おーりはもうだめです
『ライザー・フェニックスの
開始早々、なんもしてないうちからひとり脱落した。
多分、これはアレだな。
『あなたとは本格的に争う気は在りません』っていう意志表示と、まかり間違っても傷つけたくない『誰か』を今回の事態に介入させるわけにもいかないから退場させた、っていう一挙両得の策。
ついでに言うと此処の『傷つけたくない』は、物理的と言うよりかは経歴の云々にあたる。
例えば『家そのもの』が責任を負う形になったとしても、件の『誰か』は実行犯ではないので抜け出せたり、何某かの形で賠償を行動で示すことに繋がせられる。ということだ。
そう謂うなら初めからこの事態になる前に回避しろよ、と言いたいけれど。
まあフェニックスも逃れられなかったのだろう。
試合前に、グレイシアさんだったか? あの銀髪巨乳の十六夜咲夜みたいなメイドも申し訳なさそうにしていたし。
本人的には乗り気じゃないが、社会っていうのは板挟みの連続だからなぁ。
偉い人になったってその辺は変わらない。
「しかし、どうしたものかねぇ」
個人的には負けてもイイのだ。
だが、そうすると恐らく今現在『俺に』充てられている付加価値は極端に低迷する。
そうなると、俺の言葉で婚約破棄を納得したフェニックスの顔を潰すことになるし、最悪事態を引っ掻き回したとして『信用』は失墜する。
リアスぶっちょの婚約云々がどうなるのかは、まあどうでもいいとして。
とりあえず、負けるわけにはいかない。
これだけは確定事項である。
「でもなぁ。積極的にやるのもなぁ」
やらかせることをやらかして危険人物認定もNo thank you。
そもそも、個人的に誰が憎いわけでも無いので全力を出すモチベーションが無い。
まあ、こうして『試合』という体を為して観戦者と審判が意識外に居る時点で、手加減を口にすることは憚られるので言葉にしないが。
というかこういう異空間どうやってるんだ。
なんだかんだで悪魔の世界、冥界と謂うんだったか、其処に来るのも初めてなのでじっくりと研究したい。
昔、生まれた処の文献か研究書かで地球内空洞説ってのを読んだ気がするが、それに準じているのかね?
いや、異界発生のプロセスは確か、歴史上にも何点かあったか。
ソフィアさんなんかも東京に棲み処造ってるって謂う話だし? あのひとが拘わって空間占拠されてるのを許すわけはない。
ってことは、此処は日本に通じているようであって通じていない、隙間の――、
「ああ、今は別だな。さて――」
――気持ちを切り替えよう。
ともあれ、別の空間なれば、外部との接触は不可とする。
そうなると俺の専売特許である『他人の褌で相撲を取る』が出来ない。
例えば、他所から使い勝手の良い武器やら兵器やら益荒男やらを呼び出したり連れてきたり? まあ俺だけの専売特許ってわけでも無いが。
……一応言わせてもらうけど。
某Go westな原典の岩猿だって、個人の武勇よりはお釈迦様とかに頼ったことの方がずっと多い。
戦隊ヒーローだって怪人相手に集団でボコることもあるのだし。
他対1も、誰かに頼ることも『悪』ではない。
……そう考えると『悪』魔が積極的に自分らが正当だとマウント執ってるこの状況の方が異様だな。
良しわかった、手加減は辞めよう。
「――コレで往くか」
色々と決めた俺は、懐からあるサイコロ状の『隕鉄』を取り出すのであった。
■
……敵対するべきではない、と告げたのに……。
いや、わかっています。
サーゼクスの一存で『無かったことにする』には、影響力を慮ればそもそも不可能であったことです。
グレモリー家とフェニックス家もまた、共に上層部から良い目で見られていない中堅貴族ですし、どちらからとも破棄を言い出せなかったのでしょう。
婚約の話を振られて喜び喰いついたのはそもそもライザーでしたが、話題を振ってきたのは二家に関わらない別の貴族の様でしたし……。
……烏丸さんの予測の通りなら、両家の血を敢えて薄めるための策としか思えませんね。
そもそも、今回のゲーム自体が覆せない予定であったことが問題なのです。
現在リアスの扱える眷属は、朱乃・小猫・祐斗。
封印指定のギャスパーは論外ですし、先日赴いた部室には部員は居ましたが、人間や堕天使をホイホイとゲームに誘うわけにもいきません。
――誘うわけにいかないのに、何故烏丸さんを堂々と引き摺り込みましたか……!
