状況では既に艦隊司令官にできることは何もない、各艦の奮戦と幸運に頼るのみだ、苦境の中、沖田は為すすべもない己の無力に歯噛みした。

全速で航行する地球軍艦艇の後方からインパラを襲うハイエナの群れのように複数の影が迫る。

濃い緑色に塗装された、奇妙に有機的な曲線を持つエイのような巨艦。異星文明「ガミラス」の戦艦から赤い陽電子ビームが立て続けに放たれた。

そのうち一発がキリシマを直撃し、激しい振動が全長205mの艦体を揺さぶる。

 

「損害報告!! どこに喰らった?」

 

艦長席に座るキリシマ艦長、山南修が鳴り響く警報に負けじと声を張り上げた。

 

「艦尾フィン及び左舷排熱板大破、戦闘行動に支障はありません、」

 

「ダメージコントロールだ、修理班を艦尾に向かわせろ。」

 

指示を終えた山南が重苦しい表情で振り向く。

 

「長官、短時間にあまりに多くの損害が累積しています、このままでは本艦も長くは持ちません。」

 

「山南君、耐える他にないのだ、敵を振り切るまで足を止めるな。」

 

索敵手の絶叫が会話に割り込んだ。

 

「サザナミより入電!!!、ーーワレ操舵不能、コレヨリ遅滞行動ニウツル、艦隊ノ健闘をイノルーー。」

 

艦隊最後尾で被弾した駆逐艦サザナミが破損した推進部から黒煙を曳きつつ、生き残った僅かなバーニアを使って転舵する。

生還を放棄したサザナミは艦を横にたて、残存する全砲門を開く、高圧増幅光線砲の緑の閃光に排煙を牽くミサイル、空間魚雷がガミラス艦隊先頭の巡洋艦に集中した。

立て続けに爆発が起こり、黒煙が巡洋艦を飲み込むように広がる。

同時に他のガミラス艦から放たれた一斉射撃がサザナミの艦体に突き刺さった。

装甲を薄紙のように引き裂いた陽電子ビームは艦体をあっさり貫通して燃料、弾薬に引火。瞬時に巻き起こった誘爆がサザナミを内側から粉微塵に吹き飛ばした。

その後方、サザナミが作り出した爆煙を切り裂いてガミラス巡洋艦が現れる。

撃沈と引き換えの一撃はしかし、敵艦にさしたる損害を与えられなかったか?

 

「敵艦、速力減少、艦橋に被弾した模様。」

 

強力な装甲を持つガミラスとはいえ、上部構造物には機能上装甲が施されていない、運良く艦の中枢である艦橋に被弾したため、戦闘不能になったのだろう。

だがまだ危機は過ぎ去った訳ではない、巡洋艦を救助する為に二隻の駆逐艦が隊列を離れたが、五隻のガミラス艦が反撃をものともせずに追ってくる。

宇宙空間を裂いて飛来したビームが巡洋艦アストリアの側面を広範囲に薙いだ、赤熱した被弾面が膨張し、全長152mの巨艦を瞬時に呑み込んだ。

至近距離で起きたその爆発を避けて転舵した駆逐艦ハタカゼは敵駆逐艦の放った空間魚雷の射線に自ら飛び込む形となった。

当たりどころによっては一撃で戦艦をも屠る空間魚雷が三発まとめて着弾し、ハタカゼは瞬時に分子レベルにまで還元された。

味方艦艇の数に反比例して敵の砲撃の密度は上昇していく。

至近弾がキリシマをかすめ、さしもの沖田も全滅を覚悟した。

と、キリシマの左右に残存していた駆逐艦シラサギとワカツキが奇妙な行動を取った。

両艦は左右に進路を取り、敵の接近する後方へと転舵したのだ。

ーーバカなーー

 

「両艦に通信を繋げ!!」

 

滅多にない沖田の怒声に「はっ、はい。」と答えた通信員が慌ててニ艦に通信回線を開く、ジャミングの影響で砂嵐の混じったモノクロの画面が2つ、モニターに浮かんだ。

 

「司令部からの命は進路の維持である、直ちに現進路に戻れ、」

 

普段は穏やかな沖田の高圧的な命令を聞いてなお、二人の艦長の顔に浮かぶのは静かな微笑だった。

 

「沖田提督、このままでは全滅は免れません。」

 

まだ若いシラサギ艦長の声はレストランで夕食のフルコースを注文するかのように平静だった。

 

「我々が盾になります、少しは時間を稼げるでしょう」

 

激しい戦闘音を背景に、老境に差し掛かった退役目前であろうワカツキの艦長が笑う。

長年の経験を伺わせる冷静な声音にはわずかの乱れもない。

「••••••」

彼らの声が既に覚悟を決めたものだと気づき、沖田は胸を詰まらせた。

艦橋窓が激しく明滅し、二隻が絶死の戦場に突入したことを告げる。

 

「誰かが生き残って、この戦いを後に繋げねばなりません、あなた以外にその任を果たせる人はいない、どうか、生きて...我らの•••」

 

衝撃音と共に画面にノイズが走り、ワカツキのマーカーが消失する。

シラサギの艦橋も煙に覆われ、艦体で爆発が連鎖していく。

 

「最後に、あなたの下で戦えて光栄でした、司令、武運を祈ります。」

 

炎に包まれたシラサギがガミラス艦に激突し、ひときわ大きな爆炎が束の間宇宙空間を照らし出した。

 

「••••••」

 

二隻の捨て身の足止めによって、ガミラス艦隊は駆逐艦一隻が轟沈、その他の艦も隊列を乱している、この好機を逃すわけには行かない。

 

「両舷全速、最大戦速で現宙域を離脱。」

 

山南の号令と共にキリシマの主機が唸りを上げる。

遠ざかる戦場に沖田は無言で敬礼を捧げた、

今彼にできる、唯一の弔いを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2202は続編が決まりましたが、、、できればコピペ艦隊は勘弁してもらいたい。

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