これは少年が一国の英雄になるまでの話しである。
それは彼が5歳の時のことだ。
「レイ、魔法はな?こうやって体の中のマナを放出するようにして使うんだ。こればかりは感だからやってみないとわからん。とりあえずやってみな?」
5歳になったばかりのレイチェル・シュバルツカッツェは父親のバアルに魔法の使い方を教えてもらっていた。
「こうかな?」
レイチェルが手に力を入れたその時。バァン!という大きな音と手をハンマーに叩かれたかのような衝撃が襲った。
「痛った!」
レイチェルは大きな声をあげてもがき苦しんだ。
「アッハッハッハッハッ!」
バアルは大きな声を出して笑った。レイチェルは涙目でバアルを睨みつけた。
「力み過ぎなんだよw力を抜けw」
バアルは笑いながら言った。レイチェルはイラつきながらも指先にマナを溜めていった。
「やればできるじゃないか。それをあの木に向けて放ってみな。」
言われた通り木に狙いを定めて放った。すると、そのマナは邪悪な煙を漂わせ、周囲の木をへし折った。
「やった!父さん!どうかな!?」
バアルは開いた口が塞がらないようだった。
「父さん?」
不安に思ったレイチェルが声をかけた
「あっ。スマないあまりの凄さに吃驚してしまった。お前は凄い魔法騎士になれる。父さん、誇りに思うよ。」
バアルは自慢げに言った。
「本当!?」
「ああ、魔導書なしでこの威力はまずありえないことなんだ。だからきっと魔導書を持ったらもっと凄い魔法が使えるようになる。」
バアルにそう言われるとレイチェルはとても喜んだ。
「やった〜!凄い魔法を使えるようになって賢王になってみせるよ!」
「そうか、けど父さんと約束してくれ」
バアルは真剣な表情でそう言った。
「なに?」
レイチェルも表情を引き締めた
「この先何があってもこの力はお前が正しいと思うことにだけ使ってくれ。分かったか?」
「うん!」
レイチェルが大きな声で返事をするとバアルは安堵の表情を浮かべた。
「立派な賢王になれよ。」
バアルがそういうと
「うん!」
と子供らしいあどけなさがありつつも頼もしさを兼ね備えたそんな笑顔で返事した。
「そういえば父さん。父さんの魔法は水みたいな見た目だったけど僕のはよく分からない感じだったけど、どういうこと?」
バアルに尋ねた。
「それは魔法の属性だな。」
「属性?」
「そう。属性。属性は1人1人持っていて基本は火、水、風、雷、土この5属性の人が多い。他にも光、闇だとか硝子なんて属性があるんだ。数は少ないけどな。レイは闇かもしれないな。あとランクがある。F-からSSS+まであると言われている。」
「闇…。ランク…。」
レイチェルは心配そうに言った。そんな息子を見て
「どうしたんだ?」
「闇なんて怖いもので賢王になれるのかな?」
そう答えられるとバアルは「なんだそんなことか。賢王になるには属性なんて関係ない。必要なのは民からの信用と圧倒的な強さだけだ。要するに強ければいい。そのためには沢山訓練したり悪いことをしない。そうすればいつかはなれるかもな。」
父にそう言われ絶対に悪事は働かないと強くこころに決めた。レイチェルが15歳になり魔導書授与式に呼ばれた時のこと。レイチェルが式場に向かっていると隣の路地裏から。
「きゃあ!」
と女の子の悲鳴が聞こえた。路地裏を見ると同い年くらいの肩にかかるぐらいの茶髪で宝石のような緑色をした目の女の子が同い年くらいの裕福そうな格好をした男にマナをぶつけられていた。
(魔法をこんな野蛮な使い方をする貴族が居るなんて!)レイチェルは怒って止めに入った。
「君たちのような人の上に立ち守るために生まれてきた人間が何故女の子を虐めているんだ!」
すると貴族は。
「なんだお前俺が誰か分かって言ってんのか?」
そんな挑発にレイチェルは。
「君たちのような低俗な貴族は知らないね。」
と挑発し返した。
「なっ!ヴォード家の息子の俺を知らないというのか?舐めてんのか!?ア゙ア゙!?」
貴族は挑発に腹を立てレイチェルと女の子を睥睨したがレイチェルは気にした様子もなく
「知る必要もないほど大したことない家なんだろ?」
そう煽ると貴族はさらに怒り
「死にたいなら殺してやる!」
そう言い魔法を放った。
「死んだか!?」
貴族は興奮気味に砂煙を見つめていた。すると、
「ど、どういうことだ!今の攻撃で無傷だと!?」
レイチェルは右手を前にだし貴族の魔法を素手で受け止めたのだ。するとレイチェルは
「なんだ、こんなものか。」
と手で地面に弧を描くように振った。すると一瞬にして貴族達の首元まで地面から氷が生えていた。
「もう彼女には手を出さないと誓え。」
そういうと貴族達はビビり
