なんとか週一更新に間に合ったと私信じてる――!
あ、お気に入り登録&感想&高評価ありがとうございます
お礼言っといてなんだけども早い…速くない?
イタリアの南部端、正しくはアドリア海岸沿いなのだが、沿岸部は基本的に温暖なので大多数がイメージする通りのイタリアの街並みで間違いが無い。緯度は新潟と同じでナポリから山挟んで完全に反対側なので、ともすれば日本海のようなイメージを持たれがちだが。言わなきゃ良かったかそうか。
さておき、国的にはバチカンが特別扱いされてるとはいってもあなたも私もローマの国民、外れたところの分流的とはいえ片田舎だとしても教会を鎮座増しますが国家の通例でもある。日本人がそこいらに神社造ってるのと感覚的には変わらない。そう考えるとむしろ、地図を重ねりゃ本州だけでもポルトガルからドイツ端くらいまで離れてるのに同じ感覚と言語で通そうとする日本人の団結力が不気味にも見えてくるが。言わなきゃ良いかそうだったか。
ともあれ、件の港町の教会が以前のバイト先だ。
そもそも俺の神器である【
まあ、正式に性能見越されてたらもっとばかすか銃打ち合う場所を優先されていただろうから、教会の人たちの見る目の無さには感謝もしてます。
最悪ロアナプラの暴力教会に赴任させられていた可能性もあったし。
そんなところで知り合ったのがこの小娘である。
でもこの子、話を聴くだに北部出身っぽい。
今思えば、相互作用を見越してのチーム分けだった可能性が微粒子レベルで存在していた可能性も無くは無い。
「アレですか、ソラさんの神器がクレオパトラの飾ってるようなネックレスだから敢えて女装してるんですか、おっぱい良く似合ってますね、ちくしょう」
「いいかげん揉むの辞めない?」
ちょっと見ない間になんかダークサイドに堕ちてるし。
というかこの子がおっぱいとか口にするのは酷い違和感が。
「というか、なんで此処で会えるのかがよくわからないんですけど。辞めた時もいきなりでしたよね?」
数分後、予備のパッドを自身のブラに装填して揉みほぐす巨乳アーシアちゃんの姿が其処に――!
そんなに気に入ったのか……。
呆れつつも、質問には答える俺。優しさの化身である。
「俺がこの町に住んでるのは、まあぶっちゃけ国からの目が行き届いてないからだな。悪魔の管理とやらも杜撰で制限ガバガバなのですっごく生き易い」
「わぁ、菩薩のような微笑み」
何せ
いくら掻っ捌いても罪に問われない奴らが山のようにいらっしゃるので、趣味&ライフワークの研磨に
はぁーッ、つっらいわーッ、やることが多すぎて時間がたりなくてつっらいわーッ。
俺のこれ見よがしな溜め息交じりの回顧はさておいて。
所詮外様である俺が自由に辞められた判断を申請できたこととは違い、アーシアの場合はそうトントンで現場を離れられるわけはない。
彼女の神器である【
まかり間違って属性反転なんかの畑違いを覚えたりしなければ、順当に育てば人類史に残るレベルの使い手として成長すること間違いなしな期待の星だったはずだ。
それが何故に、こんな極東の辺鄙な町へ?
