さておいて。
細かく言ってしまうとこの場には日本人すら不在なので
何をされたのか、むしろナニをされてしまったのかとデデドン!な推論と妄想が蔓延る思考もひょっこり貌を覗かせる。邪魔だ消えてろ、お前の出番は全年齢版にはネェ!(R-15含む)
それよりなにより、むしろこの場に『紹介』してくれた誰かさんが事態の原因のひとつなのでは無いのかな、などとうっすら『正解』とも取れそうな連想が生まれつつあるのだが、その辺りはきっと三年越しの信頼に依るモノであろう。イイハナシダナー。
「それで、いったいどうしたっていうんですか?」
「うぅ、あ、アリガトウゴザイマス……」
息も絶え絶えにハイライトの消えた虚ろな目で、少女はアーシアにお礼を告げた。何処か片言風味で。
明らかに心の根幹的な何かがゴッキリと圧し折れているのが見て取れる。
猿轡を解いた少女はミッテルトと名乗った。
堕天使らしい彼女は元よりこの教会を根城としており、教会本部に根回しした策によって派遣されてくる聖女から神器を抜き取って奪おうという計画を企てていたレイナーレという堕天使の部下だった、と自白した。
それを聞いてアーシアは思う。また教会内部で策略かぁ、懲りないなぁ。もう慣れているご様子だった。
それはともかく、件の計画をどちゃくそ赤裸々に当のご本人に語ってしまうのは如何なモノなのか。
それに対してミッテルトは答える。
いやもうレイナーレは気づいたら死んでるし、帰って来ない上司の状況が把握できなかった時節に変な色黒白髪に襲撃喰らうし、計画どころか集まっていた部下も討伐されるしでのっぴきならなくなってどうしようもなかった。今は帰って毛布に包まって眠りたい。と。
完全に心が折れているようで、お嬢様然とした衣装と容姿とは裏腹にスラム育ちのようだった言葉遣いを意訳して、アーシアは件の犯人と思しき色黒白髪(現・女装男子)に目を向けた。
いっしょに話を聴いていた件の見た目エキゾチック系褐色美人はというと、優し気に同情するかの如く頷いていたのだが、何処からか取り出した毛布をミッテルトに優しく被せて、言葉を発した。
「うんうん、大変だったね――ところで、褐色白髪というのはこんな顔をしていたかな?」
一瞬にして変装を解き、元の姿へと変わる褐色白髪。
茫然と見上げたミッテルトは、凍り付いた顔で――決壊した。ジョバッ、と。
■
気になったのは、神器に目覚めても居なかった兵藤のパイセンを、堕天使はどうやって特定したのかな、という点である。
神器というのは特有の波動を有するモノであり、それぞれがそれぞれ別種の逸話や伝説やフォークロアを基としているために共通の特徴というモノは備えていない。
それぞれの銘から聖なるエネルギーだとか、魔に属するのだとか、まあ色々とカテゴリ分けしたがる研究者はいるのだが、実際の効果は根本的に異なっていることはアーシアという前例を見ればわかるはずだ。
そもそも先立って悪魔や天使の身体的特徴を語った通り、どのエネルギーも大元は同じモノで、種毎のフィルタを通すことでしか類別出来ない程度の差異だから、ほんとに区分けするだけ無駄の極み。
例えばこの先『聖魔の混合』だとかいう神器が現れたとしても、『本人がそういう性質を備えている』程度の問題なのでそう珍しい話でもないのである。二つ備えるとか、そういうのも出て来るかも知れんし。
序でに言うと俺の神器も、過程も性能も齎される結果も大量虐殺を敢行できる禄でもない仕様なのに、研究者の視点で見ると聖なる属性へと分けられたりもする。それでいいのか本当に。
話を戻すと、そうして所持者特定の難しい代物を、堕天使がどうやって特定していたのだろうか。そんな疑問が脳裡を過ったわけである。
しかもその脚でこっちの神器に目覚めている上で隠蔽しているはずの俺にまで辿り着いたのだから、その探査術は目を見張るモノがある。まあ、辿り着いた挙句死んでるから、割とどうしようもない技術力にも思えてくるが。
そんなわけで、町中の堕天使を潰して回って、最後に逝き尽いたのがこの教会である。
明らかな廃墟であったので、久しぶりに神器でもお披露目しようかなぁ、と現場猫の如くに
そんな彼らの残骸は、今でもまだ
あとこの堕天使少女は次々死んでいく神父らの中で右往左往してたから掴まえて三日ほど放置プレイしていただけです。神父サーの姫かな、とかしか思ってないよ、マジで。
俺の神器、人間にいちばん効くから、異種族には効き辛いんだよね。怪我の効能。
「で、今回のことを遣えば、堕天使に借りを作れると思うんだよね」
「言うことはそれだけですか」
顛末を聴き終えたアーシアの前で、正座を強いられている色黒白髪が居た。ていうか俺だった。
おこなの? なんで?