「すいませんでした!もう2度とこんなことはしないので命だけは許してください!」
と命乞いをした。レイチェルはため息をつき別に
「殺す気はないんだけどね。」
と魔法を解いた。すると貴族達は逃げるように走って行った。
「全く謝るくらいなら最初からやめとけばいいのに…。君は大丈夫かな?」
振り返ると女の子は酷く怯えていた。
(あっ、やりすぎちゃったかな?女の子まで怖がらせちゃった。力加減って難しいな。)
「大丈夫だよ。君が無事なら俺もいいから。大丈夫そうだし俺は行くね。じゃあ。」
そういい式場に向かおうとすると。
「あの!」
女の子が叫んだ。
「一緒に式場まで行きませんか?」
女の子は少し怯えながら言った。
「怖いならいいんだよ?」
そういうと女の子は首を激しく振り
「大丈夫です!最初は怖かったけど今はいい人なんだろうって分かりましたから…。だから大丈夫です!」
そう言われ
「君が大丈夫ならいいけど…。」
「はい!あと魔導書渡されるの凄い不安なので一緒に居てくれると嬉しいです。」
「なら一緒に行こうか。」
そう答えると女の子は
「私はメイベル・フォースといいます。メイとでも呼んでください。」
「俺?俺はレイチェル・シュバルツカッツェ。レイとでも呼んでくれ。」
そういったありふれた会話をしていた。式場に着き、式が始まった。
「ゲイル・アダムス前に。」
最初の人が前に呼ばれた。
「君は火属性のDランク」
そうやって何人もが呼ばれ魔導書を渡されていった。すると
「そういういえばレイさんの氷魔法は凄いですね!魔導書無しであんなことできる人初めて見ました!」
メイベルは興奮気味だった。
「そうか、そう言って貰えて嬉しいよ。けど俺のは氷魔法なんかじゃないよ。」
そう答えると。
「えっ?でもいまさっき…。」
「俺は炎も使える。何属性なのか分からないんだ。」
「そんなこともあるんですね。」
そんな会話をしていると
「メイベル・フォース前に。」
「あっ。はい!呼ばれたから行くね。」
メイベルは前に行き。
「君は聖属性のSS+だ。」
そう神父が言うと周囲はざわめいた。
「SS+だなんてここから出るのは80年ぶりだぞ。あんな平民が!くそっ!」
嫉妬を抱く者もいれば
「凄いな〜。あんな娘と一緒に戦いたいな〜。」
と羨望を抱く者もいた。メイベルは席に戻ると
「やった!SS+だ!凄いでしょ〜。」
と自慢げに言った。
「ああ、凄いなしかも光属性の上位互換の聖属性だなんて凄いな!」
レイチェルも一緒になって喜んだ。すると
「レイチェル・シュバルツカッツェ前に。」
「あっ、はい!次は俺の番だね。」
前に行くと神父が目を見開き驚きを隠せないでいた。(ん?)
レイチェルが疑問に思っていると神父が重い口を開き
「君は冥土属性のSSS+だ。」
「「「はぁぁぁぁ!?」」」
周囲は驚きのあまり怒り出す者もいた。席に着いても嫉妬の眼差しの雨は止むことはなかった。席に着くなりメイベルに
「私だって相当凄いのに!なんで私よりも凄いの出すの!」
メイベルは頬を膨らませながら怒っていた。
「ごめん?」
レイチェルは何と言っていいのか分からずとりあえず謝っておいた。
「でも冥土属性なんて初めて聞いたね。どんな属性なんだろうね。氷や炎以外に他にはどんな魔法が使えるの?」
メイベルは疑問に思い聞いてみた。
「う〜ん。あとは闇ぐらいかな?魔導書使って見ないと沢山魔法使えないしわかんないな。」
レイチェルは考え、答えた。
「それもそうだね。聖と冥土…。結構真逆な感じだね。」
メイベルは苦笑しながら言った。
「確かにそうだね。」
そんな話をしているうちに式も終わろうとしていた。
「これにて魔導書授与式を閉式とする。」
神父がそういうと全員が一斉に立ち上がり帰っていった。レイチェルとメイベルが帰ろうとすると
「おい!」
振り返るとそこには朝出会ったあの貴族が立っていた。
「下民ごときが何故俺よりランクが高いんだ!許さねーぞ!」
貴族が魔導書を取り出した。レイチェルとメイベルも魔導書を取り出したその時その貴族の背中が爆発しこちらへ飛んできた。さっきまで貴族が立っていた場所には喪服姿の男が立っていた。レイチェルとメイベルは驚きのあまり何が起きているのか理解できなかった。
「何が起きてるのか分からねーって顔してんな。特別に教えてやるよ。俺は盗賊。そのお前らのSSS+とSS+の魔導書を奪いにきたんだよ。」
レイチェルとメイベルはその言葉の意味を理解するとやっと自分達に危機が迫っていることを実感した。
(どうする!今の魔法から見るに炎属性!しかも相当な手練。勝ち目なんてあるのか!考えろ!この場を打破できる作戦を!)