「えー……とですね、これにはよんどころのない事情がありまして」
視線で疑問を促すが返答はしどろもどろと、どうにも掴みどころがない。
んー? と顔を覗いてみると、目線を泳がせていた彼女は、
「~~~っ、そ、ソラさんを探していたんですよっ、悪いですかっ!?」
堰を切ったように叫び出していた。
逆切れである。
しかし旨い具合に情緒もまともに成長しているようだ。
ボッチだった彼女は同僚との距離感を測りかねて、イイ子でいようとする傾向があったからなぁ。
などと親のような心情でアーシアの成長具合をほっこりと噛みしめてる合間も、彼女は言葉を続けていた。
「っていうかいきなり辞めるってなんですか!? 例の悪魔の男の子が私と関りを持とうと接触してきたことを先手で迎撃したことは、確かにびっくりしましたけど! でも居なくなるにしたって何か言い残していくべきじゃなかったんですか!? お蔭で世界中飛び回ってもう3年なんですけど!?」
「3ねんかぁ、もうそんなに経ったんだなぁ」
「呑気ですかッ!」
明らかに周囲にも戦闘技術者が見当たらない片田舎で何故か瀕死になった悪魔という見え見えな罠を、まるで鴨がネギを背負ったように現れた金髪のアレを初手必殺と当時の身体能力でオラオララッシュ喰らわせた頃をほんのりと想起する。
身体の具合も当時とは見違えるレベルなので、今ならば無駄に頑丈だったお蔭で殺し切れなかった彼奴と再びまみえれば確殺もできる。
当時は戦闘技術なんて神器頼りでしかなかったから、純粋な
「戸籍と本名を調べ直して、祖国の方にも伺ったんですよ? なのにいないし……」
「つーか、俺そもそもポルトガル生まれじゃないからね? 血筋はチベットらしいわ」
「じゃあなんでポルトガル語で『
そんなん知りません親父に云え。もう半世紀前に
ちなみに母は北欧系。この白髪頭は母方の経緯らしいのだが、親父も金だか茶だかの色でもあったので混じっている節がある。え? 普通はそうはならない? いやそんなん詳しくないし。実際濁った白って
まあ俺の話はもう良いとして、問題はこうしてやってきたアーシアの方である。
「ところで、世界中渡るにしても伝手が無いでしょうに。どうやったん?」
「あ、そのへんは赴任先を数週単位で取り次いでもらえるように、と。そもそも私の神器を本格的に役立てようとするなら、一か所に籠るのではなくこうして大々的に渡り歩くのが普通でしたし」
その辺りはソラさんの教えてくれた通りでしたよね、と掻い摘まれたが、それって自分で売り込み交渉したってことかい。
ほんとに成長したなぁ、と再び育ち具合を噛みしめるのであった。
■
アーシアが三年懸けても彼を探し続けた、その理由には当然ながら根底があった。
『他者を癒す奇蹟の(と一般には思われている)神器』を発現させた彼女は、早くに教会の下へと軟禁され箱入り娘の如くに大切にされてきた。
しかしその反面、その権能をフルに活用するとなれば出会う者たちは傷病人などの痛ましい壊れモノばかりで、仮にも癒されるという奇蹟に晒された彼らがアーシアへと向ける感情はどうしたって崇拝へと昇華される。死の淵を覗いた反動であろう。命を救ってくれた少女が可憐ともなれば、猫も杓子もアーシアを崇める思考へとシフトするのも仕方のない話である。
初めの内はそういうものも仕方のないことだと思っていたが、アーシアは神器を除けばそこいらにいる年頃の少女だ。他者を癒すことに疲労を覚えることも厭わない点を認識してしまうと、感性が善性へ傾いているだけには留まらないレベルの善人だが、それでも普通の少女であることには変わりはない。
むしろ、アーシア自身が自らを『そう』という立ち位置だと誤認していた為に、他人からの評価との差異に生じるジレンマに、彼女はずっと孤独になっていると、他人のぬくもりに餓えて往く日々を過ごしていた。
其処に、結果は違えども同じように過程を積む神器使いとして、当時の烏丸、ソーリア=ダ=エスクリダーオスが『同僚』として現れた。現れて、しまったのだ。
烏丸が職を追われたのは、先にも述べた通り悪魔の少年を撃退した『過剰防衛』に端を発する。