「ちゃんと言っとくけど、そこの堕天使少女はキチンと放置してただけだからね。如何わしいことはしていない」
「キチンと放置とはいったい……」
聖堂で聖水プレイに及んでしまったのは不可抗力として、なんとか片付け終えたミッテルト少女はぐったりとハイライトの消えた眼差しのまま壁に肩を預けて傾いていた。
まるでレ●pもとい婦女暴行の行き着いた末のようであるが、ちょっと尊厳が折れただけだから誤解です。
思わず言い訳に及んでしまいそうに末期を語りそうになってしまったが、話を戻そう。
問題点は『堕天使は神器使いを特定できる』ということ、そして『教会内部も安全潔癖とは言い難い』ということ。この二点。
どのような生き方を選ぶかは本人次第だが、安定と安心を組織に見出すからこそ人はそういう集団へと属したがるモノなのだ。
そこに信用を置けなくなるのなれば、手段は模索して然るべきである。
「というわけで、堕天使側にアーシアの立場を明確に保持してもらおう。寝返るとか裏切るとか、そういうものじゃない。色んな方面から尊厳をこそ立ててもらうっていう方針だ、目指せ神話界のVIP」
「その胡乱な代名詞はさておきまして、……どうしてそこまで色々としてくれるのでしょう?」
何処か不安げな顔で、アーシアは問いかける。
まあ、言いたいことはわかる。
組織の内ゲバに晒された事態を幾つか生き延びて、ひょっとすればもう慣れてるかもしれないが、信用と信頼を何処に置けば良いのかもわからなくなっていることだろう。
そういうモノに圧しかかられたところで、救いの手を伸ばす者が居れば、それはそれだけで依存の対象にもなってしまうかもしれない。特に信仰という依存を第一で生きる聖職者という人種なれば、特に。
アーシアが今抱いているであろう不安とは、要するにそういうことだろう。
こいつは本当に信用できるのか、という、また裏切られるのではという不安。
ぶっちゃけ、個人的にはどっちでもいい。
信用も信頼も、根本的には『信じる』という『そうだという決めつけ』に由来する。
人間の内心とは目に見えないものであり、だからこそ行動と結果でしか信頼は積み重ねられるものではない。
しかし内心はわからないからこそ、裏切る時には裏切るのが人間だ。
どうであろうと、絶対性は存在しない。そういうロジックが前提なのである。
俺はというと、まあフレキシブルにどの立場であろうと対応する、そういうスタンスを備えている。
適当、とも云うが、拘りを抱えていても身動き取れなくなるだけなので、やはり身軽さこそが狙い目であろうか。
しかしまあ、その中でも人間として、最低限度思うことくらいはあるのだ。
そこは要するに、人情という見方になるのかもしれない。
「信用が置けないかもしれないだろうけど、善意であることに違いは無いのさ。というか、根本的にアーシアには良い目にも遭っていて貰うべきだと思ってるけど?」
「え、と……それは、どういう意味で………?」
「だって、キミ、基本的に良い人だし、頑張っているでしょう? それのご褒美さ」
努力が報われる。その程度のことが世の中には、あっても良いと思うのですよ。
まあ、俺のやることはことわざ的に棚ぼたか果報を寝て待つようなモノに転換されそうだけども(笑)。
「ウワァ」
「おうなんだいミッテルトちゃん、目覚め早々一声がそれってのはどうなんだいどういう意味だい」
「いやぁ、酷い目に遭っておいてなんなんすけど、ひとが放心してる横でラヴコメ遣られると寝ても居られないっちゅーか」
ラヴコメ?
と、改めてアーシアを見れば、はわぁ……とでも云うような赤らめ崩した相好で、俺を見つめている様。
ふむ。
「起きたのなら丁度いいや、へいへい幼女、お前さん提督だか総督だかに連絡取れる?」
「えっ、スルーっすか? これガン無視でスルーしてイイもんじゃないでしょ!?」
「良いから連絡入れるんだよお前の先行きにも繋がる生命線でもあるんだからなハリーハリー」
「ひ、ひとでなしー!」
ヒトでないモノにダブルミーニングで呼ばれつつも急かしつつ、ゴスロリもパンツも引っぺがした装備品と言えば毛布のみな全裸幼女をお仕事へと駆り立てた。
その後に、改めてアーシアへと向き直す。
放置するとは言ってない。
「さてアーシア、アーシア聞いてる?」
「……、っ、は、はいっ、なんでひょうか!」
眼前でてのひらフリフリ、視界の良好さ確認。
今回の締めでオチとして、これだけは告げておかなくちゃ話が始まらないのである。
「アーシアさ、学校生活を送りたいと思わない?」
やあいらっしゃい、ミッテルトたんの聖水プレイ会場へようこそ
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――お買い得、だろ?