レイチェルは考えた。
(ない!そんな作戦ない!せめてメイベルだけでも逃がすしかない。俺が魔法を唱えて時間稼ぎをしている間に逃げて貰うそれ以外ない!)
レイチェルは絶望的な局面に立たされ自分ができることは何かようやく思いつきすぐさま行動に移した。
「メイベル逃げろ!俺が時間を稼ぐ!その間に魔法騎士を呼んで来てくれ!」メイベルは走り出した。が、
「舐めんなよ餓鬼。炎魔法【ファイアーナックル】」
男の魔法がレイチェルの体を宙に浮かした。
(今何が起きた!何も見えなかったぞ!ヤバい!時間稼ぎなんてできない!どうする!)
レイチェルは意外と冷静だった。
「待ってくれよお嬢ちゃん。炎魔法【フレアプリズン】」
男の魔法で身動きが取れなくなったメイベルは泣くこと以外できなかった。
「さて、魔導書を頂くとするか。」
男がそう言うと。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。」
(男を殺してでもメイベルを守らないと。)
レイチェルは怒っていた。
「お前をぶち殺してやるよ。」
レイチェルがそう言った瞬間レイチェルの魔導書は開き、姿が怒り狂った悪魔のように変化した。
「なんだその姿!マナの量は!」
男は驚き震えていた。
「どうだっていいだろ?これからお前は死ぬんだ知ったところで意味ねーよ。冥土魔法【終焉の業火】」
「くそ!炎魔法【炎の盾】!」
レイチェルの魔法と男の魔法がぶつかり合い、男の魔法なんてなかったかのように男の姿をレイチェルの魔法が飲み込んだ。男が立っていたその場所には黒焦げになり、それが誰なのか分からない物体に変化していた。レイチェルは元の姿に戻った。
「今の姿はなんなの?」
メイベルは恐る恐る聞いてみた。
「分からない。気づいたらあんな姿になっていた。今も戻ろうとして戻った訳じゃない。」
レイチェル自身も自分のことを怖く思った。
「男は生きてるのかな?」
メイベルがそう言い黒い物体に近寄った。すると黒い物体は
「うぅぅ…。」
と声を漏らした。
「一応生きてるみたいだね。」
メイベルは少し安心したようだった。
「ああ、人殺しをしてしまうところだった。同属性の魔法じゃなかったら殺してしまっていたかもしれないな。」
レイチェルも安心していた。
「とりあえずこいつを魔法騎士に突き出してやる!」
メイベルは頬を膨らませながら男を引きずり始めた。
「おいおい。俺に持たせた方が早いだろ。」
レイチェルが男を背負った。
「それもそうだね。…レイチェルはこれからどうするの?」
メイベルが尋ねた。
「俺は魔法騎士になるよ。そのために王都に向かうよ。」
レイチェルがそう答えるとメイベルは目を輝かせながら
「魔法騎士になるの!私もなりたいんだ!そうだ一緒に行こうよ!それで一緒に魔法騎士になろ!」
「…そうだな。一緒に行くか。行く途中で魔法の練習もして行こう。」
レイチェルは少し考えそう言った。
「うん!」
メイベルは元気良く返事した。
(これからは楽しいことになりそうだな。)
レイチェルは歩きながらそんなことを考えていた。
読んでくださり誠にありがとうございました。なんかの作品に似ているな〜とおもう方もいらっしゃると思いますが私自身も沢山の漫画を読んでいるので似てしまった箇所が沢山あると思いますが多めに見てください。
出来れば感想を頂けると嬉しいです。