妖しいことこの上ない遭遇だったので、後になって調べれば教会内部の心無い信者が手配した背信行為の結末であったことも判明したのだが、そもそも、人間は自ら悪事を働こうという意図を組むことはない。
その理由は性善説などではなく、単純にまともな社会で生活していれば、小狡い誤魔化しなどには程度は在れど、殺人や裏切りなどの誰かを害する行為に取り掛かることは思考の停滞に他ならない。そういう切羽詰まった状況にはよっぽどのことが無い限りはそうそう陥らないモノであり、大概踏み切る前にブレーキを踏む。それが普通の人間であり、真っ当な生き方に傾倒している証左であるのだ。
其処を、烏丸は意図も容易く踏み切った。
オラァ、と見るからな怪我人を拳で凹ませて逝くことは明らかな凶行にしか映らず、クレイジーなダイヤモンドですら真っ青な容赦の無さに流石の教会信者たちでも悪魔相手だとしてもモウヤメタゲテヨォ!と押し留めたほどだ。
そんな平然と行動へのアクセルを振り切れる少年が傍らに居るのだ、アーシアへの悪影響を慮り(周囲が)苦悩するのも到仕方がない。もう遅かった気もするが。
そうして突然に去っていった彼へ、アーシアが抱いていたのは最初こそ共感であったのかもしれない。
しかし、男女であるという『違い』。
神器の齎すという結末の『違い』。
何より思考の『違い』に覚えたのは、共感などという拙い感情などではない、とアーシアは感情を挿げ替えてしまった。
自分をまともに、隣で憧憬も無しに『見てくれた』という事実に、何かに縋らざるを得なくなっていた彼女は淡い恋慕を其処に見出し、募る恋慕は愛情へと転化した。
初見で再会したそのとき、明らかに男性であった頃の面影も伺えない女装を見破った。その理屈こそが愛なのだと、アーシアは殊更強固に自覚した。
何より、虹彩が同じであったし、指紋の形も変わっていなかった。
何気に高度なスキャニング能力を発現しているような気がするが、愛が為せる業なのだから納得である。納得しろよ。
「ところで、わたしたち今どこへ向かってるんですか?」
「え? 教会だろ?」
ん? と、お互いに小首を捻る。
「……私がお世話になる、って言いましたっけ……?」
「いや、さっきの会話の流れで連想できた。アーシアが旅行する目的はさておいて、建前としての仕事の都合で此処に赴任してきたって言うのなら目的地は違えようが無いだろ」
「建前。いえ、確かに建前ですけども」
その言い方に僅かながら不安が募る。
自分は彼への思慕と愛で此処まで辿り着いたのだが、その辺りきちんと理解してもらえているのだろうかと。
世の夫婦や恋人のように人目を憚らずに同衾する気は、羞恥の方が勝るがために余り気も乗らないが、しかし。
しかし、吐露とした感情の返事くらいは、きちんと貰えないものかと願うのが乙女心だ。
17ともなれば、如何にコミュニケーションレスだとしてもある程度は育つのである。身体だけではなく、心も。
まあそれはさておき。
「そもそも、場所を知ってるんですか?」
「この町の教会はひとつだけで、そもそもが何やら訳ありのご様子でね。心配だから俺もついていこうかと」
元々、烏丸はアーシアの護衛として居たわけ『ではない』。
ふたりが
しかし、其処に感情を理由に据えての言葉が出てしまうと、別である。
思わず頬が緩むことを自覚してしまいそうになるアーシアに、ホラ見えたぞ、と目的地に到着したことを指し示す烏丸。
もう少し時間をかけてくれても良かったのに、と気持ちを入れ直して、アーシアは教会の扉を開くのであった。
「すいませーん、本日から此処に配属となるアーシア=アルジェント、です、けど……………………」
――開けた聖堂の真正面、ステンドグラスから夕陽の指し込む礼拝堂の賛歌台の上に、目隠しと猿轡を噛まされた金髪のゴスロリ少女が後手菱縄の亀甲縛りで座せられていた。
「――ッ!?」
思わず、グルンと背後の女装男子に視線を向けたアーシアは悪くない。
それをグルンと顔を背けた烏丸も、多分悪くないのであろう。多分。
行間の開け方にやや不具合を感じるので読み易いかどうかでもご意見欲しいです(本編から目を逸らしつつ)