確かに、今回予測を立てた、いえ、上層部の企みを看破したのは彼ですが、こうまであからさまに不利な状況を用意する悪辣さはどうなんですか……!?
それを断れなかったサーゼクスにも非はあります! 前言撤回です!
ゲームを用意するにあたっての告知や会場の設営、出場選手の選抜に観戦席の設置。
それらを考慮すると1週間や10日では用意し切れないのですから、予め整えてからの選手への調整と告宣が必須であるというのに……!
妹の結婚を認めたくないからと、妹本人にも許可を取らずにゲームの告知を先走るとはどういう了見ですか!?
この辺りはあの日帰ってから初めて知りましたが、何故こういう姑息な真似をやる時ばかり動きが良いのか……!
断る気満々であったライザーも、今現在頭を抱えていますよ!!!
『……どうすりゃいいんだ……!』
口に出さないでください、マイクが拾っていますよ。
『ライザーさまぁ、妹様は帰しましたけど、どうしますかぁ?』
『相手が人間なんて舐めてますよぅ、バッラバラにしちゃいましょー!』
『マテ、いや待てイル、ネル。……くそぅ、リザインか、いや、此処で投了しても誰だって納得するはずが……!』
今、一番可哀想なのは間違いなく彼です。
本人は烏丸さんとの繋がりを保ちたいというのに、ああして無情にも敵対させられているのですから。
幼い双子を宥めつつ、ライザーは尚も悩み続けます。
試合が始まっているというのに、陣営である生徒会室から眷属を誰も出さないままに、
「――は?」
「あ?」
「なん、だと……?」
――烏丸さんの陣地である、オカルト研究部が球状に抉り消えました。
「………………は?」
「……お、おい、審判、いやグレイフィア様、アレは自爆ではないのか、いや、ですか……?」
観戦者のひとりがそう尋ねてきます。
私も目を疑いましたが、今回は選手の総当たり戦が本分です。
そもそも烏丸さんは悪魔の駒を使用していないので、『敵陣地に赴いてプロモーションを果たす』などのチェス的な要素が無意味になっています。
つまり、会場の破壊、及び陣地の有無については今回に限り無効。
両チームがゲーム続行可能人数0に至るまで殴り合う、という実に遊び心の無い
……改めて見直しても酷いですね、コレ……。
「いえ。烏丸選手は会場に居る様ですから、ゲームは続行されます」
「そ、そうかね。いや、見どころが無いままに終わるのでは、と心配していただけなのですがね」
ところでどなたですか、この髭は。
上層部悪魔のひとりなのは伺えますが、口調を統一しなさい鬱陶しい。
サーゼクスは何処に居ますか、私に仕事を振っておいて。
流石の私も怒りが有頂天に達していたので顔を出し辛いのかも知れませんが、これで観戦に赴いているリアスのところへ逃げていた、などと後で言い出したらどうしてやりましょうか。
そんなことを思いつつ、私は改めて試合を伺い――え。
■
いや、私も悪いなー、とは思っているんだよ。
でも大事なリーアたんを守るためだ。
心を鬼にして決断を下さなくてはならないときもある――。
――リーアたんの眷属並びに後輩諸君からは、現在進行形で白い眼を向けられているけどね!
「ホラホラ諸君、魔王が珍しいのはいいから、試合をしっかり見ておこうじゃないか。特にリーアたんはゲーム参戦前なのだし、貴重な見学になるんじゃないかな」
「……ハァ。こんなことになってごめんなさいね、アーシア」
アレッ、無視!?
「いくらライザーもグレイフィアも絶賛したからと言って、彼は人間だと言うのに……。完全に趣味の悪い事態にしかならないわ、せめて神器でも使えていれば……」
リーアたん、改め妹のリアスは真面目な様子で試合を覗く。
……実のところ、彼が敗北すればリアスが出る予定になっている。
彼の試合はエキシビジョンというか、前座というか……。
正直、貴族上層部らは彼の試合を体の良い見世物程度にしか認識していないだろう。
だからこそのリアス達の観戦が許可されているのだが……、まあ、妹の婚約破棄を理屈で相手側に認めさせた人間であるし、このくらいの試練は越えられる。はずだ。
妹の血統を悪く言った意趣返しなどではないさ、断じて。うん。
「いえ、ソラさんならなんとかできるとは思うのですけど……」
「え?」
リアスの謝罪に返した彼女は、聖女アーシアか。
現在天界陣営の中でも最大級の信仰を集める彼女が、そこまで信頼しているのか。
……そういえば、数年前に彼女を篭絡しようとして逃げ帰ってきた若手悪魔が居たな。
アスタロト家の……。
「問題は、ソラさんが手加減してくれるかどうか、です」
「は?」
――次の瞬間、彼の陣地であるオカルト研究部が消失した。
「ちょ!? いえレプリカだけども私たちの部室をいきなり!?」
「部長!? 驚くところ違くないっすか!?」
……えぇ、何それ。
というか、消え方がまるで私の【滅びの魔力】に酷似してるのだけど……。
そういえば、錬金術師とか名乗っていたってグレイフィアが言ってたけど、どういう爆発物を錬成すればそんな真似が……。
そう思考に耽かける、その隙に。
部室跡から跳び出して、一直線に『何か』が生徒会室――つまりライザー・フェニックスの陣営へと吶喊して行った。
『!? ら、ライザー・フェニックスの
い、一撃だと!?
「が、画面変えて! 早く!」
「生徒会室……! っ、ダメです! 定点カメラが破壊されてます!」
「突き抜けてますし、廊下側からなら……!」
リアスの眷属たちが大慌てで現状を探る。
定点カメラ、っていうか使い魔からの映像なのだけどね。
……まあ、私の使い魔では無いし、弁償だけ考えておこう。
画面は割と早めに切り替わり、其処に映し出されたのは――。
『っ、な、ちょ、は、はぁあああああああ!?』
『あー。すみませんねライザーさん、この試合、手加減はしないことに決めたので。堂々と負けてくださいな』
『そ、それは構わないが、なんだ!? なんだそれは!?』
――茶褐色の武骨な巨体。
腕部はゴリラのように強靭で、胸部には茨のような棘が鎧のように並んでいる。
貌は鋭い眼差しが静謐さと共にライザーを見下ろして、口元はマスクのようなモノで覆われていて伺えない。
そんなロボの肩に褐色肌の少年が腰掛けて、狼狽えるライザーと会話していた。
『なんだ。ふぅむ、何と言ったら良いのやら。まあとにかく、造りました』
『説明になっていないぞ!?』
『ハハハ。名前はドイツの航空会社から取って【メッサーシュミット】です』
『いやちょ、まっ、』
そんな会話らしいとも言い切れない会話の最中に、件のメッサーシュミットがコブシを振り上げて、叩き付けた。
何度も、何度も。
『……。ら、ライザー・フェニックス、
数分後、近年稀に見る惨たらしい試合を披露した後に、誰がどう見ても根負けしたとしか伺えないライザーの投了に、誰もが納得の溜め息を漏らした。
グレイフィアの勝利宣言も空しく響いた。
……目論見通りだけども、どうしてこうなった……!
連休後半は体力使い切ったのか寝込みウィークとなって身動きが取れませんでした
肋骨がイタァイ! 頭痛もイタァイ! こんなん休みやないやんけ!
何が悪かったんだ。アレか。前回前書きでライフを半分支払った代償か。
そんなことよりイヅナヨシツネだいしゅきぃ…